売上高3.3兆円、世界No.1アパレルの主力ブランド
手ごろな価格で最新流行のファッションを楽しむことができるファストファッション。ZARAは、日本における外資系ファストファッションブランドの先駆けとして広く知られている。ヨーロッパを中心に世界全体で約7,500店舗、日本国内では94店舗を展開する。
メンズ、ウィメンズからキッズ、ベビーまで揃う幅広い商品は約2週間単位で入れ替わり、店内には常にトレンドを反映した新しい商品が陳列される。
ZARAを擁するのは、スペインに本社を置く1975年創業のアパレルメーカー、インディテックスだ。売上の大部分を占めるのがZARAであり、売上高は前年同期比8.6%増の約3兆3,190億円(2018年1月時点)。純利益も同6.6%増の約4,412億円で増収増益と好調で、競争が激化するアパレル専門店のランキングでトップの座を維持している。
同ブランドが日本での認知を大きく広げるきっかけとなったのが2003年の六本木ヒルズへの出店だ。この旗艦店・六本木店が8月末に移転増床リニューアルを行うまでの約4ヵ月間限定でオープンさせたのが、国内初となるショールーミングに特化した実験店「ZARA ROPPONGI POP-UPSHOP ONLINE」だ。
アプリによる試着予約とクリック&コレクトに対応
改装店舗から徒歩数分、六本木ヒルズのノースタワー内に立地するポップアップショップは2階建てで、店舗面積は約800㎡。バナナ・リパブリックの路面店への居抜き出店で、1階がショールームとメンズのフィッティングルーム(全6室)、2階はぜいたくにスペースを使ったウィメンズのフィッティングルームが広がる。
バックヤードには店内に陳列されているアイテムがサイズ別にストックされているが、フロアに出されているのは1品番につき1サイズのみ。ショールームとしての美観を重視し、白を基調にしたフロアには限られた数のアイテムがスッキリと並べられている。
試着予約は、ZARAアプリからのみ可能だ。アプリを立ち上げ、試着したいアイテム、サイズを選び、試着をリクエストする。店舗内で実際に見て気に入った商品のタグに付いているバーコードをスキャンして、予約することも可能だ。広々として高級感のあるフィッティングルームを、貸切気分で使うことができる。
試着後は気に入った商品をアプリやECサイトで購入し、配送か店舗受け取りを選択。店内の商品以外にも、オンラインショップやアプリに掲載されている他の全商品も同時に選択、購入できる。13時までの注文であれば、当日18時以降に同店での受け取りも可能となっている。
待ち時間や順番通知で試着ストレスをフリーに
同店は、洋服の購入と試着にまつわるさまざまな不満を解決した、ストレスフリーの店舗だ。
アプリには具体的な待ち時間が表示され、自分の順番が回ってくると通知される。試着したい服を何着も抱えたまま店内を移動する物理的なストレスや、先の見えない試着待ちのストレスはない。購入後、荷物がかさばることもなく、手ぶらで帰ることができる。
最近では、アパレル通販サイトZOZOTOWNがZOZOSUITを開発するなど、試着ができない不安を「試着しなくても買物ができる」という強みに変える流れが生まれている。ZARAの実験店は、あくまでもブランドの資産であるリアル店舗を生かす形でオンラインとクロスさせ、快適な試着サービスという顧客への新しい買物体験を提供している。
顧客満足度の向上が最大の販促につながる
オンラインとオフラインのシームレス化は、現在ZARAが強化する施策のひとつだ。インディテックスの売上高のうち、ECの占める構成比は10%。前年比では41%増の伸びを見せ、重要なチャネルへと成長している。
同社は過去に大規模なデジタル分野への投資も行っているが、いま現在、それは個別マーケティングではなく、刻々と変わりゆく顧客ニーズやトレンドに対応した生産体制、物流や店頭の最適化──「あなたのための店」づくりに注がれている。
アプリやECサイトに蓄積されたユーザーデータの分析に基づく販促は行っておらず、顧客へ向けた情報発信も、Twitter、LINE、Facebook、InstagramなどSNSを使用した新作入荷、年2回のセールの告知などにとどまる(国内)。
現状、ZARAは、あくまでもお客にとって一番都合がよく、自由で快適な買物ができる環境づくりや、お客を楽しませ飽きさせない仕掛けづくりに徹している。
ポップアップショップでは、常に不定期でイベント展示も行われており、実験店そのものが話題性のあるプロモーションとしても機能している。顧客満足度向上は、再来店・再利用を促し、ファンづくりにつながる最大の販促活動となり得るといえるだろう。