小売業新しい働き方研究所

ニュース&事例で解説!わかる労務管理

第7回「雇用シェア」支援も!小売業が使える2021年1月版・コロナ禍対応制度

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染拡大を受け、2020年1月7日に一都三県に緊急事態宣言が発令され、その後、対象が拡大しています。目下、収拾が見えないコロナ禍のなか、「雇用シェア/従業員シェア」と呼ばれている「在籍型出向」の支援強化が予定されています。今回は、こうしたコロナ禍に対応する労務関連の制度の現状について押さえていきます。(※本稿の内容は、1月14日執筆時点のものです。)

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コロナ関連で働けなくなった従業員への補償は?

最初に、第2回でも紹介した従業員の休業に関する主な制度を改めておさらいしておきます(下図)。

 

コロナに関連して働けなくなった従業員への休業補償は?

図のうち、①~④は、平時でも運用されている制度で、コロナ禍に対応する場合は次のようになります。

①「労災保険」の給付:従業員のコロナ感染が「労災認定」されて休業する場合に給付
②「健康保険」の「傷病手当金」:従業員が「業務外でコロナ感染」した場合に給付
③「休業手当」:コロナ禍に関し会社都合で休業する場合、「企業」に支給義務が発生
④「雇用調整助成金」:「企業」の申請にもとづき「休業手当」の一部を「国」が助成

そして⑤⑥が、コロナ禍に対応するための特例措置や新制度です。

⑤雇用調整金の助成率引き上げ→1万5,000円を上限に「休業手当」の最大100%を助成(※1)
⑥会社から「休業手当」の支払いがない場合に、従業員が直接国に申請できる「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」を創設

なお、繰り返し延長・拡充されてきたこれらのコロナ禍対応制度は対象期間が現状、2021年の2月末までですが、さらに延長される可能性もあります(※2)。

※1:条件を満たした場合。また、平時の水準は、中小企業が休業手当の3分の2、大企業は2分の1などとなっています。特例措置では、中小企業は最大100%、大企業は最大4分の3となりました。

※2:「雇用調整助成金」特例措置の延長について、加藤官房長官が検討中であることを表明という報道がでています(日本経済新聞2021年1月8日)、最新情報は各々下記の厚生労働省の専用サイトをチェックしてください。

【雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)】
【新型コロナウイルス感染対応休業支援金・給付金】

保護者の有給休暇制度に対する「小学校休業等対応助成金」

ほかにも、コロナ禍で新設された休業に関する助成金として「小学校休業等対応助成金」があります。「小学校休業等対応助成金」は、労基法上の年次有給休暇(一般に有給、年休と呼ばれているもの)とは「別に」、コロナに関する子供の事情で休業する保護者のための「有給」の休暇制度を設けた企業へ助成金を出す制度です。

(なお、年次有給休暇が一般に「有給」と呼ばれることから「休暇」といえば、「有給」のイメージがありますが、「休暇」は「労働義務を免除する」という意味であり「無給」の場合もあります)

コロナに関する子供の事情とは、子供自身がコロナに感染したり、小学校がコロナ対応のために臨時休業したりする場合などです。助成金の額は、上限1万5,000円として支払った賃金の100%です。この助成金は、対象期間が2021年3月末までに延長されることが2020年12月に決定しました。詳細や最新情報は下記をご覧ください。

【小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設しました】

「雇用調整助成金」を実際に利用した企業と支給金額は?

では、こうした支援制度は、どの程度利用されたのでしょうか。昨年の「雇用調整助成金」の利用状況を見てみましょう。厚生労働省の発表(2021年1月12日)によると、累計約218万件、約2兆5,324億円の支給を決定(2020年~2021年1月1日)しています。

また、東京商工リサーチの発表(2020年12月25日)によると、昨年4月~11月までの期間で雇用調整助成金を計上/申請した上場企業は599社(上場企業の15.6%)、計上額は2,414億5,420万円。そして受給額の上位は、コロナ禍で利用者が激減した交通インフラ関連や、インバウンド消失の打撃を受けた百貨店とあります。

実際、旅客運送業の動向を見ると(下図)2020年5月に活動指数が5.4まで落ち込んだ航空旅客を筆頭に鉄道、道路、水運のそれぞれで、(個別業種の生産活動をもとに計算された)活動指数が大きく落ち込んでいることがわかります。

▲出典:経済産業省・ミニ経済分析室・旅客運送業へのコロナ禍の影響とは(2020年12月23日掲載)

一方、百貨店が属する「小売業」は業態別によって影響はまちまちです。経済産業省が2020年10月に発表した、上期の業態別・商業販売額を見ると(下図)、小売業全体は前年同期比-5.3%で、百貨店が同-33.1%、コンビニエンスストアが同-4.5%でした。

しかしそれ以外の、ドラッグストア(同+9.3%)、ホームセンター(同+7.5%)、スーパー(同+3.8%)、家電量販店(同+3.5%)はいずれも前年同期比増となっています。

▲出典:経済産業省・ミニ経済分析室・2020年上期小売業販売を振り返る(2020年10月9日掲載)

つまりコロナ禍において、(従業員を休業させざるを得ず)雇用調整助成金を利用したり、売上が大きく減少している企業と、売上がむしろ増加している企業の両方が存在するということです。

「在籍型出向」の推進による雇用維持制度の検討

こうした状況を背景に、昨年の時点で大規模な在籍型出向(「雇用シェア」や「従業員シェア」などと呼ばれています)の事例も出てきました。

たとえば、ノジマは日本航空や全日本空輸グループから計300人、スーパーのロピアはワタミから400人、イオンリテールはチムニーから45人を受け入れたことが報道されています(日本経済新聞2020年12月1日)。

さらに、イオンリテールはそのうち10人を転籍させたとのことです(なお出向元に在籍しながら出向先で働く「出向」に対し、「転籍」は退職したうえで働くことを指します)。

しかし、事例のような企業間の人の移動は会社同士の連携が不可欠で、簡単ではありません。

それに対し、「雇用維持のための出向」に対する支援が産業雇用安定センターにて行われています。雇用調整の必要にせまられている企業と現状も人手が不足する企業とのマッチングを無料で支援する「雇用を守る出向支援プログラム2020」です。

▲出典:産業雇用安定センター 雇用を守る出向支援プログラム2020紹介サイト(20年9月28日公開)

そして、2020年12月に閣議決定した第3次補正予算案では、「産業雇用安定助成金(仮称)」の創設が盛り込まれました。出向先と出向元の両企業に出向初期費用の一部(10万円/1人)、さらに出向先には運営経費の最大10分の9(上限1万2,000円/日)が助成されるとのことです。

ただし、この制度は、第三次補正予算の成立、厚生労働省令の改正などが必要であり、現時点では「予定」です。現状、想定されている具体的な内容については、「産業雇用安定助成金(仮称)のリーフレット」をご覧ください。

以上、今回は、2度目の緊急事態宣言を受け、直近のコロナ禍に対する主な対応制度についてご紹介しました。コロナ禍関連の制度は繰り返し延長・拡充が行われてきていますので、最新の情報は随時、ご紹介したサイトなどをチェックいただければと思います。

著者プロフィール

小林麻理
小林麻理コバヤシマリ

社労士事務所ワークスタイルマネジメント(http://workmanage.net)代表・社会保険労務士。1978年千葉県生まれ。2000年早稲田大学法学部卒業、NTTデータ入社。商業界「販売革新」編集部などを経て2013年に独立。