コンビニネクスト

NewDaysが終日無人店舗を実現できた4つの理由

第13回セルフレジはコンビニ人手不足の救世主となるのか

人件費の高騰がコンビニ経営を圧迫している。2019年度の最低賃金は時給ベースで過去最大の引き上げとなり全国平均は900円台に達する。東京は1013円、神奈川は1011円と全国で初めて1000円を超える。ここ数年は毎年3%台の高い伸び率により、人件費の全てを支出するコンビニ加盟店にとっては厳しい店舗運営が強いられている。今回は人手不足の特効薬になることが期待されているレジの「セルフ化」を中心とした省人化への取り組みを紹介したい。

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国内初の終日無人コンビニを投入したNewDays

本来であれば、高騰する人件費をカバーするだけの売上を確保すればよいのだが、近年はコンビニ同士の競合のみならず、ドラッグストアやEC勢力の台頭も影響し、売上の増加は容易ではない。そこで、喫緊の課題になったのが、加盟店の利益に直結する人件費の圧縮、具体的な仕事に落とし込めば「レジ業務」の省人化だ。セブン-イレブンの試算によれば、レジ業務に費やされる人時は店舗業務全体の3分の1にあたるという。この3分の1の人時を圧縮できれば、加盟店にとって、目に見える利益の向上が見込まれるであろう。

JR東日本グループの駅ナカコンビニ「NewDays」は、レジ2台を無人化した、セルフレジのみで精算する新型の実験店舗「NewDays 武蔵境 nonowa」を本年7月にJR武蔵境駅(東京・武蔵野市)改札口の外にオープンした。売場の人員は基本ゼロで、国内初の終日無人コンビニと言えるだろう。

「NewDays 武蔵境 nonowa」は、中央線 武蔵境駅 nonowa口改札外に出店。

NewDaysは、東北、関東、甲信越、静岡に計491店舗を展開している。店舗は全て直営で、駅ナカ立地のため、ほとんどが開閉店である。今回の(売場)無人店舗の狙いについて、JR東日本リテールネット八王子支店営業課課長の永山秀実氏は次のように説明する。

「私たちの店舗は今、人手不足が課題であり、その人手が最も掛かっているレジ作業を省力化したのが今回の店舗です。一方で、賞味期限のチェックや、キャンペーンの準備、人の仕事は残っていきます。自動販売機ですら、商品を中に入れる人がいないと成り立たないのだから、売場を無人化にしても人の手は必要です。機械でもできる部分、人にしかできない部分を明確にし、レジについ今回はセルフ化を図りました」

売場は無人でも、バックヤードには必ず1人が常駐して、お客がセルフレジの操作に迷えば、すぐに売場に出て対応する。その他に、荷受けや品出し、フェースアップ、清掃業務など、売場に出て作業する時間帯もある。

店舗面積は25㎡(売場面積18㎡)、客数目標は(1日)700人、客単価は300円前後、セルフレジ2台(交通系電子マネーと、クレジットカードのみ対応)、アイテム数は500~600、営業時間は7時~22時、従業員は1人で運営する。

商品バーコードを読み取らせ、品目と価格を確認、交通系電子マネーかクレジットカードかを選択し、タッチして精算完了

 終日無人店舗を可能にした4つの理由

では、なぜ終日(売場)無人店舗が可能となったのか、その条件を整理した。

第一に、店舗従業員が駅施設の他の2店舗から交替で配置されていること。

実は武蔵境駅構内にNewDaysが別に2店舗あり、同じ店長の管理下でシフトが組めるなどオペレーションが容易であること。

第二に、店舗が立地する改札口が交通系ICカード専用であること。

すなわち店前を通る、ほぼ全ての人がSuicaやPASMOなどの交通系電子マネーによる買物が可能である。現金しか使えないお客は、ほぼゼロであろう。

第三に、セルフレジが駅ナカで急ぐお客に好まれること。

駅ナカ立地は、ペットボトル1本とか、プラスおにぎり1個など、買上点数が少ない。また電車の乗降や乗り継ぎで急いでいるお客が多い。その点、セルフレジは、収納代行や割引クーポン券、サービス商品の取り扱いがなく、レジが止まることなく待ち時間も予測できる。また1人当たりの買上点数が少なく、袋詰めに長時間掛かる心配もない。

第四に、セルフレジを使い慣れているお客が多いこと。

セルフレジはNewDays 491店舗の中では、372台が導入されている。キオスクタイプの小型店「NewDays KIOSK」294店舗の中では53台が設置されている。セルフレジでも躊躇なく利用できるお客を育ててきたのだ。

一方で、この新型店舗を今後、展開していくにあたり課題点もある。

第一に、酒、たばこの免許品の販売ができないこと。画像による遠隔操作で、身分証明書を提示させれば可能だと思うのだが、現状の法令だと難しいとの判断である。

第二に、キャッシュレスの比率が、依然として低いこと。

NewDays全店におけるキャッシュレス比率は、42.6%(2018年度実績)に留まっている。他のコンビニチェーンの2倍の比率と高いものの、駅ナカにあって6割のお客が現金決済を選択している現実がある。そのため、無人店舗の水平展開(多店舗化)については、キャッシュレス比率の推移と、実験店舗の検証を経て、慎重に考えていくとしている。

売場は、飲料、おにぎり、サンドイッチ、パン、菓子、健康ドリンクで構成、雑貨は極力絞り込んだ
什器はスライド式にして陳列作業の人時を削減した
米飯は、弁当を扱わず、おにぎりのみとした。レンジアップが不要になる

セブンはセルフレジ導入で最大9時間分の人時削減と試算

セブン-イレブンは本年7月に、作業時間や作業量の削減を目指した実験店舗を東京・町田市に開設した(町田玉川学園5丁目店)。ペースの移動や新設など、幾つかの取り組みの中で、今回の目玉はフルセルフレジの設置であろう。

カウンター内の3台のレジのうち2台をセルフレジ(現金での支払いも可能)とした。また、状況に応じてセミセルフレジへの切り替えが可能とし、その場合は、商品の読み取りや袋詰めを従業員が行い、現金やカード決済はお客がセルフで行うようにする。他にもセルフレジ1台を、カウンター外に設置して、従業員がレジ業務に携わる人時の大幅な削減を図っている。セブン-イレブンはセルフレジの導入により、最大9時間分の人時削減が可能になると試算している。

セブン-イレブンはセルフレジの導入を実験的に始めた

深夜帯無人店舗の実験を開始したローソン

ローソンは深夜0時から5時まで売場を無人にする実験を、本年8月23日より半年間をめどに実施している。当面はバックヤードに1人が勤務する体制をとる。

店舗(ローソン氷取沢町店)は、横浜市の幹線道路に面した住宅地に立地し、深夜帯の客数は同チェーンの中では少ない方に分類される。

入店には誰でも入手できるローソンアプリか店舗で発行する「お得意様入店カード」、それらの準備がないお客は、入り口で顔撮影を行えばすぐに入店できる。

売場は従業員が不在のため、酒売場とカウンターはカーテンで覆って、酒・たばこの販売はせず、従業員を必要する宅配などのサービスも休止している。

レジはローソンスマホレジ(当連載の第1回目に詳細)か、自動釣銭機付きのセルフレジの利用となる。防犯対策として、防犯カメラを増設するほか、モニターも設置して安全対策に努める。

ローソンの深夜(売場)無人店舗の見取り図(氷取沢町店)

深夜帯の無人化で問題になるのが納品の有無。売場は無人になるが、従業員がドライバーの入店をインターフォンで許可して、バックヤード、または店舗横の倉庫に商品を搬入してもらう。

無人店舗が増えても深夜帯の物流に変更はない。課題は酒の販売。深夜帯のレジ通過客のうち2人に1人は酒を購入するため、売上にどの程度の影響があるか検証していくという。

深夜帯の営業に関して、その是非が論議されている。根っこにあるのが、人手不足と人件費高騰による加盟店の収益悪化である。

近年、日本で急速に店舗を拡大したのがアメリカに本社を持つ「エニタイムフィットネス」。このマシン特化型ジムは24時間営業し、夜間の従業員はゼロになる。ICチップによる本人確認と防犯カメラによる監視体制。

深夜に活動したいニーズは依然としてある。問題は損益分岐点であろう。チェーン本部による店舗運営およびシステム改革に期待したい。

著者プロフィール

梅澤聡
梅澤聡ウメザワサトシ

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中『東京学生映画祭』を企画・開催。89年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と現地のコンビニ巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。