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高まる「まとめ買い」傾向、在宅勤務で買物時間帯も変化

第24回コロナ禍での買物行動と食卓事情の新日常を80万枚のレシートで読み解く

新型コロナの感染拡大により、在宅勤務や時差出勤などの働き方だけではなく、ライフスタイルそのものが変化しています。そこで今回は、全国のアンケートモニターから独自に収集する「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」から、新型コロナ感染拡大前(2020年1月)、緊急事態宣言中(2020年4月)、緊急事態宣言解除後(2020年6月)における買物行動の変化を分析しました。

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高まる「まとめ買い」傾向・在宅勤務で変わる買物時間帯

最初に、新型コロナ感染拡大前(昨年12月~今年2月頃)と、感染拡大後(今年3月頃~現在)におけるスーパーやコンビニなど買い物頻度の変化を確認するためにアンケート調査を実施しました。(N=3,650名、20代~60代男女、2020年7月実施「買い物行動に関するアンケートより」)

アンケート結果では、買い物の頻度は、新型コロナ感染拡大前後いずれも、「週2~3日に1回程度<新型コロナ感染拡大前46.4%→感染拡大後45.8%>」が最多となり、半数近くを占めています。

「ほぼ毎日<新型コロナ感染拡大前9.3%→感染拡大後6.5%>」は、2.8ポイントダウンした一方で、「週1回程度<新型コロナ感染拡大前25.2%→感染拡大後30.4%>」が、5.2ポイントアップしていたことから、まとめ買い傾向が強まっていることが考えられます。

買い物行動の変化について、多くの方のコメントからは、頻度を減らす・短時間で済ませる・人が少ない時間帯に一人で行くなどといった、できるだけ人との接触を避ける「感染予防対策」を挙げる声だけではなく、「会社帰りに何か所も回るのが怖いので、買うのはスーパーのみ(50代女性)」や、「自宅近くのコンビニが一番近いので、利用するようになった(40代女性)」といった、利用する業態が変化していたことがわかりました。他にも就業中の方からは、「在宅勤務中は、早い時間にスーパーに行けるようになった(20代女性)」や、「週末にまとめ買いであったが、在宅勤務によりお昼に買い物に行けるようになった(40代女性)」といった、在宅勤務によりスーパーに行く時間や回数が変化したといった声もありました。

生活必需品をスーパーで買いそろえる

次からは、全国のアンケートモニターから独自に収集する「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」から、「スーパー」・「コンビニエンスストア」・「ドラッグストア」3業態において、新型コロナ感染拡大前(2020年1月)、緊急事態宣言中(2020年4月)、緊急事態宣言後(2020年6月)における、買い物行動の変化をみてみましょう。

まずは購入状況(1レシートあたりの平均購入金額・平均購入点数)を分析しました。

各業態ともに、「平均購入金額・平均購入点数」が、新型コロナ感染拡大前(1月)よりも、緊急事態宣言中(4月)に増えており、特に平均購入金額は、「スーパー<1,222円→1,494円:272円アップ>」となります。

買い回りしなくなったといったコメントにも表れていたように、スーパーで食品や日用品などの生活必需品を、買いそろえる行動が読み取れます。

また、「コンビニエンスストア<508円→600円:92円アップ>、「ドラッグストア<1,095円→1,180円:85円アップ>となり、外出自粛や在宅勤務により、自宅近所のコンビニ・ドラッグストアなどの店舗を利用する傾向も表れています。

新型コロナ感染拡大により、できるだけ家で食事をする、外食せずにテイクアウトを利用するなど、食に関しても新様式が浸透しつつあります。

次からは、購入レシートに出現している商品カテゴリの推移から、「食卓事情の変化」を分析しました。

購入レシートから、各カテゴリの出現率をみると、3業態ともに「食品カテゴリ」が最大となります。

業態別に、まずはスーパーとコンビニエンスストアの購入レシートをみていきます。新型コロナ感染拡大前(1月)と、緊急事態宣言中(4月)を比較すると、「スーパー<76.9%→80.7%:3.8ポイントアップ>」「コンビニエンスストア<63.6%→66.4%:2.8ポイントアップ>と増えていたことから、かつてない状況に対する不安から冷凍食品や、お菓子類・パン類など日持ちする食品が多く購入されていました。また、「生鮮・総菜」、「飲料」、「酒類」の出現率は、新型コロナ感染拡大前(1月)よりも、緊急事態宣言解除後(6月)のほうが高まっていることから、家での食事、家飲みなどの機会が増えていることがわかります。

次に、ドラッグストアの購入レシートをみると、「食品」カテゴリの出現率5割をキープしており、緊急事態宣言中(4月)に発生した「マスク」「紙製品」などの日用品の買い占めにより、一時的に「日用雑貨<36.5%→42.4%:5.9ポイントアップ>上昇しましたが、緊急事態宣言解除後(6月)は落ち着きをみせています。

高まる自宅調理ニーズ

食卓事情の変化をさらに読み解くために、「生鮮・総菜」カテゴリに着目して、出現率を分析しました。

「生鮮・総菜」カテゴリの、子カテゴリ「水産」「総菜類」「畜産」「農産」別で出現率をみると、食材を購入して調理をする頻度の高まりや、総菜などを購入し自宅で食事をするといった行動により、緊急事態宣言解除後(6月)においても、緊急事態宣言中(4月)とほぼ横ばいの数値となり、この食に関する新様式が日常化しつつあることがうかがえます。

「コンビニエンスストア」においては、緊急事態宣言解除後に、「総菜類<23.8%→26.4%:2.6ポイントアップ>しており、出社して仕事をするようになった方が会社近くのコンビニエンスストアを利用し始め、スーパーやドラッグストアよりも出現率が上昇しています。

他にも買い物行動の変化に関するアンケートでは(参考図表1)、買物時の変化をフリーコメントで尋ねており、「セルフレジに並んで購入することが増えた(40代女性)」、「なるべくキャッシュレス決済で、色々なモノに触らないようににしている(60代男性)」といった、店員と接触を避けることやキャッシュレス決済を活用し始めたといった声がありました。

決済での現金利用は3割を下回る結果に

実際に決済方法がどのように変化したのか、「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」で分析をしました。

「緊急事態宣言中(4月)」と「緊急事態宣言解除後(6月)」の決済方法をみると、4月の決済方法、1位は「現金(30.4%)」、2位は「クレジットカード(19.3%)」、3位は「(WAON,nanaco,楽天Edyなどの)流通系電子決済(9.6%)」、4位は「PayPay(8.3%)」、5位は「全額クーポン/商品券(6.7%)」となりました。

6月の決済方法をみても、順位に大きな変動はありませんでしたが、緊急事態宣言中(4月)と比較すると、現金の利用者が3割を下回り(27.1%3.3ポイントダウン)、7割以上の方がキャッシュレス決済をするようになりました。

今回の分析結果から、コロナ禍における買い物行動をまとめると、買い物頻度は低下し、「週1回程度」と回答した割合は、感染拡大前と後では25.2%から30.4%に増加し、スーパーにおけるレシートからは平均購入価格と平均購入点数が増え、感染予防対策のために、買い回りせずに、スーパーで生活必需品を買いそろえ、まとめ買いをする傾向が強まっていることがわかりました。決済方法も7割以上の方がキャッシュレス決済をするように変化しました。

他にも、コロナ禍でのワークスタイルやライフスタイルの変化が影響し、「食卓事情」も変化しており、スーパーを利用したレシートからは食品の出現率が1月の76.9%から4月には80.7%まで上昇し、中でも生鮮食品や調味料の出現率が上昇していることから自宅で調理する頻度が高まっているとみられます。

著者プロフィール

石井麻美
石井麻美

mitoriz(旧ソフトブレーン・フィールド)所属。広告代理店の企画営業や、制作会社でのメディアプロデューサーなど10年以上インターネットメディアに関する職に従事。2017年にソフトブレーン・フィールド株式会社に入社。入社後は経営企画部に所属し、POB会員メディアの企画運営および、POBデータを利用した調査リリース、および業界紙への記事執筆を行う。