コンビニネクスト

物の動きを電子タグで認識し、人の動きはカメラで捉える

第10回コンビニ各社、経産省との実証実験でRFIDと画像認識の共存模索

RFID(Radio Frequency Identification)とは、電波を利用して非接触で電子タグのデータを読み書きする自動認識技術のこと。経済産業省が主導し、コンビニ各社と共同で策定した「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」に基づき2025年までにコンビニの全商品に電子タグを貼付する計画だ。その第三弾の実証実験が先ごろローソンで実施された。実現に向けて、どれだけ近づいたのか現状をリポートする。

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電子タグの技術とその価値を理解するためにはマラソンをイメージしてみるとわかりやすいのではないだろうか。電子タグを装着した数万人のランナーがスタートからゴールまで各関門で識別される。「お団子」状態で関門を通過しても個々のデータが誤って認識されることはない。5キロの関門、10キロの関門を何時何分に通過したかはほぼリアルタイムにネット上で確認できる。

RFIDを活用した経産省とコンビニ各社との実証実験は2017年2月にローソンの「パナソニック前店」(大阪府・守口市)にて第一回目が実施された。ここではパナソニックが開発した完全自動セルフレジ機 「レジロボ」により、一個一個の商品に電子タグが付いた複数の商品情報を一瞬にして読み取るシステムを導入した。

第二回目の実証実験は2018年2月にファミマ、ローソン、ミニストップで実施されている。サプライチェーンの上流で商品に電子タグを貼付、入出荷時に当該データを読み取り、情報共有システムに投入することで、在庫情報などをサプライチェーンで共有できるかを検証した。

そして今回が第三回目。2019年2月12日から28日、「ローソンゲートシティ大崎アトリウム店」(東京都品川区)にて実施。画像認識の新技術を加えた画期的な取り組みとなった。

ローソン本社のあるビル地階の店舗入り口の近くに専用の売場をつくり実施した。ゴンドラ上部にカメラが設置されている

実質値下げ情報が分かり食品廃棄ロス削減に貢献

新たに取り入れたシステムの第一が「ダイナミックプライシング」だ。

対象商品に貼付した電子タグのデータを、棚に設置したリーダーが自動で読み取ることにより消費期限の近い商品を特定。その特定した商品情報(実質値下げ情報)を、お客が事前に登録した実験用LINEアカウントに通知。その対象商品を購入したお客に対しては、後日LINEポイント(10ポイント)を還元する。

スーパーマーケットでは消費期限が近づくと一個一個値引きシールを貼って売り切りを図る。お客は実際に店に足を運び、自分の目で確認しないと、どの商品がいくら安くなっているかを知ることはできない。

今回の実証実験においては、どこでもスマートフォンからお得な単品情報を得ることができるので、実際に「店舗行かなければわからない」というストレスを回避することが可能になった。

ローソン経営戦略本部アシスタントマネジャーの佐藤正隆氏に聞くと「将来的には、商品を手に取った瞬間に、これがそう、これは違うと、対象商品をお知らせする機能の追加や、会計時に自動で判別して値引きする仕組みも可能」と補足する。店舗スタッフの手を煩わせずに、店外でも店内でも、実質値下げ商品が容易に判別できれば、お客にとっては非常に便利な機能であろう。

弁当やサンドイッチ、惣菜といった中食の廃棄ロス削減にも大きな効果が期待でき、また、在庫管理においても、棚に在庫している調味料の消費期限がいつまでかをデータ上で把握できれば、売場で商品をひっくり返して確認する必要もなり、作業量の削減に効果が持てる。

あらかじめ登録したアプリに、消費期限が近づいた商品と、後日ポイントが付与される条件が提示される。
LINE上、今回の実証実験における精算方法とポイント付与に関する注意事項を掲載

画像認識とRFIDで分かる棚前消費者の目線と行動

システムの第二はデジタルサイネージによるターゲティング広告である。

商品棚の画面には通常のCMが流れている。上部に設置した赤外線センサーが、お客が近づくと感知して、その属性を認識して、適切なCMを選択する。男性40代とか女性20代といった属性に合わせた情報を提供している。さらに、手に取った商品を、棚に設置した赤外線センサーが認識し、商品の下に敷いた電子タグのリーダーも感知して、商品情報を提示している。

お客が売場に近づくと、性別、年齢を、天井のセンサーが画像認識し、その人に適したCMを流す仕組み

また、お客の属性や手に取った商品だけではなく、棚前消費者の「行動」も知ることができる。悩んだあげく購入しなかった、あるいは、画面のCMを見たか見ないかも、お客の目線で知ることができる。手に取ったけれども、途中で購入を止めるなど、棚前消費者の行動が、メーカーにとって非常に価値があるという。

「例えば、商品の購入を迷っているタイミングで、背中を押すようなCMを流すといった販促もできます。私たちとメーカーにとって価値があることです」(佐藤氏)

商品を手に取ると、画像を読み取るセンサーと、ベーカリーの下に設置した電子タグのリーダーが感知して商品を特定し、画面に商品情報などが流れる

RFIDによる商品感知とカメラによる画像認識。この二つの技術を共存させて、物流の効率化だけでなく、新たなマーケティング機能を創り出している。

RFIDを担当する経済産業省消費・流通政策課の加藤彰二係長は昨年5月、筆者の取材に、こう答えている

「物の動きを電子タグで認識し、例えば「Amazon Go」のように、人の動きをカメラで補捉する、このやり方が最適であると思います。RFIDとカメラは排他的な関係ではなく、センサーの一つでしかありません。その組み合わせにより最適な環境が構築可能だと考えています。テクノロジーが組み合わさって、生活者に価値提供を実現する店舗こそ、われわれが目指しているスマートストア、そのものなのです」

その言葉通りの実証実験がローソンの協力により実現できた。

コンビニが電子タグ付きの商品を販売する条件を、電子タグが1枚1円以下になること、製造段階で貼付すること、としている

生活者の冷蔵庫の中にまでRFIDが入り込めるかに期待?

システムの第3は、電子タグリーダー付きレジの設置である。

専用のレジカウンターに、商品情報を読み取るリーダーを設置、その上に商品を置くと、電子タグ情報を瞬時に読み取るようにした。従業員が商品をスキンしなくても、価格が表示されるため、作業効率のアップにも貢献している。

専用のレジでは、商品の下に敷かれたリーダーにより、商品を置いただけで一瞬にして商品情報を読み取る

ローソンによると、これまでRFIDの実証実験には、物流担当者たちの参加が多かったという。しかし今回は、メーカーのデータマーケティングを担当する人たちの参加も目立ってきたそうだ。消費材メーカーにとっては、物流の効率化だけではなく、自社の商品がどのような買われ方をしているのか、さらに生活者が家の中で、どのように使っているのかを知りたいところ。イメージしやすいのが、冷蔵庫にリーダーを搭載して、庫内にある商品の消費情報をデータで共有すること。将来的な話だが、これを可能にすれば、RFIDを活用した製配販の取り組みに期待が膨らむであろう。

著者プロフィール

梅澤聡
梅澤聡ウメザワサトシ

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中『東京学生映画祭』を企画・開催。89年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と現地のコンビニ巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。