特別企画:ES向上のための働き方改革 21社アンケート調査③

回答企業の7割がパートタイマーの正社員化進める

月刊MDによるドラッグストアおよび小売業各社へのアンケート調査第3回。今回はパートタイマーへの評価や待遇に関する各社の取り組みをまとめた。ぜひ前回・前々回の記事と併せて参考にしていただきたい。(月刊マーチャンダイジング2018年10月号より転載)(文/社労士事務所ワークスタイルマネジメント・小林麻理 調査/月刊マーチャンダイジング編集部)

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前回の記事「省人化・アウトソースの一方営業時間の短縮に踏み切る企業も」はこちら

Q6 パートタイマーは、賞与を受け取ることができますか?

賞与をすでに「受け取れる」企業が半数、検討している企業も1割

パートタイマーへの賞与支給の状況については、すでに「受け取れる」と回答した企業が半数に上った。検討している企業も入れると、賞与の支給に前向きな企業の方が多い。

「賞与は正社員がもらうもの」というイメージが強いため、企業から賞与をもらうことができれば、パートタイマーの企業への帰属意識やモチベーションを高めるのに十分な要素になることは間違いない。

また制度解説で述べたとおり、「均衡」を考慮した待遇として「賞与」の支給は今後必要になる可能性が高い。原資が必要なだけに、いまから十分な検討をしておかなければならない。

Q7 今年、5年以上勤務しているパートタイマーのうち何人を無期転換しましたか?

無期転換は「100人以上」と「0人」の企業が同数で取り組み状況に開きが生じる

「無期転換」に関しては積極的に対応を行おうとする企業とそうでない企業で回答にハッキリと差が出た。

まず、「もともと全員無期雇用」は1社。法制度対応をES向上へとつなげようとする先進企業といえる。また、10人以上と回答した企業は8社で、うち4社は100人以上が無期転換している。

100人以上が無期転換している企業では、企業側から通算5年以上働く有期雇用労働者に対し、説明会などを通じて情報を提供し無期転換を促したと考えられる。逆に「10人未満」と回答したのは5社で、うち「0人」という企業が4社あった。通算5年以上働く有期雇用労働者が0人という可能性は低いだろうから、「従業員から請求されたら対応する」というスタンスなのかもしれない。しかし制度解説で述べたとおり、無期転換申込権は今年から発効しており、対応が後手になると混乱も大きい。早めの対応が望まれる。

Q8 「パートタイマーのキャリアップ支援」で自社ですでに実施していること、もしくは実施予定のことはありますか?

Q9 「パートタイマー向けのスキルアップ制度がある、取り組む予定や関心がある」と答えた方は、どのようなことを実施、または実施予定ですか?

※その他(施策の概要):「レジマイスター制度、職務に応じた研修、医薬品カウンセラー、ビューティカウンセラー、作業トレーナー」「登録販売者(登販)資格取得のための学習、取得後の実務研修、資格者としての接客対応研修などの充実」「薬剤師、登販など専門知識を習得する研修への参加、登販資格を取得するための研修への参加支援、登販資格維持にかかる奨励金の支給、社内資格試験の受験」

Q10 パートタイマーの正社員化推進の取り組みを実施している、または検討していると答えた方はどのような手段で実施、または検討する予定ですか?

「正社員化の推進」済み企業が7割を超え、定期の昇給機会を設ける企業も一定数に

Q8を見ると、「正社員化の推進」をすでに取り組んでいると回答した企業は7割に達していることがわかる。その手段を聞いたQ10では「定期的な昇給機会」を設けている企業が8社もあることも判明した。これは随時の推薦よりも「正社員化」の道筋がパートタイマーにも示しやすいという点で評価できる。

また、納得感を得られやすい「評価制度」の結果を条件にしている企業も6社にのぼる。

パートタイマーの正社員化は、正社員不足を補うものになるほか、将来のキャリアビジョンを描きやすくなるため、従業員の定着率アップの効果も期待できる。もちろん、直近のパートタイマー不足の改善につながる可能性も大いにある。

Q8で実施済みの取組みとして2番目に多かったのは「スキルアップ制度」だ。その内容を尋ねた研修への参加がもっとも多いことがQ9からわかる。講師を社員が務める社内研修会を実施するほか、外部研修を活用するなどの工夫により、比較的取り組みやすい項目ともいえる。

独自の制度設計が必要な「職能に応じた技能制度」や「社内試験・資格の整備」にも一定数の企業が着手しており、パートタイマーのスキルアップへ力を入れていることがうかがえる。こうしたスキルアップ制度の整備は、ES向上はもちろん、採用時に上手にアピールすることで人手不足の改善につながる取組みといえよう。

正社員とパートタイマーの比較

「業績」「勤務態度」への評価比重でパートと正社員にハッキリとした違いが出る

「評価制度」導入状況についての調査結果の図は割愛したが、正社員に関しては全社が導入済みとの回答があった。一方で、パートタイマーの評価制度をすでに実施している企業は10社、導入を予定している企業は4社だった。

また具体的に項目を見ていくと、パートタイマーも正社員も「能力評価」「職務の難易度など」が重視される傾向にあることがわかる。しかし正社員は「業績」がより重視されるのに対し、パートタイマーは「勤務態度」がより重視されることが特徴的な違いとなった。

「業績」に対する責任は「同一労働同一賃金」における「均衡(バランス)」を見るうえでも重要な要素となる。業績責任がある分、正社員が同じ労働をするパートタイマーよりも給与が高くてもいいからだ。

このような「同一労働同一賃金」の考え方へ対応する際には、ガイドライン案のほか厚生労働省が提示している職務評価法(要素別点数法)も参考になるだろう。これは、パートタイマーの「職務」を正社員と比較して評価要素ごとに点数化するのがポイントで、「専門性」「裁量性」「対人関係の複雑さ(社内、社外)」「経営への影響度」などが要素の例として示されている。たとえば、部門間の調整やクレーム対応をしないパートタイマーは「対人関係の複雑さ」の項目で点数が低くなり、その分金額に差がでてもいいということになる。こうした考え方は、昇格や昇給へも適用できる。

ここで昇給に関する調査を見ておこう。

パートタイマーも正社員も勤続年数に対する比重は低く、評価制度の結果を給与に反映している状況がうかがえる。どのような制度を採用するにせよ、だれでもわかるような「基準」を設けることが、法律に対応することはもちろんES向上にとって重要となるだろう。

アンケート総評

「働き方改革」に前向きな企業がES向上目指して試行錯誤

今回、集計対象となった企業は、広範囲に及ぶアンケート内容に回答いただけたということからも、小売業のなかでも比較的高い関心をもって「働き方改革」に取り組んでいると推測される。意識の高い分差し引いて考える必要があるが、有給休暇取得推進といった労働時間改善に関するものや、賞与支給や正社員化を含めたパートタイマーの処遇改善に関する様々な施策を、多くの企業が取り組み済みだったことは驚きだった。

同時に、1つの項目へと回答が集中することが少なく回答結果が割れた印象もあり、各社が法律対応という面だけでなくES向上をも視野にいれて試行錯誤している状況がうかがえた。

法律対応という点では、労働時間に関しては2019年4月、同一労働同一賃金対応に関しては2020年4月が多くの規定で基本の開始ラインとなっており、それほど猶予はない。今回のアンケートを参考にしながらES向上を念頭においた、自社にとっての最適な取り組みを検討いただきたい。