日米DXトレンドは「お客さま中心」へと回帰する

2022年1月、NRF2022–RetailʼsBigShowがアメリカ・ニューヨーク市で開催された。このイベントは全米小売業協会(NRF)が主催する世界最大級の小売業の展示会で、リアル会場では2年ぶりの開催。ウォルマートCEOやターゲットCEOなど全米を代表する小売、ICT企業の重鎮が一堂に会した。今回はアメリカ在住のR×RInnovationInitiativeの近藤典弘氏が大会に参加して感じた日米の現状や課題を5つのポイントに分け解説。サイバーエージェント 藤田氏、CA無人店舗 平川氏と共に語ってもらった。(月刊マーチャンダイジング2022年4月号より抜粋)

パンデミックで加速したお客さま中心の技術

藤田 2年ぶりの会場開催となったNRF2022ですが、現場の雰囲気や熱気はどのようなものでしたか。

近藤 大手ベンダーのなかには出展を控えた企業もあったのですが、ウォルマート、ターゲット、クローガーといった一流大手企業のCEOクラスの方の参加もあり、会場は2020年より混んでいた印象です。

とくに、基調講演、特別有料セッションは2,000〜3,000ドルを支払うのですが、非常に盛況でした。

2021年はM&Aや技術に多額の投資が行われた年なので、それら先駆者たちの取り組みがどのように機能しているかを参加者たちは知りたかったのだと思います。

基調講演、各セッションに参加して強く印象を受けたのは、多くの講演者が「お客さまをすべての中心に据える」ということを反省も含めて述べていたことです。コロナ前からたくさんの先進的な技術を導入していましたが、それが果たしてお客さまに真摯に向き合った上での技術なのか、時代から取り残されたくないというモチベーションによる技術導入ではなかったか、こうした考えが今回の大きなポイントだったかと思います。

パンデミック下、小売業は今まで経験することのなかった様々な課題に直面し、どのような戦略を取るべきかの解が見いだせない状況が長く続きました。そこで起点になったのが「お客さまは何を求めているか」、店舗に来るのは何がモチベーションになっているのか、そこに真摯に向き合わざるを得なくなったのです。ウォルマートUSのCEOジョン・ファーナーはこんなことを言ってました。

NRF2022で講演を行ったジョン・ファーナーは、同社のEC、デジタル事業を推進した立役者の一人

「ある意味パンデミックが小売業の甘やかされた体質を変えてくれた。あのままの体質では新しい業態で乗り込んでくる新規競合企業に勝てなくなっていただろう。たとえば、ウーバーイーツはレストランやファストフードの宅配サービス事業者だが、彼らが物流倉庫に在庫を持って食品や生活必需品を宅配するようになったとき、中小の食品スーパーとの競争が必ず発生する。店に来てもらう意味は何か、そもそも店に来てもらったほうがよいのか、パンデミックで変わったお客さまの買物行動に私たちは真摯に向き合うようになった」といったことです。

大会スローガンの「ACCELE-RATE」には、パンデミックで小売業の変化に加速がついたという背景があります。

ファーナー氏の論法で考えれば、お客様に店舗にお越しいただくのではなく、商品がお客様に向かって動く宅配サービスが、まさに顧客を中心に据えたサービスの良い例だと思います。

各社がデリバリーを強化してこれが普及すると、次の段階として30分以内、15分以内というようにより速く届ける競争になってきました。また。配達する商品のカテゴリーも増えていきました。

宅配サービスは配達時間の短縮競争が限界まで来ていて次はどこで差別化するのか、岐路に立たされています。宅配と並ぶようなお客さま中心のサービスが模索されています。

藤田 宅配に関して言えば、日本における配達の文化は飲食店の出前や宅配便に見られるように、欧米より発達していたように思います。

日本での配達は時間指定とか再配達とか丁寧でキメ細かなサービスが特徴的です。一方で、BOPIS(BuyOnlinePickupInstore=ネット注文店舗受取)に取り組む日本の小売業も出てきていますが、それに関連して店内のピックアップの態勢が十分でない、アプリの使い勝手が悪い、そもそもアプリを開発していないなどの問題があります。取り組んでいない企業もまだ多いです。こういった点は「お客さまを中心に」考えた、利便性を上げるためのチャレンジでしょう。

アメリカで来店と配送の比率、現状はどうなっていますか。

近藤 地域によってまったく異なります。同じ州でも人口の少ない地域では来店してまとめ買いする習慣はまだ根強いですし、都市部に行けば配達やBOPISの比重は高いです。

企業によっても異なる様相を呈しています。ウォルマートは従来どおりのキャッシャー精算もありますし、自動精算機もあり、BOPISのためのピックアップの場所もある。買い方が非常に多彩でレジ周りの風景が他の企業と違います。

また、アメリカでは昨年末、百貨店の客数、売上が伸びました。配達とは違うお客さま心理が働いています。リアル店舗はショールーム化していくという考えがありますが逆の流れですね。この辺りにもお客さまを中心に据えたサービス開発のヒントがあります。

採用難の影響もあり従業員の待遇は改善方向へ

近藤 お客さまを中心に据えるためのひとつの課題が人手不足です。いまアメリカではいくつかの理由で雇用の確保が難しくなっています。ひとつは賃金の高騰です。従来時給13ドルで採用できていたのに、20ドル以上でないと応募がないとか、人件費問題は相当深刻です。

もうひとつは「燃え尽き症候群(BurnOut)」です。トランプ政権ではパンデミック対策のために行った外出禁止、企業の営業停止の救済手段として多額の予算を付けて現金給付が行われました。日本円にして月に15万〜20万円といった金額を受け取っていた労働層が勤労意欲を失ってしまったという現象です。

3番目は若い人を中心に企業の正義や社会貢献性を厳しくチェックする人が増えたことです。環境、人権、地域などに関して問題があると思うとその企業で働くどころか批判の的にされます。こうした観点で小売業からIT業界へ転職する人もいます。

従業員のマネジメントでは、いろいろな例が挙げられていましたが、記憶に残っているのはピザハットやケンタッキーフライドチキンを展開するヤム・ブランズの教育プログラムです。

同社は統計的な手法で、「ある属性」を持つ人たちは成果を出さなければいけないという思いが強過ぎて、下からの意見をあまり聞かないという傾向を発見しました。そういう人たちのために部下から意見や評価をもらう教育プログラムをつくって受けさせたところ成果を挙げたそうです。気づきを与える能力開発には有効だと思います。ちなみに「ある属性」というのは人種やジェンダーに関するもので、アメリカ的な難しさをはらんだ問題でもあります。

また、アメリカには交通費を支払わない企業が多いのですが、それを支給するように改めたとか、子どもがメンタル系の病気になったとき治療費の補助を出すとか福利厚生を改善した事例も多数ありました。

平川 日本でも従業員と向き合うこと、ES(従業員満足)は重要なのに、あまり多くが語られることのなかったテーマだと思います。これがアメリカで大きく取り上げられているのは新しい発見です。

日本ではコロナ禍で保育園や学校が閉鎖されると親が働きに行けないなどの問題が起こっています。リモートワークが定着したのに社会制度やインフラが追いついていないという問題です。勤務実態と現実の乖離といってもいいでしょう。ここはテクノロジーも使って埋めていくべきです。

たとえば、非常に興味深く読んだニュースですが、JR東日本がある駅のホームに今年4月に診療所を開設すると発表しました。内科は対面で、皮膚科、耳鼻科、婦人科はオンラインブースで提携する医師の診療を受けられるそうです。これは現状、医療機関の開院時間と勤務時間が重なっているので多くの日中働いている人が平日診察を受けられないという患者側の問題だけでなく、従業員である医師側にとっても課題解決につながる取り組みだと思っています。

育児や子育て中の医師は、働ける時間や場所が限られるため働きにくいという医師側の課題がありました。こうした状況をオンライン診療という技術も使って、患者側・医師側双方の視点にとってより便利な形に解消していく。法的にもオンライン診療は使いやすい形に向かっていますので、勤労者が諦めていた不便なことが技術や法改正によって解消されていくよい事例だと思いました。

こういった分野はまだまだたくさんあるでしょう。インフラ整備や法改正以外にも、企業の側でも従業員の労働環境を改善する余地はあると思います。

近藤 平川さんの挙げた例に関連していうと、ニューヨークの大きなターミナル駅に特設のワクチン接種会場ができたのですが、そのうちいくつかは常設の診療所として残してオンライン診療を導入する、そういう動きがあります。

また、アメリカの大手銀行バンクオブアメリカなどは、予約を取った上で相談ブースでオンラインによる資産管理や投資の相談ができる無人型の店舗をつくっています。労働環境の改善にもリモートでできることはありそうです。

平川 私もこれまで広告運用支援を行う子会社の経営を行っていましたが、「従業員が創造性のある仕事に取り組むことができる」というのも、従業員の働き方を今後考える上でポイントになるのではないかと思っています。標準化すべき業務に関してはソリューションによって、無人化・省人化し、従業員はより自分の創造性を発揮できる接客などの業務に従事しやすくすると言ったような、「従業員との向き合い方」も一つなのかもしれません。

クローガーが移動販売に進出。自動運転による移動販売も登場

近藤 アメリカの大手食品スーパークローガーは小規模なトラックに商品を載せて地域に出て行くサービスを始めています。公園などに止めてそこで販売しながらお客さんと会話してそれを品揃えに生かすという仕組みです。

また、西海岸のスタートアップ企業が運営する「ロボマート」という移動販売はミニバンに500個程の商品を積み込み自動運転で移動しながら販売するという仕組みです。利用にはあらかじめ専用アプリをダウンロードする必要があり、クレジットカードなどの登録が必要です。

自動運転で商品を運ぶロボマート

アプリ上で近くにいるロボマートを探して指定の場所まで呼ぶというシステムです。地域限定で実験的に運用されていて、完全な自動運転まではまだ至っていません。私が実際に見たロボマートは人間が運転していました。富裕層が住む住宅街をターゲットエリアにしています。

[写真A]韓国企業新世界の無人店舗
写真Aは韓国の新世界(シンセガエ)による無人店舗「SPHAROS(スファロス)」です。AmazonGoのようにカメラと重量センサーを組み合わせて購入した商品を特定して自動精算することで、お客さんはそのまま出て行くシステムです。唯一違うのは店舗を出ると大きなスクリーンがあり、そこに購入した商品のリストが出るところです。

こういう無人店舗や移動型店舗、エコ重視の店舗など「お客さまを中心に据える」ことの方法論として、多数の新しいスタイルの店舗が展示されていました。

平川 確かに、日本国内でも「お客さま中心」に据えた店作りは今後更に増加してくると考えられます。「とにかく過疎化が進んで出店が難しいエリアに、無人店舗を出せないか?」といった相談を受けることが非常に多いです。

移動スーパーの領域では「とくし丸」さんが、各地の小売業と連携しながら移動店舗での生鮮食品の販売を始めていますが、過疎化により出店が難しいエリア等では、「商品数や接客などの面が多少不足していても、とにかくそのとき最低限必要なものをすぐに買える環境をつくる」ことがより重要になる、と考えています。

ECに人系要素をプラス。ライブコマースには大きな可能性

これは、弊社の事業パートナーであるコアサイトリサーチ社のデボラ・ウェインズウィッグが参加したセッションで取り上げたテーマです。彼女は日本や中国の動きも見ながら、動画配信=「ライブストリーミング」や動画配信を起点にした物販=「ライブコマース」の可能性の高さを指摘しています。これがアメリカでも主流になってくると予想しています。

いままでリアル小売業ではECに大きくシフトできなかった。なぜなら、リアル小売業が得意とする接客や商品説明がECではできなかったからです。それを可能にするのがライブストリーミングでありライブコマースなのです。

いまメタバース(Metaverse)という世界があります。これは仮想空間にデジタル的な自分の分身が入り込むことで、もうひとつの世界での生活が生まれることを意味します。旧Facebook社はこの可能性にかけて社名をMetaに変更したほどです。ある調査会社では2026年までに全世界の25%の人が1日1時間以上メタバースで過ごすだろうと予想しています。ライブコマースはメタバースとの相性もよいと考えられています。

アメリカで100年以上続く化粧品の訪問販売エイボン社は全米の田舎町まで至る所を訪問して泥臭い営業を展開することで有名ですが、こうした人系の営業もライブコマースならできるとウェインズウィッグは語っています。

実利的なメリットとして、普通のECと比較して人がオンラインで説明販売するライブコマースは返品率が50%減ったというデータもあります。デジタルに人系の要素を入れる、これも大きなテーマとして取り上げられていました。

ライブコマースによる返品削減効果(イメージ図)

新しい血と伝統的なDNAを融合させた経営を進める

ウォルマート外観

近藤 日本の皆さんが注目されているウォルマートの最近の動きですが、一番の話題はM&A、テック企業を含む買収です。ジョン・ファーナーが基調講演で話していたのは、新しい血を積極的に入れる。同時にウォルマートが長年培ってきたDNAを体現する人材も育成する。この2つのバランスを取っていくということです。

この2軸をいかにコントロールしていくか非常に難しいが、そこは経営者冥利に尽きるといったことも発言していました。ウォルマートの具体的な動きは今回の大会では発表されませんでした。

ネット注文した商品を専用の受け渡し場所でピックアップするカーブサイドピックアップ
ウォルマートのセルフレジスキャンアンドゴー

藤田 ファーナーの視点はそのとおりですね。コストカット、標準化といったチェーンストアが重視するDNAと、投資や自由な発想というDXに必要な要素を人レベル、組織レベルでいかに融合させるかは至難の技で、それができた企業が次のステージにいくのでしょう。

直近のウォルマートにおける大きな動きでいうと、元Jet.comCEOでウォルマートのEコマース責任者だったマーク・ロア氏が退任し、ウォルマートCEOのジョン・ファーナー氏がリアルにおける店舗とEコマース両方を見ることになっています。マーク氏はウォルマートDXの最高責任者でもあったので結構大きな影響があるように見えますが、近藤さんはこのあたりどのように捉えておられますか?

近藤 ファーナー氏は、同社の決算発表会で店舗から店舗へのフルフィルメントが増えており、店舗自体がフルフィルメントセンターの役割も果たしていると述べています。これは、今までのデジタルと店舗の融合というDXの流れから、店舗自体が新しい事業モデルの“主体者”としてDX化を図ってきている大きな潮流だと考えます。マーク・ロア氏が顧客エクスペリエンスをEコマースという業務の中で高めたのと同じように、今後は、事業トップであるファーナー氏が、Eコマースや店舗の垣根を超え、全ての顧客エクスペリエンスに関連する業務のDXについて旗振りをするのは、とても自然な流れのように思います。

藤田 確かに、トップ自らがDXを先導していく動きは今後もさらに加速していくのかもしれないですね。今回近藤さんからお話を聞き、発露の仕方、ソリューションは違うのですが、アメリカと日本は改めて同じような課題に直面していると感じました。本日はありがとうございました。

 

〈取材協力〉

Falkon Team社
代表
近藤 典弘氏
株式会社CA無人店舗
取締役
平川 義修氏
サイバーエージェント
Al事業本部DX本部統括 経営戦略部長
藤田 和司氏

植物の力で低刺激処方をさらに追及。雪肌精から「敏感肌用」誕生

雪肌精は「雪のようにみずみずしく透明感あふれる美しい肌のお客様を増やしたい」という思いを込め1985年に誕生。以来、日本を代表するスキンケアブランドに成長し、その人気は遠く海外にまで及んでいる。2020年には若年層を主力ターゲットに新シリーズ「クリアウェルネス」を発売。2022年3月、そのシリーズから時代の要請を受け「敏感肌用」が誕生する。(月刊マーチャンダイジング2022年3月号より抜粋)

[商品写真左から] ❶ピュア コンクSS 125mL(参考価格:2,200円) ❷ピュア コンクSS 200mL(参考価格:3,400円) ❸ピュア コンクSS 170mL詰め替え用(参考価格:2,700円)❹リファイニング ミルクSS 90mL(参考価格:2,400円) ❺リファイニング ミルクSS 140mL(参考価格:3,600円) ❻リファイニング ミルクSS 120mL詰め替え用(参考価格:2,900円)❼ピュアコンクSSマスク16mL×1枚(参考価格:380円) ❽1Dayトライル2回分(参考価格:190円)

マスク着用で自分の肌に向き合う人が増えた

自分の肌が刺激やストレスに弱く敏感であると感じる人が増えている。実際、敏感肌用のスキンケア市場は2020年対2017年比で17.2%増と大きく拡大している(図表1)。コロナ禍でマスクを着用することで摩擦や蒸れといった問題が起こり、敏感肌を自覚する人は一層増えている。

[図表1]敏感肌用市場

買物行動から見れば、コロナ禍の影響もありショートタイムショッピングやEC(ネットショッピング)のニーズが高まり、商品特徴を短時間でわかりやすく伝える重要性も増している。

こうした背景から、雪肌精ではクリアウェルネスシリーズの低刺激処方であるフリータイプを改良「敏感肌用」として新発売。明確な肌悩みを訴求し、ニーズに合った商品で若年層獲得をさらに強化、より一層の店舗貢献を目指す。

着目したのはうるおいの「運搬能力」

一般のスキンケアは「うるおいをつくること」にアプローチ。新商品ではこれに加えて「うるおいを運ぶ」機能に着目し、うるおいのもとを必要なところにきちんと届けるアプローチで、乾燥などの敏感症状に悩む肌をケア。雪肌精がこだわる植物のやさしさで敏感肌のうるおいバリアをサポートする。既存品と同様、アルコールや香料、合成着色剤は一切無添加。国産ゲットウヨウエキス、国産シャクヤク花エキス、国産ノニ果汁を配合した天然由来の独自成分「イトワ」もそのまま入っている。

低刺激処方をさらに追求し、敏感肌の人でも使用できる商品へと進化(※1)。コーセーが行った調査によれば83%の人がピュアコンクSSをまた使用したいと回答(※2)。使用者の満足感も証明されている。

さらに、環境への取り組みとして、廃棄して焼却される際CO2の発生を抑制する効果(※3)がある「グリーンナノ素材」(※4)をパッケージと店頭サンプルに使用(マスクと1Dayトライル)。これは化粧品業界初の取り組みである。
※1 アトピー疾患の既往歴があるお客様向けに開発された商品ではありません
※2 敏感自覚症状のある方を対象としたアンケート(KOSE調べ)回答者42名
※3 ラボスケールによる実験
※4 樹脂の添加物のこと

商品特長

ネット、SNSから店頭へ誘導する動線強化

スキンケアを購入するとき、重視される2大ポイントは「保湿効果」と「肌への優しさ」である。雪肌精のクリアウェルネスシリーズ敏感肌用は、36年の自然科学研究により植物の効果を最大限生かすことで保湿効果はもちろん、高いレベルの肌への優しさを実現。これをアピールすることで売場での注目が高まる。コーセーでは植物の優しさを前面に出したビジュアルを用意(画像1)。売場やネットを含む販促物で活用する。

[画像1]植物の優しさを前面に出したビジュアル素材

また、若年層は、購入前にネットで情報収集する傾向にあるため、SNS周りの強化はもちろん。ランキングメディア等ECブランドが常連化している媒体で情報発信して店頭へ誘導する導線を強化する。敏感肌用は試すことが重要なのでリアル店舗の優位性も発揮しやすい。テスター、サンプルが用意されているので活用しよう。また、雪肌精には男性ユーザーもいるので若年男性への紹介で可能性も広がる。雪肌精という高シェアブランドの新商品で2022年春夏の化粧品部門活性化を狙おう。

[画像2]植物の優しさを前面に出したボードを使用した売場提案

重要ポイントのまとめ

  • 新成分「モイスチュアナビゲーション成分」配合
  • 高まる敏感肌需要+雪肌精のブランド力で新規客開拓

532店舗の実地調査から分かった店舗の課題と生活者ニーズ 月刊MD2022年12月号の見どころ紹介

12月号の特集は『DgS顧客満足度調査2022』です。ドラッグストア(DgS)の2021年度の売上合計は8兆5,408億円(前年比106.2%)、店舗数は382社2万1,725店舗となっています(日本チェーンドラッグストア協会調べ)。コロナ禍の生活スタイルも定着してきた現在、業態として伸び続けるDgSの店舗運営の状況と生活者のニーズを、今年も500店を超える店舗調査から考えます。その他、実務企画は『食品の利益率を上げる実践テクニック』、企業リポートは『「営業改装」で閉店売上ロスなく店舗年齢を若返り化既存店強化をサポート』などを掲載しています。

月刊マーチャンダイジング最新号の読みどころのご紹介です。

特集「ドラッグストア顧客満足度調査2022」

特集は年々注目の高まる「ドラッグストア顧客満足度調査2022」です。

41企業、532店舗を調査。「店舗設備・クリンリネス」「販売促進」「商品陳列・品揃え」「基本接客・商品知識」「レジ対応」など7分野計46設問で調査しました。

最後の「この店での買物を知人に勧めるか」という設問には0〜10点で答えてもらい、これは「総合満足度」と呼ばれ最も重視する指標です。

各設問、この「総合満足度」に与える影響度を「総関係数」として計算、46問中もっとも総合満足度に影響を与える(相関が強い)のは「この店で日常的な買物は済むか」というワンストップショッピング性に関するものでした。つまり、この満足度が高い(ワンストップショッピング性が高い)店程総合満足度も高いということです。

2番目に高いのが「他のチェーンにない特徴、工夫」、3番目がテレビ、ネット、アプリなどで見た商品を店舗で見て購買意欲が高まったか」4番目が「短時間で買物できる仕組み、配慮」と続きます。

生活者は1ヵ所の店で、生活に必要なもの全てを短時間で買物したい。そして、店舗の独自性、オリジナリティを好み、広告の品を店頭で見ると気持ちが上がるという実態が見えてきます。特集ではこうした詳細な分析を展開、企業、店舗のランキングも紹介しています。

実務企画食品の利益率を上げる実践テクニック

その他、店舗を閉めることなく営業しながら全面改装できるシステム「営業改装」、ドラッグストアの食品の利益率の上げ方など実務情報も充実。

地域密着小売業研究「千葉薬品 ヤックスケアステーション、ヤックスタウン」

店舗は地域密着型企業千葉薬品のヤックスケアステーション、ヤックスタウンをリポート。DgS、介護施設、調剤薬局を集約させた新業態です。八川昭仁社長のインタビューも合わせて紹介しています。

ドラッグストア、調剤薬局、介護施設、高齢者住宅が一体となった「ヤックスケアタウン」
ドラッグストア店内には管理栄養士が対応する「街の保健室」を設置

今年も残り少なくなって来ましたが、年の瀬も月刊MDでしっかり情報収集!

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最需要期の年末、売り逃しを防止、チャンスを最大化! 月刊MD 2022年11月号の見どころ紹介

11月号の特集は『カテゴリー別年末売場強化大作戦』です。年末は小売業の売上が上がる「書き入れ時」です。12月の特性をID-POS分析で解説し、その後カテゴリー別に市場や売れ方の動向、強化すべき商品、売場づくりの工夫などを紹介します。チャンスロスを防ぐため、本特集をご参照ください。その他、トップインタビューは『レデイ薬局代表取締役社長 白石明生氏』、特別企画は『ドラッグストア、本気のSDGs』、企業リポートは『フマキラーの開発・研究・情報発信拠点「ブレーンズ・パーク広島」』などを掲載しています。

月刊マーチャンダイジング2022年11月号の見どころ、読みどころをご紹介します。

特集「カテゴリー別 年末売場 強化大作戦」

特集は「カテゴリー別 年末売場 強化大作戦」と題して、ドラッグストアにとって最需要期、書き入れ時の年末、売れる商品、売るべき商品のカテゴリー情報、売り方、売場づくりの情報をお届けしています。

紹介しているのは「洗濯」「住居用洗剤」「防カビ剤」「軽度失禁」「総合感冒薬」「入浴剤」「殺虫剤」「頭皮トラブル(かゆみ、フケ)」「メイク」の9カテゴリー。

プラスID-POSで購入金額、来店頻度、買われる商品など、年末、年始の特性を分析しています。

少し、ポイントをご紹介!

①住居用洗剤、大掃除シーズンですがエアコンのクリーナーは、冷房使用開始前の5月、6月に売上のピークがあって、大掃除シーズンまだ空白に近い状態、ここを深掘りすれば売上プラスオン。

エアコン洗浄、フィルター奥のフィンにスプレー

②軽度失禁用品は寒くてトイレが近くなる年末、くしゃみが出やすい花粉の時期が売り時。生理期間中の40代以降、活動的な高齢者、男性といった対象に適切な売場づくりでアピールすることが重要。

③風邪薬は2022年8月からV字回復の兆し。いつ熱が出ても対応できるよう買い置き需要が上昇、大容量化などで単価アップも進行中。行動制限を取らないこれからは風邪をひく人や、これに備えたい人が増える見込み。1,000億円からコロナ禍で600億円まで落ちた市場の復調が期待できます。

図表 総合感冒薬(風邪薬)の市場規模と推移

その他、年末強化したい有益な情報をお届けしています!

特別企画「ドラッグストア、本気のSDGs」

特別企画としては「ドラッグストア、本気のSDGs」

日本チェーンドラッグストア協会と、薬王堂さんの取り組みを紹介。

薬王堂さんは返品を減らして店間移動させたり、障がい者のアートを店舗に採り入れたりと、SDGsを意識した事業を行っています。

秋の夜長、月刊マーチャンダイジングで業界情報をインプットしてください。お昼、リモートワークの合間でもぜひ!

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1兆円企業誕生、競争熾烈になる九州エリア 月刊MD 2022年10月号の見どころ紹介

2022年10月号の特集は『DgS白書2022』、新業態リポートは『新生堂薬局 地下鉄筑紫口改札前店』、第2特集は『男の美意識が変わったまこそがチャンス!「男性化粧品売場改造計画」』です。

月刊マーチャンダイジング2022年10月号、特集は恒例のドラッグストア白書です。上場企業を中心にドラッグストアと調剤薬局の財務分析をしています。

特集①ドラッグストア白書2022

売上高ではウエルシアホールディングス(HD)がついに1兆円を突破。

図表1はドラッグストアの上場企業の売上高ですが(月刊MD2022年10月号より)、スギHDより上の6,000億円以上の6企業、ウエルシアHDを除く5企業も5〜6年以内には1兆円突破の見込み、あるいはそれを目指すとしています。ドラッグストアの上位グループの売上は1兆円時代を迎えつつあります。

[図表1]ドラッグストア上場企業2022年売上高

図表2はドラッグストアの売上総利益率(粗利益率)と販管費率をバーの長さで表現したものです(月刊MD2022年10月号より)。

売上総利益率―販管費率=営業利益率ですが、営業利益率が最も高いのがマツキヨココカラ&カンパニーで粗利益率32.9%とこちらも業界トップ、販管費率27.2%こちらも業界最高値、経費を掛けて利益を取りに行くという儲けパターンです。

次に営業利益率が高いのはサンドラッグですが、こちらの粗利益率は24.1%業界8位、販管費率は18.9%低い順に数えて業界3位。粗利も低めだけど、コストを抑えることで利益を残すパターン。各社の儲けのパターンが分かります。

[図表2]ドラッグストア売上総利益率と販管費率

その他、部門別の売上高、売上構成比、商品回転率、交差比率、出退店数など広く、深く業界の財務状況を分析しています。

ちなみに上場ドラッグストアで商品回転率が最も高いのは食品の売上構成比が57.9%のコスモス薬品で9.5回転(年)、365日をこの回転率で割ると同社の平均在庫期間は約56日。

商品回転率の一番低いの調剤・医薬品・化粧品3部門合計の売上構成比が68.4%のマツキヨココカラ&カンパニーで4.4回転(年)平均在庫期間は約83日。

ドラッグストアと一口にいってもこれだけビジネスモデルが違うんですね。

月刊マーチャンダイジングのドラッグストア白書を読めば、業界の数字に強くなること間違いなし!!

特集②男性化粧品売場改造計画

特別企画では男性化粧品の売場改造を提案。
若年男性の肌意識、中高年のシワ、シミ対策意識もアップ。両方から攻め時のカテゴリーです。一般的には女性用として販売しているスキンケア商品を使う男子も急増中です。こちらも読み応えありです!

夏の疲れが出るシーズン、休日や空いた時間はカラダをゆっくり休めながら、月刊マーチャンダイジングでドラッグストア、小売業の情報をゲットしてください。

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【女性2,631人調査】フェムテック・フェムケアに43.7%が関心あり!

月刊MD4月号のフェミニンケア特集では、「生理用品の購入」に関する会員アンケートを実施し、購入動向や、レシート調査による購入商品を分析しました。今回「このカテゴリどこで買う?」では、女性が生理前や生理中に感じる心身の不調や女性特有の悩みを理解し、「フェムテック」「フェムケア」領域に寄せる関心など、女性の率直な意見をまとめました。

アンケートの対象は、20代~60代の女性2631人(平均年齢:44歳)で2022年1月23日~25日にインターネット調査を実施しました。

7割以上の女性が生理前から生理中に不調を感じる

[図表1]生理前や整理中に心身の不調を感じることはありますか

最初に、「生理前および生理中に感じる心身の不調」を聞くと、女性2111人のうち、「生理前に感じる」(77.2%)で、「生理中に感じる」(77.0%)の割合とほとんど変わらず、生理前〜生理中の期間において、何らかの不調を7割以上の女性が感じていることがわかりました。

[図表2]年代別:生理前に感じる心身の不調(複数回答)

次に、生理前と生理中の心身の不調を聞くと、「生理前の不調」は、「イライラ・情緒不安定」(61.3%)が最も多く「腹痛(生理痛)」(50.8%)、「乳房の張り・痛み」(39.7%)「頭痛」(38.7%)、「腰痛」(36.4%)、「肌荒れ」(33.8%)を上回りました。そして「生理中の不調」は、「腹痛(生理痛)」(75.8%)が7割以上で、「腰痛」(43.2%)は生理前と比較すると<+6.8pt>増加し、「イライラ/情緒不安定」(42.1%)、「頭痛」(35.9%)、「乳房の張り・痛み」(19.2%)、「肌荒れ」(24.1%)の不調を感じる人の割合は減少することがわかりました。

[図表3]フェムケア・フェムテック領域に興味関心はありますか?

若い年代ほど関心度が高いフェムテック

続いて、近年「フェムテック」や「フェムケア」といった言葉を耳にするようになり2021年の「新語・流行語大賞」にも「フェムテック」がノミネートされるなど、新しい市場として社会的にも注目度が高まっています。

「フェムテック」はFemale(女性)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語で、女性が抱える様々な悩みをテクノロジーによって解決に導く商品やサービス、「フェムケア」は、Feminine(女性の)とCare(ケア)を掛け合わせた造語で、女性の体や健康をケアする商品やサービスを指し、経済産業省の調査(※)によると、2025年時点の「フェムテック」による経済効果は約2兆円/年と推計されています。
※経済産業省「働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に与える効果と課題に関する調査」

アンケートでは、女性全員に対して言葉を説明した上で、「フェムケアやフェムテック領域」に関して、4割が「興味関心がある」(43.7%)と回答し、「30代 N=835人」では(46.2%)となり<+2.5pt>高く若い年代ほど関心度が高いことがわかりました(図表3)。

[図表4]フェムケア・フェムテック領域で「興味関心」があることをお選びください。

そして、「フェムケア・フェムテック領域に興味関心があると回答した人」を対象に、年代別でその内容をみると、「〜30代 N=386人」では、「PMS(月経前症候群)の解消法」(68.4%)が最多回答で、「生理中の悩みの解消」(53.1%)、「生理周期の管理アプリ」(36.3%)がそれに次ぎ、主に生理に関する悩みの解消が上位となり、特にPMSに関するコメントが多く「PMSが気軽に相談できる場があればよい(20代)」「PMSについては相談したことはないが、解消法があるなら知りたい(30代)」など、PMSがつらいときなど、産婦人科でカウンセリングや治療などが受けられることがあまり知られていない印象を受けました。

そして、「40代 N=422人」、「50代 N=303人」になると、いずれも「更年期障害の解消グッズ」が最も多く、40代(57.8%)、50代(69.9%)と割合は大きくなり、「更年期の症状は個人差があるし、理解されにくいと思う。心構えなどわかれば助かる(40代)」「更年期の時に飲むと良いサプリや、受診した方が良い症状など色々な情報がわかるとありがたい(50代)」といった声がありました。

他にも50代では、「尿漏れ」(39.9%)など、年齢とともに相談しにくいデリケートな悩みを抱えるケースもあり「女性特有の病のオンライン診療」(27.4%)が、他年代よりも回答を集めました。

今回の調査結果から、生理や女性特有の悩みを多くの女性が抱え、生理前や生理中の不調への対処法としては、多くの女性が「何もしない」「鎮痛剤の服用や、身体を温める、ゆっくり休む」などといった内容が多く、「主人に伝えて、家事を手伝ってもらう(30代)」「家族にマッサージしてもらう(30代)」など、若い年代の女性は、身近な家族に理解や協力を求める人もいました。

また、PMSに関しては、自身の関心だけではなく、「娘がPMSに悩んでいるので関心がある(50代)」「娘が月経痛に悩まされているので、生理前からとても辛そうで何か情報が欲しい(50代女性)」といった声もありました。

今まであまり語られることがなかった生理や女性特有の悩みの解消において、政府関連では、20年10月にフェムテック振興議員連盟(会長:野田聖子議員、事務局長:宮路拓馬議員)が発足して普及に向けた規制見直しを進め、昨年3月にファーストリテイリング傘下のジーユー(GU)が、「フェムテック」市場への参入を発表するなど、ポジティブな影響を与える大きな動きが広がっています。

肌トラブル新時代。「売り方」を変えて肌トラブルの新しい解決策を提案しよう!

長期化するコロナ禍。生活環境の大きな変化は、心に対してだけではなく、肌にとっても大きなストレスとなっている。まさに「肌トラブル新時代」といえるこの状況下、ドラッグストアはどのような情報発信を行うべきなのか。くりかえしがちになった「肌トラブル」をなんとかしたいと考えるお客様に向けた売場づくりのヒントを紹介する。(月刊マーチャンダイジング2022年3月号より抜粋)

マスク常用で7割が肌あれをしやすくなった

図表1 マスクと肌あれに関するアンケート結果

コロナ禍において、長引くマスク生活や、ストレスの増加、運動不足などにより、肌あれに悩む人が増加している。資生堂が2021年6月に実施したアンケートによれば、マスクを常用するようになってから7割強が「肌あれをしやすくなった」と回答。また「肌あれが悪化しやすくなった」と回答した人も6割を超えた(図表1)。ニューノーマルは心だけでなく、肌にとっても大きな負荷となっていることがわかる。

治療薬を使うべき症状にスキンケアで対処する生活者

大きな負荷を受けつつ、どのように対処すべきかについては迷いを持つ生活者が多い。

図表2 肌あれの症状別の対処有無と対応方法についての調査結果

図表2の「肌あれの症状によって、どのような対処方法をとるか」という調査結果によれば、「化粧水がしみる」「肌がヒリヒリする」「赤くなる」という程度の肌あれ症状では、スキンケアアイテムを低刺激のものにかえるにとどめる人が多いという。皮膚科を受診するのは、「軽いかぶれ」以上の症状を感じた場合という人が大多数で、「医薬品」で対処しようとする人は少数派なのだ。

しかし、図表2で「化粧水がしみる」よりも下に列挙した症状は、実は肌内部で炎症が起きていて、化粧品だけでは改善効果が期待できないもの。医薬品での対応が望ましい症状に対して、スキンケアアイテムで済ませてしまっている人が多数を占めているのである。

図表2の「化粧水がしみる」「ヒリヒリする」などの症状は、医薬品を使いはじめるべきサイン、いわば「おくすりサイン」といえる。「おくすりサイン」が出ているお客様に対しては、医薬品での治療など、正しい対処法を店頭で啓発していく必要がある。

「肌トラブル」に化粧品と医薬品の双方を扱う強み

前項のように、肌トラブルを解決しようと考えた際、生活者はスキンケアアイテムを入口に考え、症状が強い場合は医薬品の使用や通院を検討する。

そんな「病院に行くまでもないが、肌の不調をなんとかしたい」と考えるお客様にとって、ドラッグストアは医薬品、化粧品両方のアイテムを提案できる最適な場だ。また、薬剤師や管理栄養士のような医療と健康の専門家と、美容部員のような美容の専門家がいるのも心強い。

コロナ禍で生まれた新しい悩み「肌トラブル」に対し、ドラッグストアの品揃えの強みを活かした提案のチャンスを見出すことができるはずだ。

肌トラブルという身近な問題を自分でコントロールする

いわば「肌トラブル新時代」において、おすすめのブランドが資生堂薬品のIHADA(イハダ)だ。同ブランドは「肌トラブルをセルフコントロールできる」をコンセプトに、2011年のブランド開始当初から、長年「肌トラブル」に真摯に向き合い続けてきた。

図表3 イハダのコンセプト

イハダには薬用スキンケアで整える「薬用ケアシリーズ」、お薬で治す「治療シリーズ」、トラブルのもとから守る「防御シリーズ」の3つのラインがある(図表3)。「薬用ケアシリーズ」はスキンケアアイテムを中心に、肌のバリア機能をサポートし、乾燥などによる肌あれを予防する商品を展開。「治療シリーズ」では医薬品によって肌トラブルを集中的に治療し、「防御シリーズ」では花粉、紫外線などさまざまなトラブルの原因物質から守るアイテムをラインナップする。化粧品と医薬品のバックグラウンドを持つ資生堂薬品だからこそ提案できる商品群であり、ドラッグストアの売場と非常に親和性が高いブランドなのである。

以下、「整える」「治す」「守る」それぞれの肌トラブル対処法について、注目すべきポイントを解説する。

高精製ワセリンと抗肌あれ有効成分でトラブルを予防

肌は、そのバリア機能が低下すると、外部からの刺激によって、乾燥・肌あれ・赤みが起こりやすい状態となる。この状態のことを「トラブルリスク肌」と呼ぶ。そしてトラブルリスク肌は、肌トラブルをくりかえしやすい状態でもある。トラブルリスク肌をケアし、トラブルが起こらないように整えるのがイハダの「薬用ケアシリーズ」だ。

イハダの薬用ケアシリーズは、特別な技術により限りなく不純物を取り除いた「高精製ワセリン」を配合。この成分が肌表面にうるおい保護膜を形成することによって外的刺激から肌を保護し、乾燥を防ぐ。また、「抗肌あれ有効成分」により肌あれ・ニキビなどの肌トラブルも予防する。

イハダの薬用バームは、2021年にコスメ口コミサイトで殿堂入りを果たし、多くの口コミが寄せられるなどユーザーからも高い評価を得ている商品だ。

トラブルリスク肌こそ重要になる美白ケア

この春、そんなイハダの薬用ケアシリーズに美白ラインが登場する。トラブルリスク肌は紫外線の影響を受けやすく、シミ・そばかすのリスクが高いため、美白ケアが必要になる。

そこでイハダ薬用ケアシリーズの特長である「肌表面の保護+抗肌あれ」のWケアに加え、新ラインには美肌有効成分「m-トラネキサム酸」を配合。メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ。

図表4 イハダ薬用ケアシリーズラインナップ

2022年SSにはローション、エマルジョンなどを投入して美白アイテムをライン化。肌にかかるストレスがより高まるこの時代に、スキンケアによる盤石の肌あれ対策を提案する(図表4)。

さまざまな肌トラブルに対応するイハダの「オリジン」

図表5 イハダ治療シリーズラインナップ

イハダの肌トラブルケアの歴史は2011年にさかのぼる。「化粧品では治せないお肌のトラブルを薬で治す」というコンセプトでスタートした本ブランドにとって「治療シリーズ」はオリジンといっても過言ではない。それから10年以上が経過し、顔湿疹やニキビ、目の周りのかゆみなどさまざまな症状や部位に対応できるラインナップを拡充してきた。またこの治療シリーズでも、しみる、ひりつきという軽度なものから、かゆみ、かぶれ・ただれなど、さまざまな肌トラブルの度合いに応じた商品を展開している(図表5)。

新商品でさらに広範囲のトラブルに対応

肌トラブル新時代の昨今において、肌あれを繰り返し、悪化させる人は増加する一方で、重度皮膚炎に対応できる高機能な商品が期待されていた。重度皮膚炎に対応する治療薬といえば「ステロイド剤」があるが、正しく使えば非常に効果が高い一方、副作用の不安などを持つ人も多い。

今回イハダは、ステロイドの高い効果を維持しつつ、安心して利用できる「イハダキュアロイド軟膏」を上市する。配合成分の「アンテドラッグステロイド」は患部で優れた効果を発揮したあとは、体内で吸収され、速やかに分解される。ラインナップを強化することで、イハダの治療シリーズは、これまで以上に広範囲のトラブルに対応することが可能になった。

多様化する肌トラブル原因物質に対抗

図表6 イハダ防御シリーズラインナップ

イハダの防御シリーズは、花粉・微粒子・紫外線など、肌に悪影響を与える物質から「守る」ことをコンセプトとして商品を展開してきた(図表6)。

なかでもスプレーすると花粉やウイルスなどの付着を防ぐ、花粉ブロックスプレーの「アレルスクリーン」は花粉等防御剤市場で売上ナンバーワンを記録しており※、多くのお客様に支持されている。

一方で、肌トラブル新時代の現代、長時間のマスク着用による刺激、ブルーライト、PM2.5など、肌トラブルの原因物質はさらに多様化が進んでいる。この多様化に対処するため、イハダは今春、原因物質から肌をマルチに守る「薬用フェイスプロテクトパウダー」を発表。マルチブロック機能で、紫外線、花粉、ちり、ブルーライトなどから肌を守り、スキンケア効果のある有効成分も配合。ラインナップをさらに強化した。
※インテージSRI+花粉防御剤市場2018年4月〜2021年9月累計販売金額

散らばった商品を集積し新しい売場づくりに挑戦しよう

肌トラブルはこのように「守る」「整える」「治す」の3つのアプローチで、セルフコントロールを実現することができる。しかし店頭においては、たとえば「治す」ための商品は医薬品売場に、「整える」ための商品は化粧品売場に……というようにそれぞれの商品が違った売場に陳列されてしまっていて、商品の単品の認知は高くても、「肌トラブルはセルフコントロールできる」という提案が伝わりにくい状況だ。しかし化粧品と医薬品をともに扱えるドラッグストアの優位性を活かすためにも、売場の壁を乗り越えて、「肌トラブル新時代のセルフコントロール」をテーマとした商品を集積した新コーナーづくりをすることで、お客様に肌トラブル解決への近道を提案したい。

イハダは、ブランドスタートから長年肌トラブルと向き合ってきた。課題解決にワンストップでつながる本ブランドをぜひ新コーナーで展開してもらいたい。

売り方1.「肌トラブルトータルケア」としての一体陳列

パターン1

コロナ禍の生活は長期化することが見込まれる。市場の拡大動向から挑戦すべきと考えられるのは「肌トラブル新時代のトータルセルフケア売場」という新しい売場だ。

化粧品・医薬品・衛生用品など、現在別々の売場にわかれてしまっている商品を一体陳列することで、「肌トラブルのトータルケアができる売場」を訴求する。赤み・ヒリヒリするなどの「おくすりサイン」が出ているが、スキンケアで対応しようとするお客様に対し、治療薬による適切なセルフケアに誘導することもできるだろう。

売り方2.「肌トラブルケア」の本丸。敏感肌用ケア売場でのクロスMD展開

パターン2
パターン3

パターン2、3は「肌トラブルケア」本丸といえる敏感肌用化粧品売場での展開例である。

前掲の図表2にあるように、肌トラブルを感じたお客様は、医薬品売場ではなく、敏感肌用化粧品売場に行くことが多いと考えられる。

そこでパターン2の売場では、敏感肌用化粧品売場で、イハダの薬用ケアシリーズの商品に、防御シリーズの2品を追加で陳列した。「守る」から「整える」ための商品をラインナップすることで「肌トラブルはセルフコントロールができる」ということを発信していく。パターン3ではスキンケアの売場で、スキンケア商品と一緒に軽度な肌トラブルに対応する医薬品を空箱陳列した。「赤み」や「ヒリヒリする」というような、本来薬を使うべき肌トラブルの初期症状を持つ人に対して訴求する。

売り方3.「顔の肌トラブル治療薬」としてのブロック陳列

パターン4

パターン4は、医薬品売場での展開例である。現在肌の治療薬は、「かゆみ」「ニキビ」というように機能別、症状別の売場に分かれていることが多い。それを「顔のお肌のトラブル」というテーマで括りなおすことによって、顔の肌トラブルにトータルに向き合えるブランドがあるということを伝えていく。

売り方を変えることで売れ方は変化する。生活者の変化するニーズに寄り添う提案を店頭で実現していこう。

重要ポイントのまとめ

  • 長引くコロナ禍で多くのお客様の顔の肌トラブルが深刻化
  • 化粧品・医薬品を使いわけ、原因から肌を守ることで、肌トラブルをコントロールできるという新たな売場展開が必要
  • 肌トラブル新時代、売場の壁を越えた「肌トラブル対策売場」が求められている

アース製薬からスティックタイプと車用のスッキーリ!発売

消臭芳香剤市場ではスティックタイプが拡大している。しかし、従来のスティックタイプでは「香りが最後まで続かない」という不満点があった。そこでアース製薬では、最後まで香りが続くスティックタイプを新発売する。また、スッキーリ!ブランドで初めて「車用」を新発売する。独自の技術で差別化し、車用市場の活性化を狙う。(月刊マーチャンダイジング2022年3月号より抜粋)

「Sukki-ri!CORK+STICK」「クルマのスッキーリ!」ラインナップ

拡大しているスティックタイプと市場性のある車用に注目

新型コロナウイルスによる在宅時間の増加によって、消臭芳香剤における香りの意識が高まっている。その中で消臭芳香剤市場は安定して成長を続けており、2021年には718億円の市場規模となっている(図表1)。用途別では「スティックタイプ」が着実に拡大している(図表2)。

図表1 消臭芳香剤 用途別市場規模推移
図表2 スティックタイプ市場規模推移

また、車の国内保有台数が増え続けており、「車用」は200億円市場となっている。屋内用と同様に近年は除菌・消臭に対するニーズが高まっている。

最後まで上質な香りが続く高価格帯のスティックタイプを新発売

拡大を続けるスティックタイプだが、一方で、「香りが最後まで続かない」という不満点もあった(自社調査)。

新商品の「Sukki-ri!CORK+STICK-Puriture-(スッキーリ!コルクプラススティックピュリチャー)」は、「香り」「機能」「デザイン」にこだわったスティックタイプの消臭芳香剤である。

じんわりと吸い上げて最後まで香る「コルクスティック」と速やかに吸い上げて素早く香る「樹脂製スティック」を組み合わせることで、最初から最後まで深みのある香りをしっかりと持続させることが可能だ(図表3、4)。

図表3 2種のスティックの特長
図表4 スティック素材別香りの持続時間変化

持続時間も最長3.5か月と長持ちする。また、本物の木をフタやラベルに採用し、ナチュラルな容器デザインとした。さらに自然の中での浄化をイメージした癒しの香りによって上質なおうち時間を提供している。本体セットにはそれぞれの香りへの思いを込めた「しおり」を添えた。拡大している高価格帯の商品となり、市場の拡大を加速させる狙いだ。

車全体、エアコンフィルターの除菌・消臭を1つの商品で両立

新商品の「クルマのスッキーリ!車まるごと除菌・消臭」は、スチームタイプの除菌・消臭剤であり、2通りの使い方ができる。車全体の除菌・消臭をする場合はエンジンをかけずに一晩放置するだけで良い。また、使用方法を変えれば、エアコンフィルターの除菌・消臭もできる(図表5)。

図表5 車まるごと除菌・消臭の使い方

除菌成分はハミガキや洗口液に一般的に含まれるIPMP(イソプロピルメチルフェノール)であり、安心して使用できる。塩素系の除菌成分ではないため、刺激が少なく使用感も良い。ミクロの薬剤粒子がすみずみまで広がり、車の悩みをまるごと解決することができる。

図表6 車内のイヤなニオイの原因

また、「クルマのスッキーリ!消臭パール」は、アルデヒド系の悪臭成分に効く消臭成分を配合し、置くだけで従来品では消臭しきれなかった食べ物臭、汗臭、ペット臭、タバコ臭といった車の複合臭を消臭できる(図表6)。スチームタイプと合わせて使用することで、快適な車内を保てる。

販促物を活用して新たな需要獲得へ

Sukki-ri!CORK+STICKPuriture-に関しては、商品の世界観が伝わる上質な売場を作り、高価格、高付加価値の商品であることを分かりやすく演出しよう。香り見本、容器見本、コルク見本といった販促物も活用して、商品理解を高めてもらうことも重要だ。より認知いただく機会を増やすためにゴールデンゾーンに陳列することも検討したい。

クルマのスッキーリ!車まるごと除菌・消臭に関しては、スチームタイプの認知率が17%と低いため(自社調査)、ハンガーディスプレイ等の販促物を活用してスチームタイプの商品があることを認知してもらうことが重要だ。特にスチームタイプは、一般的にカー用品店で購入する人が多く、ドラッグストアでの認知はまだまだ低いので、売り方次第で市場拡大が期待できる。

図表7 店頭販促物の事例

重要ポイントのまとめ

  • スティックタイプの市場は拡大傾向
  • コロナ禍での消臭芳香剤における香り意識の高まりから、「香り」「機能」「デザイン」にこだわった高価格帯のスティックタイプを発売
  • 車用でも除菌・消臭へのニーズが高まっている。車まるごと一発除菌ができるスチームタイプを売場で認知してもらい、市場を活性化!

狭小商圏時代の店長の職務は「完全作業」「標準化」「固定客づくり」

不特定多数の「浮動客」相手の商売が主体だった時代の店長の職務(果たすべき任務)と、特定多数の「固定客」との長期的な信頼関係を築く時代の店長の職務は大きく異なる。この項では、狭小商圏時代の店長の職務についてまとめてみよう。(月刊マーチャンダイジング2022年3月号より抜粋)

MDの企画部隊が商品部、MDの実行部隊が店舗運営部

小売業の活動の総称をマーチャンダイジング(MD)と呼ぶ。MDとは、直訳すると「商品化計画」と訳される。MD活動とは、メーカーが製造した製品(プロダクツ)の売り方を開発し、商品(マーチャンダイズ)に変える活動全般を指す。

小売業のMD活動で行う売り方の革新は、たとえば「つくる立場」「売る立場」から、「買う立場」「使う立場」に製品を再編集し、選びやすく買いやすい「商品分類(アソートメント)」を設計することである。商品分類の設計は、さまざまな業界の商品を品揃えできる小売業・卸売業だけが提案可能なMD活動の根幹になる。

また、商品構成(棚割の状態)を設計することもMD活動である。すべての商品がフェース1で陳列されている状態は「売場」ではなくて「ショールーム」である。商品によって陳列量を変える商品構成も重要なMD技術である。

MD活動は、商談・仕入れによる商品選定、販売促進(プロモーション)、POPや陳列・演出、売場レイアウト設計、商品開発、補充・物流設計と多岐にわたる。

仕入れ担当の「バイヤー」とは異なり、商品開発を担当する「マーチャンダイザー」は、仕様書発注→物流設計→売り方の開発という「生産」から「販売」までのすべてのプロセスを企画・設計し、その結果に責任を持つ。

前置きが長くなったが、小売業の組織は、上記で述べたMD活動の企画部隊である「商品部」と、MDの実行部隊である「店舗運営部」の2つに大きく分けられる。店長が属する組織は、「店舗運営部」である。上司は、スーパーバイザー(エリアマネジャー)、店舗運営部長になる。

店長の最大の職務は完全作業の実行と徹底

MDの実行部隊「店舗運営部」の店舗責任者である店長の最大の職務は、商品部が決めたMDのプランを店舗で完全に実行することである。

そのことを小売業では「完全作業」と呼ぶ。完全作業の達成が店長に求められる最大の職務である(図表1)。

[図表1]店長の主要な「職務」
店長は、売上・利益などの「業績評価」よりも、実行と徹底力を評価する「行動評価」のウエートの方が高い。

店の売上は、立地や競争環境などの外部的な要因で決まることが多く、売上(業績)の責任を店長に一方的に押し付けることはできない。

MD活動を成功させるためには、店長をはじめとする現場の実行担当者の役割はきわめて大きい。私は、MD活動が成功するための70%は店舗での実行力・徹底力、つまり「完全作業力」で決まるとおもっている。

完全作業の徹底が店長の最大の職務

いくら素晴らしい商談をし、素晴らしいMDプランを立てても、店舗現場で実行されなければなんの意味もない。しかし、現実の店舗現場の完全作業力はまだまだ低く、失われた売上(機会損失)は大きい。逆説的にいえば、それだけ完全作業力の向上で増える売上の余地は大きいといえる。

人口減少時代に突入した日本では、「過激な販促で大きな売上」という成功体験は通用しない。狭小商圏時代の最大の売上対策は、「不完全作業」による「機会損失(チャンスロス)」を防ぐことである。

そのためにも店長は「凡事徹底」が最大の競合対策であるという意識を強く持ちたい。プランニングが得意な「頭でっかちの組織」よりも、二流・三流の戦略でも、完全作業力・実行力に勝る組織の方が競争に勝つといわれている。

棚割の徹底・改善力が低くて、本来はあるべき売れ筋がVOID(棚札も商品もなくフェースが消失した状態)による機会損失も、実は多くの店舗現場で発生している深刻な課題である。

すべての事件は現場で発生しているのである。

チェーンストアは小さな行動が大きな成果に直結する

完全作業力がますます重要になっている最大の理由は…

 

続きは月刊マーチャンダイジング 2022年3月号月刊マーチャンダイジングnote版にて。