ゲンキーの能登半島地震への対応記録「地域住民の生活のため、翌日全店開店を目指せ」

2024年1月1日16時10分頃、石川県能登半島地下16kmを震源とする強い地震が発生(後に令和6年能登半島地震と命名)。能登半島北部いわゆる奥能登を中心に甚大な被害をもたらした。ゲンキーは被災地域に複数の店舗を出店している。ここでは、同社取締役店舗運営部長の中川竜氏に取材。大規模地震への対応を見ていく。(月刊MD編集長 野間口 司郎)(月刊マーチャンダイジング2024年7月号より転載)

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【Day1】2024年1月1日(月)

5mの大津波警報が出る中 決死の現場への移動

1月1日はゲンキーの年に1回の全店、全社の休業日である。正月午後と言えば、いわゆる「おとそ気分」でゆっくりくつろぐのが、多くの人の過ごし方である。ゲンキー従業員たちもそんな時間を過ごしていたが、16時10分頃発生した能登半島地震で様相は一変する。

中川竜店舗運営部長は、正月の挨拶回りから福井県坂井市にある自宅に着いた直後、玄関で強い揺れを感じる。子供たちを机の下に避難させると同時に大きな被害になれば、被災地域では水、食品などの緊急物資が必要になるという思いが頭をよぎったという。

[画像1]地震後最初の投稿

画像1は、中川氏が地震直後、ゲンキー幹部が参加するグループLINEに投稿した第一報である。ゲンキーのグループLINEには藤永賢一社長以下、営業系部署の部長職以上43人がメンバー登録。普段は店舗の販売状況や商品情報など営業に関する連絡に使われている。能登半島地震においては、このグループLINEに情報が集約され、それらを基に現場の指揮を中川氏が執るという態勢が取られた。

[画像2]能登帰省中の従業員から投稿された写真

地震発生直後の16時12分には石川県能登地方には3mの津波警報が、16時22分からは5mの大津波警報に切り替わり、発令されていた。これを受け中川氏は能登エリア沿岸部を中心に全従業員に避難指示を出した。その後、能登半島に帰省中のメンバーから陥没した道路状況の写真も投稿される(画像2)。

[画像3]全従業員へ避難指示の連絡完了

16時22分には石川県を管轄している藤田毅ゾーンマネージャーから課長経由で全従業員に避難指示が完了したこと、状況確認中である連絡が入る。藤永社長からは津波を心配し、店舗確認には行かないようにという指示も出た(画像3)。

中川氏の自宅はゲンキーの本社近くで北陸自動車道丸岡インターから数百メートルの距離にある。体質的に酒の飲めない中川氏は正月の挨拶回りでも飲酒することなく、車を運転できる状況にあった。地震発生直後、現場に向かうことを決意、グループLINEに第一報を投稿した直後、中川氏は16時20分頃には車に乗り込み、丸岡インターから能登を目指していた。

丸岡インターから大きな被害の出ている石川県志賀町までは通常なら所要時間は1時間40分ほど。ただ、能登地方には5mの大津波警報が発令中で「到達中」との予報も出ている。丸岡から能登に入るには、石川県金沢市を経て海岸線に沿って走る「のと里山海道」を通る必要があり、ここを通行中に5mの津波に見舞われれば車もろとものみ込まれる危険を伴う。

「5mの津波警報が出ていることは知っていました。能登へ向かう途中海岸線を走っているときに津波に遭えば命の危険があることも認識していました。のと里山海道を走っているときは自分の車しかなく、置かれた状況がよく理解できました」(中川氏)

同じ頃、中川氏と同じリスクを負って、ゾーンマネージャーの藤田氏も福井から能登に向かっていた。

「藤田にも津波の状況等は確認しましたが、『部長が行くなら私も行く』、とのことでした」(中川氏)。のちに二人は羽咋(はくい)で合流する。

[画像4]「明日、全店開店」が目標に

翌2日は、当初より本部人員、商品部、店舗開発部などの社員は店舗応援に入る予定だった。17時26分、その人員を能登の応援へ振り分ける手配を取る。この段階で店舗の被害状況はつかめていなかった。直後の17時31分、藤永社長から「明日、全店開店を目指そう!」とのLINEが入り(画像4)、これに向け中川部長以下、本部応援社員、前線の店長、パートナー(パート従業員)の奮闘が始まる。

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《取材協力》

ゲンキー 取締役店舗運営部長
中川 竜氏

TOUCH TO GOが提案する「サテライト型」と「ハイブリッド型」2つの無人店舗戦略

店舗作業のなかで3割をも占めるといわれるレジ業務。レジの省人化は小売業にとって喫緊の課題である。近年ドラッグストア(DgS)でも導入が進みつつある無人決済システムを開発・提供するTOUCH TO GOでは2つの無人店舗戦略を提案しているという。代表取締役社長の阿久津智紀氏に導入状況を聞く。(月刊マーチャンダイジング2024年7月号より転載)

200㎡、2,000SKUに対応

弊誌でも既にこれまで何回か取り上げている「TOUCH TO GO」(以下TTG)の「無人決済店舗」ソリューション。利用方法は以下のとおり。

①入店して商品を手に取ると、店舗内のカメラや棚の重量センサー、AIによる画像分析などによりシステムが商品を特定。②お客がレジ前に立つと、自動でディスプレーに合計金額が提示され、会計を行う。③会計終了後にゲートが開き、お客は店舗から退出することができるようになる。

事前にアプリをインストールするなどの準備は不要で、決済手段も現金、クレジットカード、QRコード決済、交通系電子マネーをはじめ多くに対応。間口の広さを重視したソリューションといえよう。

「私たちが事業提携をしているファミリーマートさんでさえ、まだ現金の利用者の方が7割いらっしゃいます。だれでも気軽に入店できて、お支払いできるというところを大切にしたいと考えています」と阿久津氏は語る。

昨今セルフレジ化による万引きの増加が指摘されているが、だれが何を手に取ったかがすべて記録されているこの手法であれば、実質的に万引き対策にもなる。

同社が提供する無人決済サービスのなかでも、最大の売場面積とアイテム数である「TTG-SENSE」は、200㎡(約60坪)、2,000SKUに対応。1人当たりのレジ所要時間は10〜15秒で、入店人数に上限はない。

TOUCH TO GO高輪ゲートウェイ駅店。ピークタイムは1時間200人のお客をさばく

このシステムが導入されているJR高輪ゲートウェイ駅の「TOUCH TOGO高輪ゲートウェイ駅店」には、約600種類のアイテムが展開されていて、ピークタイムには1時間当り200人のお客をさばくという。

省人化という側面では、遠隔監視や遠隔接客に対応しているという点はポイントだ。営業時間中、たとえ店内が無人になっても、その様子は遠隔のコールセンターで監視されていて、お客からのお問い合わせもコールセンターで対応できる。

酒類の販売にも対応。会計の際に遠隔で年齢確認を行う

元々TTGはJR東日本系のファンドであるJR東日本スタートアップと、金融系のシステム開発を提供するサインポストの合弁会社として2019年に設立されたスタートアップ企業だ。2021年2月にはファミリーマートと資本業務提携を締結。コロナ禍の非接触ニーズを追い風に導入件数を拡大し、東芝テック、グローリーなど、POSレジの大手企業とも積極的に資本業務提携を進めている。

サテライト型とハイブリッド型の店舗戦略

市場環境に目を向ければ、労働人口の減少や人件費の高騰、また建設資材や光熱費も上昇しており、既存業態出店によって業績の拡大を目指すモデルはもはや頭うちという状況である。そこでTTGが提案するのが「マイクロマーケット市場」だ。「自動販売機以上コンビニ未満」の日販で採算が取れるビジネスモデルである。

「この程度の日販ですと、人が張り付けば赤字になりますが、これを無人にすることで採算が取れるようにしていきます。

そのために私たちは2つの戦略をご提案しています。ひとつは母店の近隣に小型店舗を出店するサテライト型店舗です。もうひとつは大きな店舗の一区画に無人のエリアをつくるハイブリッド型店舗です。無人エリアは24時間営業ができますので、深夜、早朝でも販売できるようになります」(阿久津氏)

サテライト型の無人店舗は、近くの母店の商品を従業員が運んで陳列する。その売上を母店につけることができれば、店舗にとってもメリットが大きい。DgSであれば、母店近くにある病院内売店の運営や、大学内売店などの展開などが検討できよう。これまで売り逃していた「エリア」のお客を取りにいく戦略だ。

一方のハイブリッド型店舗は、お客の多い時間帯は有人対応、お客の少ない早朝・夜間は無人店舗化することで、売上の最大化と効率化を両立する。こちらはそれまで売り逃していた「時間帯」のお客を獲得することにより、売上を増やす施策と考えられる。

「面白い事例がお菓子のシャトレーゼさんが東京・西麻布に出店した24時間営業の店舗です。昼間はケーキや焼きたてのお菓子も販売しているのですが、夜になるとそれらを販売しているエリアをシャッターで区切り、アイスクリームやドライ品だけを販売します。通常閉めていた夜間帯を活用することで売上が3割程度伸びました」。深夜の繁華街、飲んだあとに甘いものを食べたい…という需要をうまくくみ上げた。

出店時の費用も極力抑えられるような提案をしている。100Vの電源さえあればスタート可能で、大掛かりな工事は不要。既存の什器も利用できる。

この仕組みを増収のための施策としてではなく、「コストダウンのための施策」として活用している企業も多い。

例えばANAは空港のターミナル内の店舗にTTG-SENSEを導入した。航空機を待つお客のために店舗は必要だが、客数は飛行機の発着に依存するため従業員を張り付けると採算が合わなくなる。人手不足の解消と人件費削減が目的だ。

TTGでは、既存店を無人店舗化することで、レジ作業が削減され、また店舗監視や接客をコールセンターで行うことができるようになるので、通常店と比較して店舗運営のための人件費を最大75%削減可能だ。

2024年3月時点でTTGの技術を導入している店舗の総数は160店舗ほど。郵便局の空きスペース、ホテル内売店、ガソリンスタンド併設店、物流施設の休憩室、小売業の社員向け休憩所、大学の学生用売店、高速バスターミナル、病院内売店などなど、その導入企業、立地は多岐にわたる。

「無人だからのんびり買物ができる」

化粧品のオルビスは、2023年5月から「ORBIS Smart Stand」と称して、TTGの無人決済システムを導入した無人販売店舗をオープン。2024年5月末現在全国に4店舗を展開している。自分に合った手入れ方法や悩みなどをビューティーアドバイザーに相談できる「オンラインカウンセリング」サービスも店頭で提供。無用な接客がなく、マイペースに購入できると好評で、意外と男性客が多い。なお、この店舗は発注・品出しまでTTGがサポートしており、支店が近隣になくても店舗運営が可能であることを実証した。

店舗の状況に合わせてオリジナルの店舗レイアウトをつくれるのが「TTGSENSE」というソリューションだが、それをパッケージ化したのが「TTG-SENCEMICRO」だ。あらかじめ組み上げられた櫓(やぐら)を店舗に設置することで、そのエリアを無人店舗化できる。

最大3尺棚5本の構成で、200SKUの展開が可能。ガソリンスタンド、職域、ホテル内など、様々な場所で活用が進む。(大きさを倍にした、「TTGSENCE MICRO W」や、棚と決済什器のみでコンパクトな展開が可能な「TTG-SENSE SHELF」も提供している)。

価格については元々発生していた人件費等の運営コストの削減に伴い利益が出るような費用感での提供となっている。

この1年でデータの蓄積や活用の手法も洗練されてきた。お客動線や商品を手に取ったかどうかなどのデータを詳細に測定し、売場や棚の売上最大化に直結した分析基盤も構築が進んでいる。

無人決済というと、これまではお客の使用感の話が中心だったが、徐々にその段階は卒業し、店舗での活用方法に焦点が当たりつつある。それまで採算を合わせるのが困難と思われていた商圏、商材でのビジネスを成立させ、既存店の売上にプラスオンしていく。あるいは、万引きによるロスを食い止める。省人化によってコスト削減を狙う…。TTGの無人決済システムは、工夫次第で様々なメリットを小売業にもたらすものになりそうだ。

 

〈 取材協力 〉

TOUCH TO GO 代表取締役社長
阿久津 智紀氏

[男性育休取得率は?残業は?] 家庭と仕事を両立しやすいドラッグストア大調査! 2024

空前の働き手不足といわれる昨今。少子高齢化に伴う働き手の減少によって、ドラッグストア(DgS)各社から「人が集まらない」という声が聞こえている。これまで小売業が目をそらしてきた労務上の課題について、向き合わなければならない。本稿では、女性の活躍推進ならびに仕事と家庭の両立に関するオープンデータから、DgS企業の取り組みや現状を紹介する。(月刊マーチャンダイジング2024年8月号より抜粋)

 

本特集で利用しているデータは、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」ならびに「両立支援のひろば」に事業者が登録したものを活用している。「女性の推進活躍企業データベース」(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/)は、女性活躍推進法により、従業員数101名以上の企業に公開が義務付けられている、女性活躍に関するデータが中心。

また「両立支援のひろば」(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp)は、次世代育成支援対策推進法や、介護休業法に基づき、一般事業主行動計画、育児・育児休業取得率等を公表するためのデータベースである。

調査期間は2024年5月1日〜31日。その際に公開されていた最新のデータを活用しているが、期間中にデータが更新されていることもある。編集部が保有するDgS企業リストに掲載されている企業のうち、同サイトに掲載が確認できている企業について、データを集計、分析した。

[女性の管理職・役員比率]クスリのマルエ、女性管理職比率43%

[図表2]管理職・役員に占める女性の割合

現場で働いている人は女性が多いのにもかかわらず、管理職の女性が異常に少ないドラッグストア業界。状況は変わりつつあるのだろうか?図表2に示したのは、女性の管理職比率を、高い順にソートしたもの。

MASAYAは異例ともいえる管理職女性比率100%。役員に占める女性比率も高い。ドラッグストアというより、化粧品専門店という背景がその理由といえそうだ。次いでクスリのマルエ、オストジャパングループ、薬王堂、杏林堂薬局、カメガヤの順で女性管理職の比率が高い。

なお、この項目は記入をしていない企業も少なからず散見された。また、女性の役員比率に関してはさらに未記入が多く、記入企業が10社という状況だ。女性役員がいてこそ、女性の管理職比率も高まる。企業は戦略的に女性の管理職を育成していく必要がある。

[残業]一般社員の残業ゼロ目指すコスモス薬品

大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から時間外労働の上限規制が導入されるようになった。そもそも労働時間には労働基準法によって上限が定められている。これを法定労働時間といい、1日8時間、1週40時間とされている。

また毎週少なくとも1日の休日を取得しなければならない。法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合や、休日に労働させる場合には、労使の合意に基づく所定の手続きが必要だ。

しかしこれまでは時間外労働の上限を超えても、罰則による強制力がなかった。また、特別条項を設けることで、上限なく時間外労働を行わせることもできた。今回の改正により、罰則付きの上限が法律に規定されることとなった。時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、特別の事情がなければこれを超えることができなくなる。また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、様々な規制がかけられることになり、違反した場合は罰金が科せられる恐れがある。

[図表3]1ヵ月当りの平均残業時間(少ない順にソート)

図表3に、DgS企業の1ヵ月当りの平均残業時間を示した。残業について回答した企業は24社とほぼ半数にとどまっている。1時間程度の企業から、20時間近い企業まで、かなり幅が広い結果だ。20時間となると、ほぼ毎日残業が常態化しているということになる。

長時間労働是正のための取り組みについて各社の自由回答から興味深いものを取り上げた。

個人の残業時間を把握し、残業時間が多い人に対して指導などを行うとしているのが、シミズ薬品、マツモトキヨシ九州販売、富士薬品、九州セイムス、ゲンキーなど。ユタカファーマシーは「毎週金曜日にその月の残業予想値を計測・配信」と、週次で細かく残業を管理している。

マツモトキヨシ九州販売、モリキ、サッポロドラッグストアーなどは、ノー残業デーを設けることで残業抑制につなげようとしているようだ。ココカラファインヘルスケアは変形労働時間を推進。CFIZは「店舗間応援、店舗活性メンバーを活用し、応援体制の強化」とある。

コスモス薬品はかなり強めのメッセージで「2016年4月より一般正社員は時間外勤務ゼロ時間とする勤務体制で稼働しています。2021年5月からは、店長・副店長についても、勤務シフトの設定短縮(時短)を実施」とのこと。この強い意志が4.2時間という非常に短い残業時間という結果につながっているようだ。

サンドラッグは「勤怠システム及びPCログによる勤務時間管理」、クスリのアオキ「セルフレジを設置し、レジ対応人時を抑制」と、テクノロジーによる人時抑制をアピール。

店舗数を拡大するフェーズは繁忙期は、どうしても長時間の残業を余儀なくされがちだが、きちんと数字を管理し、残業の原因をつぶしていくことで、効率的な働き方を目指す社内風土を作っていきたいものである。

[男性の育休取得状況] 100%のドラモリとカメガヤ

そもそも産休と育休とはどのような制度なのだろうか。産休(産前産後休業制度)は、労働基準法に定められた制度で、子供を出産した女性が対象となる。これは出産予定日の6週間前から、出産日翌日の8週間後までと定められていて、産後休業対象者は誰もが必ず取得しなければならない。

一方育児・介護休業法で定められた育休(育児休業)は、母親だけでなく父親も対象となる。産後休業の翌日から(男性は配偶者の出産日から)、子供が満1歳の誕生日を迎えるまでが対象期間だ。この期間中は就業してはいけないことになっている。

なお、2022年からスタートした「産後パパ育休(出生時育児休業)制度」は父親が子供の出生後8週間以内に最大4週間を上限として取得できるもの。こちらの制度では、労使協定を結ぶことにより、休業中に就労することができる。

ちなみに産休・育休中は企業から給料は支払われないことがほとんど。その間を支えるさまざまな手当があるが、育休については、雇用保険から育児休業給付金が支払われる。金額は「育休開始時の賃金日額×67%×日数(180日まで)」、それ以降は50%となっている。

政府は男女の「仕事と育児の両立」を支援するために、男性が育児休業を取得することを後押ししている。2023年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、男性の育休取得率の政府目標を2025年に50%、2030年に85%(いずれも民間企業の数値)とする方針が示されている。

そこで、2023年4月から、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられた。

厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」によれば、2022年度における男性の育休取得率は17.13%となっている。また、また、令和3年度雇用均等基本調査によれば、男性の育休取得期間は、5日〜2週間未満が26.5%と最も多い数字になっている。

別の調査の結果になるが、2023年に厚生労働省の男性育休推進プロジェクト「イクメンプロジェクト」が発表した「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」によれば、回答した企業における男性の育休取得率は46.2%。育休取得日数の平均は46.5日となっている。

[図表6]職男性育休の取得状況

図表6はDgS企業における男性育休の状況を抽出したもの。かなりばらつきがあることがわかる。

ドラッグストアモリとカメガヤは100%の取得状況。次いでサンドラッグ、サンドラックプラス、サッポロドラッグストアーとなっている。一方で10%未満という企業もある。男性の育休支援がなければ女性の活躍も推進できない。

対象企業(順不同)(51社)

ウエルシア薬局、ププレひまわり、コクミン、丸大サクラヰ薬局、シミズ薬品、クスリのマルエ、MASAYA、よどや、ツルハ、ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本、杏林堂薬局、くすりの福太郎、ドラッグイレブン、ビー・アンド・ディー、マツキヨココカラ&カンパニー、マツモトキヨシ、マツモトキヨシ九州販売、マツモトキヨシ甲信越販売、マツモトキヨシ中四国販売、マツモトキヨシ東日本販売、ぱぱす、ココカラファインヘルスケア、岩崎宏健堂、CFIZ、コスモス薬品、サンドラッグ、星光堂薬局、サンドラッグプラス、サンドラッグエース、大屋、スギ薬局、クスリのアオキ、富士薬品、オストジャパングループ、モリキ、東海セイムス、西日本セイムス、九州セイムス、ユタカファーマシー、ドラッグストアモリ、ザグザグ、ゲンキー、中部薬品、キリン堂、薬王堂、エバグリーン廣甚、サッポロドラッグストアー、トモズ、千葉薬品、スギヤマ薬品グループ、紅屋商事、カメガヤ

 

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この記事は月刊マーチャンダイジング 2024年8月号から抜粋したものです。全文はこちらから!

市場成長に欠かせない、効果計測とデータガバナンス

株式会社unerryと株式会社CARTA HOLDINGSでは、小売業、広告業など関連24社とプロジェクトを結成し「リテールメディアカオスマップ」を作成。主要プレイヤーや信頼に足る小売業パートナーの紹介、各プレイヤーの役割などを公開した。今回は前号に引き続き、作成当事者の一人である、unerry代表の内山 英俊氏とサイバーエージェント社 藤田 和司氏の対談を通じ、データ整備や運用上順守すべきコンプライアンスについて解説する。(月刊マーチャンダイジング2024年8月号より転載)

前回の概要

前回、「リテールメディアカオスマップ」解説①では「リテールメディアの全体像と押さえておくべきトレンド」のテーマでお二人に解説して頂いた。そして、リテールメディアの正しい効果計測には、小売各社のデータを横断的に計測することが求められるが、そのためのデータ整備や許諾が難しいことがデータ活用上のひとつの大きな課題であるという、内山氏の発言を最後に紹介、今回はそれに続く対談を紹介する。

リテールメディアの全体像と押さえておくべきトレンド

リテールメディアの効果計測は流通横断で行うべき

[図表1]リテールメディア効果計測の課題

藤田 リテールメディアにおけるデータ活用で、小売企業のデータ開示、データ共有の意識がひとつの課題とのことですが、私も同感です。

リテールメディアはメーカーから見たときに最終的にはネットワーク的に使う。つまり、Googleのネットワーク広告のように、一定のリテールメディア予算があって、エリアやメディアの属性、過去の広告効果などを見て、出稿したい商品に合わせてリテールメディアを選んで予算配分していく。様々なメディアを使い分け最大のリターンを得るのが近い将来像ではないでしょうか。今はその過渡期なのでまだ問題がある。内山さんのお話を聞いてそういうことを思いました。

データの整備という観点から、商品の分類が小売企業ごとに相当違います。ひとつの商品の売れ行きを小売横断で集計しようとする場合、JANコードならある程度うまくいくのでしょうが小売企業独自のインストアコードが増えているのでマーケティングに上手く活用できていない局面もあるかと思います。

企業によっては、弁当、総菜、菓子といった分類しかありません。それに属する商品の売上構成比が数%なら問題も小さいのですが、コンビニ、食品SMでは大半をそれらが占めています。

こういうケースに対して、われわれが今ご提案しているのは、LLM(大規模言語モデル)を活用することで、例えば総菜なら、それが揚げ物か、サラダか、麺類かといった分類をしてインストアコードにタグ付けします。

これが分かるだけでも、揚げ物をよく買う人には血流や脂質をケアする商品を訴求しようとか、サラダの購入者は健康志向の人だとか、マーケティングする際のターゲティングユーザーは増えるはずです。

一次情報を二次、三次と膨らませていく、unerry様でもお持ちの人流データを掛け算、足し算して価値を付加することもできると思いますが、どのような使い方が可能でしょうか。

内山 小売企業の観点で見たときに、自社が運営するリテールメディアに広告を配信した結果、その小売の店舗で購買すれば自社の販売データで効果はわかります。

しかし、その広告を見た人が、必ずしも配信元の小売の店舗で買うとは限りません。

unerryの人流データを使った分析では、あるリテールメディアの広告を見て、配信元の小売とは別企業の店舗で購入している人も推計できます。そして、その数は相当数に及びます。

こうしたことを私たちが正しく計測させてもらえれば、配信したリテールメディアのROI(投資効率)が上がります。それが本当のリテールメディアの効果だと思います。

藤田 配信元以外の店舗での購買データは、メーカーのニーズも相当高そうです。ある小売で実施したリテールメディアに対して、その効果が一流通で収まっているはずはないのですが、一つの流通でしか見られないケースが多いのが現状です。

これでは広告主は費用対効果が合わないと思うこともあるでしょう。unerry様のサービスはその課題のソリューションになりそうですね。

内山 正しくメジャメント(計測)しないと効果の評価を間違うので、メジャメントの指標も合わせてご提供しています。

その店舗をどのような文脈で利用しているか知る

藤田 小売業のファーストパーティデータ(自社購買データ)から見えるもの以外、例えば、居住エリア、勤務エリア、買い回りパターンなど、顧客が別角度から見えるデータを取れることも位置情報の特徴的なところだと思っています。顧客データの価値を増やすという点では面白いですね。

内山 通勤途中に使っているのか、日常生活エリアの中で使っているのか、お客様がその店舗をどういう文脈で使っているかを理解した上で、こういうプロモーションにしましょうとつながるはずですが、ファーストパーティデータだけではそれが分かりません。

そこを補完すれば、他店を利用して態度変容したのか、自社の利用が減って他社の利用が増えたのか、あるいはその逆か、行動の中からお客様の態度変容をしっかり捉えることができ、施策に生かすことができます。

藤田 どういう文脈でその店舗を使っているのかという視点は面白いですね。ドラッグストア(DgS)で言えば、近隣のDgSが競合だと思っていたら、買い回り先を見たら実は競合は近隣の食品SMだったということもあります。自店の商圏は調査しているが、その分析が正しくなかったということも結構ありそうです。

位置情報を使った商圏、競合分析は、本部が見たときに店舗の不振の原因が分かったりします。店舗では競合に売価で負けている、競合がセールをよく打つなどと分析していても、そもそもの競合が違うというケースもあります。位置情報を使った計測ではそういったことも見えてくるのが面白いですね。

リテールメディアにおけるデータガバナンスの注意点

藤田 法改正もあり、インターネット上の利用者情報の管理がより厳密になりました。リテールメディアで取り扱う情報の許諾など、内山さんが特に注意していることは何でしょう。

内山 いくつかの観点がありますが、われわれのようなデータ事業者の立場から見ると、扱うデータの取得元のパーミッションが明確かどうかはしっかりと意識する必要があります。

どのようにして集めたのか不明瞭なデータが小売やメーカーに提供され、よく調べるとそのデータは広告配信に使用してはいけないデータであったというケースも考えられます。

どこまで活用しても良いデータなのか、しっかりと確認できていないまま活用してしまわないよう注意が必要です。

もう一つ、2023年6月には改正電気通信事業法が施行されましたが、外部送信規律(用語解説①参照)も意識しなければなりません。

小売アプリで広告事業をしようとすると適用される可能性がありますが、例えばリテールメディアという概念を知らない顧問弁護士などの観点だと、小売が広告事業をやるとは考えないため、適用されないと回答される恐れもあります。

この点は現場も意識するべきでしょう。意識の高い企業は法改正に従ってプライバシーポリシーを修正していますが、対応が追いついていない企業も存在するように思います。

個人情報を事業者間で提供する場合の対応にも注意が必要です(用語解説②参照)。第三者提供か委託かでデータの扱いルールは異なります。

委託で取得したデータを事前にユーザーに確認を取らずに別データと掛け合わせるなど、委託の範囲を超えて利用することは法律違反となるので適切な運用が強く求められます。

外部の情報と自社の個人情報を連携させる際はその旨を明示してユーザーの許諾を取る必要がありますが、許諾の内容とデータの活用状況に乖離がある運用になっていることも考えられます。

何の目的で、どの項目を、どのような条件で提供するのか、確実に明記することが求められます。

[図表2]外部送信規律の対象について

用語解説① 外部送信規律

電気通信事業を営む者は、利用者の端末に外部送信を指示するプログラムを送る際は、あらかじめ、送信される利用者に関する情報の内容等を、通知・公表等しなければならないこと。

※外部送信/パソコンやスマートフォン等の端末に記録された利用者に関する情報を、その利用者以外の電気通信設備(Webサーバ等)に送信すること。

(文責/編集部)

法令順守のために利用者情報の保護を整備する

藤田 市場が大きくなると社会の関心も高くなり、利用者情報の保護問題はより大きくなります。今のうちに正しく対応しなければいけません。グレーゾーンやまだ定まっていないことがあるのは確かですが、リテールメディアに正しく取り組みたい小売企業は利用者情報の取り扱いにどのように対処すればよいとお考えでしょうか。もちろん、知見のあるパートナー選びもその対処のひとつでしょうが。

内山 まず本質的だと思っていることを先に言うと、リテールメディアカオスマップで紹介したようにこれだけ多くの知見のある企業並びに関係者がいらっしゃるので「ガイドライン」を出すべきだと思っています。

「リテールメディアプライバシー」に関する規約のガイドラインをつくることが対処法の1つだと思います。アメリカにはすでにIAB(Interactive Advertising Bureau/米国のネット広告団体、Amazon、ウォルマートはじめ約650のメディア、テック企業が加盟)がリテールメディアや測定指標に関するガイドラインを設けています。その日本版を出すべきだと思っています。

あるいは、日本の一部先進的な小売企業が社内規約をつくっているので、そうしたものをモデルケースにして業界として利用者情報の管理を正しく認識し、これに合わせていくことが重要です。

ちなみに位置情報の業界も以前はリテールメディアと同じような状況でした。規約がなかったところから始まり、ロケーションのガイドラインをつくり、同業他社の皆様と協働で一定の健全化が図れたと思っています。

藤田 LBMA Japan(Location Based Marketing AssociationJapan/位置情報マーケティングサービスを推進する非営利社団法人。内山氏は理事を務める)を立ち上げ活動されています。

インターネット広告ではJIAA(Japan Interactive Advertising Association/日本インタラクティブ広告協会)の中で利用者情報のルールのとりまとめを行ってきましたが、リテールメディアはそれを越えた範疇でのルールづくりが求められます。そろそろ協議会をつくる必要があるかもしれません。

希望も込めて見ると、メーカーも変わろうしているし、小売も専任の部署を立てる企業が増えてきました。しかし、まだ仕組みや活用をどうするかという段階です。将来的にはターゲティング、効果計測など、データの取り扱いが事業のコアになります。そのときまでに、利用者情報の保護、管理のルールづくりをする必要があります。

新しい事業に挑戦するという機運の中で、情報をどのように使いたいかを定義した上で、それが適法か、理にかなっているかの判断を法務部門も含め、 事業側でもできるようになると理想です。それを担う人材をどう育成するかも小売企業の1つのテーマになると思います。

内山 unerry独自で勉強会を無償開催しています。法律の改正やリスクをアドバイスしながら規約を整えるお手伝いはできます。個人的にやっていることなので、普段のお取引がある、なしは関係ありません。ご興味があればいつでもおっしゃってください。

藤田 勉強会のお申し出をありがとうございます。様々な制限を受ける繊細な情報に取り組んでいるという認識が大切ですね。リテールメディア発展のために、今後とも連携できればと思います。

本日はありがとうございました。

用語解説② 「個人情報の第三者提供」、「委託」

個人情報の第三者提供
個人情報取扱事業者が、保有する個人情報をそれ以外の者(第三者)に提供すること。

委託に伴う個人情報の提供
個人情報取扱事業者がその利用目的の達成に必要な範囲内に限り、個人情報の取扱いを委託することに伴い個人情報を提供する場合は、個人情報の第三者提供に該当しないものとされている。

(文責/編集部)

 

《取材協力》

株式会社unerry
代表取締役社長CEO
内山 英俊氏
サイバーエージェント
協業リテールメディア部門統括
藤田 和司氏

リテールメディアの全体像と押さえておくべきトレンド

株式会社unerry(ウネリー/東京都港区、代表取締役CEO 内山 英俊氏)と株式会社CARTAHOLDINGS(東京都港区、代表取締役社長 執行役員 宇佐美 進典氏)は「リテールメディアカオスマップ2024年版」を作成した。今回は作成当事者の一人である内山 英俊氏とサイバーエージェント社 藤田 和司氏の対談を通じて、作成目的や特筆すべき最近の傾向について解説する。(月刊マーチャンダイジング2024年7月号より転載)

リテールメディア関連プレーヤーを5つに分類。実績ある企業を明示

藤田 まず、「リテールメディアカオスマップ」を作成した背景などを教えて頂けますか。

内山 2022年から2023年にかけてリテールメディアというテーマで非常に多くの企業がこの分野へ参入しました。あまりに多くの企業が乱立して、だれが何をやっているのかよくわからなくなったというのが2023年の事象でした。アメリカでのAmazon、ウォルマートの成功事例が大きく取り上げられたことも背景にあると思います。

このような状況下、多くの企業の間で様々な取組みがありましたが、そこでひとつ問題となったのが、多くの小売業がどの支援事業者と組めばよいのか、わからなくなったことです。

結果として、“筋の良くない”取組みも生まれ、リテールメディアがうまくいかないという事態も散見されました。例えば、小売から購買データは預かったものの、広告出稿するメーカーが見つからない、そうするとバイヤーが動かざるを得なくなり、結果としてリベートと広告費の違いがわからなくなるという例も多かったように思います。

どのような事業者がどのような価値を提供しているかを整理して、一定の実績や信頼度のある固有の企業名も出して、リテールメディアの全体感を示すことが重要だろうと考えたのが作成の背景です。

藤田 たしかに様々な事業者が出てきたものの、外から見ると何をやっているかわかりづらい、市場として期待も含めて盛り上がっているのに、プレイヤーが整理されていない感じはありましたね。そこを関係各者が思いをひとつにして、どのような企業が何に取り組んでいるかを一覧で皆さんに理解して頂くという初の試みが「リテールメディアカオスマップ」ですね(図表1)。このマップの見方と最近のトレンドなどあれば教えてください。

[図表1]リテールメディアカオスマップ
調査概要

内山 構成する部門は「メーカー」、「小売」、「消費者」の3つです。これは、小売がメーカーから商品を仕入れて消費者に販売するという商流と同じ構図です。ただし、小売事業者が単独でリテールメディアに必要なものをすべて揃えるのは難しいです。従って、それを支援するために様々な事業者が小売部門に参画するという構図になりエコシステム(相互協力関係)が形成されています。それを分解しているのがカオスマップとなります。ここを大きく5つの領域に分けています。

[図表2]リテールメディア関連プレーヤーの領域ごとのトレンド

まず、「小売事業者オウンドメディア」の領域ですが、各社が相当な投資を行いアプリ、店舗サイネージ、ショッピングカート、SNSなどに注力してユーザー基盤が拡大されました。これがリテールメディアの本丸中の本丸で、一定のボリュームの配信が可能になったことが一番特筆すべき点だと思います。

一方で、規模を獲得できない中小の小売事業者は一番右にある広告ネットワークに参入することで規模の問題を解消しています。店舗サイネージ、自社アプリのネットワーク化が進んだと言えます。大手は積極的な投資を行い自社でユーザー数を拡大し、中小はネットワーク化していく、これが合わせて進んでいるのが小売で起きているトレンドです。

次に、左下にある「総合サービス」です。文字どおり、小売事業者に対して、リテールメディアに必要なことを総合的に支援する企業群です。広告代理店やサイバーエージェント様などに加えて総合商社が参画したことで、規模を追求する企業が本丸に加わったことになり、市場拡大には大きな意味があります。これは特筆すべき流れです。

3番目が「データ」です。リテールメディアの核になる仕組みは、消費者から何らかのデータを同意を得た後に取得して、それを小売が持つオウンドメディアや各種広告メディアに流していくことで、しっかりターゲティングや効果計測ができることです。従ってデータプロバイダーは非常に重要です。

こうした事情もあり、データの領域には購買データ、カメラを使った画像データ、位置情報、ビーコンなど実に多くのプレイヤーが乱立しており、サービスの内容や質も様々でした。それらが相当に集約されてきたというのがトレンドです。

4番目が「広告メディア」。元々はプラットフォーマーにおけるオフサイト配信(自社のアプリやECサイト以外の外部サイトへの広告配信)が一定量あったのですが、本丸であるテレビ、CTV(コネクテッドテレビ/インターネット接続テレビ、Netflix、AmazonPrime Video、TVer等々)をどう活用していくのかがひとつのトレンドです。

もうひとつ押さえておきたいのは、決済、およびポイントのプラットフォーマーの存在感が高まってきたことです。

5番目が「ソリューション」。小売事業者が自力で構築が難しい機能についてはデータ整備企業、コンテンツ・クリエイティブ制作会社、UX支援事業者などがサービスを提供しています。ここも相当に玉石混淆の状態でしたが、サービスレベルの高い事業者が選別されてきた感があります。

アプリ、サイネージ、効果計測、配信など、中小企業も多いなかで、リテールメディアとしての条件を兼ね備えたソリューションができてきました。加えて、それらが多様化されているので、この領域では小売事業者から見ても、様々な価値を受けられる企業が増えてきたと思います。

日本のオフラインリテールメディアには高い競争力がある

藤田 リテールメディアカオスマップの作成背景で、支援事業者が小売からデータを預かったのはいいが広告出稿するメーカーが見つからずに小売バイヤーが関与せざるを得なくなった。このようなケースが散見されて、うまく事業が前進しなかったというお話がありました。

もうひとつは、小売が自ら主導してリテールメディア事業を展開する場合、商談の力関係で媒体の売買が成立するというケースも見られたと思います。本来、小売とメーカーが協業しながらつくり上げて、お互いが成果を受けるべきなのに、メーカー側の利益が十分確保できないという状況もありました。

この反省を踏まえて、例えば、支援事業者にいきなり効果を期待するのではなく、効果の定義からまず話しましょうといった、中期的視点で取り組もうという機運が、この1、2年で醸成してきたように思います。

とくにメーカーのなかでは、リテールメディアの担当者を決めるのも難しいことでした。広告なのか、販促なのか、という議論が行われているように思いますが、リテールメディアは両方の特性を持った新しいメディアです。広告として認知を取り、販促として購買につなげる。これが一気通貫でできます。ただ、予算の組み方が広告か販促か決まっておらず、どちらかというとメーカーの営業部が対応することが多く、そうなるとリベートとの違いが曖昧になってきます。

ここ1、2年でメーカーがリテールメディアの部署をつくり始めて、新しい予算を執行するケースが間違いなく増えてきました。

内山 アメリカでは、広告費、販促費、リテールメディア費と予算を3つに分けているメーカーが非常に多くあります。外資系のメーカーは同じような考えを持っているので、日本メーカーもそれに学びつつあるのではないでしょうか。

藤田 日米比較で言うと、リテールメディアを展開している領域もアメリカはオンライン中心で日本ではオフラインが中心です。成熟度という観点から見れば、アメリカの進捗状況の半分程度でしょうか。ようやく効果計測が始まった段階です。この完成度が上がると市場成長には勢いがつくでしょうが、短期的な売上だけでよしあしを判断すべきではないと思います。

内山 おっしゃるようにアメリカはオンライン主流で広がっていき、オフラインも1兆円くらいの市場になっています。日本には正確な市場の定義はまだありませんが、恐らく1,000億円くらいで、市場規模で1桁違います。経済規模で考えてもまだ半分弱くらいの感じでしょう。

ただ、オフラインのコミュニケーション手法としてアメリカと日本でどちらが優れているかというと、日本が相当に優れていると感じます。この分野においてアメリカに展開可能なものもたくさんあると思っています。

オフラインの効果計測の仕組みだとか、オフラインで実際にユーザーに配信する、ショッピングカート、デジタルサイネージの置き方、一つひとつを見ても、かなり洗練されています。非常に細やかで、その辺りには大きな競争力があります。

藤田 本当にそのとおりだと思います。日本のおもてなし、接客文化をデジタルに載せたときに、この競争力は国内だけにとどまらないでしょう。このソリューションを持ってアジアや欧米へ輸出していく可能性は十分にあります。

購買データの共有意識に大きなずれがある

藤田 リテールメディアカオスマップの中にもあるデータが、リテールメディアの中心的な役割を果たす部分だと思います。データを集めて活用するにあたって、unerry様がどのような取組み、役割を果たしているかを教えてください。

内山 私たちは、本質的には“メジャーメント”のプレイヤーであると自らを位置づけています。unerryでは提携する100以上のスマホアプリを通じて位置情報に基づく人流データを取得しています。これと連携して、例えば、自社アプリだけでは得られない、他店での購買データも取得できる仕組みを整えることができます。人流データと購買データの両方があれば、小売アプリを持っていないユーザーの購買状況を捕捉できます。ターゲティングのボリュームを大きくすることが可能になり、それに伴う効果計測ができます。

藤田 リテールメディアに限らず、デジタルを使った施策は効果を可視化して、改善することが大前提です。そこが一番の持ち味だと思います。unerry様のようなプレイヤーが客観的に効果を可視化してくれることは重要な役割です。

データを活用して計測して、次にもっとよくしていくという機運が業界全体で盛り上がっています。一方でデータを活用したいが、思いが空回りする、なかなかうまくいかないといった相談もあるかと思います。内山さんから見て、データ活用のボトルネック、ここは気を付けた方がいいという点はありますか。

内山 いろいろなレベルの話があると思いますが、一番ずれているものがあるとすると、小売各社のデータを活用するにあたっての意識だと思います。メーカーのリテールメディア予算は特定の小売業だけを対象にしたものではありません。本来、小売各社のデータ横断で、商品の売れ行きや購買行動を計測すべきものですが、小売企業からすると自社データをいかに活用するかがテーマになっており、横断的に使うためのデータ整備や許諾が難しい。この状態が続くと、リテールメディアの効果計測は限定的になるので、これを育てたい小売事業者にとっても好ましいことではありません。

unerryの人流データは、独自のIDに基づいて全小売の一定のボリュームを来店計測しているので、モバイルIDがなくても購買データが取得でき、小売業横断の仕組みがつくれます。それを小売が許諾するかが大きな問題なのです。

〜次号へ続く〜

この後、リテールメディアにおけるデータ活用のポイント、活用するために許諾を得るうえでの注意点などを、月刊マーチャンダイジング2024年8月号ならびにMD NEXTにて引き続き内山氏と藤田氏の対談のなかで紹介します。

 

《取材協力》

株式会社unerry
代表取締役社長CEO
内山 英俊氏
サイバーエージェント
協業リテールメディア部門統括
藤田 和司氏

Genky DrugStores 2024年6月期決算発表レポ「自前化の徹底で強固になるローコスト経営。坪当たり経費は低水準をキープ」

月刊MD2024年10月号は恒例「ドラッグストア白書」特集。本稿では2024年8月1日に開催されたGenky Drugstoresの2024年6月期決算発表会のレポートをお届けする。月刊MD本誌では本内容をよりタイパ良く読めるレポートを掲載している。(談・文責/編集部)

既存店昨対が好調 消費者の高い節約志向が客数増加に直結

財務IR部長 常見氏:24年6月期の実績振り返りということで、売上高・客数・客単価の前年対比の推移をご覧ください。

左側上のグラフが、売上高の既存店昨対の3年間の月別のトレンド、濃い青色のものが本年度になります。下が客数及び客単価の月度別の推移です。

今期を通して、特に生鮮食品や日配品が非常に強い集客を促し、昨対を牽引いたしました。仕入れ高の価格高騰は続いていますが、これによって1点単価は通期で4.9%増加いたしました。お客様の節約志向は非常に強く、これによって買上点数自体は2.8%減少いたしました。

しかしながら、トータルで見てお客様の節約志向が強まったことにより、例えばスーパーで週4回買い物をしていたうち、1回はちょっとゲンキーで節約しようかというマインドが強く働いたと想定をしておりまして、客数が通期でも既存店プラス4.7%という結果でございました。結果として、既存店昨対は通期で非常に強い、プラス6.7%を達成いたしました。

第4四半期の会計期間の前年比です。数字についてはご覧いただいた方が大半かと思いますので、割愛をいたします。粗利高が昨年に比べて、0.1ポイント高まったというところですが、これについては、いわゆるロスの改善であったりリベートであったり、ちょうど昨年の第4四半期に富山県小矢部市に富山小矢部RPDCという大型の物流センターを1棟建てたこともあります。そのイニシャルコストで約1億円弱がかかっており、これが仕入れ原価に入っておりますので、昨年はその分押し下げ要因になっておりますので、今年はそれらがないということでプラスに働いております。

一方、販管費が大きく下がっております。こちらは主に電気代、次いで人件費の2つが大きく寄与しております。特に電気代については一昨年、原材料と合わせて非常に高騰して異常値でしたが、それが国の補助金などもあわせて一部沈静化したこともあって大きく下がりました。セルフレジ導入等々については、後ほどの藤永の説明のところでもご説明をいたします。

売上高は期初計画を上回る

結果として、通期の売上高については1,848億6,000万円と、期初予想では1,800億円を見越していたところから48億円上振れという結果でした。粗利については概ね去年と同等でした。販管費は、先ほど申し上げたとおり主に電気代がぐっと下がりました。これは自助努力ももちろんありますが、やはり国の補助金と電力単価が下がったという影響も多分に含まれております。結果として営業利益については90億1,500万円ということで、営業利益率4.9%を達成いたしました。 新規出店は31店舗、閉店は7店舗で、純増24店舗でした。

四半期会計期間ごとのトレンドです。粗利益率については概ね20%強でコントロールができ、さらに経費をしっかりと抑制できました。これは後ほどまたご説明もありますが、1店舗当たりの売上高、坪当たり売上高がしっかりと上昇したということがあって経費率が下がったというところです。

ドラッグストアの他社も含めた粗利益率、販管比率の四半期ごとのトレンドです。他社さんのお名前を消して開示をしていますが、業界のことをよくお分かりの方は色でなんとなく判断されるかなというところでございます。我々としては、やはりコスモス薬品さんのPLのモデル、粗利益率20%、経費率15%というところを目標にして、現在その水準で概ねコントロールができています。

続いて営業利益率の各社トレンドです。今期経費がしっかり抑制できているということで、直近2年間においてはしっかりと営業利益率は上昇しています。ただ、ここから6%、7%を我々は目標としているわけではなく、現在のモデル、営業利益5%程度を1つの目標としながら、しっかりと出店を加速させていくことで成長させていくことを我々の考え方の軸としております。

坪当たり営業利益高が向上 従業員1人当たりの守備範囲も拡大

主要経営効率の推移でございます。この表の一番上、坪当たり売上高のところをご覧ください。

昨年、2023年6月期においては坪当たり売上高が118万円でしたが、今期通期においては127万円と、1点単価の物価高などもございましたが、10万円しっかりと上がっております。これはイコール1店舗当たりの売上高もしっかり上がっているとご理解ください。

上から3つ目、坪当たり販管費。こちらは去年と同水準の19万7,000円でしっかりキープできました。この2つによって、坪当たりの営業利益をしっかり確保することができました。これらに大きく寄与しているのが、その下、従業員1人当たり売場面積です。

いかに少ない人数で店舗オペレーションをコントロールできるかということを非常に重要な指標と我々は考えており、この1人当たり守備範囲とでも言いましょうか、こちらも昨年の33.6坪から34.2坪としっかり増加させています。これついてもカテゴリー納品という物流体制の見直しであったり、セルフレジの積極的な導入といったことによって店舗の質、お客様に迷惑をかけないような形で1人当たりの売り場面積を拡大させているところです。

今期の粗利率は前期と同水準をキープ

今期、25年6月期の業績予想です。売上高は2,020億円を計画しております。既存店昨対は3.3%を計画しております。粗利益高ならびに販管費、営業利益、いずれも率としては今期と同水準を維持することを念頭に置いています。粗利を無理して上げることも下げることもなく、前年と同水準でキープをしていきます。

当然販管費の状況を見ながらというところですので、もし販管費がさらに抑制することができれば、粗利率についても調整して、よりお客様にディスカウントをアピールすることも考えておりますが、今期、先行して粗利を下げるようなことは考えておりません。結果として営業利益については100億円、営業利益率5.0%を目標としております。

EPSについては、本年6月21日に株式分割を行っておりますので、これを期末に行ったと前提して記載をしております。EPSは230円39銭、昨年が208円21銭に対して、こちらも10%程度増加を考えております。

新規出店は49店舗、閉店もほとんどがスクラップ&ビルドですが7店舗ということで、昨年の31店舗から大きく加速をさせております。純増でも42店舗増です。

売上高の既存店昨対は、上期4.0%、下期2.7%で計画をしています。下期の方が昨対が低いのは、前年のハードルというところもありますので、この辺りを調整した結果、少し上期の方が高い傾向です。

粗利、販管費などはそれほど大きな差をつけているわけではありません。販管費の下期が高いのは、我々の下期に4月、5月、6月があり、いわゆる新入社員の入社で人件費が上がっていくところです。4月の新卒は440名の採用を現在計画していますので、その分の一括採用費が追加されるところです。

新規出店もやや下期に寄っていますが、少しずつ通期でならして、過度に下期に負荷がかからない形で出店を続けてまいります。

14ページは過年度5年間のトレンドですので、ご参照ください。また今期から、決算補足説明資料を出してほしいということがございましたので、ホームページにも、特に販管費の分解をした内容を5年トレンドで載せております。人件費、設備費等々もまたご参照ください。以上が数字の振り返りでございます。

投資キャッシュフローの大半が新店と新規物流センターへの投資

キャッシュフローコントロールですが、これを作ったきっかけとしては、投資家さんとのお話の中でフリーキャッシュフローの話題が出るためです。当社の見た目上、フリーキャッシュフローはずっと水面下です。営業キャッシュフローよりも投資キャッシュフローの方が大きいトレンドが続いておりますので、いつプラスに転じるんですかという議論などがございますが、この辺りについて我々の考えをご説明したいと思い、このスライドを作っております。

当社の投資キャッシュフローの95%は新規投資または新規の物流センターへの投資であり、あまり既存のリプレイスというものではございません。これら全てを我々は成長投資であると考えております。したがって、これらの投資は全てEPSの成長に繋がっております。今後のコントロールとしても引き続き、営業キャッシュフローに対して、新規の投資キャッシュフローについては1倍以上という積極的な投資スタイルを貫いてまいります。

これらのキャッシュについては当然、自分たちの営業キャッシュフロープラス金融機関様からのお借り入れを中心に、しっかりとレバレッジを効かせた成長投資を継続してまいります。したがって、引き続きフリーキャッシュフローといういわゆる見た目上の計算はマイナスになる傾向ですが、これらについてはしっかりと1.5倍以上にならないようにコントロールをして、自己資本比率については過度に毀損させないようにしてまいります。

この1倍から1.5倍という意図については当然、自己資本比率が過度に毀損すれば、その資本を増強するために公募増資であったり資本を何がしかでテコ入れする必要が出てきますが、我々の安定水準という意味では、自己資本比率は30%から40%程度あたりを安定的な水準と考えております。

逆に50%、60%になってくると保守的すぎると考えており、40%程度であれば安定的、30%を切るとさすがにちょっと薄いねというところでございます。これらのコントロールから言うと、投資家主導が先行しすぎてしまうと、こちらの薄い赤の点線のところ、1.5倍を超えるような投資になると、どうしても自己資本が弱くなってまいります。ただ1倍から1.5倍の間でコントロールができれば、自己資本は安定して少しプラスに転じるような状態ですので、この辺りはあまり心配なされる水準ではないとご理解ください。

この辺りでコントロールすることによって、ROEについてもしっかりプラスに転じることができます。昨今話題ですが、株主資本コストについてはかなり保守的に見て8%、おそらく普通に計算すれば、当社の水準でいけば5%強だと考えておりますが、少し固めに見て8%で見たとしても、直近のROEについては平均でも12%程度をキープしております。ですから、今後も引き続き、純利ということもありますので、その年度の特別損失などによってブレは生じますが、3年平均を取っていけば安定して4%以上のスプレッドはキープできると考えております。

ここもやはり自己資本比率をこの程度でキープをしながらレバレッジを利かせた成長というところが重要になってまいりますので、この辺りを非常に重要なコントロール水準と考えております。

それらによってEPSの成長10%以上を今後も続けてまいります。EPS成長率、CAGRですが、12.8%を維持しております。 これは一重に、先ほどの成長投資も兼ねてですが、当社の生活必需品に特化したディスカウントというモデルが顧客に受け入れられている証拠であると我々は強く確信しております。

今後も、例えばインバウンドであったりに囚われることなく、引き続き地域の皆様にディスカウントを通じて社会貢献をするというビジネスを貫くことで、10%以上のEPS成長を続けてまいります。

以上、簡単ではございますが、昨年度の実績並びに財務方針でございました。ここからはご説明を弊社代表の藤永にバトンを渡しまして、どのように今後我々が成長していくのかについて説明したいと思います。

客数をいかに伸ばせるかが成長のカギ

代表取締役社長 藤永賢一氏:社長の藤永です。ここからは一部補足させていただきながら、戦略問題に入っていきたいと思います。

客数、客単価、1点単価、買上点数の関係ですが、1点単価の上昇が前期プラス4.9とありましたが、これは今後は多分もう伸びてこないだろうと思います。

物価高も随分落ち着いてきて、今月の食品を中心とした値上げ品目も随分少なくなってきております。よって1点単価は伸びず、買上点数は少し下がり気味ですが回復してくるだろうと思っています。それで、客単価が横ばいか少し下がるぐらいになるだろうと見ています。そうすると既存店昨対は通常に戻るというか、客数の伸びに非常に引っ張られる状況になるのではないかと思っております。ここの客数をいかに伸ばすかが今後の戦いではないかと考えています。

我々は地方で商売しておりますので、実質賃金は地方を中心にやはり目減りしているというところで言うと、客数を伸ばす、節約に応えるというところが非常に重要ではないかというコンセプトです。

売り上げが7.6%伸びる中で経費が2.8%しか伸びなかったというところが非常に効果が出ていると思います。電気代だけではなくて、労務費のローコストオペレーションシステムといったところも寄与しているところです。

また、粗利の結果が20.4%で、経費率15.5%。これはどれを目標にしているかと言いますと、本来は20%と15%でしたが、電気代が上がりかかった一昨年から、20.5%と15.5%というふうに我々の目標値を変えております。

粗利益率について、コスモス薬品さんのここ1年半のディスカウント戦略がありまして、当社の方が粗利益率が少し上回りました。一時並んでいましたが、今は0.5%ぐらい、あちらが下がっています。かと言って、隣の経費率は当社の方が下回っているということで、ここが非常に重要です。どちらのグラフが大事かというと、右側の経費率のグラフの方が重要だと考えております。こちらについては、0.7%程度当社の方が経費率が低いというところで推移しています。

過去の推移ですが、2020年度にディスカウント強化で粗利益率が落ちて、営業利益率が2%台までダウンしました。ここでEDLPの浸透をじっと我慢をしたところですね。じわじわとお客様が、毎日安いならじゃあ行こうかということで増えてきました。

21年に営業利益が1回5%にタッチしていますが、ここは巣ごもり消費やマスクの特需で一旦上がったもので、実力ではありません。本当の実力は、2022年以降にじわじわと営業利益率が右肩上がりになってきて、業界で最低の粗利益率の割に、利益率はトップクラスにタッチすることがようやくできてきました。

小商圏でも勝ち残る店舗の仕組み作りに注力

では、戦略的な内容に入っていきます。先ほど申した通り、実質賃金はまだマイナスで、特に地方の中小企業を中心に二極化が起きているのではないかと考えております。我々のディスカウンティング戦略では、景気が良くてもディスカウントですが、ますますトレンドとしては合っているという風に考えております。それが21ページに書かれていることです。

ドラックストア1店あたりの人口がどんどん下がってきていて、お膝元の福井県では4,000人を割っています。よって、より小商圏フォーマットに切り替えていかなくてはいけない。そうすると、薬や化粧品の構成品が当然下がってきて食品が上がってきますが、ここをどうマージンコントロールするかがこれからの大きな課題になってくると考えております。

こちらにEDLP、小商圏の高来店頻度の店という我々の考えが書いてあります。エブリデイでご来店いただかないとエブリデーロープライスは効き目がありませんので、高来店頻度というのが非常に重要です。それが小商圏に繋がり、同じ名前のお客様が何度もご来店いただけるというお店を作っていきたいと考えています。

そのためのローコストオペレーションで、業界最低の坪当たり経費、または売上高対経費率というものを作って、それほど売れていない状態でも儲けをちゃんと出すというところも小商圏フォーマットの重要な局面であると思っております。

よって、7,000人、5,000人を割ってというような小商圏の中でも高速出店が可能なフォーマットを作り上げていくことが重要だと思っております。それには、食品構成費が上がってHBが下がってくることにいかに耐えうるかが我々の大切な局面であると思っております。

完全標準化されたローコストな「レギュラー店」が大半

こちらにはレイアウト図を紹介しています。レジの内側がちょうど正方形です。歩く距離の割にはアイテムSKU数をたくさん置くことができるという物理的なレイアウト理論に則ったタイプになっています。これを完全標準化して多店化をしていまして、今のところ89%のお店がこのレギュラータイプです。完全同一レイアウト、同一寸法です。

レジと入口がこの図面だと右側ですが、左側から入るお店もありますので、その場合は鏡写しに全てなっています。よってその2パターンのみという完全標準レギュラー店で、出店がしやすくオペレーションも1本で単純化できるというメリットがございます。

「近所で生活費が節約できるお店」というコンセプトで、近所ということは小商圏、生活費ということはデイリーニーズだけ、消耗品だけをお店で扱っていく、それでディスカウントしていくということが表されています。

一般的なドラッグストアとの違いは、この7,000人という商圏人口に大きく表れております。普通のドラックストアですと、調剤を含めて薬と化粧品の構成費を確保して、粗利益率を25%から32%確保されているようですが、そうすると薬、化粧品の需要から言っても7,000人では運営できない。では少ないHBの中でどう利益を出すかというところが特徴になっています。

他社さんは接客販売をやっていますが、当社はやっておりません。他社さんは調剤をやっていますが、上場ドラッグでは当社だけが調剤をやっておりません。それからEコマースも他社さんはやっていますが、当社はやっておりません。完全にこのR店1本という形になっています。

続きまして、店内動画を投影しますので、店内をご覧いただきたいと思います。

~以下動画を投影しながら解説~

入って正面は薬のレーンになっています。入口は風除室を設けており、北陸地方などの風雪に耐えうるように作ってあります。右に折れてまっすぐ行くと雑貨、食品とつながって、あくまでもHBが第1通路になっています。

食品の構成費は69%まで達してしまいましたが、通路は11通路のうち3通路だけです。パンについてもこのような平台でバラエティ販売を行っています。突き当たりが自社製造の総菜コーナー。当然バックヤードでの製造はございません。その隣に青果・精肉、それからデイリー日配、冷凍食品とつながっています。主に豚肉、鶏肉がメインで、牛肉は少なくなっています。和日配がきて洋日配。

これが11番通路で、最終通路ですね。通路幅も通常の通路よりも広くとっております。これも全部標準化された通路幅です。突き当たりから冷凍食品になって、300坪のドラッグストアでは非常に広い冷凍食品売場になっています。当然この本数も全く同じです。以上です。

~動画終わり~

物流センター・プロセスセンターでフード&ドラッグを自前化

当社の特徴は、物流センターとプロセスセンターという間接投資を重視している点にあります。よって、店頭で発見する当社の特徴は半分、残り半分は見えないところにノウハウ、仕組みが隠されていると思っていただければよいと思います。

ご覧の写真のように、スライス肉、これはちょっと高度な機械を入れなくてはいけないのですが、それからおにぎり、海苔巻きも直巻きも自社で製造しております。炊飯器も最新の単釜式炊飯器を入れて、これは岐阜県と富山県の2か所のPCで製造しています。子会社のゲンキー食品が担当しております。このゲンキー食品は当社にしか卸しませんので、他社にお惣菜を販売することはございません。3つ目は、28年に愛知県内に計画をしております。

自社製造ですので、毎週、毎月商品の見直しを図ってブラッシュアップを常に行っています。万が一数字が悪い商品があったらどんどん差し替えたりしてレベルアップを図っています。それから品質管理についても徹底して行うことができます。

こちらはそれらの商品です。最近出たサンドイッチは、コンビニエンスストアに負けない品質と、価格は100円から150円安い価格を狙っております。去年、私は仕入れでサンドイッチをやっておりまして、自社製造に切り替えたところ、1.5倍以上の売り上げになっています。

それから夕飯需要をキャッチするため、149円の小鉢お惣菜にも力を入れています。北海道のセイコーマートさんの売場でいろんなことを学ばせていただきながら作っております。お惣菜は199円、お弁当は298円が上限です。それ以上高いものはありません。198円もございます。

生鮮の鮮度管理はスーパーマーケットレベルに近づく

鮮度管理を自前でやるというのは、非常にドラックストアにとってはハードルが高いのですが、なんとかスーパーマーケットの鮮度管理に近づくことが最近できてきたと自負しております。納品時間も短くし、コールドチェーンという形で温度管理も徹底をしております。

先ほどの動画であった菓子パンの平台がこういう形ですが、この79円、89円、99円というコーナーがあるだけで、今日何のアイテムが入ってくるかは全く定番がございません。よくドラッグストアだと定番に同じパンが毎日来るのですが、それではお客様が飽きてしまうだろうということで、当社は、どんな商品が来るかわからないけど、低価格の一律コーナーという形でお客様にご提供していくということで、食パンを含め、いまだにパンの昨対はプラスを続けております。

スイーツも飽きてしまう典型ですので、コンビニエンスストアと同じように定番がありません。コーナー化してあるだけで、ここにいろんなバラエティに商品が納品されていきます。発注は本部で行って、お店側はそれをバラエティに並べるだけという形になっています。

PB商品は最低価格のものしか作らない

こちらはプライベートブランドの一覧です。このようなお菓子からパイプクリーナーまでやっております。特徴はボトムプライスライン主義という形で、常に最低価格のPBしか作りません。他社と比較しても当然低い価格。これは安いというよりも低いという表現の方が合ってると思いますが、左寄せボトムプライス。

よって、プレミアムPB、NBと同じかそれ以上に高いPBを売っている小売業が多い中で、当社は徹底して、インフレであろうがデフレであろうがボトムプライス主義ということで、商品構成グラフ左寄せという形を徹底しております。これはPBだけではなくて、NBも同じです。

それから、食品部門の構成比がどんどん上がっていく中で、いかに粗利益率を20.5%にキープするかについては、このPBの構成比を上げるというのが非常に重要だと思っています。よって、担当マーチャンダイザーの増員を含め、70%以上に食品構成費がアップしていっても、それは自然に受け入れるという体制を作っていくというのが重要です。マージンミックスの強化であります。

このようにNB品の隣にPB品を並べて、右側にスイッチするライトスイッチングPBが中心になっています。有名品の横に当社のPBが並ぶのですが、よく見ていただくと売価の種類が少ないというのを特徴にしています。

よって、プライスラインと申しますが、非常に買いやすい。プライスの数が多いとお客様の買い物が単純ではないという形になりますので、この点をPB、NBも含めてですが、我々の特徴としています。

PB売上構成比は約30%に到達

PBの構成比を上げないと食品構成比の拡大についていけなくなるということで年々上げていますが、これは数量構成比だと30%、3個に1個はレジでPBが通過していくというイメージになっています。そうするとお客様は、それを買うにはゲンキーに行くしかないということになって、節約とPBの差別化という形に繋がっておりますので、客数のアップに寄与していると言えると思います。マージンミックスも当社の方で図られていると思います。

自前化により成熟するローコストオペレーション

次はローコストオペレーションですが、ここが非常に重要なテーマになっておりますので、これも間接投資、自前化していくことによってどんどんローコストが進んでいます。サードパーティーロジスティックでやったり他のことも丸投げしていくと、どんどんコストが上がっていってしまい、コントロールもつかなくなってしまいます。

集中エリア出店もプロセスセンターを通じたエリア戦略になっておりますので、20も30も都道府県を広げていく他社と比べて、当社は5つの県に集中し、このエブリデイローコストという仕組みを堅持していくという形になっています。

グラフの下の方にある20万円近辺をキープしているのが坪当たり経費ですが、これはもう業界ナンバーワンに低い。20万円というと、中には倍以上の坪当たり経費、坪あたり20万円の家賃を払ってるところさえあります。よって、全経費で20万円というのは驚異的な低さであり、これが売価競争、EDLPの原資になってると思います。

それからここには載っていませんが、先ほど本部人員も入れて1人あたり30何坪となっていましたが、店段階ではなんと50坪。これはホームセンター業界に近い1人当たり守備範囲の広さですので、ここも特筆できることではないかと思っています。

それから、チラシ販促は年に4回だけという形で、波動をなくしてサプライチェーン全体の安定化、平準化を図っております。先ほどから申しているように標準化されていて、本部主導でのオペレーションの指揮・コントロールが成り立っていますので、店段階、店長段階でのばらつきはほとんどありません。

接客もしないし販促もかけないということで、殺風景なお店ですが、よく見ると安いということを追求していきます。セルフサービスの基本という形ですね。

来年夏には全店でのセルフレジ化を目指す

セルフレジにしてさらにコスト削減を図るという形で、現在3分の1まで進んでいますが、来年の夏までに全店セルフレジ化していきたいと思っています。

昨今、セルフレジでは万引きが増えるのではないかという問題がアメリカを中心に話題になっており、有人レジに戻している会社さんも増えている中ですが、当社は2年間にわたり実験をした結果、不明ロスについては悪化しないという結論が出ました。

その対策を、カメラ等を含めて徹底して行うことによって人件費の削減を図り、年間5億円のコスト効果が出ると考えています。今のところ実施店舗についても、実地棚卸しの結果、不明ロスについての拡大は見られておりません。さらに1人当たり売り場面積が拡大し、坪当たり経費が削減されるセルフレジの導入という形を進めています。

店舗作業を効率化し生産性の向上につなげる

物流センターを活用して通路別納品をやっております。これによって、店内の作業動線、歩く歩数が減って品出しスピードが上がっていくというものでありますが、全く同じレイアウトなので物流センターでこういうことが可能でありますが、他のチェーンでは、店ごと・通路ごとにカテゴリーが違いますので、これができません。よって、右往左往しながら品出しをしている風景によく出くわします。

当社の場合は、その通路に入れば、左右の動きは多少あるにしろ、別の通路にわざわざ出かけていって戻ってきたり、1つの商品を持ってうろうろしたりというようなこともありません。

コンビニエンストアのように(冷蔵ケースの)後方から飲料、小ペットボトルなどを補充しています。こういったものはドラック業界ではありませんし、全店共通の作業計画書による作業業務の標準化も本部一括で行っておりまして、時間になると工場のように何々をやってくださいという店内アナウンスが流れます。そのような形で工業化、IE化も進めています。

当然、人手不足の時代ですから、こういったところも起用していっております。ここに載っている1人当たり売場面積34坪は本部人員も物流センターの人員も全部入れた数字ですので、店段階では先ほど申したように50坪という形になっております。

店舗開発部を不動産会社に 加速する出店戦略

基盤インフラが準備できたあとは出店するだけという話になりますが、今後の出店をどのように加速させるかは重要なところでございます。

出店エリアは47都道府県のうち5つに集中しています。集中する理由は、当然、県別シェアを上げていくという狙いがありますし、物流拠点からの平準化、標準化されたSCMの構築というものが主旨でありますが、ドミナント効果によるお客様への信頼を高めていくという効果も狙っていきながら、県別の店舗数売上でドラック業界1位を狙っていくという考えでございます。

一昨年から滋賀県に出ていますが、競合他社さんも、ゲンキーさんは出たら1位になるまでずっと出し続けるんですよねと言われていますので、それに応えなきゃというふうになっております。

左は店舗開発部をゲンキー不動産という会社にして、今100名体制で出店強化を行っていることのご紹介です。一時使っていたダイワハウスさんなどのデベロッパーも完全に離脱しまして、少しそのことによって出店数が停滞したここ2、3年でしたが、ようやく自前地上げ方式で50店体制に達成できるようになってきました。

この後は年100店というのが1つ目の目標ですので、さらに中身及び人員の強化を行い、年100店、来期は少々難しいですが、再来期あたりを狙っております。来期はその中間の7、80店という形で出店の加速を図り、色々準備してきたことを成し遂げたいと思っております。

高額デベロッパーを使っていませんので、将来にわたっても地代や不動産費について非常に他社より軽い状態です。ここが重いと、坪当たり経費を減らすことに限界がすぐやってきます。当社は名古屋市内でも、店当たり地代は150万円上限という形でやっています。

デベロッパーから持ってくると青天井の地代が請求されますし、ただでさえ今は鉄骨が上がっていますので、さらに高い建築コスト、5年前に比べると2倍ぐらいの建築コストに現在なっております。当社は全店入札方式になって、今でも25%以上他社さんより安い建物で運営できています。

さらに地代も安いということで、ここについてはローコストに大きく寄与しています。ゲンキー不動産で100名、この人件費はあっという間に元を取ってしまうぐらい差があります。ここはさらに強化をしていきます。

今後はそれを100名体制に増強していきます。少し上がったり下がったりするのは、向き不向きを確認しています。やはり営業職ですので、少し向いてないなという方については半年か1年で店舗や本部に戻しておりますので、多少前後しながらですが、残った人員は先鋭部隊となっておりますので、当然少しずつ出店数も増えてくるという形です。

業務範囲も土地の契約に特化していきます。今までは新店準備、開店以外は全部本人がやっていました。もっと業務を絞って、契約まで持っていけばもうあとは全部他に任せようということで、新たに建設部を設けて業務移管をしております。このことによっても成約率が上がっていくという形になりますので、デベロッパーに頼らない、社内でやっていくという自前主義の真骨頂だといえます。

高来店頻度につながる「レギュラー店」に完全統一を図る

出店して収益が上がっていかないと、どんどん尻すぼみになってしまいます。初年度は確かに損益分岐点をなんとか超える程度というレギュラー店の平均値でありますが、その後売り上げが伸びていって利益が出ていくという構図になっていますので、EDLPの地域の中での浸透と便利さ、これがお客様の来店頻度に繋がっていく。よって客数が増え、売り上げが増えるということに繋がっております。よってこのモデル店、R店については、お客様に浸透していく便利で安いお店という形で自信を深めております。

始めて丸9年ですが、いまだにずっと年度の売り上げは伸びていっています。既存店昨対が伸びる原因もここにございます。

上記は過去のお店です。黄色い小型店は創業の頃のお店で、30数年前に始めたわけですが、その後、2000年から大型店に挑戦しました。しかしこのままではお客様のショートタイムショッピングニーズにお答えできないということで、レギュラー店を開発し、10年前から取り組んでいます。

これに全部切り替えを図っていって、この小型はもうありませんが、大型店は100店ありましたが、現在は40数店まで減っています。これも早々にR店に切り替えていくという形で完全統一を図っております。

インフラ作りの間接投資はこのRPDCという、PCとDCとTCの3つの機能が入った物流施設がメインでございます。現在は2か所あり、3か所に増やしていきます。そこにハブであるTCを子供に持って、物流体制の2024年問題に対応するために各県ごとに物流センターを作り、ドライバーさんの長期勤務を削除していくという体制で、あまり大きな物流センターを作って中部一帯に走らせるということは当社では考えておりません。

もともと、1センターあたりDCもTCも100店舗という構想ですので、そういう体制ですと2時間で行ける、2時間で帰ってこられるいうものを作っておりますので、今年度から始まった2024年問題は当社についてはそれほど問題にならないという体制を作っております。

最後になりますが、1万店にするというと、100店でも100年かかってしまいますので、もっと加速していく必要があります。当社は、チェーンストア理論の原理原則を米国チェーンに見習っております。ウォルマート、ダラージェネラルなど、アメリカを手本としています。そこを目指してさらに出店を加速し、地域のお客様に貢献していくということが我々のテーマであります。先ほども申したように、店を見学しても真意は理解できないというお店を目指しております。以上でございます。ありがとうございました。