コンビニネクスト

第55回業態スタディ:出来たてラーメンの投入に垣間見るセブン−イレブンの次世代成長戦略

セブン−イレブンが「お店で仕上げたできたて麺」を展開する。ラーメンという競争の激しい食分野において店内調理による「出来たて」を提供していく。セブン−イレブンに対しては、コンビニコーヒー以来、新たなイノベーションが見当たらないとする厳しい意見もある。「できたて麺」を、どのように評価すべきか、その詳細から紐といていく。(流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2026年1月号より転載)

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調理機器の前で待つこと2分 出来たてのラーメンが完成

セブン−イレブンが「出来たて」商品に傾注している。

出来たてといえば、2024年度に全国展開を終えた「お店で揚げたカレーパン」や、「セブンカフェスムージー」(2017年に実験開始、2023年3月本格展開)、そして「焼きたて」パンを約4,500店舗に導入(2025年11月末)、2026年度には約1万8,000店舗に販売エリアを拡大する計画などがある。

そして今度はラーメン(お店で仕上げたできたて麺)の販売を開始した。10月22日より埼玉県の一部店舗でスタート、約40店に拡大していく(11月11日現在)。特筆すべきは「できたて麺」は主食になるという点だ。

他のコンビニも同様だが、これまで店舗で提供する出来たて商品は食事でいえば脇役である。揚げ物や肉まん、おでんにしても主食ではない。対してラーメンのような麺類は食事の中心になる。

これまでの主食といえば、定温(約20度)かチルド(約5度)で管理された米飯弁当、あるいはチルドか冷凍で管理された麺類(ラーメン、そば、うどん、パスタ)であった。近年は定温からチルド、チルドから冷凍へと低温化傾向にあった。しかし今回の「できたて麺」は、店内で「調理した」“熱々の”麺類の提供になる。

開発を担当したセブン−イレブン・ジャパン商品本部 次世代商品開発 シニアマーチャンダイザーの赤松稔也氏は「ロボットで作る新しい麺のマーケットを切り拓くことで、主食のマーケットに積極的に挑んでいき、お客様の期待に応えていきたい」と意欲を見せる。

出来たての提供は従業員が調理して、お客に手渡すのではなく、あらかじめ店内に設置された調理器で、お客が全てセルフで行う。店舗において従業員に負荷を与える新たな企画は、出来得る限り不可であるとする認識は、コンビニ業界では常識である。

今回ラインナップした商品は560円〜630円(税抜)一般的な飲食店を下回る価格帯と品質で勝負していく

商品ラインナップは「お店で仕上げた醤油ラーメン」、「(同)味噌ラーメン」、「(同)豚骨醤油の家系ラーメン」が(税別)各630円、「(同)肉うどん」が(同)560円、「(同)台湾まぜそば」が(同)593円の5アイテム。冷凍食品として販売され、店内調理の専用商品となる。

専用の調理マシンはソフトバンクロボティクスが開発した蒸式調理ロボット「STEAMA(スチーマ)」。このマシンが熱湯と高圧・高温の水蒸気によって自動で調理する。

調理の流れについて簡単に説明する。お客は冷凍食品売場で専用の商品を選び、レジで精算を済ませた後、セルフで商品を持って専用マシンの前に行き、商品のQRコードをマシンに読み取らせてスタートのボタンを押す。

約30秒の庫内洗浄が行われ、ディスプレーに指示が出たら、購入した商品のフィルムをはがさずに容器を扉の中へ入れて待つこと約90秒、完成した麺を取り出すことができる。

90秒で調理完了。ノズルが開けた穴には、店舗に設置されたシールを貼って持ち帰る

扉の中では上部からノズルが降りてきて、フィルムに小さな穴を開けて、水蒸気が吹き込まれる。冷凍食品を急速に調理する独自の「蒸式調理」が、食材の香りや食感を損なわずに仕上げることを可能にしているという。小さな穴は調理後にお客がシールを貼って塞ぐ。

商品をQRコードで読み取らせ、庫内洗浄、商品をセッティング、自動調理、完成で約120秒(2分)の待ち時間が発生する。

仮に調理器1台で12時から13時のランチタイムを回そうとすると60分÷2分で30食、のりしろを入れると最大で25食程度になるだろう。ランチタイムにお客が集中する店では、複数台のマシンを設置して対応するという。

「セブン−イレブンは、焼きたてや茹でたて、揚げたて、挽きたて、煎れたて、ミックス仕立てと、お客様の五感に響くような新しい商品をイノベーションとともに、ライブ感を含めた提供に力を入れています。出来たての和菓子や出来たて弁当、出来たて調理パンといった、さまざまな商品の開発を積極的に進めていく考えです」(赤松氏)。

調理機器の開発にはパナソニックやシャープといった、日本を代表する家電メーカーがサポートしていくという。

セブン−イレブンが出来たてに傾注する理由は実績にも表れている。2025年度の中間期(9月末)売上実績で、フライヤー含むホットフードが前期比3.9%増、セブンカフェ(ティー含む)が同6.5%増、スムージーが同10.5%増となり、これらできたてのカウンターで販売する商品の平均日販が同5.5%増と好調に推移していることが要因である。

蒸気を用いた調理方法でラーメンがおいしくなる理由

今回「できたて麺」の調理器開発を担当したソフトバンクロボティクスRX&FOOD統括 RX&FOOD事業本部本部長の畑竜彦氏は、次のように開発のポイントを語っている。

「最大の特徴は、専門店で茹でるその瞬間を再現すること。湯気、香り、出来たての食感まで味わっていただけます。たんに冷凍食品を解凍する機械ではなく、お店での調理を再現するところに最大の特徴があります」

蒸気を用いた調理により、湯気や香りまでをお客の五感に訴えていく。これは従来のようにレンジを用いた温めとは違って、調理のプロセスをお客に訴求することで、専門店品質を期待させていく。

この訴求方法はセブンカフェのコーヒーと同様である。コーヒーは、マシンのボタンを押すと、豆を挽く音とともに、コーヒーの香りが鼻腔をくすぐり、湯で抽出するところが見えて、最後に扉を開けると湯気と香りを体感できる。このセブンカフェの成功体験が、出来たて麺に色濃く反映されている。

「出来たてのラーメンを90秒で提供します。この時間の短さも、お客様の忙しい生活の中で楽しんでいただくには非常に重要なファクターであると認識しています」(畑氏)

ここではショートタイムショッピングの大切さに注力した上で「お客様が迷うことなく、直感的に画面の指示に従ってロボットを動かす操作性のところにもこだわって開発しました」と操作の容易性に留意したという。最初に、お客が商品のQRコードをマシンにかざす。その点をクリアすれば、あとはマシンの指示に従えば、ストレスなく確実に商品を受け取ることができる。

商品の品質については解凍ではなく調理であるとし、畑氏は次の3つのポイントを挙げて、その優位性を指摘する。

第1に「冷凍で劣化したでんぷん質の復活」。復活とは高圧スチームによる均一加熱で、でんぷん質を再構成したという。これは主に麺に対して非常に有効な方法になるという。麺を冷凍すると、どうしてもでんぷん質の劣化が起こる。これを短時間で理想的な加水状態にするには、高圧で高温なスチームにより均一に加熱することで、かなり高い水準にまで引き上げることができるという。

「店で調理して茹で上げた麺と同じように、表面の滑らかさであったり、コシであったり、のどごしであったり、こういったものを再現することができるのです」と畑氏はいう。

第2に「水分膜で過加熱防止とうま味保持」。主にチャーシューを始めとする具材に関して、加熱により水分量が薄まってパサパサになってしまうことがある。この新しい調理機の独自スチームによる制御により、食材の表面に水分膜をコーティングして、肉や野菜の水分、うま味を逃さずに、ジューシーに仕上げることを可能としたという。

第3に香り成分の密閉。香りは食事をしておいしいと感じる非常に重要な要素。香り成分の揮発を抑制する蒸気構造により“湯気までおいしい臨場感のある一杯”に仕上げている。

「単純に味だけではなく、香りや温度、食感といった要素により、専門店で食べているときと同じような体験を実現できたと思っています」(畑氏)

価値ある商品の提供。それはセブン−イレブンが何十年も唱え続けてきたコンセプトであり、価値があれば、世間一般の価格と比較して決して安くはないが、お客はそれを認めて購入していただける。そうした理念のもとで価格競争に陥らず、チェーンとして日本一の売上高を遂げてきた。

その価値の高さをセブン−イレブンは近年、出来たてによる競争力の強化に注入している。出来たてのおいしさは誰もが納得できる価値になる。トップライン(売上高)を高める効果が期待できる一方で、コストを最小限に抑制する、端的にいえば人手を掛けないということが望まれている。「お店で仕上げた出来たて麺」に、セブン−イレブンの次世代成長戦略を垣間見ることができるのだ。

著者プロフィール

梅澤聡
梅澤聡ウメザワサトシ

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中『東京学生映画祭』を企画・開催。89年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は『販売革新』『食品商業』の編集委員を務める。