カインズの建築プロ向け会員制卸売店「C’z PRO杉並井草店」レポート

2022年3月、カインズが建築プロ向け会員制卸売店、C’z Proの3店舗目となる「C’z Pro杉並井草店」を開店した。リアル店舗とデジタル技術の融合で、多忙な建築プロをサポートする期待の新業態だ。(月刊マーチャンダイジング2022年9月号より抜粋)

幹線道路沿いに出店、建築プロニーズに対応

階段の途中から1階を見下ろす。建設資材、内装材など大きめのものが店舗奥に、手前には衣類が展開されている

「C’z Pro杉並井草店」は、「C’z Pro」業態3店舗目となる、建築・建設のプロ用の卸売店だ。事前に登録した法人・個人の建築プロのみが利用可能で店内には工具や建築資材、建築プロ向け衣類など約25,000SKUが品揃えされている。

プロ向けとあって、価格訴求、商品説明などは少なめの店内

売場面積は約272坪(外売場を含む)で2層構造。駐車場台数は15台。1階には工具、セメントや内装材、作業着・長靴など、2階には電設資材、住設用品、配管関連、塗料、接着資材、内装、建築金物、プロの高度なニーズに応じた商品が陳列されている。

駐車場から直結している店内。大きな商品を自分の車まで直接積み込める。重量がある商品、大型の商品などがこの付近に陳列されている

C’z Pro業態は2020年8月に1店舗目となる東名横浜店をオープン。本店舗は東名高速道路のインターチェンジそばの出店だったが、その後の2店舗は品川、杉並と東京都心に出店をしている。

本業態はもともと都心のリフォームや建築現場で必要となるプロ用資材・工具を建築プロ向けに販売する狙いで開発されたもの。リフォームや住宅に関わる資材は大手企業であれば比較的調達が容易であるが、小規模な事業者・個人向けに、手軽に購入できる場所が都心には存在していなかった。

その点C’z Pro杉並井草店は、新青梅街道と環八という幹線道路の交差点付近に立地しており、西東京から都心の現場へ移動する際に立ち寄ることができる好立地だ。その日の作業で足りない資材を購入するために朝方立ち寄る、あるいは夜帰りがけに翌日の現場作業で必要な資材を調達するというニーズをくみ取るには絶好の出店場所といえよう。開店時間も平日は朝6時から夜9時までと、現場のニーズに合わせた設定となっている。

24時間受け取り可能、ロッカーサービス好評

店舗外に設置されたピックアップロッカー。深夜・早朝でも商品が受け取れるとあって非常に好調だという

「足りない資材を調達する」というプロのニーズをくみ取ったサービスとして好評なのがピックアップロッカーだ。

続きは月刊MD 2022年9月号にてご覧ください!

 

ファミリーマート・デジタルサイネージの勝算

加盟店の収益向上が厳しさを増すコンビニ業界。ファミリーマートは物販以外の新たな収益源にデジタルサイネージの導入を図っている。現在3,000店舗、来期は全店に大型ビジョンを設置、店舗に新たな機能を付加していく。その狙いと詳細をリポートする。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2022年9月号より抜粋)

幅広い世代にアプローチできるコンビニのデジタルサイネージ

デジタルサイネージは、既にスーパーマーケットやドラッグストアなどが取り入れて、広告効果を高めている。コンビニでは、2016年よりJR東日本リテールネット(現JR東日本クロスステーション)が駅構内に出店する自社のコンビニ「NewDays」(6月末、499店舗)や「KIOSK」に本格的に導入。店頭に大型ビジョンを設置、多くの人たちが行き交う駅構内の立地を活かして、さまざまな情報発信を手掛けている。同社によると、約150駅に300面以上設置しており、首都圏最大級のネットワークサイネージと位置付けている。

デジタルサイネージでは先行する「NewDays」。写真は1日約80万人が利用いるJR新宿駅の店舗

このNewDaysやKIOSKのデジタルサイネージは、コンビニの集客力に頼らなくても、主に店舗外側の壁面に大型ビジョンを設置して、店前を歩行する通勤・通学の人たちに向けて、動画・静止画を提供している。

こうした動向の中、ファミリーマート(店舗)も、本格的なデジタルサイネージの導入を始めている。店舗の外ではなく、店内のカウンター上部に設置、来店客に訴求する設計にしてる。この大型ビジョンを設置する店舗が本年6月に全国34都道府県の約3,000店舗に達したと発表した。

ファミマによるデジタルサイネージのメディア「Family Mart Vision」(以下、FMV)は、ゲート・ワン(出資比率/ファミリーマート70%、伊藤忠商事30%)が管理・運営している。2023年度までにファミマ全店(6月末、1万6556店)のうち、設置可能な全店に導入する計画を立てている。

一般的な広告は、TVや新聞、ラジオ、雑誌といったマスメディア中心の市場である。しかし、幅広い世代にアプローチしていくためには、デジタルとマスメディアの両方の媒体を活用していくことが有効であるとファミマは捉えている。

このFMVは、コンビニの利用客を対象にしている。コンビニは小売業の中でも比較的男女や特定世代に片寄らず集客する業態である。老若男女問わず、デジタルサイネージを視聴してもらえる強みがある。中高齢者の比率が高いテレビや、逆に若い世代に片寄るネットメディアとは大きな違いがある。ファミマによると、FMVの広告効果については、設置店舗で実証実験した結果、テレビ広告とFMVを併用することにより、テレビ広告での配信を上回る、素早い広告認知が期待できたという。

米国においては、新たな潮流として、ウォルマートがデジタルサイネージなどの店頭メディアを活用した広告事業を立ち上げて収益多角化を実現している。ファミマも国内ではいち早く、リテイルメディアに参入を果たしたといえる。来年度は全都道府県1万5,000~6,000店舗規模への設置となるため、広告効果は非常に大きいものとなる。

レジから一番遠い場所に立っても、3連の大型ビジョンはよく見える。割引の告知も取り入れて、買上点数の向上も図っていく

具体的には、来店客が立ち寄るレジ周辺に、3連の大型ビジョンを設置、音声付きの広告コンテンツを配信する。ファミマは全国に約1万6,556店舗を展開、1日に約1,500万人の老若男女を集客している。今回の3,000店舗への設置完了により月間8,200万人へのアプローチを可能としている。

「1週間でユニークユーザー(サイネージを認知した人)のリーチが約1,000万人、マスメディアの一つの指標である1,000万人に到達しています。接触人数や購買、効果測定がしやすいメディアであり可視化しやすい。テレビ、インターネットに次ぐ第3のメディアに育成していきたい」とファミリーマートデジタル事業部長の国立冬樹氏は意欲を見せる。

広告以外の提供価値としては、来店客に楽しんでもらえるコンテンツを開発、モノやコトの情報を発信して、その間に広告配信をする。それにより、様々なメーカーやコンテンツプロバイダの商品やサ―ビス、コンテンツを認知拡散する支援をしていく。

実際に3,000店舗に設置した結果、来店客の約7割がFMVを認知したという。そこで配信する映像は、店頭販売商品はもちろん、保険や企業広告のほかテレビCMと同じような広告を提供している。売場で大型画面を使用して訴求するので、広告対象商品の店頭売上の効果も期待できる。

広告の他にも、お客に様々な情報を発信。ニュース、天気予報、クイズ、お笑いなどに加えて、ファミマが通常のオペレーションで実践している特殊詐欺防止への喚起、フードドライブ(家庭にある食品を持ちより、社会福祉協議会などに寄付する活動のこと)への協力といった啓発メッセージも今後は発信していく予定である。

コンビニは地域社会のインフラ、人々のライフラインといった役割を担っている。「街の情報発信拠点としてFMVを通して地域社会に貢献していきたい」(ゲート・ワンCOO速水大剛氏)と、前述の啓発メッセージも含めて、地域社会に貢献できるような情報も今後は提供していく。

地域配信に関しては、エリア限定商品の告知も、展開店舗を絞ったかたちで可能にしていく。実際に東海地区限定のコラボ商品をデジタルサイネージにより訴求した。弁当とサンドイッチのオリジナル商品の発売を、タイムリーに配信することで、エリアマーケティング支援を実施している。デジタル技術の強みを生かした、時間帯や地域特性に応じた、よりお客にとって、身近なタイムリーな情報を発信していくとしている。

ちなみに、広告で得られた収入を、チェーン本部は設置料の名目により、店舗を経営する加盟店に対して還元している。コンビニの競争環境は、同業他社だけでなく、さまざまな業態により影響を受け、より厳しさを増している。加盟店の収入確保は営業の持続性を考えれば最重要課題であり、必要な取り組みになるだろう。

広告商品は平均2割以上アップ設置料も含め加盟店の収益向上

以下、FMVの特徴をいくつか紹介する。一つは、スピーカーを数カ所に配置して、店内のいたるところで音が聞こえる環境にしている。

二つ目は解像度の非常に高い画面を3連で設置していること。解像度の高さにより、クリエイティブで柔軟な映像表現を可能としている。三つ目は前述したようにレジ周辺への設置。レジは誰もが通過する場所なので、これにより高い認知率を得られるようにしている。

広告枠は1日の時間帯を四つに分けて、その中で同じ収録を1時間に6回配信する仕組みにしている。例えば昼の1枠の場合は、前述のように1店舗で1時間に6回、昼は11時から17時59分までの設定なので6回×7時間で42回、これを1ヵ月30日提供すると1,260回になる。

ファミマ店舗で扱う商品に対してデジタルサイネージによる広告を配信した結果、該当商品の店舗での売上が非設置店舗と比較して、平均2割以上のアップを確認できた。前述のように、設置店舗には「設置料」を支払うので、加盟店にとっては店舗の売上増はボーナスになる。

「広告クライアントはもちろん、お客様や加盟店からの反応も良く、われわれはメディア事業の方向性に自信を深めています。こうした状況を踏まえて、ゲート・ワン設立時の事業計画を前倒しして、速やかに全店導入が実現できるように、急ピッチで次なる事業計画の策定に入っています。コンビニを取り巻く環境は厳しさを増しており、新しいビジネスモデルの構築が急務であると認識。ゲート・ワンはファミリーマートの新規事業を担い、デジタルメディア領域で、新しい収益基盤の確立を目指したい」(ゲート・ワン取締役島田奈奈氏)

FMVの導入により、広告対象商品の売上のアップに加えて「オリジナルコンテンツがおもしろく、お客様の評判がよい」「売場の雰囲気が明るくなった」といった声が加盟店から挙がっているという。

デジタルサイネージは、イオンをはじめとするスーパーマーケットにも導入が始まっている。スーパーの場合は、店内の買物客に今、実際に購入してもらうインストアプロモーションのアプローチが主であるのに対して、ファミマの取り組みは、もちろんインプロもあるが、イメージ広告であったり、新商品の告知であったり、来店頻度が高いコンビニの特性を活かしたコンテンツになっていくと考えられる。

大型ビジョンには、お客の側に向けたAIカメラが設置されている。これはお客の属性を知るためのカメラで、個々人を特定する機能はなくプライバシーは守られている。ここで読み取った属性をもとに映像を選択するようなことはしない。逆にお客に対して不安を抱かせるマイナス効果が予想されるからだ。

デジタルサイネージに関して、セブンイレブン、ローソンの動きはなく、「ファミペイ」などデジタル事業に注力するファミマが先行するかたちになっている。

値上げラッシュ!コンビニ各社のスイーツ戦略とは

値上げラッシュは我が道を歩むコンビニ業態にも無縁ではない。利便性を強みにして、決して安くはない商品を展開して半世紀。コロナ禍で変化したマーケットに当初は適応できずに苦戦してきた。新しいマーケット、そして原材料の高騰、所得の格差拡大に、コンビニの商品政策は、変わるのか、変わらないのか、先ごろのセブン−イレブンによるスイーツ全面刷新を事例に考えてみたい。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2022年8月号より抜粋)

コンビニ100円コーヒーは終焉。高級路線とセットで値上げ対応

シュークリームも、この価格まで高まった「シュー・パティシエール」172円

セブン−イレブン(以下、セブン)が6月にスイーツを全面刷新した。定番のシュークリームが172円(税込み、以下同)、豆大福151円、他にも、モンブラン345円、どらやき226円と強気の価格が並ぶ。セブンが唱えるのは「品質向上」である。折から原材料費が高騰している。セブンも、この春にサンドイッチなど基本アイテムの値上げに踏み切った。

その際、同社の青山誠一取締役執行役員商品本部長は「コストを価格に転嫁するのであれば、お客様に満足してもらえるような見直しを図っている。サンドイッチは少し低迷していたが、販売が上向き、nanacoデータからリピート率の向上も確認できた。全てがうまくいったわけではないが、商品の質を高めるリニューアルをしっかりと実施していく」と、値上げの方向性を示した。

実際に売上の4割以上を占める、おにぎりや弁当、調理麺、サンドイッチ、総菜といった「ファストフード、日配品」は、オリジナル商品がほとんどなので、他社と比較されることがない。原材料費のコストアップにより値上げが必要であれば、単に価格を上げて、お客に理解を求めるのではなく、商品の品質や製造方法を変更、すなわち“商品の質を高めるリニューアル”により、納得してもらう方法を取るとしている。

物価上昇に賃金が追い付かない現状、チェーンストア大手のイオンや西友は、プライベートブランド(PB)商品に関して「価格据置き」を宣言している(一部商品は6月末で解除)。普段の食生活を支える基本商材を値上げせず、チェーンストアとして人々の暮らしを守る使命を担っていると自負しているからであろう。

対してコンビニの役割は「利便性」の提供であり、セブン−イレブンは創業期から「開いててよかった」、2010年より「近くて便利」をキャッチフレーズにしている。「どんどん安く」は理念にない。今後、所得の二極化、格差が拡大すれば、コンビニの利用を止める層が出てくるかもしれない。それでもトレードオフして価格維持するよりも、トレードオンして価格を見直す方向性は一貫している。ただし、競争環境や広くマーケットの特性に応じて、カテゴリーごとに取り組みは違ってくる。

セブンは7月4日より、カウンターで販売するコーヒーの価格を10%~20%引き上げた。税込み100円だったコーヒーが110円に。「100円コーヒー」の俗称は使えなくなる。この価格改定は単純な値上げである。買い付けたコーヒー豆を焙煎して店舗に供給、設置したマシーンで提供するコーヒーに改善の余地は、ほとんどない。

セブンはかねてより高級豆を使用したコーヒーの実験を各地で実施してきた。筆者は2017年冬に札幌市内で「高級モカブレンド」120円を目撃しているが、その後、実証実験は各地で継続しながら本年5月24日より「高級コロンビア・スプレモブレンド」140円に統一して全国の店舗で順次発売している。

すなわち、長らくレギュラーサイズ100円だったコーヒーに、110円、もしくは140円の選択肢を用意して提供している。

コンビニのカウンターコーヒーは、コンビニ同士の競合はあっても、それ以外には競争にさらされない。例えば、ドトールコーヒーの持ち帰りはSサイズで税込み220円。コンビニの2倍の価格を設定している。コーヒーショップはイートインを基本としており、テーブルとイスを設置してスペースを確保している分、コーヒーにいわゆる「場所代」を乗せている。テイクアウトも、その価格に合わせているので、コンビニよりも割高になる。コンビニのカウンターコーヒーが価格優位性を発揮できる。

現時点(6月末)で、他のコンビニチェーンは100円コーヒーの価格を据え置いて様子見しているが、セブンの買上点数が変わらないようであれば、追随して値上げに踏み切るであろう。ファミリーマートは、既に「高級モカブレンド」税込み120円を持っているので、セブン同様に100円台前半で、選択肢を用意した値上げになるだろう。

100円だったシュークリーム、認知されるか?価格は1.7倍

コーヒーと相性の良い、冒頭のスイーツに話を戻す。セブンが6月に大型企画商品として発売したシュークリーム「シュー・パティシエール」172円など“商品の質を高めるリニューアル”を実施した。勝算はある。同社商品本部の平田哲也デイリー部ベーカリー・スイーツシニアマーチャンダイザーは「在宅時間が長くなり、スイーツを自宅で食べる頻度も増えている。外出を控えてプチ贅沢をするお客様も多い」と外部環境の変化を挙げている。

実際にセブンでも、コロナ禍前、そして外出自粛が本格化した後も、スイーツの売上は伸長してきた。しかしコロナ禍が一巡すると、徐々に陰りを見せ始める。近くて便利なセブンでスイーツを購入してきた人たちも、宅配利用や通販、ふるさと納税の返礼品など、さまざまなチャネルからスイーツを購入できるようになった。そこでセブンは立ち寄ったついでに購入するスイーツではなく、わざわざ来店して選ばれるスイーツの方向性を示した。

この「シュー・パティシエール」にも付加価値を高めている。製菓のために開発された、コクの強い卵を使用、発酵バターを加えて濃厚なカスタードに仕上げた。シュー生地は4種の小麦粉と、発酵バターを組み合わせて2層で焼き上げて、より風味の良い商品に仕立てたという。それ以前に品揃えしていた「シュー・ア・ラ・クレーム」(149円)は廃番にしている。シュークリームは、この他に、価格的には下のラインになる「ダブルクリームのカスタード&ホイップシュー」162円を持っている。

300円超えコンビニスイーツも市民権を得るのか?セブン−イレブンの「モンブラン」345円

ともあれセブンでシュークリームを購入するには税込みで162円と172円の2つの選択肢しかない。専門店と互角に戦える品質を追求すると、シュークリームは、この価格、カップケーキでは前出の「モンブラン」345円のような価格を設定せざるを得なくなる。

しかし思い起こすと、2017年3月までセブン−イレブンの主力スイーツは税込み100円の「(ミルクたっぷり)とろりんシュー」だった。商品名の通り、クリームがとろりとしており、食べなれない人は手をクリームで汚すことになる。そういう特徴も人気に拍車をかけていた。セブンは同年4月にリニューアルをかけて「THEセブンシュー」と改名、130円に値上げする。長く定番だった100円のシュークリームを消失させた。

当時の商品本部長(現セブン&アイ・ホールディングス常務執行役員グループ商品戦略本部長の石橋誠一郎氏)は会見で次のように説明している。

「この商品は2001年に発売して以来、リニューアルを重ねてきた。発売当初は1日(1店舗平均)18個を売っていたが現状は半減している。それでも販売個数は高いのだが、お客様の変化に付いていけていないと考え、あらためて今のマーケットに求められている、味、品質とは何なのかを確認した。そこで2001年から継続してきたコンセプトを全く変えていく。商品名も企画も全てやめて、コンセプトを“とろりんシューやめます”とした。ゼロベースで立て直すということ。ここまでやらないと、お客様の変化に対応できない」

すなわち、売れ行きが落ちてきた商品の延命はしない。支持されないのは世の中の求める品質に対応していないからだ。必要なのは、既存の商品よりも品質を高めて、明らかにおいしい商品に仕立て上げること。他のカテゴリー全てに当てはまるとはいえないが、スイーツについては、“とろりんシュー”をやめたときから、脈々と品質の向上(およそ価格も上昇)を続けている。

今回は価格を据え置いたセブン-イレブンの「北海道十勝産小豆使用 豆大福」151円

一方で和菓子の定番である「北海道十勝産小豆使用豆大福」151円は品質を高めたものの価格を据え置いた。既存品と同様に北海道十勝産の小豆を使用、さらに「エリモショウズ」という、あんこに適した品種に変更して、うま味、風味を高めているという。

新型コロナウイルスによる意識と行動の変化により、人々の行動範囲が狭まり、人気のカフェや、遠くの洋菓子店、人が密集するデパ地下を避けて、近隣のコンビニを利用する人たちが増えていった。そうした追い風が徐々に薄れつつある今こそ、品質を高めて、客単価を高める。

世の中の値上げラッシュの中で、コンビニ、特にセブン−イレブンは危険を承知で、理念に基づいた独自の商品政策を推進している。

改廃の激しい韓国コスメに素早く対応する組織と仕組みの作り方

セルフコスメの売場づくりでは実績のある井田両国堂は近年、韓国コスメ、アジアンコスメの売場づくりを強化している。多数の韓国コスメを取扱う同社に、韓国コスメのトレンド、売場づくりのポイントについて聞いた。(月刊マーチャンダイジング2022年8月号より抜粋)

韓国コスメ独自の機能が日本で受け入れられた

—韓国コスメが絶好調の理由について教えてください。

松本 まず、当社では、韓国コスメは、2003年頃に「BBクリーム」を第1弾として取扱いました。当時の日本での認識は「一過性の商品」だったのですが、その後、韓国コスメの低・中価格帯という特徴が日本で受け入れられるようになり、市場が拡大したという背景があります。

さらに、直近2、3年のコロナ禍という状況では、コロナ前でしたら韓国旅行に行って韓国コスメを買うことができたのですが、いまは行けないので韓国コスメの輸入が増えているという状況です。

[写真1]マスク肌荒れの増加によって人気のシカシリーズ(メイクアップソリューション則武新町店)

コロナ禍での韓国コスメの伸長は、「ツボクサ」という傷治療で使われる植物から抽出したエキス「CICA(シカ)」の人気から始まりました(写真1)。現在は、シカクリーム、シカフェイスマスクなどが発売されています。

シカは、「敏感肌の人のマスクによる肌荒れケア」という名目で発売され、日本ではかなり受け入れられました。それまで日本ではシカのコスメはなく、現在は日本でも徐々に増えてきていますが、韓国コスメのシカが一番売れているという状況です。

Z世代がSNSを通して、K-POPアイドルの真似をするなどして韓国コスメの人気を広げています。韓国のアイドルがSNSに顔写真をアップし、使っているコスメが話題になることもあります。

韓国の男性アイドルの影響もあり、BBクリーム、コンシーラー、眉毛のケアなどのメイクを使用する若い男性が増えています。メイクをする男性の増加は、韓国製だけでなく日本製のコスメでも見られる傾向です。

韓国コスメの特徴は商品開発力だと思います。もともとBBクリームは「肌の美しさを損なう傷や欠点をカバーする」という発想で開発された商品で、現在の「気になる部分に塗る」という機能が人気になりました。また、ティントリップは「唇の角質層を染めることで色が落ちにくい」というリップです。

それらは日本にはなかった発想です。そうした韓国コスメの独自の機能が日本で受け入れられてきているのだと思います。

多数の韓国コスメを取扱う井田両国堂

—小売業との取組みについて教えてください。

松本 当社では、多数の韓国コスメを取り扱っています。SKU数自体はどんどん増えてきています。

韓国では、大小合わせて1万社以上の化粧品メーカーが存在しており、新興メーカーを含め、日本進出をかなり狙っているらしいので、数年以内に、日本に来る韓国のメーカー、SKU数はさらに増えてくるだろうと思います。

[写真2]クッションファンデが人気の「ティルティル」(メイクアップソリューション則武新町店)

当社が取扱っている韓国コスメの中では、「rom&nd(ロムアンド)」「TIRTIR(ティルティル)」「VT」などが売れています。

小売業の売場を見ると韓国コスメのコーナーは確実に増えています。韓国コスメは今のところ売場の適正スペースは分かりませんが、最大限の本数は取ろうと思っています。坪数的に4本しか取れない店なら4本で展開しますし、10本以上のパターンもあります。

また、韓国・中国・タイ・台湾などのコスメを集めた「アジアンコスメ」も、ドラッグストア(DgS)、量販店の売場は拡大しています。

コロナの影響でインバウンドがなくなったので、売上を補うという意味でも、韓国コスメ、アジアンコスメを検討する小売業は増えていると思います。

当社では、韓国コスメに限った話ではなく、日本のメーカー様とも店舗に導入する前に商談を重ねます。商談では、まず、ブランドイメージを損なわれないようにプロモーション展開について話し合い、店頭での露出を増やし、ブランドや商品の希少性をお客様に訴求し、商品の認知度を高めるという基本戦略です。

プロモーションはブランドを中心に陳列することもありますし、「プロジェクト陳列」にても実施します。

[写真3]井田両国堂が「UVケア」というテーマで提案するエンド

プロジェクト陳列では、棚割のテーマを決めて、たとえば、「UVケア」というテーマならば、様々な日焼け止めの関連商品をエンド、アウト展開で陳列し、お客様に分かりやすいように商品の機能等を訴求します(写真3)。

今年はジェルタイプ、スティックタイプ、スプレータイプのUVケアがかなり売れていまして「タイプ別」という切り口で分類することもあります。ほかには、室内、屋外、旅行などの「シーン別」で分類することもあります。お店に合った形のテーマ、切り口でプロモーションを実施して頂いております。

[写真4]「浴衣メイク」という切り口で提案するエンド。2段目は韓国コスメのティルティルのリップ

また、「浴衣メイクHow to」というテーマでは、韓国コスメも陳列しています(写真4)。当社が提案するテーマ軸のプロモーションによって、商品価値を高める戦略です。

トレンドの変化が早い韓国コスメに素早く対応できる仕組みづくり

—韓国コスメの定番化についての考えを教えてください。

松本 東京エリアの店頭を見ると、韓国コスメの定番化は主流になってきていると感じます。特に若い人はスマホに慣れており、立地による情報格差が少ないので全国で売れると思います。

もともと韓国コスメは、バラエティストアで最初に展開していたのですが、最近ではDgSでの展開もかなり増えています。

韓国コスメはトレンドの変化が早いので…。

 

続きは、月刊マーチャンダイジング2022年8月号でご覧ください!

 

コロナ禍でも2年で1.5倍増と驚異的な成長 !「韓国コスメの「売場強化戦略」

月刊マーチャンダイジング2022年7月号では「韓国コスメ」を大フィーチャー!コロナ禍で苦戦するコスメカテゴリにおいて、前年同期比を上回る実績をたたき出し続ける韓国コスメ。売りまくる店舗ではどのような展開をしているのか。大手メーカーの日本市場戦略とは!?本記事では日本市場における韓国コスメの概況をご紹介します。(月刊MD 2022年7月号から転載)

韓国コスメの日本向け輸出額は2年間で1.5倍も増加した

[図表1]韓国コスメ日本向け輸出(資料:HIS)

KOTRA(大韓貿易投資振興公社)大阪貿易館の調査によると、韓国コスメの日本向けの輸出額はコロナ禍の2020年も前年比35%増と驚異的な成長を継続している。2019年と2021年対比では1.5倍も輸出額が増加している(図表1参照)。

2021年の韓国コスメの日本向け輸出額は4億5,900万ドル(約587億円)に達している。これは化粧品輸出額がずっと1位だったフランスの日本向け輸出額と同規模に迫っている。

[図表2]2021年ECサイト(ROSEMARY)カテゴリー別人気商品ベスト5

ECサイトにおける韓国コスメのカテゴリー別の人気商品を図表2に整理した。1,000円台の価格帯の商品から3,000円台の商品もあり、価格帯の幅があることがわかる。

当初の韓国コスメは低価格帯中心であったが、近年は韓国コスメの品質も向上し、中・高価格帯の化粧品も登場している。また、品質の向上によって、韓国コスメ購入客のリピート率が大きく向上していることも近年の特徴である。

さらに、韓国コスメ独自の品質と機能を持つ新商品も登場し、韓国コスメだけの特徴がある化粧品が人気を集めている。

たとえば、「シカクリーム」は、肌の損傷改善や再生効果が期待できるクリーム。毎日使うことで、肌の再生能力が上がり、健康的な素肌を作ることができる。韓国コスメの主なシカ成分は古くから外傷治療薬としても使われていた「ツボクサエキス」。マスク肌荒れの増加などで人気だ。

「クッションファンデ」は、パウダーファンデーションとリキッドファンデーションのちょうど中間にあたる。クッションに液状ファンデーションをしみこませたコンパクト形状のファンデーション。お肌をケアしながら毛穴をカバーする「多機能ファンデーション」といわれている。

「ティント」という名前の口紅も韓国コスメが開発した新機能で人気。「tint=染める」という意味で、唇を染め上げて落ちにくいリップとして一躍脚光を浴びた。コロナ禍の最近ではマスクに色移りしにくいことから支持されている。

[図表3]韓国国内で急成長中のNEXT韓国コスメ

一方、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)大阪貿易館の調査によると、現在の韓国で急成長中のコスメカテゴリーは、「ダーマコスメティック(医薬成分化粧品)」「インナービューティ」「ヴィーガンコスメ」の3つである。これから日本でも成長が期待できる「NEXT韓国コスメ」といえよう(図表3)。

「韓国の商品が多くの日本の方に愛されているからこそ、より優秀な商品を日本の皆さんにご紹介していくのがKOTRAの役目だと思います。コロナの影響で中止されていた韓国にバイヤー様をご招待する商談会や展示会なども今年から再開しつつありますので、新たな韓国商材をご検討中でございましたらKOTRAにお声掛け下さい」(KOTRA大阪貿易館 孫 昊吉館長)。

月刊MD2022年7月号は韓国コスメの人気の背景を大特集!

是非お買い求めください!

 

 

敏感肌向けブランド「ミノン」、ベビーシリーズ登場

出生数が減少を続ける昨今、ベビーカテゴリーも縮小を余儀なくされている。しかし生活者のベビースキンケア意識は高まっており、高付加価値商品・低刺激性商品を求めるニーズは堅調だ。そんな中、敏感肌向けブランド「ミノン」はこの秋、ベビースキンケアアイテムのシリーズ化を発表。カテゴリーの活性化が期待される。(月刊マーチャンダイジング2022年7月号より抜粋)

専門店等に奪われているベビースキンケア市場

[図表1]ベビー用スキンケア市場規模

2020年度のベビー用スキンケアの市場規模は、約142億円(図表1)。売上構成比は洗浄剤が47%、次いで保湿剤が36%を占める。2018年ごろまではインバウンド需要や、一人当たり単価の上昇などを背景に好調に売上が推移していたものの、コロナ禍によりインバウンド需要が消失し、出生数減少も相まってここ数年は若干の縮小傾向だ。

チャネル別実績

チャネル別の売上高構成比を見ると、ドラッグストア(DgS)や薬局が45.8%を占め、次いで37.7%とベビー専門店等が続く。一般のボディケアカテゴリーに比べると、ベビーボディケアの売上は、ベビー専門店等にかなり食われている状況だ。

高まるベビーのボディケア意識 しかし現実とはギャップが

[図表2]乳幼児を持つ20〜40代の母親の子供に対するスキンケア意識調査

昨今、ベビー用スキンケアに対する生活者の意識は非常に高まっている。図表2のグラフによれば、「子供の肌はデリケートなため、スキンケアは欠かせない」という親がどの世代も5割以上を占めている。一方「子供のスキンケアは適切にできている」とする人は30%〜40%前後。理想と現実にギャップがある状態が続いている。

また最新の臨床研究では、生後1週間以内の新生児期から保湿剤を塗布することで、アトピー性皮膚炎を発症するリスクが3割以上減らせることがわかっている(※1)。早期にスキンケアをはじめることがアレルギー予防に重要であるという認識が、乳幼児を持つ親に広がってきている。

※1 2014年10月の、国立成育医療研究センターの発表による。

赤ちゃんから高齢の方まで使えるスキンケアアイテムを提供

ミノンは、間もなく発売50周年を迎える敏感肌ケアブランド。名前の由来は「Non allergic(アレルギーの原因物質)」「Non toxic(低刺激性)」「Non alkaline(弱酸性)」の3つの「ノン」だ。赤ちゃんから高齢の方まで、敏感肌に悩む全ての人に寄り添い、QOLの向上に貢献していく。

[図表3]ミノンボディケアシリーズ出荷金額推移

ミノンボディケアシリーズの出荷金額はラインナップ拡充によりこの7年間で3.5倍に拡大(図表3)。「洗う」だけではなく「塗る」「防ぐ」の3つの軸でさまざまな保湿ケアアイテムを展開している。

そんなミノンが、この秋満を持してベビー用スキンケアアイテムのシリーズ化をスタートする。

商品紹介

ミノンベビー全身シャンプー

ミノンベビー全身シャンプー

ラインナップの1点目は、肌がデリケートな赤ちゃんのための全身泡シャンプーとして人気の「ミノンベビー全身シャンプー」。販売中の商品だが、この8月以降JAN変更無しでパッケージのリニューアルを行う。

本商品は乳児の肌と同じ弱酸性。植物性アミノ酸系洗浄成分配合で、バリア機能を守りながら汚れを落とす。泡切れがよく、さっと流せるシンプル処方もポイントだ。バリア機能が低い赤ちゃんのことも考えて、極力配合成分を少なく抑える処方にこだわった。本商品は人気の雑誌「LDK」の「ベビー用品ガイド2021年」でベビーソープカテゴリーの第1位も獲得している。そのことを訴求するアテンションシールも貼付されているため、お客の注目を得ること間違いない。

ミノンベビー全身保湿ミルク

ミノンベビー全身保湿ミルク

ラインナップの2点目が、この8月に上市される新商品「ミノンベビー全身保湿ミルク」だ。肌のバリア機能を守りながら、乳児に起こりがちな肌あれを防ぐ。無香料・無着色・アレルギーの原因物質を極力カットするなど、肌へのやさしさを追求した処方になっている。また、着替え前に塗ってもべたつかない、みずみずしい潤い感もうれしい。

パッケージにはアテンションシールで「0歳から使える」と、使用可能な年齢を訴求。ミノン全身保湿剤と同じ印象のパッケージで、ミノンの他商品を使っているお客様にも目につきやすいデザインになっている。

参考価格は1,300円(税抜)と、DgSのベビーボディケアカテゴリーに貢献できる価格帯での提供となる。

高単価・高付加価値でカテゴリーに貢献

ミノンベビーシリーズの共通アイコン

今回ミノンベビーシリーズは、既存商品である「ミノンベビー全身シャンプー」のユーザーはもちろん、出産準備中のプレママ、スキンケアに不安を持つ層をターゲットに据える。これらのお客様に確実に情報を提供し、製品購入へとつなげていくために、自治体や病院などでのサンプリングプロモーションや、雑誌、ウェブメディアとのタイアップ、インフルエンサーによるネット上での拡散などのプロモーション施策を予定している。

店頭ではベビー用品売場での定番展開がおすすめだ。シリーズの3SKUを並べて展開することで、店頭露出を拡大し、視認性を高めていきたい。

[図表4]DgSチャネルにおけるベビー用石鹸アイテムの価格帯別の累計販売金額

生活者のベビースキンケアへの意識の高まりによって、高付加価値・低刺激性商品のニーズは高まっているが、依然としてDgSでは低価格帯の商品が中心で、専門チェーンやECにシェアを奪われている。一方のミノンベビー全身シャンプーは、積極的なプロモーション展開無しに、順調に売上を拡大し続けている。また図表4にあるように、実際DgSチャネルでも、2017年度と2021年度を比較すると、500円以下の商品は構成比を減らし、500円以上の商品が伸長していることがわかる。

今後、我が国においては、出生数減少のトレンドが続くため、今何かしらの手を打たないと、カテゴリーの縮小は免れない。ミノンベビーは、「高単価」「高付加価値」で、顧客満足度も高い商品だ。DgSのベビースキンケアカテゴリーの売上・収益に貢献していくことは間違いないだろう。

重要ポイントのまとめ

  • 早期のスキンケア開始がアレルギー予防に重要という認識が広まる
  • ミノンベビーシリーズは「全身シャンプー」「全身保湿ミルク」を展開
  • カテゴリー活性化のために高単価・高付加価値市場の創出を

生活者のより良い目の状態に向けた重要性認識向上とアイケア推進に取り組む

昨今、子供から大人までデジタルデバイスに接する時間は増加しており、生活者の目を取り巻く環境は厳しくなっている。一方で、生活者のOTC目薬使用率は30%程度と決して高くはない水準である。参天製薬では、生活者のQOL向上のため、アイケアの重要性の啓発や、目の不調に対処するためのさまざまな取り組みを行っている。今回はその取り組みについて、参天製薬の渡邉事業部長に話を聞いた。(聞き手/月刊MD主幹 日野 眞克)(月刊マーチャンダイジング2022年7月号より抜粋)

参天製薬だからこそ実現できる本質的なアイケア

—コロナ禍で生活者のデジタルデバイスの接触時間が増えていると思いますが、現在の生活者の目の健康について教えてください。

渡邉 目を酷使する人はとても増えており、生活者のアイケアニーズは高まっています。弊社調査によると、15歳~79歳までの約85%の方が、何かしらの目の不具合を感じているというデータもあります。しかしながら、そのうち実際に対処している人は半数ほどしかいないという結果になっており、より多くの生活者にアイケアの重要性を知って、対処していただくことで、QOL(生活の質)向上に繋がると考えています。

—参天製薬さんは、目薬の会社という印象ですが、どのような取り組みをされているのでしょうか。

渡邉 弊社は創業から130年以上にわたり、眼科領域に特化し、傾注しています。眼科領域の専門性、技術力を礎に、病院向けの医療用医薬品や医療機器と、薬局・ドラッグストア(DgS)で販売しているOTC医薬品などの開発、製造、販売を行っています。

日本における組織では、医療用医薬品を担う眼科事業部と、OTC医薬品を担う薬粧事業部の2つの事業部があり、互いに連携しながら患者さん・生活者起点の活動を行っています。目薬の会社という印象が強いと思いますが、眼科領域のスペシャリティーカンパニーとしての弊社の責務は、単に目薬を売るということではないと考えています。2030年とその先に向けたVisionとして「Become A Social Innovator」と掲げていますが、これは、世界中の技術や組織・人材をつなぎ、2030年までに目の疾患に起因する社会的・経済的な機会損失を削減することを目指しており、私たちはまさに今、その目標に向けて取り組んでいます。

私たち薬粧事業部は、そのVisionを実現するための戦略の1つとして、生活者に向けたWellness(ウエルネス)、つまり、より良い目の状態に向けた重要性認識向上とアイケアの推進に取り組んでいきたいと考えています。

—生活者に提供するWellnessとは具体的にはどのようなことでしょうか。

渡邉 まず、生活者へ本質的なアイケアの提供を行いたいと考えています。本質的なアイケアとは、医療用医薬品の実績を活かして医学的に正しい新たな機能価値の提供を行うことです。

また、清涼感などによるスッキリとした差し心地などにより情緒的な価値を提供する製品をご提供することによって、生活者の目薬の使用に対する間口を拡げ、アイケアの裾野を拡げていきたいと考えています。

なお、最近始めた取り組みとしては、生活者が自分で目の状態をセルフチェックしたり、アイケアに関する情報提供を行うことでアイケア意識向上を図るアプリの提供があります。こういった取り組みを地道に継続することによって、生活者が自分の目について関心を持ち、正しいアイケアを行うサポートを行っていきたいと考えています。

—医療用での実績を活かして医学的に正しい本質的なアイケアを提供することができることは参天製薬さんの強みですね。

渡邉 例えば、本質的なアイケアの浸透と拡大を図るために、2020年にスイッチOTCとして「ヒアレインS」を発売しました。「ヒアレインS」は医療用と同濃度のヒアルロン酸ナトリウムを配合した目薬で、涙液の不安定化によるさまざまな目の不快症状を緩和します。不快症状の対策には、単に目に水分を加えるのみならず、目の表面に安定的に水分を保ち続けることが大切で「ヒアレインS」はその有効成分が涙液層に長くとどまり、涙液を安定させます。疲れ目、見えづらさ、乾き目などといった目の不具合は、涙液層が不安定になることによって生じる場合があるとされており、不具合の原因から改善することができる本質的なアイケアを実現できる製品だと考えています。

DgSと参天製薬との地域医療連携について

—DgS(ドラッグストア)と地域医療連携に取り組んでいる事例もあるとお聞きしましたが。

渡邉 あるDgSを訪問した際に、今は物販中心だが、将来的には地域医療の中心になりたいという想いを伺いました。

幣社でお手伝いできることは何かと考えた結果、医療用医薬品の経験と実績を活かして、生活者へ、医学的に正しい本質的なアイケアの提供を行うことで、協働できるのではないかと考えました。

1つの事例ですが、弊社で生活者のアイケア意識向上を目指して開発した、「瞳うるるスキャン」というアプリをご紹介しました。

—どのようなアプリですか?

渡邉 このアプリの機能は大きく3つあります。まずは、セルフチェック機能です。チャット形式で自覚症状とリスクをチェックし、AI技術を活用した上で、眼表面に映り込んだ画像の解析からうるおい不足の箇所を表示します。総合結果として「瞳のうるおい度」高・中・低を判定します。これにより、生活者が自分の目の状態を知ることができます。

2つ目は、結果に対する対処法の提示です。セルフチェック結果に基づいて、眼科での診療やおすすめのOTC目薬、簡単にできるケアなどの対処法をご紹介します。

3つ目は、涙に関する情報コンテンツで目の不具合と関係する涙の役割等の情報を提供することです。

目の不調は感じているけれどアイケアをしていない生活者が、DgSの店頭で「瞳うるるスキャン」のPOPなどに出会って、目をセルフチェックし、実際に眼科を受診したり、OTC目薬を購入したという事例を聞いています。

こういった、DgSと連携した取り組みを通じて、継続的にアイケアをしようと思う人が増えていけば、地域生活者のQOLは向上すると考えています(写真1参照)。

[写真1]瞳うるるスキャンのアプリを告知する店頭POP

薬剤師のカウンセリングでロイヤルカスタマーを育成

[図表1]ヒアレインS使用チェックシート

渡邉 医学的に正しい本質的なアイケアを実現できる製品「ヒアレインS」は、生活者のQOL向上とともに、薬剤師と生活者の関係を深めてくれる目薬だと思います。要指導医薬品であるため、薬剤師はチェックシートを活用しながら生活者にカウンセリングを行い、必要な場合は眼科への受診勧奨も行っていただく必要があります。

[写真2]ヒアレインS

薬剤師がきちんとカウンセリングしていただくと、患者さんの満足度もリピート率も非常に高まることがわかっています。DgSのロイヤルカスタマーを育成していくためには、薬剤師の役割が非常に重要であり、生活者がより最適な目薬を選び満足していただくためにも、私たちは薬剤師へ情報提供を行っていくことが大切であると考えています。

冒頭で、弊社は単に目薬を販売するだけの会社ではないとお伝えしましたが、私たちは、生活者の目に関する悩みに寄り添い、生活者のより良い目の状態に向けたアイケアの推進をおこなうことでQOLを向上させていくことを目指していきたいです。

「ウェルウォッシュアイ」は点眼型洗眼薬の新市場を創造

[写真3]ウェルウォッシュアイ

渡邉 また、衛生的に、目の洗浄ケアができる製品として2021年に発売した「ウェルウォッシュアイ」が、これまでになかった「点眼型洗眼薬」として、生活者のみなさまからご支持頂いています。

目にほこりや花粉、メイク汚れなどの異物が入ったとき、水道水で洗ったり、こすったりされる方も多くいらっしゃるかと思います。しかし、これらの行為は目の表面を傷付けたり、細菌感染など、さまざまなリスクがあり、正しい対処法であるとは言えません。

「ウェルウォッシュアイ」は、エビデンスに基づく確かな製品価値はもちろんのこと、持ち運びができて、いつでもどこでも、気になったその瞬間に目を洗うことができる製品です。そのような新しい価値が生活者に受け入れられ、購入者は、過去1年間に目薬や洗眼薬を購入していなかった方が半数程度であるということも分かっています。つまり、従来のカップ型洗眼薬からシェアを奪うということではなく、まったく新しいお客様を獲得できていることになります。

ほこり、まつげ、メイク汚れ、花粉など、いつでもどこでも目を洗えることは、生活者には朗報だと思いますし、さらに、コンタクトレンズの上からでも目が洗えるため、メイクを落とさなくても、気軽に使用できることが評価されています。そして、すでに点眼型洗眼薬で目を洗うことが習慣化されているユーザーも多くおられます。これからも、「ウェルウォッシュアイ」で新しく正しい目洗い習慣を生活者に提案することで、新市場を創造するとともに生活者への本質的なアイケアの浸透を目指したいと考えています。

—「花粉症対策」のアプリも開発されましたね。

渡邉 「かゆみダス」という花粉症による目のかゆみへの対策をサポートするためのアプリを開発しました。

このアプリは、花粉症シーズンに合わせて予測される気象状況から、かゆみなど目の症状の注意レベルとその対策、お薬の使用時間をプッシュ通知でお知らせするなどの機能実装した医師監修のアプリです。花粉の飛散状況は毎日異なりますし、春のスギ花粉だけでなく、イネやブタクサなど年間を通じて花粉は飛んでいます。地域ごとの花粉飛散状況を毎日お知らせし、適切な対処法や予防法をお知らせするとともに、アプリに症状なども記録することができるため、日々の症状について医師に伝える際に役立てているという声も伺っています。

アイケアの重要性を知っていただき、アイケアの人口を増やすことが重要

—今後の展開について教えてください。

渡邉 生活者の目薬使用率は30%程度と言われています。この数値は、1年間に1回でも目薬を使用した人の割合なので、目薬を定期使用している人はもっと少ないと思います。

生活者の目に関する悩みに寄り添い、生活者のより良い目の状態に向けたアイケアの推進をおこなうことで、生活者のQOL向上に貢献し、結果的に目薬の使用率と市場の拡大を推進していきたいと考えています。

また、生活者のアイケアの裾野を広げるため、継続的にさまざまな商品開発やアイケア啓発を行っていきたいと思います。将来的には、生活者の本質的なアイケア課題解決につながるセルフケアソリューションとしてのサービスを展開できると良いと考えています。

弊社の特徴である、アイケアを軸に、眼科事業部と、生活者向けの薬粧事業部が力を合わせて情報発信を行い、生活者のウェルネスの追求を通じて、目に関する社会課題の解決に向けて取り組んでいきたいです。

 

〈取材協力〉

参天製薬株式会社
薬粧事業部 事業部長
渡邉 整功氏

地域のニーズに応え韓国コスメを「大型書店」でインショップ展開

大阪市に本社を置くオー・エンターテイメントは食品スーパー大手のオークワ(本社・和歌山市)のグループ企業で、予備校、フィットネスクラブ、シネコン、レンタルソフト、書店など多様な領域で事業を展開している。その傘下のひとつである「WAY書店」は書籍売場を中心に店内にはレンタルソフト、文具雑貨が同居するマルチフォーマットである。韓国コスメ売場は文具雑貨コーナーの一角に設けられ予想以上の売上を挙げている。(月刊マーチャンダイジング2022年8月号より抜粋)

韓国コスメを「大型書店」でインショップ展開

[写真1]WAY書店外観(田辺東山店)

専門書を読みたいときは大阪の書店まで足を運ばなければいけない。何とか和歌山県内ですべての書籍ニーズに応えられないか。そんな思いから地元有力企業であるオークワを中心に創業されたのが「WAY書店」である。WAY事業部として和歌山、大阪、奈良、三重、兵庫の各府県のロードサイド、インショップで合計29店舗を出店する(文具雑貨専門店5店舗、カフェ1店舗を含む)。

[写真2]WAY書店内「Pen Terrace」で韓国コスメを展開

WAY書店は300坪~最大1,000坪の売場面積があり、5~7割が書店スペース、残り3~5割をCD/DVDの販売・レンタルと文具雑貨売場が占める。一部の文具雑貨売場は「Pen Terrace(ペンテラス)」という屋号で独立運営、地域に合わせ店ごとに品揃えを変えており現在5店舗を出店、Pen Terrace全店と、その他の店舗を合わせWAY書店全体で現在13店舗に「韓国コスメ売場」がある。

[写真3]CICA(シカ)シリーズの売場。CICAとは「肌再生」や「肌の損傷回復」が期待できる成分で韓国コスメの新定番になっている。マスクやクリームなど多彩なアイテムを揃える

「CD/DVDの販売・レンタルは、サブスクサービスの台頭などで厳しい状況にあります。将来を見据えこの売場を縮小、もしくは撤退し他の売場を拡張する改装を各店舗で進めており韓国コスメの導入もその一環です。WAY書店は和歌山、奈良、三重のルーラル立地の店舗も多く、地域住民の方にどういうニーズがあるかヒアリング調査をしていました。その中で聞いたのが韓国コスメが好きで(和歌山県)田辺市から大阪市の天王寺まで1時間半ほどかけて買物に行くという声でした。大手通販サイトでは品揃えに満足できない、注文してから到着までに時間がかかりすぎるという問題もあり、それなら韓国コスメの売場をつくってこの問題を解決すれば地域の方のご支持が得られるのではないかということで導入を決めました。2020年コロナ禍の最中でしたが田辺東山店がその1号店となりました」(株式会社オー・エンターテイメント 執行役員WAY事業部長兼新規部門開発担当 橋本敏樹氏)。

導入後、予想どおり地域住民には喜ばれ、特に若い女性が売場で涙を流しそうなほど歓喜している場面に遭遇したのが有城氏にとっては印象的だったという。

[写真4]MISSHA(ミシャ)のアイシャドウ「グリッタープリズムシャドウマーブル」など新商品、話題の商品はプロモーションコーナーで展開

韓国コスメ売場は各店の状況により7~20坪と様々だが毎月一定の売上があり利益貢献している。立地により客層は異なるが中心となるのは30代、40代女性。性年齢は既存客と大きな違いがなくても趣味志向の違う新規客を呼び込む効果を挙げている。売れ筋はロムアンドなどメジャーなブランドが主流だが、品揃えでは課題も見えている。

[写真5]シートマスク売場。人気のCICA成分入りを最上段に、細かい機能、成分別の多彩な商品が並ぶ
[写真6]通路のテーブルで話題商品、新商品をプロモ陳列

「田辺東山店の場合、20坪で500SKUほどを展開し導入の初月は約300万円の売上があり、予想以上の数字でした。その後は初月ほどの売上はありませんが堅調な動きを見せています。商圏が狭くリピーターが多いのはいいことなのですが、リピーターに頼りすぎ新規客を呼べるような新しいブランド、商品の導入が遅れている点は改善しなければいけません。流行の移り変わりが早い世界なので卸さんとも連携して商品の入れ替えを図っていきたいと思っています」(同WAY事業部文具・雑貨バイヤー販促・マーケティングプロジェクトリーダー有城昌之氏)

[写真7]肌温度を下げる機能を持ったスキンケア商品「グラシアルウォーターサンクッション」など話題商品をプロモ展開
[写真8]peach Cは韓国のインフルエンサーがプロデュースした新しいコスメブランド。2018年の誕生だが売れ筋として育っている

韓国コスメの人気を支える要因のひとつに韓国ドラマやK-POP、アイドル、食品など韓国文化の根強い人気がある。WAY書店では映像ソフトや雑貨で韓国発のものも扱っており、これらの商品を総合的に捉え店舗全体の活性化を図る。その中にあって韓国コスメの導入は、地域ニーズに応えると同時に新たな客層を開拓するという効果につながっている。

田舎立地ほど効果を挙げやすいSNSマーケティング

オー・エンターテイメントに韓国コスメを供給をしているのが、株式会社ケイラボである(同社詳細は本誌2022年7月号参照)。同社は韓国コスメの製造委託から卸、マーケティングまでを手掛けており、WAY書店での商品導入に際してもインスタグラム(インスタ)を使った広告活動を行い、これが売場の早期立ち上げ(集客、利益貢献)に効果を発揮した。

まず、インスタ広告の基本から紹介しよう。全体の仕組みとしては、特定の画像や動画をインスタユーザーに向けて配信するものだが、アカウント開始時に登録した性年齢、フォローしているアカウント、どのような投稿に対して「いいね!」を押したかなどユーザーに関するデータを基に細かく配信対象を絞ること(ターゲティング)ができる。インスタと同じメタ社が運営するフェイスブックの情報とも連携しているので、インスタと同時にフェイスブックを利用しているユーザーに関しては、ここで収集された情報もターゲティングの際の元データとして活用される。

インスタ広告には、いくつかのターゲティングの種類があるが、例えば「利用者属性ターゲティング」では、「地域(市区町村レベル)」「年齢」「性別」「言語」「属性(学歴、仕事、ファイナンス、子供がいるなど)」といった絞り込みの条件があり、「インタレストターゲティング」では、「興味関心(スポーツや健康、ビジネスなど)」「行動(旅行、記念日、スマホ利用状況など)」などの条件がある。これらの条件に沿って配信対象を絞り込むことで、より効果が期待できる相手に無駄なく情報を配信できるのだ。

[写真9]インスタ広告に使った投稿画像

ケイラボがWAY書店田辺東山店で行ったインスタ広告を見てみよう。

続きは、月刊マーチャンダイジング 2022年8月号で!

 

〈取材協力〉

株式会社オー・エンターテイメント
執行役員WAY事業部長兼
新規部門開発担当
橋本 敏樹氏
株式会社オー・エンターテイメント
WAY事業部文具・雑貨バイヤー販促・
マーケティングプロジェクトリーダー
有城 昌之氏