投稿者: hy
【ご案内】株式会社ニュー・フォーマット研究所 第24回「NFIアメリカ視察ツアー」開催のお知らせ
「株式会社ニュー・フォーマット研究所(代表・日野眞克、略称NFI)」は、第24回「NFIアメリカ視察ツアー」を企画します。アメリカの小売・流通業のコロナ後における大きな3つの変化を売場視察によって解説します。さらに、米国小売業のアプリを利用し、オンラインとリアルの融合の最前線も体験していただきます。
アメリカの小売・流通業のコロナ後における大きな変化は、以下の3つに集約されます。
(1)デジタル武装するリアル小売業、(2)大量出店を継続する小型ディスカウンター、(3)ヘルスケアサービスを強化するAmazonとドラッグストアです。
【アメリカ視察ツアーのポイント】
■ デジタル武装するリアル小売業
(1)新店を増やさないで成長する「ウォルマート」のオムニチャネル戦略
(2)コロナ禍の勝ち組「ターゲット」の MD
(3)コロナ禍で一気に進んだBOPIS(店舗受取)
(4)急速に進むレジの省人化
■ 大量出店する小型ディスカウンター
(1) 顧客満足度の高い小型スーパー「アルディ」
(2) 年間 1,000 店の大量出店を継続する「ダラージェネラル」
■ ヘルスケアサービスを強化するAmazonとドラッグストア
(1)総合ヘルスケア企業に進化する「CVS」「ウォルグリーン」
(2)オンラインクリニック、オンライン調剤に投資するAmazon
今回の視察では、上記の3つの変化を売場視察によって解説します。さらに、米国小売業のアプリを利用し、オンラインとリアルの融合の最前線も体験していただきます。
<日程表>
日次 | 月日曜 | 発着地名 | 発着時間 | 交通機関 | 行動予定 |
1 | 4/18(木) | 羽田 発 ロサンゼルス 着 |
17:00 10:50 |
JL-016 専用バス |
羽田発日本航空で ロサンゼルスへ 着後、店舗視察 (~18:00) ロサンゼルス泊 |
2 | 4/19(金) | ロサンゼルス | 専用バス | セミナー (8:30~10:30) 店舗視察 (10:30~18:30) ロサンゼルス泊 |
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3 | 4/20(土) | ロサンゼルス | 専用バス | セミナー (8:30~10:30) 店舗視察 (10:30~18:30) ロサンゼルス泊 |
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4 | 4/21(日) | ロサンゼルス 発 ラスベガス 着 |
9:40 10:53 |
AA-1889 専用バス |
アメリカン航空で ラスベガスへ 着後、 店舗視察 (~17: 50) ラスベガス泊 |
5 | 4/22(月) | ラスベガス | 専用バス | 店舗視察 (9:00~17:00) ラスベガス泊 |
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6 | 4/23(火) | ラスベガス 発 サンフランシスコ 着 サンフランシスコ 発 |
7:00 8:43 12:00 |
AS-623
JL-067 |
アラスカ航空で サンフランシスコへ 着後、乗り継ぎ 日本航空で 帰国の途に |
7 | 4/24(水) | 羽田 着 | 15:10 | 羽田空港到着 |
日本との時差:-17時間
■宿泊ホテル
Miyako Hotel Los Angeles
328 E.1st St. Los Angeles CA 90012 Tel:(213)617-2000
Treasure Island -TI Hotel & Casino, a Radisson Hotel
3300 Las Vegas Blvd. S. Las Vegas NV 89109 Tel:(702)894-7111
■主な視察予定店舗 (視察店舗は予告無く変更する場合があります)
(スーパーセンター) ウォルマートスーパーセンター
(ディスカウントストア)ターゲット
(ドラッグストア) ウォルグリーン、CVS
(スーパーマーケット) ホールフーズマーケット、スプラウツマーケット、Amazon フレッシュ、ラルフス
(ダラーストア) ダラージェネラルマーケット、ダラーツリー
(リミテッドアソートメントストア)ALDI、トレーダージョーズ
(メンバーシップホールセール)サムズ
(ホームセンター) ホームデポ
(スペシャリティストア)アルタ、セフォラ、バス&ボディワークス、ルルレモン、ベストバイ、コンテナストア、マーシャル、TJ マックス、アウトドアワールド、ファイブビロー、トータルワイン等
(ショッピングセンター)グローブ、ファッションショー等
<募集要項>
■旅行期間:2024年4月18日(木)~4月24日(水)5泊7日
■旅行代金:620,000円(NFI会員特別料金)/680,000円(一般料金)
※航空運賃、バス代、ホテル代の高騰、円安の影響で例年よりも10万円以上も原価が高くなっており、例年より旅行代金が高いことを御容赦ください。
※上記料金には燃油特別付加運賃は含まれておりません。
■募集人員:30名(最少催行人員:15名)
■申込締切日:2月20日(火)
■ご旅行代金に含まれるものは次の通りです。
・食事代金:朝食代5回分(30ドル×5回)米ドルでお渡しします。
・航空運賃:日程表に記載の航空機の航空運賃(エコノミークラス)
・宿泊料金:2人1室を基準としたホテルの宿泊料金及び税サービス料。
・バス料金:空港~ホテル間の送迎及び視察のバス料金。
・団体行動中の料金:ホテルのポータレッジ、ドライバーチップ。
・添乗員:添乗員同行費用。
・その他:羽田空港使用料、空港保安サービス料、米国出入国税、航空保険料。
■ご旅行代金に含まれないものは次の通りです。
・食事料金:昼食、夕食。
・燃油特別付加運賃:94,000円(2023年12月現在)
・一人部屋使用料:90,000円
・米国電子渡航認証(ESTA)取得料:6,380円
・個人的費用:クリーニング代、電話代、飲食代、その他の個人的な費用。
・超過手荷物料金:航空手荷物規則を越えるもの
・その他:お客様の傷害・疾病の際の医療費、入院費等
■旅行条件・取消料
当旅行はお客様のご希望に従い旅行の企画・手配をする「受注型企画旅行」です。
旅行条件は国土交通大臣認可の標準旅行業約款に準じます。
《お取消しの場合は取消日により下記規定の取消料が必要となります》
旅行開始日の45日前~31日前までの取消:20,000円
旅行開始日の30日前~3日前までの取消:旅行代金の20%
旅行開始日の前々日~前日までの取消:旅行代金の50%
旅行開始日後の取消、無連絡不参加:旅行代金の100%
<お申込み・お問い合わせ先>
■(株)ニュー・フォーマット研究所
〒103-0021東京都江東区佐賀1-2-9猪瀬ビル7F
TEL03-5542-1688 FAX03-5542-1689
■(有)タイムズコーポレーション 神奈川県知事登録旅行業第3-993号
〒211-0053川崎市中原区小田中2-13-23
TEL:044-77-0860 FAX:050-3737-3238
海外視察担当:奥平哲朗
■申込締切日:2月20日(火)までに申込用紙をダウンロードし、
必要事項を記入してタイムズコーポレーション宛にEmail送信お願いします。
申込書送信先:times1117★gmail.com (★を@に変えてください)
NFI定例セミナー「マーチャンダイジングの設計図 商品構成と商品分類の研究 ほか」(2024/3/27 13:00~16:00)開催ご案内(リアル・リモート)
今回のテーマは、「マーチャンダイジングの設計図商品構成と商品分類の研究」です。狭小商圏時代の小売業の最大の経営テーマは、「機会損失対策」「生産性向上」「店頭起点の需要創造」です。この3つの経営対策に直結する技術である「商品構成」と「商品分類」の原則と活用法を解説します。
2024年3月定例セミナーは、「リアル」と「リモート」の併用セミナーとします。
今回のテーマは、「マーチャンダイジングの設計図 商品構成と商品分類の研究」です。
狭小商圏時代の小売業の最大の経営テーマは、「機会損失対策」「生産性向上」「店頭起点の需要創造」です。この3つの経営対策に直結する技術である「商品構成」と「商品分類」の原則と活用法を解説します。
商品分類を売場で具現化する技術である「売場レイアウト」の原則も解説します。また、月刊MDで取材・調査した最新の売場レイアウトの事例も解説します。
※座席数が限られているため、リアルでの参加の方は先着順とさせて頂きます。
開催概要
・開催日:2024年3月27日(水) 13:00~16:00(会場受付開始:12:30)
※昼食は各自お済ませの上ご来場下さい。
※セミナー開催中の途中入場はお断りします。
※リモートでの途中退席は申込責任者に報告します。
・会場:エッサム神田ホール1号館7階(701)(※案内図をご参照ください)
・実施方法:リアルとZOOMによるリモートセミナー
(ZOOMセミナーアクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2024年3月18日(月)
スケジュール
[第1講座]
「商品構成」と「商品分類」の原則
[13時~14時30分頃]
NFI代表取締役 日野 眞克
(1)機会損失を防ぐ商品構成の原則
(2)需要創造を実現する商品分類の原則
(3)商品分類の設計図・売場レイアウトの原則 等
[第2講座]
最新売場レイアウト研究
[14時40分頃~16時00分頃]
月刊『マーチャンダイジング』編集長 野間口 司郎
(1)ショートタイムとワンストップを両立する売場レイアウト原則
(2)狭小商圏時代の最新売場レイアウトの特徴
(3)最新フード&ドラッグの売場レイアウト研究 等
※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。
会場案内図
会場詳細
〒101-0045
東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2
エッサム神田ホール1号館7階(701)
URL:https://www.essam.co.jp/hall/access/#access_1
【アクセス】
●JRでお越しの方
神田駅東口より徒歩1分
●東京メトロ銀座線でお越しの方
神田駅3番出口より徒歩0分
注意事項
①会場へお越しの方は開催会場をご確認の上、お間違えの無いようご注意ください。
②アーカイブ動画の配信はいたしません。当日参加でのみセミナーのご受講が可能です。
(配信の不備等によりご視聴頂けなかった場合には、後日動画のご案内をいたします。)
③リモートの場合はZOOMウェビナー形式で行います。3月22日(金)までに、お申込書に記載された受講者のメールアドレス宛に受講用URLを記載したメールを送付いたします。
お申込みフォーム
・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。
本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。
ポテサラ盛り付けもロボットで自動化 キユーピーとTechMagicの取り組み
食産業向けのロボットを開発しているTechMagic株式会社は、2023年12/6(水)~8(金)の日程で、東京ビッグサイトにて行なわれた「第4回フードテックジャパン 食品工場の自動化・DX展」のなかで、開発中の「惣菜自動盛り付けロボット」や「サラダロボット」等を紹介した。会期初日には同社 代表取締役社長の白木裕士氏と、キユーピー株式会社 取締役 常務執行役員の渡邊龍太氏が「未来型食品工場が目指す姿と実現に向けて」と題して講演。両社は共同で惣菜盛り付けロボットの開発に取り組んでいる。(ライター:森山和道)
食産業向けロボット開発を手掛けるTechMagic

TechMagic(https://techmagic.co.jp)は2018年に立ち上げられたスタートアップ。独自の調理ロボットの開発によって、飲食店の厨房、食品工場の自動化に取り組んでいる。現在、プロントが丸ビルで運営するパスタ店「エビノスパゲッティ」で自動調理を行う「P-Robo」、「大阪王将 西五反田店」で使われている炒めロボットの「I-Robo」などが使われているほか、キユーピーの社員食堂でテストを行ったサラダ盛り付けロボットの「S-Robo」、ケンタッキーフライドチキンと進めているポテトの揚げロボットなどの開発を行なっている。
パスタを作る「P-Robo」は冷凍庫からパスタを取り出すところや調味料の投入など含め、盛り付け以外はほぼ自動化されているが、そのぶん、占有面積が大きい。そこで炒めロボットの「I-Robo」は調味料や食材投入は人が行うことで小型化し、一般的な厨房に導入可能とした。
炒め料理であれば、ほぼ何にでも対応でき、「大阪王将 西五反田店」では天津飯以外の炒めメニューには「I-Robo」が使われている。ロボットに付けられたタブレット上の指示に従って調味料や具材を投入すればいいので、熟練者でなくても同等品質での調理ができる。実際に導入店舗の利益率も上がっているという。
サラダロボット「S-Robo」は最大31種類の具材を計量・供給できるロボットシステム。冷蔵庫とアームロボット、器供給機から構成される。今回の「フードテック」ブースではサラダではなく、炒めを行う「I-Robo」への食材供給用のロボットとして使うデモを行っていた。
業務用機器では、業務用厨房機器大手のフジマックと共同で、食器の自動仕分け・洗浄ロボット「W-Robo」を2019年に開発している。
キユーピーとは、未だに多くの人手を必要とする惣菜の盛り付け作業を自動化するロボットの開発を共同で進めている。具体的にはポテトサラダのような粘り気のある食材を盛り付けできるロボットを開発を行なっている。
独自開発のディッシャーのようなハンドを使った「M-Robo」と呼ばれるロボットの盛り付け速度は250パック/時間。4台使えば1時間あたり1000パックになり、一般的なライン同等の性能を出せる。重量誤差はプラスマイナス8%程度。キユーピーのラインでテスト導入されている。
TechMagic CEOの白木裕士氏は講演のなかで「ロボットの民主化が重要。ロボットを作っていない人でも簡単に扱える装置でないといけない」と語った。インターフェースも多言語対応で、日本語が読めない外国人でも簡単に扱えるという。

変化に柔軟に対応する体制づくりが重要な時代

対談講演は基本的にTechMagicの白木氏が、キユーピーでサプライチェーンマネジメントを担当している渡邊氏にインタビューする形式で進められた。渡邊氏はキユーピーが進める未来型食品工場への取り組みについて語った。
白木氏はまず「技術革新によって生産性が向上している」という話から始めた。たとえば、アナログ時代には数ヶ月かかっていた資料作りは、いまや生成AIによって数分で作れるようになった。

このような技術革新は、食産業にも浸透しつつある。グローバル化、DX化などによって全く異なる分野企業からの新規参入も進みつつある。白木氏は「変化にいかに柔軟に対応できる体制を作っていくかが未来への道だ」と語り、本題に入った。
食品工場での課題は「複雑化」

キユーピーは2022年度の売上高4300億円超の食品メーカー。食卓でもお馴染みの調味料以外にも、カット野菜、惣菜、卵加工品、業務用調味料やサプリメントなども展開している。国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)にも注力しており、食育活動など「食と健康への貢献」、食品残渣や未利用部の活用を進める「資源の有効活用」、使用エネルギーを減らす「気候変動への対応」などにも取り組んでいる。内食・外食・中食、すべての食シーンに価値を提供しているキユーピーだが、渡邊氏は「今後はより健康に貢献していきたいと考えている」と述べた。

渡邊氏は「食品工場での課題は複雑化している」と語った。多様化と相反する効率化、原料調達におけるコストとリスクのバランスなど、様々な領域で両立が難しい「トレードオフ(二律背反)」となる課題が生まれており、どう成り立たせるかがとても難しくなっている。
労働力不足も深刻化している。多様化への対応のため、商品数は増加している。しかし、商品が増えれば増えるほど業務は複雑になり、サプライチェーン全体での生産性は低くなる。持続的に成長していくためには新領域に挑戦しつつも既存の事業領域を再構築する必要があり、成長領域への集中が課題だと捉えているという。

また「今は単純に良いものを作っているのが良い会社という時代ではなくなっている」と述べ、「現場の柔軟な対応力が重要。現場も担当分野を超えて視野を広げないとトレードオフの解を見つけにくくなっている」と語った。
「そのためにもサプライチェーンの生産性拡大が重要だ」という。仕事をよりシンプルにし、仕事・情報の流れをスムーズにし、働きがい、満足度を向上させることが商品力につながり、それが企業や社会のサステナブルな発展につながると考えていると述べた。
TechMagic白木氏は「どのようにこのバリューを現場に広げようとしているのか」と質問を投げた。キユーピー渡邊氏は「正直言って難しい。構想は絶えず発信しているが、なかなか浸透しない。具体的な技術とテーマを織り込んで発信できるかどうか」、それと「自分達の会社だけではトレードオフの両立は難しくなっている。社外に向けて想いや事例を発信・共有していかなければならないと考えている」と答えた。

改善活動は現場が主役

では具体的には、どんな取り組みをしてきたのか。渡邊氏は「未来型工場でも『働く人ファースト』でありたい」と語った。キユーピーでは改善活動を「夢多”採り(むだどり)」と名づけ、みんなで力を合わせて目標を達成しようとしていて、この考え方が未来の食品工場でも中心にあり、そのために自動化を進めていきたいと考えているという。実際にグループで年間1万件の提案が出ているそうだ。
自動化を進めるキユーピー神戸工場

調味料の生産を行なっているキユーピー神戸工場は「自働化にこだわったマザー工場」と位置付けられている。従前に比べ生産性2.4倍、消費エネルギーは半分くらいになっている。さらに使用電力は再生エネルギーで賄われている。設備には各種センサーを500箇所くらいに取り付け、稼働状況を管理。予兆発見を行い、ダッシュボードで工場経営に役立てている。ロボットも使われており、原料の投入や、AGVを使った搬送の自動化をおこなっている。

惣菜の世界は人手を要する。作業が複雑なので自動化も難しい。そこでスタートアップのTechMagicのほか、安川電機、オムロンなどと共同で取り組んでいる。盛り付けはTechMagic、容器の蓋締めは安川電機、積みつけ・搬送はオムロンだ。
コンセプトは多品種対応。60種類の容器に対応している。速度も人同等の能力を持たせた。人はおおよそ1時間あたり400-1000パックだが、1時間に1300パックの蓋を閉めることができる「惣菜用ふた閉めロボット」を開発した。操作性も誰にでも優しいものを目指し、操作パネルを多言語に対応させた。このロボットは11月からテスト運用されている(キユーピーからのリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000466.000044559.html)。
番重に詰めて搬送する工程はまだ開発テスト段階だが、一連の作業を自動化し、モデルラインを作ろうとしているという。
開発パートナーである白木氏は「最後の詰めの厳しさはさすがだなと思う。厳しさあって良い製品ができるのがキユーピーさんの強みだと思っている」と感想を述べた。
スマートファクトリーを目指す未来型食品工場

今後の展望については、まずフロントローディング、つまり商品の上流、すなわち設計開発段階からデジタルを活用して顧客理解を深め、品質を高めること、ライン立ち上げのスムーズ化を上げた。二つ目は最適化と自動化による現場の自律化の促し。3つ目は全量保証。全量保証というのはキユーピー独自の言い方で、いわゆる品質保証のことだ。AIも使って、より強固な品質保証を目指す。最後は人と環境へのやさしさをあげた。
フロントローディングへの取り組みについては、攪拌や充填のシミュレーションや流体解析、デジタルツイン工程解析を紹介した。惣菜現場でも新製品製造前に最適作業を検討する。ここまでは実際にある程度できるようになっており、今後はこれらの知見と、現場設備のセンサーから得られたパラメーターを組み合わせ、バーチャルなテスト製造による高速立ち上げを目指す。

二つ目は最適化。DXを活用し、商品アイテム最適化を図る。食品は多品種少量生産になりがちだ。そうすると生産性が下がる。そこでデータ解析推論モデルを活用。需要予測精度を高め、価格弾力性分析を向上させて、精度の高い仮説を作り出すことで、スマートなモノづくりと収益最大化を目指す。

さらに原料工程作業の改革においては、原料秤量小分け工程の自動化・効率化を目指す。どんな食品でも工程の1/3くらいは原料秤量小分け処理に割かれている。ここを自動化で効率化する。これまでにも取り組んできたが、大きなブレイクスルーができておらず、共創で進めていけないかと考えているという。

品質保証は基本の徹底、人の教育、工程管理プロセスの強化、原料・資材メーカーとの関係性強化をベースとして、これにさらに様々なデータを組み合わせて、リアルタイムで製品の良否の質判定を行い、万が一何かがあったときにも高速で対応できるようにする。検査機データやシミュレーション時のデータ、30年前から取り組んでいる豊富な生産管理システムのデータなどを使い、トレース力の強化にチャレンジしていきたいという。

既存の工場に新たな設備を導入するには苦労が多い。キユーピー渡邊氏は「いかにシンプルな設計仕様にするか、いかにコンパクトにするかが重要。そのためには全部機械にやらせようとするとどうしても構造が複雑になる。まず自動化する工程を徹底的に作業を分析し、バラバラにする。そのなかでどこを機械化していくのか考える。できるだけシンプルな作業をロボット化するとコンパクトになり、既存設備にも収めやすい」と語った。
未来型食品工場コンソーシアム立ち上げを目指して

TechMagic白木氏は「未来型食品工場コンソーシアム」の立ち上げを構想していると語った。工場内の非競争領域では協調して進めようという話で、いま5社くらいの企業と前向きに話をしているという。2024年初頭に立ち上げの予定だ。
背景は人手不足、技術の進化、持続可能な経営。メリットとしてはコスト削減、リスク分散、技術・知識の共有、スピードアップ、競争力の強化、持続可能な取り組みを挙げた。複数企業でロボットを開発できればコストもリスクも削減できるし、より汎用性のある製品やソリューションを開発できる。共通課題を解決できれば全体の競争力も上がる。

まず最初は、秤量や搬送から取り組むのが良いのではないかと考えているという。「協議と開発の場に分けて取り組んでいきたい」と語った。
「マインド」と「アクション」の変革が 小売DXの未来を切り開く (後編)
前回に引き続きサイバーエージェントでリテールメディア事業を率いる藤田統括が聞き手となってリテイリングワークス株式会社佐々木代表取締役に日本の小売業が今後どのようにDXに取り組んでいくべきか、評価基準、従業員教育、データ、AIの活用に至るまで真のDXを実現するために必要なアプローチを掘り下げる。(まとめ/青木 剣太郎)(月刊マーチャンダイジング2024年1月号より転載)
前回の記事はこちら
結果評価から行動評価へ転換し新しいチャレンジを促す

協業リテールメディアDiv事業統括 代表取締役
藤田 和司氏 佐々木 桂一氏
藤田 前回の対談で、1,200店舗の富士薬品(セイムス)さんで、実際に可変の発注パラメータを変えたのはひとりだけだった、というお話がありました。やはり失敗するかもしれない新しいチャレンジや判断を避ける傾向はどこの組織にもあると思います。
私はデジタルに取り組んでいく中で一番大事な姿勢はフェイルファスト(Fail Fast)、とにかく早くたくさん失敗することだと思っています。それが結果的に成功に辿りつく最短距離だという前提で事業運営をしています。
そのためにはチャレンジしたことが褒められるような評価体系、組織文化を作ることが一番大事だという話をよくします。佐々木先生はそのあたりどのようにお考えですか。
佐々木 私の場合、結果評価は2の次3の次と考えています。特に新規プロジェクトは、ひとりの人間のパフォーマンスだけで結果が出るようなものではありません。
一番必要なことは行動評価です。きちんと行動評価をするためには、前提として業務を遂行するために必要な知識、技術、そして経験をきちんと評価しないといけません。
しかし日本の場合はどちらかというと、この部下はちゃんと自分の言うことを聞いてくれるからと評価する傾向が強いです。
つまり、ハロー効果(ある対象を評価するとき、その一部の特徴的な印象に引きずられて、全体の評価をしてしまうこと)で評価することが多いし、企業内で偉くなればなるほど数字の内訳を把握しなくなっていく傾向があります。一方で最終的な数字だけ見て、現場には売上、粗利と叱咤激励しているケースが多いのが現状だと思います。
本来的には、結果責任、数字評価は役員クラスしか追わない、そしてその役員たちが日々細かい数値指標に意識を集中しながら舵取りをしていくべきだと思います。
そういった意味では、何か特別な新しいことをするというよりも、今までの自社の評価制度が正しくなかったとトップが認識した上で、知識・技術・経験をもとにした行動評価はどうあるべきかをトップ主導で考えて、軌道修正していくことが必要だと思います。
DX時代のスキルアップ 行動評価の仕組みづくり
藤田 今、行動評価軸としての知識・技術・経験といったお話がありましたが、年齢層が高くなると最新のテクノロジーをうまく使いこなせなくて、上司よりも部下のほうがそのあたりがわかっている、といったことが実際色々なところで起こっていそうですが、こうした状況はどのようにお考えですか?
佐々木 確かにその側面はあると思います。部下の知識教育を行い、経験値を増やしてあげる、これをきちっとできるのが上司の本来の役割です。
しかし、実際には上司が部下のやっていることがわからない、という状況が発生している。わからないから良きにはからえ、ということで部下に丸投げする結果、個人ごとにやり方が違う状況になり業務の標準化や全体最適がなされない。
この状況を変えるには、海外では当たり前ですが、まずは今までの惰性でやっていた仕事、業務を改めて棚卸した上で業務要件を明確にし、必要な業務を行う上でどのような知識・経験/スキルセットをもった人が必要なのかという関係をはっきりさせるべきです。
その上でそのスキルセットを身につけるために必要な教育・経験は何かというところから組み立ていく必要があると思います。
外部との協業に必要なプロジェクト管理についても、プロジェクトマネージャーは小売の現場のオペレーションが理解できている自社の人が本来中心にならなければいけない。小売企業は自社の優秀な人材に対してそういった経験をさせる場を与え、訓練する必要があります。経験を積んでいくことでより外部の知恵やテクノロジーを自社のニーズに合わせて柔軟に使いこなすことができるようになるわけです。
テクノロジーについて行けない中高年、というところでは朗報もあって、先日リリースされたChatGPTはフローチャートを入れるとプログラムも書いてくれるようになりました。
今まで難しい言語を覚えないとプログラムができませんでしたが、これからはやりたいことだけ伝えればAIがやってくれるようになる。ちょっと勉強したぐらいじゃ追いつけないと思って諦めてテクノロジー否定派になっていた人たちが、気軽に活用できるようになるのなら、自分達がこれまで通り主役で会社を動かせる、というふうに自信を持たせることができます。こういった流れをうまく取りこめれば、会社そのものが大きく変わるきっかけになってくると思います。
DXにまずどこから取り組むべきか
藤田 今後、小売企業がデジタルをより積極的に活用する上で最初は小さく始めて、成功例を作っていくという形になると思うのですが、個別の成功事例がバラバラに存在しているといった形になると全体最適を実現するのが難しくなると思います。
全体をつなげていくというのがデジタルの良さを発揮していく上で大事な観点と思っているのですが、ではどこから始めていけばいいのか、というのが非常に難しい話です。そのあたりについて佐々木先生はどのようにお考えでしょうか?
佐々木 もともとアメリカでデジタル化が一気に進化したのは、最初は在庫戦略です。小売企業としてまず何から手をつけるか、というところでは在庫データ、あとは在庫に準ずるような販売データなど数量で捕捉できるデータの可視化・共有化の優先順位が高いです。できるだけリアルタイムで各部署が必要データにアクセスできるようにする、それによってより迅速な判断、対策が打てるようにすることです。

まずは小売企業内部でのデータ共有が大事ですが、次の段階としては全体最適という意味ではいかにメーカーさんを中心とした外部と情報を共有するかというところが本当の意味での小売業DXにとって重要になってきます。
例えばアメリカのリーバイスなどは、ウォルマートやターゲットなど色々なジーパン売場で2000年代初頭からちゃんとRFIDタグをつけて、そのデータを見ながら商品を補充したり、品揃えを変えていくということをやっているわけです。
今ようやく日本でもRFIDタグの話が増えてきていますけど、彼らは20年前からやっているんですね。これによって彼らは全体の最適化をメーカー主導でやってきましたし、その取り組みは小売にとってもメリットがあるからずっと続いています。
こうした小売とメーカーが協力して最適化を図っていくということがこれから日本の小売に求められると思いますし、その上で最適化を本気で考えている人にとってみればリアルタイムなデータがないと判断できないのでそういった意味でのデータのリアルタイム性はますます大事になってくると思います。
藤田 われわれがこのデジタルの施策をやっていく上でも、結果の計測みたいなものが絶対に必要という前提で、計測して改善していくということを基本的に繰り返していきます。改善が前提なので、デジタルの世界では世に出た瞬間に百点満点である必要はなくて、60点からスタートしてそれが80点、 90点になっていけばいい、という考え方なんです。
そういった意味でお話いただいたリアルタイムでデータを確認できて各種判断に活かしていき、改善につなげるというところは共通する部分かと思います。
今後求められていくデータを起点としたアプローチ
藤田 小売のDXというところで言いますと、店舗とデジタルの境をなめらかにしてシームレスな購買体験を提供していくといったオムニチャネルの話がウォルマートが先行するかたちで進んでいると思うのですが、そのあたり日本での取り組みと比較した場合の違いの部分についてどのように見ているのか聞かせていただけますか。
佐々木 例えばウォルマートはお客様がスマホを持ちながら店舗で買物する体験をどう構築するか、など新しい取り組みを行う際、実験的に数店でだいたいどこの企業よりも早く実験を始めます。
実際に始めてみてお客様の行動、売れ行きなどが想定したものとずれる場合には、すぐその実験をやめるんです。だから基本的に実験するのが早いけれど、やめるのも早い。それはやっぱり現場のお客様が結局どういう買物するかを分析する仕組みがすでに出来上がっているからなんです。その分析手法があるからスピード感のある判断ができる。
藤田 私もそこは本当にすごいなと思っていまして、例えば商品をピックアップする店内のロボットの導入なども、結局人がピックアップした方が早いといってロボットの契約を打ち切りにしたりとか、スマホ決済は万引きがすごいからやめてしまう、とか、あの辺りの経営の判断の速さというのは現場のお客様分析が基本にあるんですね。では、データの活用という点でウォルマートはどのようなアプローチを行っているんでしょうか?
佐々木 例えば日本では牛乳という商品の分類があってその牛乳の分類の中に1ℓ、200mℓという商品があるという考え方なのですが、ウォルマートはTPOS(時間、場所、場面、ライフスタイル)が違うと同じ牛乳でも1ℓと200mℓは買うお客さんも違うし、買う時間帯も違うから別の分類として考えるわけです。
ウォルマートのすごいところはデータマイニング(大量のデータを元に統計学や人工知能などの分析手法を駆使して「知識」を見出すための技術)によって、販売の需要曲線を商品ごとに分析して、同じ時間帯に同じように買う商品をグルーピングしながら商品の選定、陳列を決めています。
日本の小売が感覚的に人の手によって商品マスタに登録しているのと比較して、ウォルマートはデータドリブン(データに基づいて判断すること)で動いてるいので全くアプローチが違うといえます。
ウォルマートはこういったデータドリブンな判断を実現するためにDWH(データウェアハウス)を作ってそこにデータを集めて時間帯別の販売データなど、全部の単品データを積み上げて需要曲線を解析しています。
ある時点で同じような需要曲線を描く商品群があったとしても、それがずっと続くわけではないので、定期的にグルーピングを変えなければいけない。
あるグループの中から予測通り売れない商品が出てくるとこれは顧客の購買動機が変わってきている、というふうに見るわけです。これは御社がやっているABEMAなどもそうだと思いますけど、今のデジタルで先行する企業は全部顧客の行動を分析してサービスを随時アップデートしてますよね。そのあたりが本当の意味でのDXをウォルマートが実現できて、日本の小売業が対応できない一番大きな違いになるかなと思います。もともとの発想方法が全然違いますね。
今後小売業はAIをどのように活用するべきか
藤田 少し話は変わるのですが、佐々木先生とお話していてChatGPTについて触れられることが多いと思うのですが、Chat GPTに限らず生成AI(学習済みの大量のデータのパターンや関係を学習し、新しいコンテンツを生成するAI)がこれから広く社会に浸透していくだろうと思いますが、特に小売の現場においてどのあたりで活用できると思われますか。
佐々木 一番即効性がありそうなのは、本部と店舗のコミュニケーションの改善です。問い合わせ対応で、本部の人間が電話を持っている時間が長い、メールをしている時間が長い、でも内容を見てみると同じことを繰り返し聞かれてるよね、ということがたくさんあるわけです。
チェーン店では店数が増えるほど、1店舗で聞きたいことは他の何10店舗でも同じように聞きたい、となる。それをナレッジとしてひとつにまとめておけば、簡単に回答できます。
チェーンストアとして“わが社のベスト、ベターを見つけてこれを速やかに水平展開する”という一番重要なことがこれで実現できるわけです。
業績の良くない会社は、我が社のやり方では今何がベストなんだ、ベターなんだって言われた時に人によって回答がバラつくわけです。でも、例えば我が社でお客様に一番人気ある商品何?と言われても、やっぱり業績の良い企業さんは「これ」と皆同じことを答える。
ちょっと古い活用方法になりますけど、ナレッジの活かし方っていうところで最初に入りやすいのはこの辺の領域かなと思います。
藤田 確かにそうですね、それなら明日からでもできそうですね。確かにChatGPTを使った社内利用のQ&Aサービスが結構伸びているという話を聞いていまして、まさに先生がおっしゃった通りだなと思います。
本部に対して色々な店舗、部門から同じような問い合わせが来るという課題に対して返す手間を減らしていくというのもそうですが、回答の品質を一定にしていく、という意味でもQ&Aに生成AIを使っていくというのは非常にいいな、と思いました。
佐々木 あとは店長日報にしても、決まった項目について報告内容を話しかければあとは自動的にレジのデータなどを組み合わせて店長日報を作るといったことも考えられます。やはり従業員のパソコン仕事、電話仕事をいかに無くせるかが大事なポイントで、結果として顧客に向き合う時間を増やすことが売上増加につながります。
デジタル化やAIの恩恵を自分たちで実感することができてはじめて、お客様に対してよりよいサービスを提供する発想が生まれることにもつながります。
また、店舗プロモーションの領域でもAIを活用した業務改善の領域はあると思います。例えばエンド1本の場合、この商品の一番良い売り方って何? と聞くと、グーグルのベストテイク(複数の写真を組み合わせて最適化された1枚を生成するサービス)のように自社のエンド向けに最適な棚提案の画像が出てくるといったことも近い将来可能になってくると思います。
現段階では物理的にモノを動かす領域はロボットのコストを考えると当面使えないと思いますが、モノを動かさない業務の多くについてはChatGPT、ITで解決できる時代になると思います。
藤田 今いただいたようなサービスはすぐ作れそうな感じがしますので、ぜひ社内で検討したいと思います。本日はありがとうございました。
《取材協力》

代表取締役
佐々木 桂一氏

AI事業本部協業リテールメディア
Div事業統括
藤田 和司氏
ハックドラッグ創業者石田 健二氏「ドラッグストアの歴史は 新しい業態への挑戦の歴史です」
ドラッグストア(DgS)の歴史を薬局・薬店の勃興期から知る「生き証人」である、ハックドラッグ創業者の石田健二氏に、目覚ましい成長を遂げたDgSの本質を聞いた。(聞き手/月刊MD主幹 日野 眞克)(月刊マーチャンダイジング2024年1月号より転載)
薬局・薬店は近代化が一番遅れた「業種店」
─過去30年間でDgSは急成長を遂げました。DgSが急成長する前の勃興期について教えてください。
石田 薬局・薬店は業種店として近代化が一番遅れた業界です。大学卒業後に薬剤師になって家業の石田薬局に入ったのが1930年。薬局に調剤の機能がない時代です。医師から処方せんが来ることはなく、売上の大半は日用雑貨でした。
薬剤師として、地域の生活者のために、健康・ヘルス&ビューティケア(HBC)の部分で役に立つことができないかと考えていました。メーカーの系列店である「業種店」から、買い手視点の「業態店」に転換する必要がありました。
そのなかで1968年にアメリカに初めて行きました。アメリカに行くきっかけはコンサルタントの山口英夫先生との出会いです。全国から繁盛薬局の店主を集める山口学校という勉強会を開かれていました。
それ以降は、全国の繁盛薬局の店主との交流が始まりました。山口学校で出会ったのが現在のDgSやホームセンター(HC)の創業者です。
1965年にはペガサスクラブのコンサルタントの渥美俊一先生と出会いました。山口学校とペガサスクラブの勉強後は、アメリカのように「薬局のチェーンストア化」を目指すことを決断しました。家業を脱却して企業化を目指すきっかけになりました。

1968年のアメリカはHCが発展していた時代です。また、日本では売場面積が広いボーリング場が売りに出ていたタイミングでした。アメリカ視察後はアメリカ型のHCに転換して、薬局の近代化に挑戦する創業者もいました。
日本の薬局・薬店の時代は、調剤室を配置しても処方せんはほとんど来ませんでしたが、ドクターと話し合いができたあとは、神奈川県で一番処方せんを扱う薬局になりました。
しかし地元の医師会からの強い圧力があり、クリニックが処方せんを院外に出さなくなり、処方せんを医者にすべて無償で差し上げた時代もありました。
いまのDgSがたくさんの処方せんを受付けていることは、当時では考えられませんでした。
1979年、アメリカ型のスーパードラッグ開店
石田 アメリカ視察後の1976年には「ハックドラッグ杉田店(110坪)」、1979年にはスーパードラッグの「戸塚店(450坪)」をオープンしました。しかしオープンした当時は地元の商店にある、写真現像、食品などの品揃えは一切認められませんでした。「厚木店(450坪)」でも出店を決断してから開店するまでには5年もかかりました。地元の人を説得する必要があったのです。
450坪の売場を埋めるために、HCで売れていた「日用雑貨」を導入しました。日用雑貨はHCのDIYほど品揃えは深くないが、地域客の利便性を高めるカテゴリーです。
従来の薬局が取扱っていなかった「家庭用品」「台所用品」「キッチン用品」を仕入れるために、取引がなかった地方の卸と交渉しました。
HCで取扱う商品は、薬局の日用雑貨と比べると回転が遅く、資金が凍結する可能性がありました。手形は絶対に切らない方針だったので、仕入れの条件として「3ヵ月(90日)」の支払いサイトをつけました。
杉田店ではアメリカのDgSのように調剤の機能はまだなくて、HBCもアイテム数は限られていました。2000年代のパーソナルユースではなくて、シャンプーリンスも家族共用で1本を使うファミリーユースが中心の時代でした。シャンプーリンスも3尺一本で十分な生活スタイルでした。
戸塚店の敷地は1,000坪以上、駐車場は200台規模の大きさでしたが、満員になりました。新しいHCができたという感覚で、DgSという業態が日本で受け入れられるキッカケになったと思います。
DgSの歴史は法律との闘いだった
─薬局・薬店の近代化が遅れた最大の理由は、既存の薬局が「法律」に守られていたことだと思います。法律の変化は新しいビジネスが生まれるきっかけですね。
石田 薬局のチェーンストアに挑戦したくても、日本で新店を増やすには「適配条例」「大店法」の法律の壁がありました。
第1の壁は1963年に制定された「医薬品販売の適正配置条例(適配条例)」です。神奈川県の場合は、既存の薬局から150メートル離れないと新店を出せませんでした。距離制限が撤廃された1990年代までは薬局の出店は簡単ではありませんでした。
第2の壁は「大店法」です。大店法の規制が強かった1970~1980年代は、出店調整に長い時間がかかり、大量出店など夢のまた夢でした。
その後、1990年に大型店の出店規制が緩和されるようになり、売場面積150坪までの店舗は届けるだけで出店できるようになり、1990年代前半に、全国各地で多くの150坪DgSが出店しました。さらに、1999年に大店法が撤廃されると、200~300坪型の現在のDgSの原型の大量出店が始まりました。
薬局の系列化に対抗するAJD、NIDの発足
─大手製薬メーカーの系列店政策に対抗するために、ボランタリーチェーン(全国の薬局・薬店が資本を出しあって会社をつくったチェーン方式のこと)をつくったことについて教えてください。
石田 資生堂が「資生堂チェインストア」をつくり、大正製薬が「鷲の会」をつくり、1970年頃はメーカー主体の薬局の系列化が始まっていました。大正製薬は希望する薬局に資本を出し、レジを安く提供してくれました。大正製薬のFCのような系列店の薬局が増えていました。
ハックも鷲の会には入ると思われていたのですが、メーカーに資本参加されることには抵抗を感じたので入りませんでした。私以外の全国の薬局の店主も、メーカーの系列店が増えると、小売業としての主体性がなくなっていくだろうと危機感を持っていました。
また、販売価格を規制する「再販維持制度(再販制度)」という法律があり、メーカーが決めた価格を小売業が守らなくてはいけませんでした。DgSの主力の医薬品と化粧品は、再販制度によって定価が守られていたのです。
再販制度に守られた大手メーカーによる流通支配から抜け出して、全国の薬局・薬店の店主が資本を出し合って発足したのが、小売主体のボランタリーチェーンでした。代表的なボランタリーチェーンの「オールジャパンドラッグ(AJD)」と「ニッド(NID)」は1970年に設立しています。
1974年は千葉薬品+AJDが共同経営する、スーパードラッグの実験店(500坪)が千葉県作草部市でオープンしました。フード&ドラッグの発祥かつ日本で最初の本格的なDgSです。
「作草部店」の経営管理の責任者は私でした。ハックの店長を派遣して経験を積んだことが、1976年の杉田店、1979年の戸塚店をつくる原動力になったと思います。
スーパーの隣から外に出たウォルグリーン
─薬局・薬店から試行錯誤しながらDgSを目指していたわけですが、どういう役割を果たす業態になりたいと思っていましたか。
石田 アメリカのDgSを見て、調剤部門の面積の広さに驚きました。入って正面に大きくスペースをとって調剤部門があります。昔のアメリカのDgSの処方せん薬の売上構成比は、スーパードラッグでも20%近くはありました。
日本では処方せん薬は「公定価格」なので競争することはないですが、アメリカの薬価は自由なので、スーパーマーケット(SM)やディスカウントストアのウォルマートでも積極的に調剤を安売りしていました。
ほかの業態がDgSの核となる調剤を扱いはじめて、アメリカのDgSは危機感を持ちました。当時のアメリカのDgSは「乗り物」を変える必要があったのです。
スーパードラッグの売場面積をコンパクトにして、調剤主体のHBC+食品のフォーマットをつくったのが「ウォルグリーン」でした。
昔のDgSは、近隣型ショッピングセンター(NSC)の中で、スーパーマーケット(SM)の隣に立地していました。しかし、SMが調剤を強化したのでNSCから外に出て、生活道路の交差点沿いに出店するコーナーストアに出店しました。
より家から近い立地に出店することで、買物の便利性を強化して、SMと差別化しました。また、ドライブスルーファーマシーを始めることで、車から降りなくても調剤を受け取れるようになり、調剤を受け取る便利性を強化しました。
この新業態開発によって、ウォルグリーンの調剤は全体の売上の6割を占めるようになりました。
ウォルグリーンの成功要因は、①コーナーストアで立地の便利性をつくったこと、②調剤の信頼性と利便性を高めたこと、③ドライブスルーファーマシーで調剤を受け取る便利性をつくったこと、④24時間営業、⑤店舗のコンパクト化(300坪型)、⑥調剤併設型DgSづくりだったと思います。
ウォルグリーンやCVSは、新しいDgSの乗り物を1つのコンセプトとして、DgSの強みである調剤の全米ネットワーク化を完成させました。
一方、日本では1990年に薬の処方と調剤を分離する「医薬分業」が動き出して、分業率は0.7%増えて12%。院内処方せんがDgSで受け取れる時代が到来しました。
消費者の変化と法律の変化が転換期
─日本のDgSが急成長した理由は何だと思いますか。
石田 ウォルグリーン、CVSというDgSの新しい形が日本でも増えたことも1つです。1990年代以降につくられた日本のDgSはウォルグリーンをモデルにした店が多いです。
1999年、全国各地に増えたDgSをまとめる機会として、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が発足したことも、日本のDgSが大きく発展する歴史的過程だと思います。
それと同時に、1999年に大店法が撤廃されて、全国各地にDgSをどんどん出店できるようになったという時代背景ができたことも、急成長を後押ししたと思います。
2002年には、経済産業省の商業統計調査に、初めて「ドラッグストア」という業態名が登場しました。それまでは薬局はあったが、ドラッグストアの統計はなかったのです。日本のDgSが新時代を拓いたエポックメイキングな出来事だったと思います。
規制があった時代に近代化が一番遅れた薬局・薬店から、DgSという新しい業態が確立されて、本格的なDgS産業の時代が来たのは2000年以降です。
一方、1990年代以降の「消費のパーソナル化」「生活者のライフスタイルの変化」も、DgSという新しい業態の成長を後押しして、DgSは日本の消費者に支持を得るようになりました。
次の業態を制するDXの革新
石田 過去を眺めてみると、アメリカも日本も1つの業態は10年・20年がターニングポイントであり、20年以上続いた業態を見ると、必ず新しい形に変わっています。
既存のフォーマットの中で試行錯誤しているだけでは存在しきれないと思います。薬局・薬店の成功体験を否定して、DgSという新しい乗り物を試行錯誤してつくり上げたように、イノベーション(革新)が新しい業態をつくるために重要だと思います。
次の乗り物はデジタルトランスフォーメーション(DX)によるイノベーションから生まれると思います。4年前にアメリカで見た「アマゾンゴー」は新しい乗り物の1つだと思いました。
DgSという業態が日本で20,000店以上に発展して、さらなる成長をしていくための新しい乗り物への挑戦が始まる時代がこれから到来すると感じています。
常に新しい乗り物に挑戦して、今まで蓄えたノウハウや人材を「リスキリング」して、次の成長・発展に結び付けていくのか、大変興味深く見守っていきたいと思っています。
─ありがとうございました。
《取材協力》

ウエルシア薬局株式会社名誉顧問
石田 健二氏
保護中: 2024年1月24日 セミナー資料配布ページ
月刊マーチャンダイジング25周年記念式典レポート
1997年秋に創刊ゼロ号を発行し年間購読者を募り、1998年の春に創刊号を発行して25年が経過しました。今月号(2023年12月号)で創刊311号に達しています。四半世紀も月刊誌を継続したことを記念して、月刊MD創刊25周年記念式典を、2023年10月16日午後4時から、品川プリンスアネックスタワー5階で開催しました。(月刊マーチャンダイジング2023年12月号より転載)
25周年記念式典は、月刊MDを通じて「つながっている」読者の皆様、広告主の皆様、そして取材協力をいただいている皆様が、リアルに集まって交流する初めてのイベントとして開催しました。当日は、500人を超える製配販の経営トップと業界関係者が集まりました。当日の様子を写真でレポートします。







この寄稿文は、webメディア「MD NEXT」で順次公開していきます





























「マインド」と「アクション」の変革が小売DXの未来を切り開く(前編)
今回はサイバーエージェントでリテールメディア事業を率いる藤田統括と、本誌で情報技術(IT)を活用したチェーンストアづくりの連載を執筆中のリテイリングワークス株式会社の佐々木代表取締役との対談が実現。日本の小売業が今後どのようにDXに取り組んでいくべきか、藤田統括が聞き手となってマインド、組織、パートナーシップなど真のDXを実践するために必要なアプローチを掘り下げる。(まとめ/青木 剣太郎)(月刊マーチャンダイジング2023年12月号より転載)
DX推進に必要な小売企業のマインド(意識)
藤田 今回は経営者、そしてコンサルタントとして日本の流通業、小売業を長年にわたって多面的に見てこられた佐々木先生に日本の小売企業が今後どのようにDXに取り組んでいったらいいかということを色々な切り口からお伺いしたいと思いますのでよろしくお願いします。
今、小売業の各社がDXにさまざまな形で取り組んでいますが、間近で見させていただいている中で、うまく推進されている企業とそうではない企業があります。その違いのひとつは、DXを推進して行く上で、そこに関わる方々のマインド、意識なのではないかと感じていますが、いかがでしょうか?
佐々木 やはりトップマネジメントのマインド、意識が一番最初に問われる部分です。トップのコミットメント(責任をもってある事象や物事に関わっていくことを公約・明言すること)といってもよいと思います。
DXはあくまでも手段です。まずはトップマネジメントが、こういう会社をつくりたい、こういうお店をつくりたい、というビジョンに対するコミットメントが最初に来るべきです。
そして、その実現のためにどんな人が我々の顧客なのか、その顧客にどんな事を提供していくのか、という分析・プランニングがあります。そして最後に、その具体的な方法論として、たとえばパーソナライズ(個客最適化)された情報をデジタルを活用して提供しよう、というDX推進のプロセスが来るべきです。
ところが、日本の小売業のDXについての議論を聞いていると、多くの場合”デジタル”とか、”DX”が主語になってしまう。繰り返しますが、DXは目的ではなく手段です。その点で多くの企業のアプローチが本質的ではないのが現状です。
やはりうまくいっている企業の例を見るとDXが主語ではない。彼らのアプローチは、我々はこのままでは市場で競争力を維持できない、だから競争力を高めるためにどんな会社になるべきかという議論の積み上げがあって、結果として特定の領域でデジタルの力を活用することが、その競争力を高める上で最善であるという考えに則っているわけです。
成功事例を安易に取り入れる「帰納法アプローチ」の危険性
藤田 今DXを進める上で、自社がどうありたいかをちゃんと明確にすることから始めるべきなのですね。一方で、よくあるのがうまくいっている事例をそのまま活用したいからとにかく事例をたくさん教えて欲しい、それをまねたい、というお話です。成功事例を取り入れてDXを進めていく、という観点についてはどのようにお考えですか。
佐々木 日本の小売企業の多くは事例をもとに考える帰納法的アプローチなので、そういった声が多いこともよく理解できます。ただこのアプローチの危険なところは、大抵の場合、他社が成功したのは特定の仕組みを導入したから、というシンプルな因果関係にない、ということを見落としがちだということです。
システム会社、SIer(システムインテグレーター)さんは、ここで上手くいっているとか、この会社で導入されましたよ、ということが最初の営業フレーズです。
ただ、小売業でいうと立地や品揃え、従業員など、自社と他社は全く違うリソースを使って運営しているわけです。すべてのリソースの条件が同じであれば、その仕組みを導入して成功する確率は高いと思いますが、実際はそうではないので、単に他社が導入して成功したからといって導入しても、失敗することが多いのが現実です。
DXの前提となるデジタルの世界で何かを実現しようとすると、まずはアルゴリズムいわゆるフローを考えなければいけないですね。これは事例をもとに考える帰納法的アプローチではなくて、原理原則から考える演繹法的アプローチです。
これは実は1980年代の日本の小売業が実践していたアプローチに近いのです。その頃の流通業セミナーではフローチャート図を書かせるとか、PERT図(プロジェクト内のタスク間にある依存関係を視覚的に表現するためのツール)を書かせることが当たり前でした。
ところがいつの間にかそういったアプローチがなくなって、あそこがあの基幹システムを入れてうまくいっているから自社も、といった話になっている。その基幹システムの中で何がどう動いているか、そんなことは気にせずに事例をまねるわけです。
こういったアプローチでは結局自社の事業、リソース、業務プロセス、システムに最適化された仕組みの構築は難しいわけです。そうした帰納法的に成功事例を導入するやり方で成功した企業は、ほぼないのではないかと思います。
外部企業とのパートナーシップ構築について
藤田 小売企業がDXを推進していく上では、外部企業とのパートナーシップをもって推進することがあると思いますが、パートナーの選び方や信頼関係の構築で苦労されている企業が非常に多いという印象があります。外部の企業をどう選び、パートナーシップをいかに構築していくのかについてぜひ教えてください。
佐々木 大事なことは、協力してもらう外部企業の長所は何か、そしてその長所を可能な限り素直に出してもらうにはどうしたらよいか、ということだと思います。
私が小売業の経営者時代に、さまざまなメーカーさんと取り組みをやる場合、基本的に相手の提案を全部100%に近い形で受け入れて実行することを大切にしてきました。小売業としての自分たちの色を入れない、ということです。そうすることで自社にない発想を含んだ結果を得ることができる。
その後2回目、3回目以降にこういうところを変えたほうがお客さんにとって、もっと便利じゃないのかといった視点で顧客の動向や、自社の考えを入れていくことが重要です。日本リテイリングセンターの故・渥美俊一先生は昔から、日本の優秀なメーカーさんの“ディーラーヘルプ”、これを積極的に使いなさいということを主張していました。メーカーさんの方がいろんな小売企業のケーススタディをもっているので、それをできるだけ有効活用したほうが小売企業自身のためになります。
たとえば、私が富士薬品(セイムス)にいた時も、メーカーさんにいろいろなデータを共有してもらって、この競合店とシェアがどれだけ負けているか、どのカテゴリーでシェアが負けているか、曜日でいつ負けているか、時間帯でどこまで負けているかということを可視化する作業を共同でやっていました。
メーカーさんはこうしたデータベース構築に対する投資もしているので、リアルタイムでデータが共有され機動的な対策が簡単にできます。これを小売業が持っているリソースだけでやろうとすると100%無理です。ある大手小売企業にそういった方法を教えたら、それは自分たちのPOSデータでやるということでしたが、自分たちだけでやろうとしたら毎月数百万円かかって利益どころじゃなくなります。
そのあたりについて、日本の小売業の方々は本質的なところを理解していないのではないかと私は思っています。これを理解して、外部企業との協業・信頼関係が構築できるようになったら、日本の流通は一気に変わると思っています。
ただ現状では、いつの間にか小売企業にとって“メーカーは安売りを阻止する存在”という敵対関係の構図ができてしまって、メーカーさん、問屋さんに言われたものをそのままやるのはダメという刷り込みができてしまっているように思います。
パートナーシップ構築の阻害要因 日本的マネジメント手法
藤田 渥美先生は外部企業を有効活用すべきだとおっしゃっていたのですね。なぜそれが実現・実行できないのか、何がその阻害要因となっているのでしょうか?
佐々木 一番の阻害要因は、トップ同士のコミットメントが不足していることです。アメリカでは基本的にダイヤモンド型のマネジメントで、トップ、情報システム、バイヤーなど各部署が全部横で直接連携してパートナーシップを築いていきます。それに対して日本の場合はいわゆるバタフライ型で、バイヤーと営業担当の接点しかないのです(図表1)。

そうすると会社対会社の信頼関係ができない。社長同士が会うといっても単純に挨拶するだけで終わっています。お互いにどういう課題を持って取り組むかも、バイヤーに丸投げというところが多い。
そのバイヤーも、この条件を出さないのだったら取り組みをやめるぞ、とか一発で信頼関係がなくなるようなコミュニケーションをしていることが多いと思います。そういったアプローチでは、ウォルマートのようなダイヤモンド型のマネジメントで先行しているアメリカの小売に対抗するのは難しいのではないかと思います。
藤田 マネジメントという点では、DX推進に必要な事業者間の「プロジェクトマネジメント」の回し方も、パートナーシップを深めていく上で重要なポイントになってくると思いますが、このあたりについてはいかがでしょうか?
佐々木 まずは自社内できちんとプロジェクトを推進できるという前提が必要です。部署を横断した一番小さい単位のプロジェクトを管理することができないと、外部のDX人材をうまく活用しようとしても、日常的にプロジェクト管理をしているIT企業とスピード感をもってうまくプロジェクトを進行することができません。
まずは目的、予算、実行の工程管理、結果の検証といったプロジェクトのPDCAを回すことに慣れてない日本の小売企業については、小さな単位の取り組みから始めることが必要だと思います。

“現場の一人一人が経営者”ウォルマートのDX根幹にある視点
藤田 小さなプロジェクトを回していく、という点では、われわれがデジタルのサービスをつくる時も同じようなアプローチです。
まずはモックアップ(試作品)をつくってとにかく動かしてみて、それでうまくいったらそこから大きくしていくことをしますが、小売におけるデジタル活用についても同じ考え方が大事だということですね。
DXの成功事例というと必ずウォルマートが引き合いに出されますが、その成功要因で特筆すべきことは何ですか?
佐々木 一番は顧客との接点を最適化することです。小売業の場合、顧客との接点は店舗ですから、顧客を一番知っている店舗現場にどのように自律性を持って仕事をしてもらうかが大事になってきます。
日野先生が主催されたアメリカでのセミナーで、ウォルマートの本部でバイスプレジデント(副社長)に直接お話を伺う機会がありました。その中で「なるほどな」と思ったことは、“現場の人が経営者”という考えを前提として、すべての仕組みができているという点です。”経営者”である現場の人自らが自律的に判断できるように必要な情報を端末を使って提供する、その上で判断は現場に任せる、ということです。
しかし、ただの丸投げで判断を任せてもうまくいかないので、いくつかの選択肢を用意してその人に選ばせることで、判断の品質を一定範囲にコントロールしながらも、現場に自分で判断したという経験をしてもらう。「店舗現場に情報を与えよ」という仕組みづくりをずっとやってきたことが、ウォルマートの本質的な強さであると確信しました。
創業者のサム・ウォルトンは、従業員がベルトコンベアで単純な作業をするような会社をつくりたくない、現場の人たちが自律的に働ける職場をつくりたい、それが創業初期からのビジョンであり、そのトップのビジョンの実現に向けて組織全体がコミットメントをしているとも言えます。
ウォルマート幹部から直接聞いた話に衝撃を受けて、私の小売業におけるシステム開発・構築に対する発想がガラリと変わりました。この考え方をもとに実際に大黒天物産、富士薬品でも、自動補充などのパラメーターを現場でも変えられる仕組みに変更しました。
ただ、実際には富士薬品1,200店舗でパラメーターを変えた人は一人しかいませんでした。自分で判断することに慣れていないのです。
それでもこれまで本部の指示に対して文句を言っていた人が、自分で変えられる、となった瞬間に文句を言わなくなったという良い副作用はありました(笑)。
(後半へ続く)
《取材協力》

代表取締役
佐々木 桂一氏

AI事業本部協業リテールメディア
Div事業統括
藤田 和司氏
NFI定例セミナー「2024年の最重点経営課題 ほか」(2024/1/24 13:00~16:10)開催ご案内(リアル・リモート)
今回のテーマは、「2024年の最重点経営課題」です。とくに人手不足、人件費の上昇によって、「人の生産性向上」は、待ったなしの経営課題です。また、新業態開発、PB開発による「差別化戦略」の事例を解説します。さらに、DXを活用した生産性向上、買物体験の変化についても解説します。
2024年1月定例セミナーは、「リアル」と「リモート」の併用セミナーとします。
今回のテーマは、「2024年の最重点経営課題」です。
とくに人手不足、人件費の上昇によって、「人の生産性向上」は、待ったなしの経営課題です。また、新業態開発、PB開発による「差別化戦略」の事例を解説します。さらに、DXを活用した生産性向上、買物体験の変化についても解説します。
月刊MDで連載中のリテイリングワークスの佐々木桂一氏をゲスト講師に招き、「データドリブン経営のススメ」というテーマで講演をお願いします。
佐々木桂一氏はダイエー出身で、ジェーソン代表取締役、大黒天物産の取締役副社長、富士薬品(セイムス)の専務取締役を歴任した人物です。現在は、小売業の「経営」「現場」「情報システム」のすべてがわかるコンサルタントとして活躍中です。
※座席数が限られているため、リアルでの参加の方は先着順とさせて頂きます。
開催概要
・開催日:2024年1月24日(水) 13:00~16:10(会場受付開始:12:30)
※昼食は各自お済ませの上ご来場下さい。
※セミナー開催中の途中入場はお断りします。
※リモートでの途中退席は申込責任者に報告します。
・会場:エッサム神田ホール1号館6階(601)(※案内図をご参照ください)
・実施方法:リアルとZOOMによるリモートセミナー
(ZOOMセミナーアクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2024年1月15日(月)
スケジュール
[第1講座]
2024年の最重点経営課題
[13時~14時30分頃]
NFI代表取締役 日野 眞克
(1)待ったなし!人の生産性向上
(2)新業態、PB開発による差別化戦略
(3)DXの推進によるイノベーション 等
[第2講座]
データドリブン経営のススメ
[14時40分頃~16時10分頃]
リテイリングワークス株式会社代表取締役 佐々木 桂一氏
(1)データに基づいたデータドリブン経営への転換
(2)情報技術を活用した強い「組織づくり」
(3)人の生産性向上のための数値管理のポイント 等
※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。
会場案内図
会場詳細
〒101-0045
東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2
エッサム神田ホール1号館6階(601)
URL:https://www.essam.co.jp/hall/access/#access_1
【アクセス】
●JRでお越しの方
神田駅東口より徒歩1分
●東京メトロ銀座線でお越しの方
神田駅3番出口より徒歩0分
注意事項
①会場へお越しの方は開催会場をご確認の上、お間違えの無いようご注意ください。
②アーカイブ動画の配信はいたしません。当日参加でのみセミナーのご受講が可能です。
(配信の不備等によりご視聴頂けなかった場合には、後日動画のご案内をいたします。)
③リモートの場合はZOOMウェビナー形式で行います。1月19日(金)までに、お申込書に記載された受講者のメールアドレス宛に受講用URLを記載したメールを送付いたします。
お申込みフォーム
・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。
本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。