ChatGPTは小売業に革命をもたらすのか? 効率的な業務運営のための活用アイデア

AI技術の進化は小売業界を変革するのでしょうか?昨今大規模言語モデルのChatGPTに注目が集まっています。顧客対応、業務効率化、従業員教育の強化で競争力アップを実現するといわれているChatGPT。これを活用して未来の小売業界をリードするための秘策を探ります。

1. 期待が高まる小売業におけるChatGTP=LLM活用

近年、小売業におけるAI活用への期待が高まっています。特に今注目を集めているのが「ChatGTP」です。

ChatGPTは、AI搭載の高性能な会話モデルです。これはLarge Language Model(大規模言語モデル)(LLM)と呼ばれる、自然言語処理技術を用いたAIモデルの一種になります。

ChatGPTは、人工知能の研究開発機関である「OpenAI」が開発した最新のLLMで、自然な会話能力と幅広い知識を持ちます。自然なやりとりができること、スピーディーに回答が得られることなどから、リリースから2ヶ月あまりで全世界ユーザー1億人を突破。多くの業界で活用できるのではないかと期待されるようになりました。

実際に使ってみたい方は、こちらのリンク先の「Try ChatGPT」をクリックしてユーザー登録をすれば無料で利用できますので試してみてください。

顧客ニーズの多様化や競合他社との差別化が求められる現代において、ChatGPTはパーソナライズされた顧客対応やタイムリーな情報提供を実現し、顧客満足度の向上につながります。また、効率的な在庫管理や自動化された業務プロセスにより、コスト削減や業務効率化が可能となります。

さらに、AIを活用した従業員教育、データ分析などにも活用できると考えられており、小売業におけるChatGPT(=LLM)の重要性は非常に高く、その活用は企業の競争力を向上させるための鍵となりそうです。

今後もAI技術の進化が続く中で、小売業はChatGPTを上手く取り入れ、顧客ニーズに応える柔軟性と効率性を追求していくことが求められます。

質問をするとこれぐらいの回答が数秒で示されます。

以下に、期待される具体的な活用例を挙げていきます。

(なお、本稿でご紹介するのは現在実装できる機能ではなく、LLMという概念が小売業において実現できるであろう機能について列挙したものであることにご留意ください)

活用案1)顧客対応: よりスムーズで個別化された顧客サービスの提供

ChatGPTを活用することで、小売業における顧客対応が劇的に向上します。AI技術の進化により、顧客とのコミュニケーションがスムーズになり、個別化された対応が可能になるのです。これにより、顧客満足度の向上やリピート率の増加が期待できます。

ChatGPTは過去の購買履歴や顧客の好みを分析し、それに応じたおすすめ商品やサービスを提案します。これにより、顧客は自分に合った商品を簡単に見つけることができ、ショッピング体験が向上します。また、従業員もAIの助けを借りて、よりパーソナライズされた接客対応ができるようになるでしょう。

ChatGPTは言語や文化の違いを理解する能力を持っています。これにより、多様な顧客層に対して適切な対応ができるようになります。特に、観光客が多い地域、インバウンドの取り込みが期待されている業態では、言語の壁を越えたサービスが提供できることが大きなアドバンテージとなるでしょう。

また、ChatGPTを活用したチャットボットが顧客からの問い合わせに迅速に対応することも期待できます。売場の案内、在庫の確認などで、従業員が忙しい時間帯でも顧客を待たせることなく、タイムリーなサポートが提供できるのです。

以上のように、ChatGPTの活用により、顧客対応がよりスムーズで個別化されたものとなり、顧客満足度やリピート率の向上が期待できます。このような革新的な顧客サービスは、小売業において競争力を高める重要な要素となるでしょう。

活用案2)在庫管理: AIを活用した効率的な在庫管理と分析

ChatGPTを利用することで、小売業における在庫管理が効率的かつ正確に行われるようになります。これは、在庫の最適化や過剰在庫の削減、さらには潜在的な需要の把握など、ビジネス運営において重要な要素になります。

ChatGPTは過去の販売データや季節性、トレンドを分析することができます。これにより、適切な在庫量を予測し、過剰在庫や品切れのリスクを最小限に抑えることができます。また、この予測をもとに、商品の発注計画や棚卸しスケジュールを最適化することが可能になります。

ChatGPTは商品の人気度や顧客の好みをリアルタイムで分析し、店舗ごとに最適な棚割・在庫構成を提案することができます。これにより、各店舗の特性に合わせた棚割・在庫管理が実現し、売上向上に繋がります。

ChatGPTは潜在的な需要を見つけ出すことも可能です。例えば、顧客の購買履歴や検索履歴を分析することで、これまで見過ごされていたニーズを発掘し、新たな商品ラインナップや販売戦略を展開することができます。

ChatGPTは在庫管理に関する情報や問題を従業員に効果的に伝えることができます。これにより、従業員は在庫管理に関する知識を習得し、より効率的な業務運営が可能となります。

ChatGPTを活用することで、小売業における在庫管理が効率的で正確に行われるようになり、在庫の最適化やビジネス運営の効率化に大きく貢献します。

活用案3)マーケティング戦略: ChatGPTを用いた効果的なプロモーション手法

ChatGPTの活用により、小売業におけるマーケティング戦略がより効果的かつ革新的に展開できます。AI技術を利用して、顧客に対するコミュニケーションやプロモーション活動が最適化され、売上や顧客満足度の向上につながります。

まず、ChatGPTは顧客の購買履歴や嗜好を分析し、パーソナライズされたマーケティングキャンペーンを実施することができます。これにより、顧客が興味を持ちやすい商品やサービスをターゲットにすることができ、プロモーションの効果が最大化されます。

また、ChatGPTはSNSやウェブサイト上の顧客の反応やトレンドをリアルタイムで分析することができます。これにより、マーケティング戦略を柔軟に変更し、常に最適なプロモーション活動を展開することが可能になります。さらに、SNSやウェブサイト上でのチャットボットを活用することで、顧客との対話を通じたマーケティングも効果的に行うことができます。

さらに、ChatGPTはマーケティング活動の効果を定量的に分析し、改善点や新たな戦略を提案することができるでしょう。これにより、マーケティング戦略の継続的な最適化が可能となり、効果的なプロモーションが実現します。

風邪薬のtwitterでのプロモーションを対話しながら作成してみています。

また、ChatGPTは顧客の声やフィードバックを収集し、商品開発やサービス改善に役立てることができます。これにより、顧客ニーズに沿った商品やサービスを提供することができ、競争力の向上につながります。

活用案4)従業員教育: AIを活用した研修・教育プログラム

ChatGPTを活用することで、小売業における従業員教育が効果的かつ効率的に行われるようになります。AI技術を用いた研修・教育プログラムにより、従業員のスキル向上やモチベーションの向上が期待できます。

まず、ChatGPTは従業員が抱える疑問や課題に対し、リアルタイムで的確な回答を提供することができます。これにより、従業員は自分のペースで学び、スキルを向上させることができます。

また、ChatGPTは個々の従業員の学習履歴や進捗状況を分析し、パーソナライズされた研修プログラムを提案することができます。これにより、従業員一人ひとりに合った効果的な研修が実現し、学習効果が最大化されます。さらに、従業員のモチベーションも向上し、長期的な働きやすさとスキルの維持・向上が期待できます。

さらに、ChatGPTはケーススタディやロールプレイを通じて、実際の顧客対応をシミュレーションすることができます。これにより、従業員は実践的な状況での対応力を養い、顧客対応スキルを磨くことができます。

来店客とのロールプレイ実験。

最後に、ChatGPTは研修・教育プログラムの効果を定量的に分析し、改善点や新たな教育方法を提案することができます。これにより、研修プログラムの継続的な最適化が可能となり、従業員教育の質が向上します。

総じて、ChatGPTを活用した従業員教育では、効果的かつ効率的な研修・教育プログラムが実現し、従業員のスキル向上やモチベーションの向上が期待できます。これにより、小売業における顧客対応力や業務運営の質が向上し、企業全体の競争力が強化されるでしょう。

ChatGTPが苦手なこと

ChatGPTはAIです。AIはデータに基づいて学習するため、未知の状況や新しいトレンドに対する適応力に限界があります。また、現状のChatGTPはインターネットのリアルタイム参照には対応していないので、最新データを持っていないという問題があります。

正しくない情報をあたかも正しいかのように回答してくることも少なくありません。ですから、結果が正しいか正しくないかを人間が確認し、修正する必要があります。

また、企業の情報をブラックボックスにインポートすることの賛否も問われています。個人的に利用することは問題なくても、企業として導入するには、OpenAIのChatGPT以外の選択肢を探す必要がありそうです。

さらに、AI技術の導入や維持にはコストがかかることも懸念点であり、導入効果が十分に見込めない場合や、中小企業には負担になる可能性があります。

まとめ: ChatGPTがもたらす小売業界へのインパクト

確かにChatGPTは元データをAIで分析して実務に活用するシステムを試作するのに最適の道具ということはできるでしょう。しかし実務に供するためには、さらなるテストやシステム面での対策などが必要となります。

ChatGPTをはじめとするLLMの利活用は、小売業界に大きなインパクトをもたらすことは間違いなさそうです。顧客対応の向上、業務効率化、従業員教育の強化など、様々な分野でその効果が実感されるようになることでしょう。これにより、顧客満足度やリピート率の向上、コスト削減、競争力の強化が期待できます。LLMの活用が小売業界全体の成長を支えるカギとなるかもしれません。

実はこの原稿も8割はChatGPTが執筆したものです。皆さんはどのように感じましたか?ぜひ編集部に感想をお寄せください。 @mdnextjp

四国・中国地方で独特の存在感を示すレデイ薬局。沿革、業績、特徴を解説!

2015年にツルハグループの一員となったレデイ薬局。四国・中国地方に店舗を展開する優良ドラッグストア企業で、グループ入り当時は大型提携として話題になった。現在も中国・四国地方で独自の存在感を示し続けている同社の沿革、業績、特徴のポイントを解説!「月刊MD note版」では社長の白石氏インタビューと最新300坪型標準店舗のレポートもお届けする。

「月刊MD note版」ではレデイ薬局の今を読み解く社長 白石明生氏インタビュー記事と最新店舗レポートを公開中!詳しくは以下のリンクから
>> 白石氏インタビュー https://note.com/mdnext/n/nb679222a19af
>> 店舗レポート https://note.com/mdnext/n/n35a7480c87f8

沿革

レデイ薬局は1959年、愛媛県松山市に創業された「銀天街ストアー」が前身。1968年には株式会社レデイ薬局が愛媛県今治市に設立された。

1990年代には、医薬品小売業複数社を吸収合併し、規模を拡大。四国・中国地方に2店舗展開を進める。

2006年にはジャスダックに上場。

2007年には株式会社フジと資本業務提携契約を、2008年には株式会社メディコ・二十一と株式交換契約を締結。

2015年に株式会社ツルハホールディングス及び株式会社フジと資本業務提携契約を締結。TOBを行い上場廃止となる。現在は、ツルハホールディングスのグループ企業(所有株式51%)かつ、フジ・リテイリングの関係会社(所有株式49%)となっている。

「月刊MD note版」ではレデイ薬局の今を読み解く社長 白石明生氏インタビュー記事と最新店舗レポートを公開中!詳しくは以下のリンクから
>> 白石氏インタビュー https://note.com/mdnext/n/nb679222a19af
>> 店舗レポート https://note.com/mdnext/n/n35a7480c87f8

業績

科目 2020年5月期 2021年5月期 2022年5月期
売上高 72,857 78,837 79,599
経常利益 3,974 4,647 4,366
当期純利益 2,471 3,074 2,691

(単位:百万円)

「ツルハグループ入り前までは、営業利益率が2.2%程度だった同社であるが、グループ入り(2015年)の2年後には営業利益率が5%を突破。2021年の営業利益率は5.9%とさらに改善している」と、レデイ薬局の白石明生社長はインタビューで語っている。

「月刊MD note版」ではレデイ薬局の今を読み解く社長 白石明生氏インタビュー記事と最新店舗レポートを公開中!詳しくは以下のリンクから
>> 白石氏インタビュー https://note.com/mdnext/n/nb679222a19af
>> 店舗レポート https://note.com/mdnext/n/n35a7480c87f8

出店状況

2022年5月15日現在、ドラッグストア176店舗、調剤店舗25店舗、一般・調剤併設店舗34店舗の計235店舗を四国・中国地方に展開している。

業態と特徴

同社の特徴は、専門性ならびに接客・相談を重視している点だ。地域に根差した品ぞろえを志向しながら、お客様が気軽にご来店いただける日常の利便性と、豊富な商品知識や高いカウンセリング能力を身につけたスタッフが、健康と美に関する様々なお悩みに対して相談にあたる専門性を兼ね備える。

標準店フォーマットは300坪型で生鮮を強化した店舗。普段使いの精肉・青果・卵・総菜・弁当などまで品揃えする。ツルハグループのPB「くらしリズム」も積極的に展開。

店舗形態も調剤専門薬局、調剤併設型ドラッグストア、ドライブスルー型調剤薬局と多様化を図るとともに、自宅や勤務先の近く等、地域の皆様の生活の身近な場所に薬局を開設できるよう開発を推進している。また在宅医療および介護事業への取り組みにも力を入れているのも特徴といえよう。

出典:https://www.lady-drug.co.jp/company/work/

「月刊MD note版」ではレデイ薬局の今を読み解く社長 白石明生氏インタビュー記事と最新店舗レポートを公開中!詳しくは以下のリンクから
>> 白石氏インタビュー https://note.com/mdnext/n/nb679222a19af
>> 店舗レポート https://note.com/mdnext/n/n35a7480c87f8

2022年、小売業の重要経営課題はショートタイムとワンストップの両立だ

withコロナの時代が続く2022年における、ドラッグストアの5つの重点経営課題を整理してみましょう。Withコロナによって消費者の購買行動は大きく変化しました。変化対応業である小売業は、その大変化に対応しなければ、次の時代の主役にはなれないでしょう。

ショートタイムとワンストップの両立

リアル小売業の「狭小商圏化」が加速しています。数年前に「ドラッグストアの商圏人口が1万人を切った」と話題になったこともありましたが、最近は、立地によっては、ドラッグストア1店当たりの商圏人口が7,000人、5,000人を切るエリアも登場しています。狭小商圏化が進む理由は、ドラッグストアの陣取り合戦が加速していることです。

先日視察した茨城県水戸市では、ツルハドラッグの駐車場から、コスモス薬品とカワチ薬品の看板が目視できるほどの激戦でした。まさに「レッドオーシャン」の陣取り合戦の結果としての狭小商圏化です。

狭小商圏化が進むもうひとつの理由は、Amazonで何でも購入できるようになり、しかもコロナ禍の影響も加わり、「遠くの混んだ店へは行きたくない」と考える消費者が増えているためです。つまり、リアル店舗の最大の価値は「近さ」になっているわけです。

ある調査では、コロナ前はスーパーマーケットの来店者の約34%が30分以上滞在していましたが、コロナ後は30分以上滞在する顧客が約23%と大きく減少しています。一方、10分以内の滞在客が約5%から約9%と大きく増加しています。コロナによって消費者の「ショートタイムショッピング」のニーズは大きく高まっています。

一方で、せっかく来店した近くの店で「短時間でまとめ買いしたい」というニーズも強まっています。つまり、「ワンストップショッピング」と「ショートタイムショッピング」の両立が、2022年の経営課題のひとつです。

また、狭小商圏化による1店当たりの商圏人口の減少によって、「ラインロビング」がドラッグストアの重要な経営課題になっていますが、2022年も引き続きラインロビングへの挑戦は進むでしょう。少ない商圏人口で商売を成立させるためには、消費者の買物目的を増やし、1人当たりの支出額を増やす必要があります。化粧品も買えるし、肉も買えるという店でなければ、狭小商圏では成立しません。ラインロビングとは、狭小商圏で商売を成立させるための基本作戦なのです(図表1)。現在、郊外のドラッグストアでは、肉や野菜をラインロビングした店は普通になっていますが、その傾向は今後も続くでしょう。

調剤強化と接客強化による地域の健康と美容の拠点へ

「調剤強化」は、ドラッグストアのもっとも重要な経営課題です。ドラッグストア市場は約8兆円と大きく成長しましたが、大手14社のシェアが約76%と寡占化が一気に進みました。一方で、調剤市場も約7.5兆円とほぼ同規模の巨大市場であるにもかかわらず、大手10数社のシェア率は約20%と低く、大半は個人の調剤薬局の市場であることがわかります。ドラッグストアから見れば、市場獲得の大きなチャンスのある市場だと思います。ドラッグストアは、約8兆円の2つの市場を持っており、まだまだ成長の余地が大きい業態です。

当初は食品や消耗雑貨の安売りで成長してきたドラッグストアですが、調剤を強化する過程で、地域の「ヘルスケアステーション」としての役割を果たしていくことになるでしょう。日本のドラッグストアの調剤売上構成比は、高くても20数%ていどです。アメリカのドラッグストアは調剤の売上構成比が70%を超えており、アメリカのドラッグストアは純粋な小売業というよりも、地域のもっとも身近な医療機関といった方がいいと思います。日本のドラッグストアは、調剤強化の過程で、アメリカのドラッグストアにどんどん近づいていくと思われます。

一方、医薬品と化粧品という「接客・カウンセリング」が不可欠な部門をもつドラッグストアにとって、2022年の最大の経営課題は、ヘルスケアとビューティケアの接客とカウンセリングの強化です。しかし、レッドオーシャンの戦いに突入している日本のドラッグストアは、営業利益を確保するために、少ない人員でオペレーションすることを余儀なくされています。たとえば、医薬品売場や健康食品売場で何を買ってよいかわからず迷っていても、店員が忙しく作業に追われており、声をかけにくいという消費者の声をよく聞きます。

ローコストオペレーションと接客強化の矛盾を解決するためにも、デジタル技術を活用した「スマートカウンセリング」の導入は、2022年の重点経営課題だと思います。医薬品、化粧品のそれぞれの「顧客情報」と「商品情報」をクラウトで一元管理し、化粧品担当者や薬剤師・登録販売者などの専門家が不在の時でも、最低限の接客ができるようにシステム化することがスマートカウンセリングの考え方です。デジタル化によってローコストと接客強化を両立できます。しかも、特定メーカー品の推奨販売という偏った接客ではなくて、固定客の「肌悩み」や「健康状態」といった顧客を主体とした接客販売に大きく変わるキッカケにもなるでしょう。

また、継続購入している一般用医薬品や健康食品の購買データを分析することで、病気の疑いのある「潜在的な患者」を発見し、専門医を紹介する「受診勧奨」につなげることは、地域のヘルスケアステーションを目指すドラッグストアにとっては、重要な社会貢献になります。2022年は、本格的な地域のヘルスケアステーション化の第一歩になる年だと思います。

固定客との絆強化とDXを推進する覚悟

一般的にドラッグストアでは、1店舗1年間で6万円以上買物する人をロイヤルカスタマー(固定客)と呼びます。ドラッグストアの場合は、ロイヤルカスタマーの売上と利益貢献度が高い傾向があります。たとえば、化粧品のカウンセリング販売の強いドラッグストアでは、年間10~20万円以上の購入客をロイヤルカスタマーと定義している場合もあります。狭小商圏化が進むドラッグストアにとって、近隣に住む固定客との絆を深めることが、2022年の重点経営課題です。一方で、固定客との絆を深めると同時に、新規客の獲得は必ず並行して取り組むべきです。

固定客との絆を深めるための最適の道具が「アプリ」です。欧米のチェーンストアのデジタルシフトを分析していくと、すべての買物体験をひとつのアプリに集約することが重要であることがわかります。たとえば、ウォルマートのアプリをクリックすると、最初に「ECで買物するか」「店舗で買物するか」「ECで注文して店舗受取するか(BOPIS)」を選ぶように設計されています。つまり、ECとリアルの買物の両方の入口がアプリなのです。

現在、多くの小売業がアプリの導入を加速していますが、アプリ利用客は年間買物金額の多い超・優良客であることが多いのです。板のポイントカード会員よりも、アプリ会員の年間購入金額の方がはるかに高く、店に対するロイヤルティが高いことが一般的です。つまり、アプリは固定客との絆を強くするためのもっとも重要なツールであるといえます。しかも、チラシ販促のような不特定多数の販促ではなくて、購買履歴や顧客属性に基づいた「1to1マーケティング」を行うこともできます。「プッシュ通知」によって、あなたのための特別な販促を実施できるわけです。

デジタルシフトとは、店主が客の顔と名前を覚えていた昔の商店のような接客と売り方に原点回帰することが目的です。デジタルシフトを進めている日米の小売業経営者は、デジタルシフトの目的について、以下のようなまったく同じ表現を使って説明してくれました。

「昔の個人商店の店主は、お客様の顔を見たら、『昨日はこれ買ったよね、じゃあ今日はこれはどう?』と個別に提案できました。また、『4人家族だからこのくらいの量がいいんじゃないか』と、お客様のパーソナルなニーズに自然と対応してきました。しかし、チェーンストアのオペレーションでは、人間業で個別対応することはできなくなりました。

デジタルシフトが進めば、お客様の細分化した個別のニーズに対応することが、低コストでできるようになります。デジタルシフトの目的は、昔の個人商店のような人間的な接客に戻ろうよ、ということなのです」。

2022年は、小売業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が本格的に始まる元年だと思います。しかもDXとはツールを使った単なるコスト削減のインプルーブメント (改善)ではなくて、トランスフォーメー ション(痛みを伴う変革)に挑戦しなければなりません。

そのためには、経営トップの覚悟と、投資に対する強いコミットメントが必要です。会社を変革するという覚悟がないから、トップ直下ではない「離れ小島のDX推進室」が新しい ツールを入れて、紙がこれだけ減りまし た、伝票が何枚減りました、シフト作成コストがこれだけ減りました、といったコスト削減 やインプルーブメント(改善)で終わってしまうわけです。DXとは、会社を根本的につくりかえる第2の創業だと考えるべきです。

アメリカと日本の小売業では、DX投資に対する覚悟と危機感がまったく異なります。たとえばウォルマートは、新規出 店投資も含む総投資額の72.6%をIT 投資に回しています(2021年)。新規出店への投資だけで成長できた時代がいよいよ終焉を迎える序章が始まるのが、2022年ではないかと思っています。

出典:「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」2021年4月19日配信記事より