若年層新規客獲得のためキーとなる要素を探す
原宿駅を起点とした周辺エリアは表参道、青山通りなど最新のファッションやコスメ情報の発信源であり、感度の高い人たちが集まる一大拠点である。なかでも竹下通りは若者、外国人を中心とする観光客に人気スポットで、日中は多くの人でにぎわう。
また、企業のオフィスも多くビジネスパーソンの来店が予想できるのに加え、エリア内にはマンションや戸建て住宅も意外に点在しており、日常的な時間を過ごす生活者も多い。
こうした立地環境に合わせスギ薬局 原宿店では、外国人観光客、若年層を中心にトレンドの先端をいく化粧品販売を中心に、プチプラコスメ、低価格のアクセサリー、キャラクターグッズなど、ほかのスギ薬局にはない特徴ある品揃えで営業する。売場面積の約7割はビューティケアである。
化粧品強化に加えて、エリア内の居住者に向けて洗濯、掃除、ベビー用品関連など日用雑貨の基本的な用途機能を品揃えして、地域対応にも気を配る。若いお母さんからは、近隣にベビー用品を買える店舗が少ないので、感謝されることも多いという。
1階入り口を入るとシーズン商品のプロモーションと並んで300円均一のアクセサリーコーナー、キャラクターグッズ、キャンメイクのコーナーや若年層に人気のメイクブランドを複数編集したエンドなどを配して若年層の取り込みを図る。
人口ボリュームは50歳以上の中高年が多いが、ドラッグストア(DgS)の未来対策、とくに化粧品部門の戦略としては、若年層の新規客を獲得し、加齢に応じて商品提案をしていく。こうした生涯にわたる顧客化策を講じる必要がある。スギ薬局 原宿店はこうした未来戦略も踏まえて新規客獲得にどのような商品、ブランドが有効か、テストマーケティング、アンテナショップ的な役割も担う。
2階には化粧品カウンターを設置、自社のビューティアドバイザー(BA)が肌診断機を活用しながら肌悩みやメイクの好みを聞いて、深いニーズを引き出す。
そして、同店の目玉のひとつがスギ薬局初の男性BAを配置していること。仕事の内容は女性BAと同様に女性客対応がメイン。メイクアップアーチストやヘアデザイナーなど、ビューティケアの分野で活躍する男性は少なくない。DgSでもこれをきっかけに新たな分野が切り開かれるかもしれない。
2階にはヘルスケアのコーナーと調剤薬局を設置。近隣のビジネスパーソンや生活者の利用が多いという。都市型、先端的な店舗だが、薬剤師も管理栄養士も配置して、同社らしいトータルヘルスケア(健康体、受診中など、健康状態にかかわらずすべての生活者の健康に貢献すること)を推進している。
同社としては新しい試みを多数盛り込んでおり、今後の企業戦略に生かすべく検証と調整をしていく構えだ。若年層の新規客獲得へ向けどのような解が見つかるか、厳しい競争のなか、同店の担うミッションは重要である。
「多様なお客さま、スタッフに対応して竹下通りをリードする店になる」(店長:青木麻里氏)
青木氏は入社7年目、関東の都市型店舗の店長歴が豊富で、多様なお客、人材をまとめられるマネジメント能力を評価され、原宿店の店長を任された。
多国籍なインバウンド客に加え、従業員も中国人、マレーシア人など多様。英語、フランス語を話せる日本人スタッフもいる。
「スギ薬局の先端をいく店を任されたことは光栄です。お客さまはインバウンド客に加え、人と違うことをしたい、はじめて試すなど、いろいろなおもいを持った若い方が多くいます。そうしたご希望に沿えるよう、常に新しい情報、商品を揃えたいとおもいます」
原宿店は平日と休日の客数の波動が大きい。また、夕方4時から閉店まではインバウンド客が集中し、人時をそちらに取られるので、スタッフの配置、スケジュール管理にも気を使う。
将来的には、竹下通りの入り口にある店にふさわしく、トレンドをリードする店にするという展望を持つ。
「メイク商品はジェンダーレス化する」(BA:河邉徹氏)
河邉徹氏は2017年、スギ薬局に総合職として入社。以前から化粧品には興味があり、現場で直接お客さまと接するBAを希望していた。しかし、経験が浅く男性BAが活躍できる環境も整っていなかったので一度退社。外資系の化粧品メーカーに転職して売場スタッフの職に就く。スギ薬局を退社してからも同期とは連絡を取り合っており、原宿店オープンに際して男性BAを探しているという話をその同期から聞き、応募して今回の採用に至った。
普段の仕事で気を付けていることは、お客一人ひとりに合った提案をすること。
「トレンドについても一概に『これが流行』と押し付けるのではなくその人の土壌、好みを尊重しています」(河邉氏)
お客一人ひとりに合った個別の提案をするには、化粧品に関する膨大な知識が必要となり、河邉氏はYouTube、ネット、雑誌などから情報を得て、気になるものはさらに調べて深掘りする。また、自らデパートの化粧品売場に行き、タッチアップやカウンセリングを受ける。自分がお客の立場を経験することで、どのように接客すべきかを考えるためだ。
最後に、男性のBA、男性がメイクすることについてどうおもうか尋ねた。
「自分の中では、性別にこだわっていません。メイクをみんなに好きになってほしい。ジェンダーレスになってくれたらいいとおもいます。男性化粧品、女性化粧品を分けないというのもひとつの手で、みんなのものという認識が広がってほしいとおもいます」。難しいとされていたことが2年の時を経て、スギ薬局原宿店で実現に至っている。未来に目を向けた新たな価値創造がここから始まるだろう。