コンビニネクスト

セブン-イレブン・ジャパンが考える「譲れない一線」

第1回「スマホ」と「レジ」が生産性向上の切り札となるか

「スマホの活用」と「レジの省力化」。コンビニの“今”を語る上で外せないテーマが、この二つである。既存店の売上高伸長率が頭打ちとなる一方、人件費の上昇が続いている。チェーン本部に求められている政策が、店舗の売上をオンさせる、あるいはコストをダウンさせる新たな仕組みづくりだ。コンビニ3大チェーンが、導入と改革を図るスマホとレジ。最新の取組みを整理する。

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“飛び道具”スマホの活用で売上オン

全国6万店弱、客数約900人、客単価600円前後、日常生活にすっかり根付いたコンビニが売上をオンするなど至難の業である。来店客数も買上金額も、地道な改善により1%が増減する世界。その厚い壁を壊す取り組みが、「スマホアプリを活用した商品の受注」である。

ローソンは店舗での取り置きサービス「ローソンフレッシュピック」、セブンは店舗からのお届けサービス「セブンネットコンビニ」を推進する。

フレッシュピックは、生鮮三品を中心に、日配品、菓子、調味料、ドリンク等、スーパーマーケットで手に入る商品の購入が可能となる。専用アプリをダウンロードし、カテゴリーごとに分類された商品の中から好きなものを選択してカートに入れる。受け取り日時と店舗を指定して確定し、会計用のバーコードが専用画面に付与される。朝8時まで予約をすれば、当日の(遅くても)18時までに指定するローソン店舗で商品をピックアップできる。

「フレッシュピックはスマホの利用により無限のSKUを展開できる。お客様は、家で待つ必要もなく、遠いお店に行く必要もなく、夕方に近くのローソンに取りにいくだけで無駄のないサービスを受けられる」(ローソン代表取締役社長 竹増貞信氏)

加盟店には、ほとんど負荷が掛からず売上を計上できる。発注も陳列も不要であり、生鮮品を扱っても廃棄の心配もいらない。現在は東京と神奈川200店舗において、仮説、実行、検証を繰り返し、今年度下期になってから首都圏から拡大を図っていく。

ローソンフレッシュピックの商品。センターで袋詰めされウォークイン(ドリンクのバックヤード)に納品される。店舗の負荷はほぼなし。

セブンのネットコンビニは、札幌地区の15店舗で昨年10月にスタート、本年7月に市内100店舗に拡大し、19年度上期に北海道全店(約1000店舗)、同年度下期に順次全国に展開させていく。

専用のアプリに配達可能な近隣のセブン店舗が表示され、お客は店舗を選択し、個店ごとに異なる2800品目の中から選択する。注文を受けた店舗は従業員が商品をカゴに入れ、セブン専用の宅配業者(西濃運輸の子会社)に渡して、業務は完了する。配送車はドミナント内の複数店舗を受け持ち、集荷にあたり、依頼主に配達する。代金は代引きで当面は現金のみ。

現状は基幹システムと連動させず、POS情報が反映されていないため、従業員が商品の有無をチェックし、欠品が生ずれば、店側からお客にショートメールで返信して代替商品は必要か判断を仰ぐ。北海道地区では、配達料は216円(税込み)、注文は1,000円以上、3000円以上は配達料は無料とした。配達時間は11時から20時まで、1時間毎の指定を受け、最短2時間でお届けする。この実験により、少なくても日販2円のプラスが実証されたという。

アマゾンを代表とするEコマースに対してセブンのネットビジネスは、どこに強さがあるのか。オペレーション本部デジタル戦略部統括マネジャーの新居義典氏は次のように説明する。

「全国約2万店を在庫拠点と見なすと1,500億もの在庫金額がある。お店の在庫を有効活用することによって、お客様に一番早く、お届けを実現できるのではないかと考えた。もう一つの強みは私どもの商品。朝昼晩の食シーンのご提案が可能であり、水、米、トイレットペーパー、最寄り品と言われる商品を手頃な価格で用意している。拠点と商品。これを活かすことによって、一番効率的なお届けビジネスを考えたのがセブンネットコンビニである。」

「お客様にとって便利って何? と考えたときに、いつでも頼める、しかも最寄りのセブンから、どこにいても頼める、これが原点である」(セブン-イレブン・ジャパン 古屋一樹 社長、セブンネットコンビニの会見で)。

ネットビジネスに関して回り道をした感のあるセブンだが、“アマゾンエフェクト”に対する解答は、(人時を含む)既存店舗の活用と、配達業務の専用化である。問題は加盟店の負荷であるが、売上が見込めて、オーナーの納得を得られたと判断したのだろう。

ストレスフリー、人時削減でレジは省人化

スマホの活用とレジの省力化。その二つを掛け合わせたシステムが、スマートフォン専用アプリを使用したセルフ決済サービス「ローソンスマホペイ」である。ローソン店内において、お客自身で商品バーコードをスマホのカメラで読み取り、専用のアプリ上でクレジットカード、楽天ペイ、Apple Payを使って決済する。退店時に、スマホに表示されたQRコードを店頭に設置された専用読み取り機にかざすことで、決済済みであることを確認し、電子レシートを表示することができる。都内の3店舗(晴海トリトンスクエア店、大井店、ゲートシティ大崎店)にて4月23日から5月31日まで実証実験をする。

ローソンスマホペイは、店内の商品を手に取ってバーコードを読み取り精算が済む、最後に、専用レジで決済済みを確認し、電子レシートが発行されて完了する。

日中の時間帯はスマホペイと有人レジの併用により混雑が緩和されている。会計に費やす時間を計測すると、スマホペイはレジ待ちする既存の会計と比較して、およそ3分の1に時間短縮が実現できている。お客にとってのストレスフリーだけではなく、混雑時に入店を取り止めたお客の「機会ロス」を削減する効果もある。客数の少ない深夜帯においては、従業員のレジ作業が軽減され、レジ無人化も実現できる。

レジの省力化について、ファミリーマートは本年度、効果が見込める店舗に1000台の「セルフレジ」を導入する。ピーク時は、キャッシュレスによるセルフレジにより、お客の流れも速くなり、列に並ぶストレス緩和に効果を発揮する。1台につき1日1人時の削減効果があるという。

ローソンは本年度、全店に「自動釣銭機付きPOSレジ」を導入する。商品のスキャンと読み上げ、袋詰めは従業員の仕事だが、現金の支払いについては、お客自身が紙幣や硬貨を機械に通して精算する。コンビニの風景をも変える大きな決断と言える。

この新しいPOSにより、レジ点検、レジ締めが不要になり、1日2人時の削減が可能になる。“浮いた”2人時に対してチェーン本部は、コスト削減に終わらせるのではなく、カウンターFF(ファストフード)など販売強化への充当を期待する。

一方のセブンも釣銭機付きPOSの導入を検討しているが、総じてレジの合理化には前向きではない。セブンは“レジ業務”と言わずに、レジは接客する場だから“レジ接客”と呼んでいる。顧客接点を大切に考え、レジは単なる金銭授受の場ではなくコミュニケを図る場と考えているようだ。

カウンターフーズも、この夏から「焼き鳥」を新規導入する。カウンターのレジを受け持つ従業員が、おいしさを伝え、販売を担っていく。セブンは元々、商売に向きあう商人のDNAが強いのだ。デジタル化が進むコンビニだが、守るべきアナログ思考も健在である。

著者プロフィール

梅澤聡
梅澤聡ウメザワサトシ

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中『東京学生映画祭』を企画・開催。89年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と現地のコンビニ巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。