雑誌を見て楽しみ、カタログを見て買う感覚
リアル店舗とECのオムニチャネルを展開する中川政七商店。ECでは自社で生産する奈良晒をはじめ、全国の伝統工芸品を販売しています。1つ1つの品を上質に魅せるサイトづくりが目を引きますが、もっとも注目すべきポイントは、スマートフォン向けのECサイトです。
通常、スマートフォンでインターネットサイトを閲覧する際は、上下の縦方向にスクロールします。ところが、中川政七商店のスマホサイトでは、縦スクロールに横スクロールを加えることで視覚を横展開させ、視認性を高めています。
中川政七商店のスマートフォン用ECサイト。トップページから縦にスクロールすると、各ページにさまざまな特集ページへのリンクが現れます。
縦スクロールの途中に、横スクロールで表示されるページが挟まれ、季節の特集や暮らしに豊かさを添える商品の情報などが掲載されています。
各特集ページをクリックすると、読み物ページや商品購入ページが表示されます。敷居が高いイメージの伝統工芸品を身近に感じさせる読み物ページ。気になった商品をクリックすると購入ページに進むことができます。
購入手続きは一般的なECサイトと同様。カートに入れ、支払い手続きをします。
縦スクロールに横スクロールを加えることで商品のストーリーや訴求ポイントの輪郭がはっきりして見え、通常のスマホサイトに比べて視認性が高く感じられます。このサイトの作り方は、ドラッグやスーパーの季節もの特集にも応用できそう。
アプリでなくブラウザで快適な操作性を実現
実は、こうした画面スクロールの動きは、スマホ用アプリではすでに取り入れられています。中川政七商店ではこれをスマホ用ブラウザで実現、縦横にスクロールできる快適な操作性を実現しています。
ここで、アプリとブラウザの関係を説明すると、アプリは、特定のことをするためにOS上にインストールして利用するソフトウェアをいい、ブラウザはアプリの中でもインターネットを閲覧するために利用するソフトウェアを指します。つまり、ブラウザはインターネットを閲覧するためのアプリというわけ。
アプリとブラウザを使ったアプローチの違いは以下のようになります。
・特定のショップのセーターを買いたい→ショップアプリをダウンロード→アプリ上でセーターを選んで買う
・商品は決まっていないけどセーターが欲しい→インターネットブラウザで「赤 セーター M」などで検索→気に入った商品があるショップのサイトへ→ショップのサイトでセーターを買う
上記のように、アプリはダウンロードするひと手間がありますが、スマホのデスクトップからアクセスできるため、頻繁にそのショップで買い物をする人や、ブランドを気に入っている人にとっては便利。反対に、ブラウザはダウンロードする手間がないため、ブランドを知らない人にも利用のハードルが低く、より多くの人の目に留めてもらいやすいメリットがあります。
まとめ
総務省が行った通信利用動向調査によると、平成30年の世帯におけるスマートフォンの保有割合は約8割にまで上昇。インターネット利用機器はスマートフォンが59.5%で、PCの48.2%を逆転しています。今後、スマホからEC利用する人はますます増えるでしょう。中川政七商店のように「スマホでいかにうまく魅せるか」は、ECを運営する事業者にとって喫緊の課題と言えそうです。