60坪で目標年商1.2億円、PB比率9割の新業態
ベイシアグループ傘下で、全国に828店舗をフランチャイズ展開するワークマン(2018年10月時点)。2018年3月期の営業総収入は約560億円で前期比7.7%増、売上高と純利益は8期連続増収増益で推移している。現業態での1,000店舗展開、売上高1,000億円が見えてきた同社が選んだ新業態が、一般客をターゲットにした「WORKMAN Plus」だ。
WORKMAN Plusは、アウトドア、スポーツ、レインウエアの専門店であり、メイン客層は既存店と同じく30〜40代男性。働くプロのための高い機能性を付与した、低価格なカジュアルウエアを品揃えする。店舗面積は60坪で、年商は1億2,000万円を目標とする。既存店は、100坪で平均年商は約1億円。2割増を試算できる要因は、衣料品の構成比の高さにある。客単価は既存店の2,700円に比べ、300円アップの3,000円を見込む。
PB比率も、既存店3割に比べ、新業態店舗では9割以上。一般顧客に合わせた商品構成で、作業用品は一部の手袋などに絞り、利益率の高い衣料品PBで固めた格好だ。店舗の運営については、販売代行会社と契約し、アパレル経験の豊富なスタッフを配し、常時3人態勢で運営していく。
建設技能労働者は減少傾向、一般向け3ブランド立ち上げ
ワークマンが新たなブランド戦略を立ち上げたのは、2016年。業績は好調な一方、主力顧客である建設技能労働者の数は、団塊世代の現役引退とともに減少傾向にある。新戦略の背景には、新規顧客の開拓という命題があった。
既存店を分析したところ、一部購入客がスポーツやアウトドアなどの趣味目的での使用や、その入門用として購入していることが判明。SNSや口コミでも、雨天用の防寒・防水仕様のレインウエアがバイカー用ウエアとして、飲食店の厨房用のノンスリップシューズが赤ちゃんを育てるママの安全なレインシューズとして、その評価が高まっていた。
そこで、プロ仕様でありながら一般客でも日常使いできる商品を、用途別にブランド化。アウトドアウエアの「FieldCore」、スポーツウエアの「Find-Out」、レインスーツの「AEGIS」の3ブランド(図表2)を立ち上げたところ、売上は2018年3月期には60億円に到達(図表3)。品揃えにも深さと広さが生まれ、一般客が店舗購入客の2割に達したことから、「高機能×低価格」ウエアの新業態開発に踏み切った(図表1)。
[図表3] PB3ブランドの売上推移[図表4] PB製品の売上構成比
ブレない「プロ機能」の商品開発軸、価格は専門店の3分の1
WORKMAN Plusは、ワークマンの商品群のうち、前述した3ブランドを中心に、プロ専用商品を除く衣料品を集めたフォーマットであって、すべての商品開発の軸はあくまでもプロ仕様だ。一般向け商品を、既存商品と区別して開発しているわけではない。約20人から構成される開発部隊は、すべての商品が作業現場で使われることを想定して商品設計を行う。
たとえば、同社の一部の防寒着に使われているアルミは、アパレルでは一般的ではない素材だが、作業着では当たり前の仕様だ。
価格は、アウトドアブランドの半額〜3分の1以下を設定。ユニクロ、しまむらに次ぐ店舗数を持つ同社のスケールメリットを生かした大量生産と、必要な機能のみを残すトレードオフ方式、廃棄率0%で98%を売り切るビジネスモデルによって低価格を担保している。出店したららぽーとには、ザ・ノース・フェイスやコロンビアスポーツウエアなどアウトドアブランドのテナントもあり、明確な差別化も期待できる。
「既存店は、車でしか行けない立地に多く出店しています。交通の便がよく、アパレルはもちろんホームセンターやホームファッションなどさまざまなテナントが入り、多様なお客さまが来店するSC内に新業態店舗を展開することで、ワークマンの認知度を上げることができると考えています。既存店との相乗効果も期待しています」(営業企画部 販売促進グループマネジャー 林 知幸氏)
大型SCに100店舗、アンテナショップの役割も
11月22日には、埼玉県富士見市内のららぽーとに2店舗目がオープンする。今後は大型SCへの出店を10店舗計画しており、採算のめどがつき次第100店舗、年間売上高200億円を目標に展開していく予定だ。高機能と価格競争力で、接客なしでも売上が立つ店を目指し、フランチャイズ化を進めていく。
WORKMAN Plusで扱う3ブランドは既存店でも取り扱うことから、既存店と新業態でお客が二分化することは想定していないという。WORKMAN Plusをワークマンのアンテナショップとして情報発信を行い、既存店への集客にもつなげていく構えだ。既存店内にWORKMANPlusのインショップをつくる計画も検討されているという。
ファッション性の高い作業着も増え、ワークウエアとカジュアル衣料の垣根はなくなりつつある。時代の変化とともに、自社の強みを捉え直し、新しいフォーマットで新市場にこぎ出したワークマンの快進撃はしばらく続きそうだ。