モデレーター:長谷川秀樹(ハンズラボ株式会社 代表取締役社長)
パネラー:照井則男(株式会社AOKIホールディングス 執行役員 情報システム本部 副本部長 兼 株式会社AOKI システム・ECデジタル推進本部 本部長)
土屋裕雅(株式会社カインズ 代表取締役社長)
柳瀬隆志(嘉穂無線ホールディングス株式会社 代表取締役社長)
堺大輔(チームラボ株式会社 取締役)
(※敬称略)
長谷川:今日はAWS Summitということで、エンジニアの集まりだと思うんですが、「俺、流通業つまり、業務や売場のことが少しわかるよ」という方は手を挙げてもらえますか?
(会場:1/4ぐらいが挙手)
長谷川:では、「俺、流通業のことはわからない。エンジニアでプログラミングのことしかわかりませーん」という人は?
(会場:1/3ぐらいが挙手)
長谷川:残念ながら今手を挙げた方は、今日の話は全くわからないと思います(笑)。
(会場:爆笑)
長谷川:見てわかるように、(登壇者は)社長とかですからね。細かいことがわかるわけがないから。今日はもうちょっとおおざっぱな、経営の話をしていきたいと思います。ではAOKIの照井さんからお願いします。
照井:AOKIホールディングス(HD)の照井です。よろしくお願いします。私どもの会社はファッション事業とエンターテインメント事業、それから結婚式場事業と、3つの事業で形成されています。グループ売上高は2,000億円弱。6割ぐらいがファッションで、アニヴェルセルというブランドで経営している結婚式場が14%弱ぐらい。それとエンターテインメント事業として、コートダジュールというカラオケと、複合カフェ、いわゆるネットカフェ業態(快活CLUB)があります。
私は大学卒業後からずっとチェーンストアに携わっています。ファミリーレストランに就職したのがこの世界に入ってくるきっかけで、すかいらーくをはじめ、マクドナルド、スターバックス、そして現在のAOKI。すべてチェーンビジネスを展開している企業です。このことはとても運がいいことだったと思っています。
現在力が入っている趣味は山です。今週末も斑尾に行ってきます。どちらかというと、アウトドアで遊ぶのが好きな人間です。
長谷川:続いてカインズ土屋さん、お願いいたします。
土屋:皆さんこんにちは。カインズ社長の土屋でございます。まず会社の説明をさせていただきます。カインズはホームセンターで、全国に210店舗を出店しています。売上は約4,000億円強。カインズはベイシアグループという小売業のグループに入っています。ベイシアグループは、まずスーパーマーケットやショッピングセンターを138店舗経営しているベイシアという会社がございます。また、フランチャイズのワークマンという作業着の専門店チェーンを約800店舗出店しています。これらの企業体を合わせてベイシアグループと言っておりまして、合計の売上高は約8,500億円強、店舗数は約1,800店舗です。ベイシアグループは今から約60年前に私の父が創業しました。
私は野村證券を経て、ベイシアの前身である「いせや」に入社しました。カインズの社長になったのが2002年。今期で17期目になります。そのうち10年間ほどはSPA体制づくりということで、製造小売業への転換を図ってまいりました。10年間でいろいろなインフラや設備を整えたのです。
なぜ僕がここに呼ばれのたか。きっかけは2つあると思います。1つは、昨年末にラスベガスで開催されたAWS re:Inventというイベントに参加させてもらったこと。ものすごい熱量で、感銘を受けて帰ってきました。もう1つは、今年になってから長谷川さんが主催している「IT酒場放浪記」に出演させていただいたということです。僕は長谷川さんや「IT酒場放浪記」を非常に高く評価していまして、そのあたりのお話も今日はできればと思っています。
趣味は大学の頃から続けている狂言です。野村萬斎さんのお父さんの野村万作さんが私の先生で、30年ぐらい教えていただいています。
柳瀬:嘉穂無線HDの柳瀬と申します。よろしくお願いします。嘉穂無線HDというのは耳慣れない会社ではないかと思いますが、もともとは私の祖父が1949年に創業した電気屋です。現在は3つの事業体があります。まずグッデイというホームセンター、そして電子工作キットの製造販売を行うエレキット、そして、昨年4月にはカホエンタープライズという、クラウドなどを使って企業のデータ分析を行う会社を立ち上げました。現在のメーン事業のグッデイは、北部九州を中心に66店舗を展開していて、創業1978年でちょうど今年で40周年になります。売上は約320億円です。
私自身は、大学時代はボート部に所属していて、月曜日の夜に合宿所に入って、日曜日まで毎日練習をする、1日2回もしくは3回練習をする。練習をして食べて寝る…というように、勉強せずにボートばかりして過ごしましました。2000年に三井物産という商社に入りまして、食料本部というところで外食さんの冷凍ポテトの輸入に関わり、シアトルのポテト畑まで行って買い付けてくるようなことをしました。2008年、ちょうど10年前ですが、家業の嘉穂無線ホールディングスに入社しまして、2年前の6月に社長に就任しています。
趣味はマラソンです。僕はTableauというツールをよく使っていて、このスライドでは福岡マラソンの過去3回のタイムを可視化してみました(笑)。2014年が4時間15分、2015年は自己ワーストで4時間54分。さすがにこれはいかんと思って、月200キロぐらい走って2016年は1時間ぐらい早くなって3時間51分という自己ベストを出しています。
長谷川:ご自分でTableauをお使いになられるんですか?部下に「やれ」っていうんじゃなくて(笑)。
柳瀬:自分でやっています(笑)。
(会場:笑)
長谷川:さて次は僕ですね。東急ハンズの長谷川です。東急ハンズは総合小売業で売上高は約964億円。我々の会社でちょっと胸を張れるのが、100%AWSという点です。1つもオンプレサーバーが無い状態を達成したのがポイントかなと思っています。
では次、チームラボの堺さんお願いします。
堺:え、もう次ですか(笑)。
堺:チームラボの堺と申します。チームラボは、今画面に表示されていますが、子供がお絵かきした絵が泳ぎだすとか、デジタルアートの会社として皆さんご存知かと思います。6月にはお台場に1万平米ぐらいの美術館を作ります。チームラボは創業2001年に創業しまして、17年間やっています。実はチームラボにはいろいろなお客様、特に小売業さんが多いのですが…のソリューションを支えるというもう一つの顔があります。ハンズさんもずっとやらせていただいています。
最近ではりそな銀行さんのお仕事をしました。UX/UIという言葉をよく聞きますが、何をユーザーが本当に求めているのかを考えてやっていく。銀行さんのアプリはどうしてもボタンばかり、バナーばかりのように見えるのですが、そこをゼロからリデザインしていくということをしました。
少し変わった例では、JRウォータービジネスさんの自販機があります(※編集部注:acure pass/プリで購入した商品を、通勤や通学で利用する駅の自販機で受け取れる新しいサービス・プラットフォーム。アプリを用いたまとめ買い・定期購入でお得に自販機を利用することができる)。
WEBの業界であれば、何人がどこをクリックして、誰がサイトに訪問していてということは当たり前のようにわかりますが、自動販売機の世界はまだまだデジタル化されていなくて、そういうところを変えていこうということで「イノベーション自販機」というお題から、アプリでドリンクを購入できる自動販売機をデザインして、アプリも自販機そのものも我々が作りました。ユーザーさんも、安く買えたりポイントがたまったりしてうれしい。このように体験全体を設計するということをやっています。今日はちょっとベンダー側に近い立場なのですが、そういう観点で小売りの話ができればと思っています。
長谷川:最後の話は流通っぽかったですね。ありがとうございます。
オンザテーブルで情報交換を行う流れができつつある
長谷川:今日は、流通業のデジタル変革にどう取り組むかというテーマでお話をしたいと思います。その前に、「システムの定義」を整理してみましょう。
長谷川:ガートナーが定義した「モード1」「モード2」という言葉があります。「モード1」は「System of Record」。流通業では売上管理システムや在庫管理システムのような伝票処理のシステムを指します。会計システムをはじめとして、四則演算と文字と数字で構成されているものです。「モード2」は、いわゆるAIとか画像解析とか、ちょっとドラえもんっぽい、素人が考えるコンピュータらしいものという定義で、日本はモード1がクラウド化する前にモード2がはじまってしまったので、モード2から着手した会社が多いというような分析もあります。今日は、デジタルで何かしようと考えたとき、経営者がモード1、モード2どちらの言葉でしゃべるのかということも含めて、聞いていきたいと思います。
たとえば、モード1は売上には寄与しないから意味がないという方もいらっしゃいます。逆にモード2はふわふわしてわからんやんけという経営者もいる。正解はありませんので、ご自身の経験やお考え、未来はこうなるからうちはこう持っていきたいとというお話。何と言っても皆さん社長ですから、社長が「未来はこっちに行くんだ」と言えば、社員は泣く泣くついていくしかありません(笑)。
まず1つ目はデジタルを使って効果があった事例を教えていただきたいと思います。挙手制で行きたいと思っています。
(挙手する土屋氏)
長谷川:お、先輩からですか!?意外ですね。
土屋:先に言っておいた方がいいかと思いまして(笑)。モード1の話なのですが、先ほども申し上げた通り、製造小売りは海外、特に中国で製造したものを、過不足なく日本に届けて、過不足なく店に届けるということが必要です。そういうシステムがないときは、多すぎたり少なすぎたりということを繰り返していました。ですが、システム開発をすることで、すぐには治りませんでしたが、かなり改善したということはありました。
これはとてもいいことなのですが、一方で非常にコストがかかりまして、そのコストが高いのか安いのか(よくわからなかった)…という面もありました。
僕から見ると(コストが)すごくかかっているように思えて、経営者目線からみると、ちょっとないかな…と。僕は、何年かこれについては文句を言い続けていたことがありまして(笑)。
長谷川:ベンダーの名前言っちゃいましょうか。冗談ですけど(笑)。
(会場:笑)
土屋:(笑)。そのような思いをずっと持ち続けていたのですが、長谷川さんが素晴らしいと思っているのは、こういう会で「(実際にシステムを)使ったときにここのところはよかった、悪かった」というような、情報共有をしようという流れを作られた。これは通常は相対でやるようなことなんですが、オンザテーブルにしようとなさっている。これは素晴らしいことだなと思っていて、高く評価しています。
「酒場放浪記」も皆さんにもぜひお読みいたきたいのですが、私があれに出演したことによって、この前ガートナー日本の社長さんがわざわざお見えになられてですね…。
長谷川:えっと「酒場放浪記」というのは「IT酒場放浪記」というブログメディアで、僕がベンチャーの社長とか経営者と話している対談のシリーズです。本当に酒を飲んでいるだけの話ではありません(笑)。
土屋:ガートナーの社長さんが、「酒場放浪記を見ました」と言っていらっしゃったんですよ。これまでいろいろな業界誌に出させてもらったのですが、この業界の人はあまりそういうものは見ていないのか、あまりそのことについては触れられないんですよね。でも「酒場放浪記」を見て、とおっしゃられる方がいた。そういう人にアプローチできる方法を発見されたのは本当に素晴らしい。
長谷川:それは「あんな冗談みたいな対談によう出たよな」という意味で言われたんじゃないですか(笑)。
土屋:そうじゃないと思いますけどね(笑)。
カルチャーの変革から生まれたAOKIの新ビジネス
長谷川:では次に照井さんお願いします。
照井:先ほどお話した通り、当社は売上の6割がファッション事業になります。ここではどのような販促活動をしていたのかというと、ダイレクトメール、チラシ、テレビなど、全くデジタルとは遠い世界で事業が成り立っていたんです。けれども、私が2年半前からAOKIで仕掛けていったのは、いかにチラシやダイレクトメールに使っている膨大な販促費を(デジタルに)シフトすることができるのかということです。
それで何をやったのかというと、ひとつはオーナーを含めた経営陣をシリコンバレーに連れて行って、Google やfacebookでプレゼンテーションをしていただきました。もちろんGoogle Japanのメンバーに一緒に資料を作ってもらったので、Google Japanでもプレゼンテーションをしてもらうことはできるのですが、敢えてシリコンバレーまで連れて行ったと。その結果会社のカルチャーが変わってきたというのが今の状況です。
実は当社では「suitbox」という新事業を5月に立ち上げました。これはスーツレンタルのサブスクリプションモデルです。
カルチャーの変革を遂げ、若いメンバーを選定し、プロジェクトを立ち上げました。その事業のスタート時はクラウドファウンディングを行い、海外のデジタルで成功しているファッション事業…Suitsupplyだったり、Bonobosだったり…を参考にしました。
我々はまだアナログの世界が中心ですが、今回デジタルを使って効果があった事例という意味では、suitboxという新しい商売を挙げることができると思います。
長谷川:新規事業をはじめようとすると既存事業に関わる人が足を引っ張ってくることもありうるわけですよね。それを、まず経営陣をシリコンバレーに連れて行って、体験してもらって、「おお、こんなに進んでいる、俺らもやろう!」とマインドチェンジを促し、事業をはじめられたという見事な実例だと思います。
愚直にデータ分析をしたら粗利が改善した
柳瀬:私が10年前に今の会社に入って一番びっくりしたのが、当時はそれぞれの従業員にメールアドレスがなくて、会社のウェブサイトもない。やりとりも電話とFAXでITは使っていませんでした。そこでまずはインフラを整備しました。AWSは2015年ぐらいから使い始めたのですが、AWS Redshiftに溜まっていたPOSデータを入れて、それにTableauをつないで分析をはじめてみたところ、粗利を改善することができたんです。これはモード1の話ですね。それまでは帳票やデータの出力を担当者に依頼して、出てくるまでに1週間、2週間かかって、ようやく出てきた数字を見て判断をしていたのですが、そのサイクルが秒単位になった。しかも自分で操作して数字が返ってくる。そのことにより、より深い分析ができるようになりました。実は私はデータの可視化やビッグデータの活用というものを眉唾ものと思っていたのですが、本当に効果があると実感したんです。
また、私がうちの社員に「こんなことできるようになったよ」と伝えると、「これすごい便利ですね!」とすごく喜んでくれるのもうれしいです。
長谷川:それは柳瀬さんが自分でデータベース設計からTableauから全部やられてるわけですよね…。絶対部下から嫌がられていますよ(笑)。
(会場:笑)
長谷川:僕もデータは過去のものだから分析しても意味がないと思っていたのですが、そんなことはありません。たとえば、売上が下がったときにデータを見ていないと「雨が降ったから」とか「競合がどうの」というんですが、ちゃんとデータを見ていれば「いやそれは、我々のオペレーションの問題で、価格がこうで、こうで、こうだから売上が下がった。だってデータがそう言っている。雨が降ったら全体の売上高が悪くなるのに、データを見たら、売上げが上がっているカテゴリも下がっているカテゴリもある。下がっているのは価格をうまくコントロールせずにやったからだ」と、バイヤーに具体的に説明することができるようになるんです。
用語がわかりにくくて経営者が判断できないAWS
長谷川:では次の質問は「AWSについてどう思いますか」というものです。ここにいるエンジニアの方をはじめとして「俺はAWSを使いたいんだけど経営がわかってくれへん」「どのように言えば経営層に響くんやろか」と思っている方がたくさんいるのではないかと思います。経営者として、AWSがどうだったら積極的に導入したいと思うか。どのように風に持っていけば決裁書にハンコを押しやすいか、そういうポイントみたいなのがあれば教えていただきたいと思います。
堺:AWSですか……むちゃくちゃうちは使っていますからね…安いですよね。
長谷川:安い。コスト下がりますよと。
堺:ベースには、コストが下がりますよというのがありますよね。
エンジニアレベルで言っても、うちにもサーバサイドエンジニアがたくさんいたんですが、サーバサイドエンジニアの質も変わってきています。たくさん存在しているマイクロサービスみたいなものを使ってどうするか、という事例が増えています。
長谷川:安いと経営的には導入しやすいし、エンジニアとしてもマイクロサービスとかAWSのサービスを勉強して質が上がってきている、ということですね。他の経営者の方は何かありますか?
照井:コストにも期待はしていますが、私としては2の次に考えています。もちろん安くなってほしいというのはありますが、経営陣の中に出てきているのは「Amazonの何かを使わなければならない」という空気感です。
また、事業をやっている中で、新しいシステムがタケノコのようににょきにょきできていて、今当社では結果的にデータセンターを3か所も使っています。これをAWSを使うことによって、正規化していくことができるのではないかと考えています。
柳瀬:私のところとカインズさんは、10倍以上規模が違うのですが、そのカインズさんができるIT投資というのと、私どものできるIT投資は単純計算でも10倍違います。でも、AWSのいいところは、僕らぐらいの規模でもやろうと思えばできるということです。言い方は難しいのですが、経営的にもそこまでコストとしては高くないと思える値段でしたので、それはよかったのかなと。
それと、どうなればAWSがよりよくなるのかというと、用語が専門的なので、普通の経営者ではわからないのではないかな…とは思います。いきなり「クラウドでマイグレーションしましょう」と言われてもほとんどの人はわけがわからない。経営者側は判断に至らないケースが多いのではないでしょうか。用語の翻訳や、わかりやすい説明は大切かなと思います。
長谷川:なるほど。今日のサミット(の他のセッション)も難しい話ばかりしていますものね。
(会場:笑いとざわつき)
長谷川:土屋さんは何かありますか?
土屋:やはり小売業ですので、「Amazon Effect」も気になります。小売業はamazon.com(物販事業)があるためAWSを選択しないという企業も多い。日本だけではなくて、世界的にも多いのではないでしょうか。
僕の立場からすると、インフラですから、インフラとして非常に有効だということが他社と比べて明らかにわかれば、使わざるを得ないと思っています。少なくともライバルであるamazon.comがあるから、検討してはいけない…となってはいけないのかなと思っています。
長谷川:ウォルマートになってはいけない、とおっしゃってるんですね。
(会場:失笑)
テクノロジーは道具に過ぎない。大事なのは「何がしたいか」
長谷川:では3つ目です。Amazon Effectをどうとらえて、これから皆さんのところで、どのようなことをやっていくか。時間があと1分10秒しかないんですけど、好き放題しゃべってください。
照井:脅威を感じるというよりも、私が今思っているのは、小売業というはお客様に対してどう表現するかということで、新しい施策を打った瞬間にそれが競合にバレてしまうものなのですね。最近うちの会社の中で「モデリング」という言葉を使っていまして、要はまねる、パクるということなのですが、Amazonを見て脅威を感じるというよりも、(Amazonの施策も)こういう神経で見ていけば、自分たちの事業にも展開できるのではないかなと考えています。
長谷川:TTPですね。「テッテイテキニパクル」ってやつですね。
(会場:失笑)
柳瀬:「ITにできること」「人間しかできなかったこと」という軸があったとすると、どんどん人間にしかできないことが減ってきている感じがします。でも我々の本業はリアルなお店なので、リアルな店舗で人間しかできないことはなんなのかという、「ITと人間の境界線」がどこなのかを意識して「これはITがやる」「これは人間がやる」ということを決めて判断することがすごく大事になってきていると思います。
今までうちのホームセンターでは、お客様が店員に「〇〇はどこで売っていますか?」と質問したときに、店員がすべて商品の場所を記憶していて「ここにあります」とご案内するようなことが多かったのですが、そういうのはITで代替できるのかもしれません。
どこに境界線が来ているのかが、半年や1年の単位で変わっているので、その情報は小売業をやっている立場としては知っていなければならないのかなと考えています。
堺:僕らはお客様からAIを使いたいとか、画像処理をしたいとか、合成処理をしてほしいとか、いろいろなご相談をもらうのですが、大切なのはそこではないと思うのです。技術を知ることはすごく重要ですが、小売業の方々には、お客様にどのような体験をしていただきたいかとか、自分たちがどのようにやりたいかを考えてていただくといいのではないでしょうか?裏側のテクノロジーはツールにすぎませんし、どんどん変化していきます。クラウドのいいところは持たなくてもいいところですので、そういうものを使っていけばいいのだと思います。
土屋:私どもは広島などで体験型の売場というのを実験しているんです(※編集部注:カインズ広島LECT店)。体験型の売場を作るためには、そこの人手も必要なので、人手をかけなくてもいいところをなるべく機械化するとか、別のところで代替するということが必要なのではないかと思います。小売業は特に人手不足で悩んでいるところが大きいので。
長谷川:品出しを機械化したいですよね。品出し作業は誰がやっても付加価値はないので。堺さん、品出しロボット作ってくださいよ。
堺:つ、作りますか…(笑)。
長谷川:店舗で人間がやっている、発注、品出し、レジ、接客という作業のうち、発注はどんどん自動発注になっていますし、レジももしかしたらセルフレジやAmazon GOのようなものになるのかもしれません。残る品出しと接客というところを、どこからどこまで機械にやらせて、どこからどこまで人間がやるのか、…そういうことを今後は考えていかなければならないのかなと思いました。
駆け足でしたがそろそろ終わりたいと思います。今日はありがとうございました。まとめの言葉は特にないのですが、経営者がITをどう考えているのかということで、少しでも皆さんのご参考になればと思います。今日はありがとうございました。
(談・文責:編集部)