「超」狭小商圏時代の新業態開発が始まった!
現在、日本のドラッグストア(DgS)の商圏人口は1万人を切っており、ごく狭い土地にも出店できるフォーマット開発が眼前の課題となっている。今回取材したツルハドラッグ南6条店(2019年8月開店)は札幌市のドミナントエリアに出店した。同店は、超狭小商圏で勝負できる雛形(プロトタイプ)づくりの実験店という位置付けになる。
DgSは、基本的にはセルフ販売でお客が自然と店全体を回遊し生活必需品を「ワンストップショッピング」する業態である。ただし、専門分野である「医薬品」「化粧品」に関しては、接客・カウンセリングの質が客単価を決定すると言っても過言ではない。
狭小商圏時代に、DgSがワンストップショッピング性を強化することは、異業種との「限られたお客の奪い合い」と言い換えることができる。ツルハはこれまで強化軸になかった「食品」を、南6条店では積極的にラインロビングしている。鶴羽順社長が言うように、1万人以下で闘えるフォーマットとは「利便性」の高い店である。
食品構成比40% 2層式300坪の実験店
ツルハドラッグ南6条店は、北海道札幌市の繁華街「すすきの」に位置する都市型店舗である。すすきのには他に、ツルハドラッグの売上高1位を争う店舗「南8条店」がある。繁盛店である南8条店を商圏分割するためにドミナント出店した店舗だと分かる。繁盛店の商品回転率をコントロールし、販管費を下げる方法はドミナント戦略の鉄則である。
南6条店は、2フロア構造で1フロア当り150坪である。北海道店舗運営本部 第一店舗運営部長の紺谷敦氏は同店について、「エスカレーターの設置はツルハ初です。投資が高いので損益分岐点は高いですが、食品と専門品が売れれば採算が取れます。狭い土地でも効率を上げれば、運営できることを証明するための1号店です」と語る。
ポイントカードから分析するとメイン顧客は、20代女性・サラリーマン・学生の「若年層」である。若年女性を化粧品売場に引き込むために1階の什器は低くし、入口からサイネージ広告を見渡せる売場設計である。化粧品担当者は常時1名カウンターに待機している。
南6条店の最大のポイントは、食品の売上構成比が40%も占めている点である。「コンビニはあるが食品スーパーはない」という同エリアの特徴を踏まえても、食品ニーズの高さが分かる。
しかし食品の粗利率は15%を下回る。回転率が高い食品の作業コストを下げ、粗利率を上げるためにも、接客による「化粧品」「医薬品」の強化が重点課題となる。
「9年目の南8条店の化粧品は好調で、固定客が多いです。私達の店は2年目なので新規のお客さまの獲得が求められます。カウンセリングは人につくものだからです」と藤谷店長は語る。今後は一人ひとりにディープなカウンセリングを実施し、固定客をつくる計画。
ドミナント出店によって、現在、近隣の繁盛店である南8条店の前年対売上高を意図的に90%前後に抑えている一方、南6条店の月商は順調に伸びてきており、「超」狭小商圏のプロトタイプ開発は着実に進んでいる。
精肉、青果をラインロビング 作業効率化で「補充ロス」を防ぐ
ツルハドラッグ南6条店の食品売場は2階(150坪)の約60%を占めている。一般食品、日配、精肉、青果、酒類で5通路分の売場を確保しており、壁面には冷食、アイス売場を配置している。核売場である食品を主通路に陳列し、壁面に沿わせて非食品の売場へ誘導するスーパーマーケット型の店舗レイアウトである。
現在ツルハでは、北海道の小型店に精肉が約120店、青果が約200店に導入しており、狭小商圏でのラインロビングの効果を検証している過程である。
精肉、青果は監視カメラが撮影しており、専門業者が売場を遠隔でチェックし、品薄であれば補充に来る仕組みになっている(1日2、3回)。割引、廃棄まで業者に管理を委託する「コンセッショナリー方式」である。同店では1日に精肉が約3万円、青果が約2万円の売上がある。サラリーマン、学生が多く来店する夕方以降の補充ロス対策も徹底できている証拠である。
食品の売上構成比が40%を占める同店では、高回転率に対応できる効率的なオペレーションが急所となる。具体的には、(1)1アイテム当りのフェースを拡大し、ケース単位で補充(棚上作業削減)。(2)かご車が2台載る業務用エレベーターをバックヤードに配備(食品が2階のため)、(3)レジは1階のみに設置することで、効率化を目指している。
続きは月刊マーチャンダイジング2020年12月号で!