1日3便から2便体制へ改革 ドライバーの勤務シフトも変更
「物流2024年問題」は、コンビニ業界では最重要課題として改革を進めてきた。それは同時に、CO2排出量削減や人手不足、各種コストの上昇など、さまざまな問題に関係してくる。すなわち物流問題の解決に向けた努力が、これら諸問題の改善にもつながると認識して取り組んできた。
ローソンでは、配送する商品により、これまで3つの温度帯の配送センターから全国の店舗に商品を配送してきた。それを「物流2024年問題」への対応とCO2排出量削減、コスト抑制を目的に2023年12月から2024年3月にかけて順次、チルド・定温商品(約1,000SKU/日)について1日2便体制への移行を進めている。
既にローソンでは2005年から2018年にかけて、商品の製造や配送作業の効率化を目的に、それまで全国で1日便体制だったチルド商品(一部の米飯弁当やサンドイッチ、調理麺など)・定温商品(おにぎりや米飯弁当など)の配送を、一部エリアで段階的に2便体制に変更してきた。その結果、2023年11月時点では、大都市部を中心に約7割の店舗が3便体制であった。それを、今回の改革により全てのエリアにおいて2便体制に移行する。
これまで3回配送エリアでは、効率的な運用を図るため「深夜+朝便」や「朝便+午後便」といった、2つの便を連続して1人のドライバーが担当する勤務シフト(リンク便)が発生していた(図表1)。
こうした3便体制を4月1日以降の法令順守で維持できるのか、ローソンではリスクを回避するためにも、全店1日2便配送体制の実施に舵を切った(図表2)。
ドライ(加工食品など)・冷凍商品の配送についても効率化を図るべく、2024年4月から順次、センターごとの状況に合わせた配送ダイヤの2パターン化を実施する。
現状、ドライ・冷凍商品の配送ダイヤは週5回(月・火・木・金・土)に全てを固定して実施していた。曜日ごとに物量や営業店舗数に大きな波動がある場合でも、配送ダイヤは1つに固定してきた。見直す必要があれば四半期ごとに実施していたという。店舗にとっても、日によって荷受け時間が変わらないため、定時定例の業務としてシフトが組みやすいメリットがあった。
しかしながら、今後は現在の固定の配送ダイヤを変更、センターごとの状況に合わせたダイヤを2パターン用意する。例えば「物量の多い曜日(火・金)」と「少ない曜日(月・木・土)」の2パターンに分けるなどしていく。
その結果、両パターンの納品にプラスマイナス60分以内の時間差が生じることになるものの、センターの実態に応じて2つのダイヤの使い分けが可能となり、CO2の削減や配送車両の削減(センターにより1~2台)、ドライバーの拘束時間の削減につなげることを可能にしていく。この2つのパターンは、全国共通ではなく配送センターごとに最適なパターンで運用、どのようなパターンにするかは、現在検討中としている。
ドライバーの店着時間調整は不要 「早着フリー」により効率改善
チルド・定温商品の発注・納品の頻度が減るということは、店舗側にとっては、より精度の高い発注が求められる。そこでローソンでは、2024年3月より順次、チルド商品・定温商品のうち、米飯、調理パン、調理麺、デザートなどの消費期限の短い商品に関して、店舗での発注システムを刷新していく。
もともと2015年よりAIを活用したセミオート発注を導入しているが、今回はより精度の高いAIの活用により、個店の顧客、商圏に合わせた発注数や品揃え、値引きのタイミングと数量を推奨していく。この新発注支援システムと前述の2便配送化により、さまざまな側面から効率・効果増につなげて店舗収益の向上を目指していく。
その他の取り組みとして、ローソンでは2021年より物流効率の向上を目指して、常温・冷凍の配送ルートについて、AIを活用したダイヤグラムの最適化を行った。群馬県から順次スタートし、現在では東北・関東・中部・近畿・中四国に拡大している。これにより、CO2排出量を約5%削減すると共に、物流コストも約6%の削減につなげている。2022年には配送センターの一部について移転・統合を実行。今後も一定周期で最適センター網をシミュレーションした上でセンターの再編を図っていく。
こうした最新デジタルによる効率化を躊躇なく進める一方で、予測不能のものや、人の手による誤差は、許容していく姿勢を示している。2010年頃から常温の「新商品発注」について、初回納品分のみ8日前に発注する仕組み(それ以前は通常商品と同じように発注)としている。新商品については、初回の発注量の推測が困難なため、8日前の発注により、欠品の回避・食品ロスの大幅削減・物流面での効率化につなげている。
また2019年から全温度帯で店舗到着設定時間よりも、早く到着することを可とする「早着フリー」を運用している。それ以前は予定時刻通りに納品するために、ドライバーは早く到着しないように時間調整などを行うケースがあったが「早着フリー」により、大幅な効率化につなげている。
ローソンに限らず、コンビニチェーン本部は加盟店の負荷に対して、大きな配慮を図っている。しかしながら、環境問題や社会問題に対して、大きな負荷にならなければ、加盟店も一定程度、譲歩する必要が求められるのであろう。
おにぎりを「先兵」に実証実験。冷凍流通が効率とロスを改善
2024年問題の次は2040年問題だ。大都市圏の人口は大きく減らない代わりに、都市部から遠い地方においては深刻な過疎化に直面する。
最も小さな商圏で営業が可能なコンビニにおいても、ドミナント(商勢圏)を築くだけの人口を確保できなければエリアごと「撤退」もあり得る。それは買物困難者を生むことになり、社会のインフラと呼ばれるコンビニにとっては回避したい将来である。
そこでローソンでは将来を見据えて、2022年11月にオープンしたSDGsに関する実証実験店「グリーンローソン」(東京・豊島区)にて「冷凍流通」への取り組みに着手してきた。そこではチルド弁当も、定温弁当もいっさい置かずに冷凍弁当と(店内で調理する)厨房弁当のみを販売するといった実験をした。
通常の定温弁当やおにぎりは製造後、店舗に配送、販売するまで10時間から20時間を要してしまう。この時間の制約が、製造、配送、ドミナントの制約条件になる。ローソンでは、この制約を、商品の鮮度劣化を長時間起こさない「冷凍流通」により解消しようとしている。
例えば、弁当、おにぎり、調理パン、調理麺を冷凍流通に置き換えれば、1日2便配送体制を1回以下に抑えることができ、ベンダーも計画生産ができるようになる。仮に納品された冷凍食品を、店舗で解凍して販売するにしても、出荷から店着までの鮮度が保たれるので、フードロス削減にも大きく寄与する。
しかしながら、グリーンローソンにおいては冷凍弁当の売上が芳しくなかった。定温弁当と変わらない「おいしさ」であるにも関わらず、お客の手が商品に伸びなかった。作り手側の意図が十分に伝わらなかったのだ。
そこでローソンでは「冷凍おにぎり」6アイテムを2023年8月22日から3ヵ月間、東京11店舗、福島10店舗で実験的に販売した。新しいスタイルとして「温めて食べるおにぎり」を提案、冷凍おにぎりにより、冷凍商品の即食行動拡大に努めている。このおにぎりを「先兵にした」実証実験は「お客様に想定通りご好評いただいた。今後も、冷凍食品のメリットを生かした仕様の冷凍おにぎりの開発なども含めて検討していく」(ローソン広報)と手応えを得ている。
将来的に冷凍弁当に拡大したとすれば、現状の1店舗あたり定温25アイテム、厨房弁当5アイテム、1日2回以上の配送を、冷凍/冷凍解凍弁当を30アイテム、厨房弁当10アイテム、1日1回以下の配送に改革することができる。
冷凍流通により、お客が求める必要な機能、品揃えをしっかりと維持しながら、フードロスを削減し、買物困難エリアの店舗網を維持していきたいとしている。