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ケンタッキーフライドチキンは利用者が倍増

第25回すき家、KFC、丸亀…コロナ禍で利用者増えた外食チェーンの共通項

新型コロナの感染拡大により、在宅勤務や時差出勤などの働き方だけではなく、ライフスタイルそのものが変化しています。そこで今回は、全国のアンケートモニターから独自に収集する「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」から、新型コロナ感染拡大前後における「外食サービス利用」について調査をしました。どのような施策がコロナ禍における外食売上回復のポイントとなるか読み解きます。

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新型コロナ感染拡大後52%が外食を月1回以下に

まずは、新型コロナ感染拡大前(2020年2月頃まで)と後(2020年3月頃~現在)における、外食利用回数の変化(店内飲食・テイクアウト・ドライブスルーを含み、デリバリーは含まず)を調査しました。

外食利用回数の変化をみると、感染拡大前は、「月に2~3回程度(33.8%)」と回答した割合がもっとも多かったのに対し、感染拡大後は、「月に1回以下(52.4%)」と回答した割合が、半数を超え最多となりました。

また、「週に1回以上外食をしていた」人の割合は、34.6%→21.7%に減少していたことから、外食離れの傾向が強まっていることがわかります。

次に、感染拡大前と後において、外食の利用で変化したと感じることを調査しました。

外食の利用で変化したと感じることを選択肢で尋ねると、前出の「利用回数の変化(53.2%)」が最多となり、2人に1人が回答していました。

その理由からは「週末は夫婦でショッピングモール等に買い物に出たついでに夕飯をレストランやフードコートで済ませて帰ることが多かったが、外出もしなくなったので行かなくなった(40代女性)」「特に行かなくなったのは、夜の居酒屋チェーン。ほとんど行っていない(60代男性)」といった内容の、様々なジャンルの外食チェーンにおいて、店内利用回数の減少を挙げる声が多くみられました。

他にも、「利用するチェーン(店舗)の変化(17.1%)」、「利用時間帯の変化(14.5%)」が続き、その理由には、「以前は仕事の打ち合わせでドトールなど使っていたが、在宅ワーク中心となり行かなくなった(50代男性)」や、「在宅勤務中のランチに、ケンタッキーやバーガーキングなどのファーストフードでテイクアウトすることが多くなった(40代男性)」といった、在宅勤務の浸透や、「ランチよりも夕食にテイクアウトをよく利用するようになった(30代女性)」、自炊疲れから解放され、自宅で家族団らんを楽しむ食事としての利用などが挙げられました。

感染拡大後の夕食の店内飲食の割合は、およそ半減

次からは、外食の利用シーンの変化をみてみましょう。

外食の利用シーンを選択肢で尋ねると、感染拡大前は、「朝食」「昼食」「夕食」「おやつ・休憩」の目的において店内飲食の割合がテイクアウトを上回っていましたが、感染拡大後は、「朝食」を除き、テイクアウトの割合が増えていることがわかります。

テイクアウトの割合は、「昼食(32.8%→46.1%)」と「夕食(23.3%→36.5%)」では、ともに増加した一方で、店内飲食の割合は、「昼食(64.6%→39.1%)」、「夕食(52.6%→28.1%)」となり、特に感染拡大後の夕食の店内飲食の割合においては、およそ半数の減少となりました。

また、「朝食(10.8%→5.1%)」の店内利用の割合は、半減したにも関わらず、昼食や夕食のようにテイクアウト利用の割合は増加せずに、ほぼ横ばいとなり(5.2%→4.7%)、「出社前に会社近くのマクドナルドでコーヒー購入が日課であったが、今はテレワークとなり朝の利用が減った(30代男性)」「以前は会社の近くにある吉野家やガストで朝食をとっていたが、今はテレワークとなり朝の利用が減った(50代男性)」といった、従来は出勤前の朝の時間帯に利用していたのが、在宅勤務が広がったことで、利用そのものが減少している傾向が表れていることがわかります。

今までの調査結果から、主に利用シーンにおいては、「昼食・夕食」の時間帯の、店内飲食からテイクアウトにシフトしつつあることが傾向として表れています。
現在においても収束の目途が立たず、外食産業は厳しい状況が続いている中ですが、今回の調査対象のうち、新型コロナ感染拡大前と比較して、「外食サービスの利用が増えた(N=357名)」と感じている方が一定数いました。

コロナ禍で利用が増えた外食5チェーンとは

次からは、利用が増えたといった内容のコメントがみられた外食チェーン5社「すき家(ゼンショーホールディングス)」・「ケンタッキーフライドチキン(日本KFCホールディングス)」・「丸亀正麺(トリドールホールディングス)」・「スシロー(あきんどスシロー)」「サイゼリヤ(サイゼリヤ)」をセレクトし(レシート枚数順に記載)、全国のアンケートモニターから独自に収集する「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」から、外食全体のレシートからそれらチェーンを利用のレシート出現率をみて、各社が実施した、コロナ禍における売上回復の施策を利用者のコメントから探ります。(調査期間:2020年2月~6月、外食チェーン利用のレシート合計120,694枚)

コスパの良さが魅力の「すき家(ゼンショーホールディングス)」

2月の出現率は、7%台で3月は4%台に落ち込んだもの、4月から6月にかけては、およそ6%台をキープし、特に緊急事態宣言中の4月は、外出自粛などの制限がありながらも、前月から出現率の2%以上の上昇をみせていました。
その理由として、「すき家、松屋など安いテイクアウトが増えた(50代女性)」、「吉野家、すき家が値段が安いので家族でよく利用する(50代男性)」といった、気軽に食べることができ、家族分購入した場合でも、コストパフォーマンスのよさを挙げるコメントが多くみられました。

テイクアウトのシステム好評「ケンタッキーフライドチキン(日本KFCホールディングス)」

2月から5月における出現率は、およそ3%台であったに対し、6月はレシート枚数が754枚→1,596枚に上昇し、それにより出現率を6%に増加していました。緊急事態宣言明けの6月は、外食全体のレシート枚数自体が増加傾向となった中でも、大きく健闘していたと言えるでしょう。

その理由として、「ケンタッキーのテイクアウトのシステムがしっかりしている(30代男性)」、「マクドナルドとケンタッキーのドライブスルーは接触が最小限なので利用が増えた(40代女性)」といった、ドライブスルーを含めたテイクアウトのオペレーションを挙げる声や、図表2のコメントにあったように、在宅勤務中のランチ需要の拡大においても、好調な理由の一つであると考えられます。

テイクアウト開始、スピード提供で利用者増の「丸亀正麺(トリドールホールディングス)」

2月から5月における出現率は、およそ3%台であったに対し、6月には4%台に増加しています。その理由としては、「以前はテイクアウト自体がなかったが、昼にテイクアウトを利用するようになった(20代女性)」といった内容のコメントが多く、5月26日からサービスを開始したテイクアウトが需要拡大につながっていることがわかります。他にも、「天ぷら5個以上で10%割引があるから(30代女性)」といった、企業側からは購入単価アップを狙いつつも、消費者にはお得なまとめ割引や、「短時間で食事が済ませられる(50代男性)」といった、入店してからのスピーディー提供スタイルが、感染症対策として捉えられていることが考えられます。

テイクアウトがお得な「スシロー(あきんどスシロー)」

4月の緊急事態宣言中のレシート枚数約300枚から、6月にはレシート枚数が約2倍の600枚に増加し、出現率は2%台に上昇しています。その理由には、「スシローやくら寿司など短い滞在時間で済ませられる店を利用したり、デリバリーも利用するようになった。(50代女性)」や、「テイクアウトの割引があるので(30代男性)」といった声がありました。

密を避けるといった意味では、大々的なキャンペーンの実施が難しくなっていますが、直近では8月のお盆期間限定で、持ち帰り商品が割引になるキャンペーンを実施しています。需要が高まる時期に合わせ、事前の注文や受け取り時間を指定することで、安心して来店喚起につながるキャンペーンの打ち出し方も今後各社で取り入れることができる施策の1つかもしれません。

メニューの工夫が受け入れられた「サイゼリヤ(サイゼリヤ)」

4月の緊急事態宣言中のレシート枚数約200枚から、6月には400枚近くにまで増加しています。

コメントをみると、女性からの支持が高いことがわかり、「ランチよりも夜ご飯用のテイクアウトをよく利用するようになり、特にサイゼリヤはテイクアウトメニューが充実しているため利用頻度が増えた(30代女性)」メニューの工夫があり目新しさを感じ利用するようになった(50代女性)」といった、家族で楽しむことができる上、テイクアウト限定などのメニュー投入も利用者増に貢献していると言えるでしょう。

全体的に外食の利用が減少している中で、感染拡大前よりも「外食の利用が増えた」と感じている方のコメントからは、テイクアウトやドライブスルーなど、注文から商品受け渡しまでのサービスの速さ、事前注文による割引サービス、継続利用を促すメニューのバリエーションやコストパフォーマンスなど、家で食べる需要に対する各社の対応が、自社のファンを増やすための強みとなり、感染症対策を行うチェーンとして、イメージアップにもつながっていることがわかりました。消費者にとってより便利で安心して利用できるチェーンの在り方を探っていく必要がありそうです。

著者プロフィール

石井麻美
石井麻美

mitoriz(旧ソフトブレーン・フィールド)所属。広告代理店の企画営業や、制作会社でのメディアプロデューサーなど10年以上インターネットメディアに関する職に従事。2017年にソフトブレーン・フィールド株式会社に入社。入社後は経営企画部に所属し、POB会員メディアの企画運営および、POBデータを利用した調査リリース、および業界紙への記事執筆を行う。