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関連商品を集積した感染症対策売場は定番化へ

正しい手洗い情報発信で、ウイルス・感染症対策商品のニーズを高める

新型コロナ対策で、手洗いや咳エチケットなどが広く実施されている影響で感染症にかかる人が激減しています。このような状況において、感染症対策の売場をどのように作るべきなのでしょうか?新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策を「手洗い」の面から啓発する売場作りを紹介します。

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正しい知識を普及し関連商品ニーズを高める

厚生労働省(厚労省)の発表によると、日本政府の新型コロナウイルス感染症への主要な対策は時系列で、①国内侵入を遅らせること、②集団発生を防ぎ感染拡大を抑制、③重症化の防止の3段階となる。原稿執筆時点では②の段階にあり、そのためには「換気の悪い密閉空間」、「多数が集まる密集場所」、「間近で会話や発声をする密接場面」、3つの「密」を避けることを呼び掛けている。

具体的な行動として、新型コロナウイルスを含む感染症対策の基本は「手洗い」
や「マスク着用を含む咳エチケット」の2つ。

ウイルスは日常生活で触れるドアノブや電車のつり革、エレベーターの階数ボタンなどに付着している可能性があり、政府では外出先からの帰宅時、調理の前後、食事前などこまめな手洗いを推奨している。図表1は厚労省の発表している正しい手の洗い方である。

平常時には、正しい手洗い方法などを特に意識することは少ない。このような機会に公衆衛生の知識が広まることで、感染拡大が収束した後も関連商品のニーズは高まるだろう。

「石けん」と「合成洗剤」の区分は界面活性剤が基準

手洗いなどに用いる洗浄剤には汚れを落とす成分である「界面活性剤」を基準に区分すると、「石けん」と「合成洗浄剤」の2種類に分かれる。

「石けん」という名称は台所用石けんや洗濯石けんのように洗浄剤一般を指すことが多いが、ここでいう石けんとは牛脂やパーム油など自然由来の油脂からつくられる界面活性剤を意味する。これに対して合成洗浄剤は石油などを原料とし化学合成してつくられた界面活性剤のことである。

石けん、合成洗浄剤にはそれぞれ特徴があり、利点・欠点がある。石けんは天然原料を用いているので、肌にやさしく廃棄後も自然物質に分解され環境に負荷をかけない。一方で合成洗浄剤のように原料を選んだり、製法を変えることで、洗浄力の強化や香り付けといった特別な機能を持たせにくい。

これに対して合成洗浄剤は化学的な製法を駆使して機能性を変えることができる。その代わりに肌や環境への負荷は石けんよりも高い。

石けんがウイルス除去に有効な理由

石けんは水となじみやすい「親水性」と油となじみやすい「疎水(親油)性」を併せ持っている。汚れた成分(ウイルス含む)が付いた肌を石けんで洗うと油となじみやすい疎水性で汚れを取り囲み浮かせ、これを水で流すことで汚れと親水性が結びついて肌から除去される。疎水性で汚れを浮かせ、親水性でそれが除去されるというメカニズムだ。

一方、ウイルスには薄い脂質の膜=エンベロープを持つエンベロープ・ウイルスとこれを持たないノンエンベロープ・ウイルスとがある。新型コロナウイルスは前者である。

石けんの性質の中にはエンベロープ・ウイルスの膜をこじ開け、分解を促す働きがある。コロナウイルスが手に付着していても、石けんで洗うことで、分解を促しバラバラにして流すことができる(※参考文献:ナショナルジオグラフィック日本版サイト)。

関連商品を集めた感染症対策売場を通年で設置

新型コロナウイルス感染症が重大な社会問題になっているいま、ドラッグストアでもこれに対応する売場づくりで生活者をサポートしたい。現状、マスクの欠品が続いているが、手洗いや咳エチケットの習慣は新型コロナウイルスが終息した後も残る可能性は高い。また、感染症のリスクは年間を通じて存在する(図表3)。

ウイルス・感染対策商品はまだ売場でバラバラに置かれていることが多く、必要な商品をひとつの棚に集めた通年の売場は今後必要だ。お客の利便性、健康に貢献するだけでなく、買上点数アップも期待できる。

図表4はウイルス・感染症対策売場の一例である。最上段に機能性・単価の高い小容量のマスクをフックで陳列。その下には手肌をケアするハンドクリームを置く。

頻繁に手を洗い、アルコールなどで消毒すると手はあれがちだ。また、この時期、衛生面からネイルを控えている女性もおり、手肌の美しさは特に気になる。女性向けの高機能・高単価、男性・ファミリー向けの汎用、2タイプは揃えたい。

以下、消毒ジェル、ハンドソープ、除菌剤、マスク箱と続く。ハンドソープの棚では、手肌へのやさしさ、エンベロープ・ウイルスへの有効性を考え、石けんを中心とした品揃えを提案する。

こうした売場で正しい手洗いや咳エチケットなど情報発信すれば、商品以外でもお役立ちになるだろう。