コロナ禍で 特需商品、仮需商品が出現
2019年12月中国で発生した「新型コロナウイルス」は2020年1月、日本でも感染者が確認され社会に大きな影響を与えている。
図表1は新型コロナウイルス感染に伴う週ごとの市場トレンドである(購買金額の前年比)。日本で初の感染者が確認された翌々週にあたる1月27日の週からマスク、ウェットティッシュの特需が始まり一気に店頭が品薄状態になった。紙製品がなくなるという「デマ」が拡散した2月24日の週からは生活者が買いだめに走り生理用品、ベビーおむつなどの需要が急上昇している(仮需要)。仮需は商品供給が追いついたこともあり次第に落ち着くが、マスク、ウェットティッシュは継続的に異常値ともいえる高い数値を維持している。
このトレンドにあり、注目すべきは使い捨て住居用シートクリーナーである。特需の起こった週から堅調に推移し、仮需のタイミングでピークを迎えるが、その後の伸長率も順調に推移している。商品供給も安定しており、店頭での提案次第では、今後さらなる成長が期待できるカテゴリーである。
シートクリーナーは 年間約258億円市場
図表2はシートクリーナー市場の金額推移である。年末大掃除シーズンで市場は拡大しているが、新型コロナが感染拡大した2020年2月以降は堅調に市場は拡大。2020年2~5月の市場成長率の平均値はシートクリーナー全体で130.4%、フロア134.1%、ハンディ117.7%となっており、衛生意識の高まりを背景にフロアが牽引してシートクリーナー市場を拡大させているのが分かる。直近の成長トレンドから見て、消費財メーカー大手のユニ・チャームでは2020年の住居用シートクリーナー市場の金額規模は258億円、前年比119%を見込んでおり、今後大きな成長が期待できるカテゴリーである。こまめな掃除習慣が定着しようとしている今、除菌をキーワードにした提案でさらなる市場活性化が可能だろう。
コロナ禍で生まれる 「家中除菌」の新習慣
厚生労働省は5月4日に「新しい生活 様 式 」を公表 、新型コロナウイルスの感染 リスクがある中 、感染予防のための望ましい生活方法を提示した(図表3 )。マスク着用 、3密回避 、手指洗いなどが示されているが、これらに加えて「こまめな 掃除で家中除菌の新習慣」を提案することで、掃除用品の大きな需要開拓が期待できる。住居内にはドアノブ 、照明スイッチ、家具・テーブルなど見えない菌が付着してい る場所は多い。その中でも床は面積が広い分、菌が付着する可能性も高い。これにいかに気づいてもらえるかが提案成功のポイントだ。
高まる清潔意識。床の除菌ニーズは開拓できる
ユニ・チャームの調査によれば、約79%の人がコロナ前と比較して除菌意識は高まったと回答している。具体的な行動としては「ドアノブや電気のスイッチ、階段の手すりを除菌シートで拭くようになった」「キッチン回りをアルコール除菌する頻度が上がった」「食卓をこまめに除菌シートなどで拭くようになった」などが挙がっている。
図表4では3つの変化から、シートクリーナー市場拡大の可能性を見ている。まず、新型コロナウイルスの感染拡大により平日、休日の在宅時間は増えている(環境変化)。
次に、感染予防の観点から清潔意識は高まり、在宅時間の長時間化と合わせ住居掃除の意欲も高まっている(意識変化)。
さらに、シートクリーナーの使用率、使用枚数は拡大しており環境、意識の変化で実態も変化している。いまこそ市場拡大のチャンスなのだ。
しかし、床の除菌を積極的に意識している人はまだ少なく、「いわれてみると気になる」という意識レベルの人が多い。毎日掃除習慣の定着、シートクリーナーの使用率アップを追い風に、素足で過ごす時間が増え、菌の移動リスクが高まる夏に床除菌の必要性をアピールすれば、ニーズ開拓の可能性が高まる。
売場ゾーニング見直し提案
住居用掃除売場の一般的なゾーニングはトイレ用30%、浴室用40%、洗面用5%、リビング25%となっていることが多い。今後除菌ニーズが高まり“家中除菌”の新習慣が定着すれば、床掃除を中心にリビング用の売場構成比を30%に上げるといった見直しも必要になる。