同じ「休日出勤」でも支払うべき給与は変わる
休日とは、決められた労働日以外の日、つまり労働義務がない日のことです。しかし、やむを得ず「休日」に働くというケースがあるかと思います。こうした「休日に働く」ことを一般に「休日出勤」と言いますね。
たとえば、毎週水曜日と土曜日を所定休日としているAさん。水曜日に出勤しても、土曜日に出勤しても、「休日出勤お疲れ様!」という言葉をかけられるかと思います。しかしそれが法律で決められた休日、つまり「法定休日」かによって、大きな違いがあります。その違いとは支払うべき賃金の扱いです。
第2回では、「休日労働」に関する賃金の割増率は35%以上にしなければいけないということを解説しました。この「休日労働」の「休日」とは「法定休日」のことを指しています。
そのため、たとえば水曜日と土曜日のうち、土曜日を法定休日と決めている場合は、従業員が休日である水曜日に出勤しても「休日労働」にはなりません。
ただし、週の法定労働時間(原則40時間)を超えて働いている場合は、「時間外労働」として扱われます。そのため、25%以上を割増した賃金を支払う必要があります。一方、「休日労働」に対する割増率は、法定の労働時間を超えているかどうかは関係なく35%です。
そもそも「法定休日」ってナニ?
では、そもそも「法定休日」とはどのようなものでしょうか。法律では次のように決められています。
・原則:毎週少なくとも1回
・例外(変形休日制):4週間で4日以上の休日
上記の条件を守れていれば、曜日を特定したり、従業員全員に対し同じ日を法定休日に設定することまでは必要ありません。
一方、週1回というと年53日あればよいわけですが、現在の感覚からするとずいぶん少ないと思われることでしょう。実際、日本企業の平均休日日数は108.3日です(厚生労働省の就労総合調査・2017年)。「法定休日」以外の休日を設定している会社が多くあるということです。
なかには、休日は決めているけども、法定休日がいつかを特定していない会社もあります。たとえば「毎週水曜・日曜を休みとする」とだけ決め、毎週少なくとも1回休んだ日が「法定休日」、それ以外は「法定外休日」というような運用をしている会社などがそうです。
ただし、労働条件の明示や実務上の混乱を防ぐという観点から、特定するのが望ましいでしょう。国の指針でも、あらかじめ就業規則などで決めておくことを勧めています。
また、一見すると休日労働よりも低くなるように見える「法定外休日」の時間外割増賃金ですが、60時間を超えると50%の割増率になるため※1、休日労働よりも高い割増賃金になることもあります。
※1 これまで中小企業へは適用されていなかったこの割増率に関する規定は、2023年4月から適用されることになりました(詳しくは第2回参照)。このように高い割増率は、そもそもこうした長時間労働をさせないことを目的に設定されています。
「完全週休2日」の企業はどのくらい?
さて、ここまで「毎週水曜・土曜が休み」という週休2日制を例に解説してきましたが、実際にはどれくらいの企業がこの週休2日制をとっているでしょうか。最後に休日と週休制の状況について全企業と小売業など※2 の傾向を見ておきたいと思います。
厚生労働省の就労条件総合調査で休日と週休制の状況を5年くぎりで見ると、次のようになっています。
ここで、「完全週休2日制」とは、毎週必ず2日の休みを確保している制度です。それに対し、「なんらかの週休2日制」とは、月1回以上、週の休みが2日となっていることを指します。
こうしてみると、全体でも小売業も、「なんらかの週休2日制」は9割前後の企業が採用しています。休日の平均は107日前後ですから、年(約52週)を平均すれば週2日程度は休日にしているところが多いということでしょう。
しかし、そのうち完全週休2日制をとりいれている企業は4割強と限定的で、一貫して増加しているわけではありません。一方、休日日数を見ると、はっきりとした増加傾向が見られます。
ここで、気を付けたいのが「休暇」は「休日」とは違うという点です。休暇が増えたから休日が増えた、ということではありません。では、「休暇」と「休日」の違いとはなんでしょうか。次回はその点から解説していきたいと思います。
※2 2002年の統計では「卸売、小売業、飲食店」。それ以降は「卸売業、小売業」