小売業新しい働き方研究所

知っておきたい「労務管理」基本のキ

第5回「休日」が多いほうが、残業代が高くなる?

前回は「休日」の解説で「休暇」とは違うという点に触れました。ではどのような違いがあるのでしょうか。今回は「休暇」と「休日」の考え方や、「休日」と残業代との関係を見ていきたいと思います。

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「休日」とは労働義務がない日

休日とは、契約上、労働義務がない日のことです。一方の「休暇」とは、労働義務はあるけど、それを免除する日のことです。どちらも、「労働しない日」、つまり「休み」であることには変わりませんから、その違いはあまり気にしなくてもいいようにも思えます。

ただし、残業代(時間外割増賃金)を計算するうえでは違いが出てきます。そこでまず、残業代と休日の関係から、押さえておきましょう。これまでも、残業代の割増率をいろいろとご紹介してきましたが、その計算基礎となるのは通常時の賃金です。

時給の場合は、その時給が通常時の賃金になるため話は簡単です。たとえば、時給1,000円の場合、通常時の賃金も1,000円です。

月給制の「時給」ってどう出すの?

では月給制の場合は、どのような金額をベースに残業代を計算するのでしょうか?月給制の場合も、時給(1時間あたりの賃金額)に換算することが基本になります。

原則となるのは月給※1を「1か月の(平均※2)所定労働時間」で割るという方法です。つまり、月の(平均)所定労働時間が160時間で月給が32万円の場合、32万円÷160時間=2,000円が残業代の計算基礎となる時給になります。同様に、月の(平均)所定労働時間が200時間の場合、32万円÷200時間=1,600円となります。

つまり、月給が一定で、分母となる月の(平均)所定労働時間が増えれば、時給はその分低くなるのです。逆に、月の(平均)所定労働時間が少ないほうが、時給が高くなるということです。

※1 実際には、家族手当や住宅手当などは除いて計算しますが、ここでは簡単に解説するために、その点は考慮していません。

※2 「平均」とするのは、所定労働時間が月ごとに違う場合があるからです。その場合、年間を通じた総所定労働時間を12(か月)で割って1か月あたりの平均を出します。

月給が同じなら「休日」が多い企業のほうが好待遇?

では、1か月(1年)の所定労働時間とはどのような時間でしょうか?それは月間(年間)で決めた「所定労働日」における「所定労働時間」の合計になります。

たとえば、1日8時間が「所定労働時間」の場合、1か月の「所定労働日」が20日の場合は160時間、25日の場合は200時間が、それぞれ月の所定労働時間となります。

では、「所定労働日」とはなんでしょうか?それは、契約上の労働義務がある日のことです。ここで、冒頭の話に戻ります。「休日」は、労働義務がない日でしたね。つまり所定労働日数には含まれません。

そのため、図のように休日が多いほど、所定労働日数が減る(=所定労働時間が減る)ことになります。残業代の基礎となる賃金(時給)を計算する際は、その分母が減るわけですから、結果として割り出される金額は増えます。

そのため従業員からすれば、同じ月給であれば休日が多い企業のほうが、給与条件のうえでも好待遇、という見方もできるかもしれません。

「休暇」は労働義務を免除した日

さて、冒頭では「休日」と「休暇」の違いについて触れました。「休暇」は労働義務があるけど免除した日でしたね。つまり、所定労働日数に含まれるということです。

ですから、図の下のケースのように、「休み」が10日だったとしても、そのうち5日が「休暇」で「休日」が5日の場合は、所定労働日数は25日です。そのため、休日が10日(図の上)で所定労働日数が20日の場合よりも、残業代の計算基礎となる賃金は安くなります。

これが、同じ「休み」であっても「休暇」か「休日」かによって、残業代に違いが出る理由です。

なお、年次有給休暇などは「休暇(労働義務があるけど免除した日)」ですが、休暇という名前がついていても「休日(労働義務がない日)」だというケースもあります。たとえば「年末年始休暇」など、全従業員が一斉にかつ当然に取得するような性質のものは、就業規則で「休日」としている会社が多くあるでしょう。

いずれにせよ、休日や休暇の定義をしっかり理解したうえで、適切に年間の休日日数(=所定労働日数)を管理しておくことが大事になります。

著者プロフィール

小林麻理
小林麻理コバヤシマリ

社労士事務所ワークスタイルマネジメント(http://workmanage.net)代表・社会保険労務士。1978年千葉県生まれ。2000年早稲田大学法学部卒業、NTTデータ入社。商業界「販売革新」編集部などを経て2013年に独立。