投稿者: hy
物販、調剤、在宅介護、DX+専門家でHBCの「地域密着型トータルケア」を提供するイオンリテール
専門家とDXを活用して物販プラスアルファの価値創造を目指すイオンリテールH&BC本部の工藤真紀・本部長に、新しい時代のヘルス&ビューティ&ウエルネスのトータルケア戦略について聞いた。(聞き手/月刊MD主幹 日野 眞克)(月刊マーチャンダイジング2024年11月号より抜粋)
3つの物販、2つのサービス それぞれに専門家を配置
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ヘルス&ビューティケアのトータル戦略についてからお話します。イオングループの2021年~2025年度の中期経営計画の中で、図表1の5つの成長戦略を設定しています。
イオンリテールH&BC本部は、図表1の「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」を成長戦略として掲げています。H&BC事業本部が考える新しい時代のヘルス&ウエルネスの今後については、SDGsからさらに進化したSWGS(Sustainable Well-being Goals)という言葉を今後のトレンドとして表現しています。
SWGSを構成する要素としては、「医食同源」を実現することが最優先のテーマです。さらに、環境(持続可能)、個性(自分らしく生きる)、幸福(笑顔にするサービス)に重点的に取り組んでいきます。この4つのトレンドをリアルとバーチャルで実現していくことを目指しています。

H&BC本部が実現する売場の領域は5つあります(図表2)。ビューティ、ファーマシー(一般用医薬品)、デイリーコンビニエンス(日用雑貨)という3つの物販に加えて、調剤サービスの4つまではドラッグストアとほぼ同じです。
それに加えてユニークな事業として「イオンスマイル」というデイケアサービスの介護事業をH&BC本部として展開しており、3つの物販と2つのサービスで構成されています。
また、それぞれの物販とサービスに専門家を配置していることが大きな特徴です。ファーマシーでは登録販売者、管理栄養士、ビューティはビューティケアアドバイザー、調剤は薬剤師、さらにイオンスマイルでは、「理学療法士」という要介護者の運動・リハビリメニューを作成する専門家がいることは、H&BC事業本部の大きな特徴です。
しかも、5つの専門家と物販・サービスが店舗でもデジタルでも融合した価値を提供していくことがユニークな取り組みであると思います。デジタルでの販売に関しては、「イオンスタイルオンライン」と「ネットスーパー」の2つがあります。

H&BCを取り巻く6つの環境変化に、前述した5つのグループで対応していく方針です(図表3)。たとえばMZ世代の消費の中心へということで、ドラッグストアよりもビューティやデイリーコンビニエンス(デリコン)の売場を広くとっていますので、より若い世代に対応した品揃えや売り方ではよりMZ世代に対応できていると思います。
また、持続可能な環境配慮という意味では、オーガニック、フェムテック商品の取り扱いを増やしています。
H&BC本部の5つの重点戦略
さらなる成長に向けて、H&BC本部は以下の5つの戦略を進めていきます。
《取材協力》

執行役員 H&BC本部本部長
工藤 真紀氏
不明ロス対策のためのプラットフォーム構築を目指す全国万引犯罪防止機構
全国万引犯罪防止機構(万防機構/東京都千代田区神田駿河台)は経営を圧迫する経済問題であり、青少年の健全な育成を阻害する社会問題でもある万引犯罪の防止を目的に2005年に設立。ポスターによる啓発活動や講演などを通じて万引防止のために広く社会に働きかけている。ここでは、同機構の副理事長で元警視総監でもある樋口建史氏に万防機構の活動や万引きを含む「不明ロス」対応の具体策などを聞いた。(聞き手/月刊マーチャンダイジング編集長 野間口 司郎)(月刊マーチャンダイジング2024年11月号より転載)
万引防止活動は規範意識を向上させる一助になる
─万防機構設立の目的や活動について、改めて教えてください。
樋口 まず申し上げたいのは、安心安全でなければ社会活動も活発にならないし、企業も投資をためらいます。安心安全こそが社会に活力をもたらす最大のインフラだと思います。
国際的に見ても、日本は最も安心安全な国だと言われています。これは警察の努力だけではなく、官民合わせて良い社会づくりができているのだと思います。言葉を換えれば、日本人の規範意識の高さが安心安全の要因になっているのです。
そして、万引防止を広く呼びかけることは、この高い規範意識を維持させることにつながると思います。万引防止活動以外でも自転車ルールの啓発活動、薬物乱用禁止を訴える「ダメ、ゼッタイダメ。」という標語を使ったキャンペーンなども同様です。
こうした犯罪防止、ルール順守に不断の取り組みをすることで世界でもまれに見る規範意識の高さが保たれているのではないでしょうか。なかでも「万引防止」は老若男女に共通する身近なテーマです。
不明ロス被害と財務を結びつける習慣がない
─米国の大手小売業は、万引きを含む不明ロス対策に積極的ですが、日本はいかがでしょう。
樋口 ある大手小売業のトップとお話していたら、「(万引きは)こういう商売をしていると仕方のないことです」とおっしゃいました。また、別の小売企業トップの方からは「万引きしてでも欲しくなるような魅力的な陳列でなければモノは売れないのですよ」とお聞きしたこともあります。
もっとも、そのような企業でも最新鋭の防犯カメラを導入するなど万引対策は立てているのですが、残念ながら運用が適切でないなど、全体として見れば、日本の小売業、特に経営層は米国ほど意識は高くない、体系的、全社的で実効性のある万引防止対策は遅々として進まないという印象です。
─それはなぜだとお考えですか。
樋口 色々理由はあるのでしょうが、そのひとつは不明ロスと財務を結び付けて考える習慣がないことではないでしょうか。私たちは万引きだけでなく、内部不正、業務管理上のミスも含めて不明ロスとして考えています。
日本の企業は計画した予算など一定の売上、利益を挙げればそれで満足しますが、こうした不明ロスがなければ純利益にそれだけ上乗せできたはずです。不明ロスによる損害は真水の金額です。
米国の決算説明会や株主総会などでは、例えば、利益が悪かったとき、それが在庫過剰だったのか、経費がかかりすぎたのか、それとも不明ロスが多かったのかなど、財務状況を分析するひとつの指標として不明ロスが扱われています。
万引き、不明ロスに関して現場では大変に関心が高いのです。しかし、それが経営層や財務とつながっていないという印象です。アメリカでは投資家の関心も高いと聞いています。
年間の推計不明ロス額約8,350億円 万引被害の認知率は推計0.3%
─日本でもブックオフ(ブックオフグループホールディングス)で大規模な内部不正があり、2024年5月期決算の発表を延期、特別調査委員会が設置されるという事件が発生しました。これをきっかけに日本の小売業の経営者も不明ロスへの意識が高まるかもしれませんね。
樋口 そうなることを願います。お客様商売なので万引対策は正面切って打ち出しにくいし、内部不正も身内の恥という意識で公表しづらい面もあります。しかし、実情は看過しがたい被害が出ています。

万防機構が不明ロス額を推計しましたが、その額は約8,350億円、そのうち万引被害の推計値は3,460億円にもなります(図表1)。

2023年の万引きの認知件数は9万3,168件です。被害額から推計すると3,460万件の万引きが起きているはずで、認知件数割合はわずか0.3%、99.7%は認知されていないことになります。こうした推計値から、万引被害の認知は氷山の一角にすらならないという声もあるほどです(図表2)。
確かに被害届けを出すと事情聴取や書類作成などで店長さんが時間をとられるということもあり認知されにくいのが実情です。
だからこそ、未然に抑止することが重要なのです。万防機構では万引をはじめ、広く不明ロスを抑止する対策を立てるために「ロス対策士」という検定試験を主催、実施しています。
─ロス対策士検定試験はいつ頃から始めたのでしょうか。
樋口 2017年にウォルマートのロス・プリベンション担当ディレクター、ホームセンターのロウズの元副社長や、この分野の第一人者でLPRC(ロスプリベンション・リサーチ・カウンシル)の創設者の一人であるフロリダ大学のリード・ヘイズ博士(「Retail Security & Loss Prevention」の著者:邦訳「小売業のロス対策入門」)など、米国の専門家、実務家を招聘し日本でロス対策に関する「万引対策強化国際会議」を開催しました。約400人の参加があり、万引対策の機運が大変に高まりました。
これをきっかけに、米国の制度を参考に「ロス対策士」という検定試験を日本でも確立しようということになり、万防機構理事の近江元(おうみはじめ)氏を中心に勉強会が立ち上がりました。議論や勉強を重ね2021年に最初の試験が始まり、これまでに650人以上のロス対策士が生まれています。


不明ロスは、業種の性格上仕方がないと捉えられていました。もちろんゼロにすることはできませんが、専門的な知識と技術で適正水準にコントロールできるのです。その一翼を担うのがロス対策士なのです(学習内容は図表4参照)。
不明ロスは異常値、事件ではなく、いわば必然であり、予め設定した目標値以下に減少させるといった新しいマインドセット(心構え)で臨む必要があるのです(図表3)。
日本の小売業、とくにDgS(ドラッグストア)は多店舗展開していて4桁の店舗を出店するDgSも複数あります。1店舗ごとに対策を立てると費用対効果が合わないでしょう。郊外型、都市型など立地タイプによっていくつかのパターンに分けて計画的、事前に対策を取れば効率的だと思います。
しかし実態は一度被害が起こると、対症療法的にカメラを設置したり、警備員を置いたりすることが多く、受け身的な企業が多いように感じます。チェーンストアの特徴を生かして対策も標準化することが大切だと思います。

私たちはロス対策士の検定試験を活用して、専門家、実務家を育成することで、不明ロスを未然に防ぐ「ロス・プリベンション」を提案しています(図表5)。ある書籍販売企業の事例ですが、この企業は店長以上の職位にロス対策士の資格取得を義務づけています。

2019年から2022年までの不明ロス率は平均で0.375%、ロス対策士を2021年から育成して3年目の2023年には不明ロス率が0.11%、前年より0.34%下がっています(図表6)。この企業は72店舗、年商は約170億円なので、改善したロス不明率0.34%は5,780万円に相当します。
様々な活動をつなげて、プラットフォームをつくりたい
─今後、万防機構が目指すものはなんでしょう。
樋口 不明ロス対策士検定試験が普及することで、被害を出さない、また犯罪者を出さないことに貢献していきたいです。また、ロス対策士同士が情報共有できる環境や基盤づくりもできればいいと思っています。
現在、日本宝くじ協会助成事業として、万引防止のポスターや冊子をつくって全国の中学1年生に配布することで、青少年の規範意識向上を図っています。神奈川県では高齢者の万引きの再犯防止のプログラムをつくって実施の支援をしています。
その他、顔認証カメラを使った万引抑止の取り組み、警察との連携なども行っています。
最近は、インターネット事業者の協力を得て、盗品がインターネット上で販売されていることの実態把握や盗品販売の抑止に注力しています。以前は盗品をさばくためには、専門の犯罪組織のネットワークを使わなければなりませんでしたが、インターネットが発達して、オークションや販売サイトで簡単に売ることができ、万引きをビジネスとする個人が多数生まれています。
オークションサイトなどをモニターして、例えば、同じアパレルチェーンの新品が繰り返し出品されるなど怪しい動きがあれば警告を発し、盗品であることが判明すれば警察と協力して摘発するといったことを実施しています。
将来的には、こうした様々な活動をつなげて万防機構を不明ロス対策のプラットフォームにしたいと考えています。小売業の方には、ぜひ、ロス対策士の育成、ならびにこのプラットフォームへ参画することで、自社の不明ロスの対策に役立てて頂きたいと思います。
─不明ロス対策への活動、ロス対策士など、貴重なお話をありがとうございました。
<取材協力>

樋口 建史氏
ロス対策士検定試験制度に関する問合せ先
特定非営利活動法人全国万引犯罪防止機構
https://www.manboukikou.jp/exam-about/
メール:lpj@manboukikou.jp
電話:03-5244-5612
ハピコム接客コミュニケーションコンテスト「対話スキルは年々向上!食の接客コミュニケーション増」
医薬品販売の接客コミュニケーション能力向上のため、ハピコムグループに所属する企業の代表がその技能を競い合う「ハピコム接客コミュニケーションコンテスト」。今年で9回目を迎え、参加者の技能は年々レベルアップしている。ここでは、最終審査の結果や接客の傾向などを紹介する。(月刊マーチャンダイジング編集長 野間口 司郎)(月刊マーチャンダイジング2024年11月号より転載)
ハピコムグループ約6万人の資格者から選ばれた13人
ハピコムグループはイオンを中心に、ウエルシアホールディングス(HD)、ツルハHD、クスリのアオキHDなどが参加する国内最大規模のドラッグストア(DgS)グループである。
グループ内には薬剤師、登録販売者合わせて約6万人の医薬品関連の資格者が在籍しており、今回行われたハピコム接客コミュニケーションコンテスト(以下コンテスト)の最終審査参加者はそのなかから選ばれた13人ということになる。


コンテストは、毎回2つのテーマに沿ってお客さまに扮した俳優が相談に訪れ、それに応じて接客するという設定になっている。今回のテーマは「お腹の調子が悪い」と「夏の疲れ」。
2つめのテーマ夏の疲れは参加者にはシークレットになっており、当日、その場で初めて知らされる。参加者の対応力、普段からの知識の蓄えが問われる。あらかじめテーマに沿った商品が模擬売場に用意され、これらに加え自分の推奨したい商品を持ち込んでもよいことになっている。相談内容を聞き取りながら、適切と思われる商品を奨める形で模擬接客は進行。
参加者は別室に集められ、自分の出番が来るまでは会場に入ることはできず、他の参加者の接客内容を知ることはできない。
コンテストの参加対象は薬剤師か登録販売者だが、近年、調剤薬局が分離申請で出店されることも多く、物販スペースでヘルスケアを担当する薬剤師は著しく減少、今回の参加者はすべて登録販売者となった。
過去は薬剤師の参加もあり、第3回大賞受賞者は薬剤師だった。ヘルスケア売場の担い手は登録販売者であることを印象づける状況でもある。
管理栄養士の資格を持つ坂根章子氏が大賞受賞

審査方法は、一次審査として、ハピコムのメンバー企業19社から合計50人を推薦。二次審査として、一人のミステリーショッパーが、推薦された50人すべてを覆面調査して採点する。最終審査では審査員6人が図表1の項目に沿って採点。最終審査だけでなく、普段の接客力を示す二次審査の得点も加味されていることもコンテストの特徴のひとつである。得点の高い順に大賞、準大賞を決定。最終審査の結果は図表3の通りとなった。

大賞を受賞したくすりの福太郎の坂根章子氏は管理栄養士の資格も持つ。坂根氏の接客内容を振り返ってみよう。

まず、お腹の調子が悪いというテーマに関して、お腹をくだしているか、食事は取れているかなどの基本的な状況を聞いたあと、それらの状況を自分でも反復して相手に確認、「1、2ヵ月お腹の調子を崩しているのは辛いですね」と苦しそうな表情と共に共感を示し相手に寄り添う接客をしていた。声のトーンやテンポに落ち着きがあり、全体として安心感をお客さまへ与えていた。
相手の症状の確認の後「医薬品をご紹介する前にいくつか確認させていただきます」と言い、服用するのは本人か、薬品へのアレルギーはないか、他の疾患はないかなど基本項目を確認。確認事項は厳密には6項目あり、確認のための質問を羅列すると話し方によってはお客さまが圧力を感じることもある。坂根氏は症状の確認のあと、スムーズに確認へとつなぎ、柔らかな口調と落ち着いた話しぶりでまったく圧を感じさせなかった。
奨めたのは整腸剤で、体に良い菌が生きたまま大腸まで届き、効果を実感できると説明。お客さまの「お腹をこわしているときでも服用しても大丈夫か」という質問には「お腹がゆるいときでも大丈夫、一家にひとつあると安心です」と対応し、相談者だけでなく、家族にも奨められることを伝え、安心できる商品であることを理解してもらうとする姿勢が見えた。
商品案内の最後に「私は管理栄養士の資格も持っておりまして、お腹をこわしているときは、食物繊維が負担になります。キノコ類、根菜類の食べ過ぎには注意してください」と食事、栄養アドバイスも付け加えた。
ケース2、夏の疲れに関して。暑い日が続いて疲れが取れないという症状を聞いた後、どれくらいその症状が続いているかを確認、「何か心当たりはありますか」と疲れの原因をお客さまに確認した。疲れの主たる原因が暑さであることは相談者自身も認識しているが、その他にも要因があるかお客さまに確認することは効率がよいし、より的確な対応につながる。
この問いに対して「営業の仕事で外を歩き回っているせいではないか」という答えを導き、今年は特に暑かったですもんね、大変でしたね」という共感のあとに、「環境の変化、ストレスを感じることはありますか」と質問。特にないという回答を受けたあと、商品紹介の前に確認したいことがありますと、つなげている。
症状確認→共感(言葉、表情、声のトーンに留意)→基本事項の確認→商品紹介という一連の流れは大変にスムーズで笑顔や表情と相まって、商品紹介までの短い時間の間にある種、「坂根ワールド」が形成されている感もあった。
ビタミンB群の入った保健薬を紹介、その後に、自分が管理栄養士であることを告げ、ビタミンB1、タンパク質を多く含んだ豚肉を使った料理が疲労回復には効果的であるとアドバイス。薬以外、食事、栄養、健康のことなど、いつでも相談に来て下さいと言う言葉で締めくくった。

審査員で接客アドバイザーの北山節子氏は、坂根氏の接客を次のように評した。
「途中で挟む、大きな笑顔がとてもチャーミングで、この人に話しかけたいと思わせる。お客さまの症状を聞くとき、つらそうな表情になるので、それがお客さまの心を開かせるのではないか。目を合わせて話す共感力を感じさせ、耳と心をお客さまに傾けているのが分かった。途中、商品をお客さまに渡して、飲み方の説明をしたのは新しいやり方だと感じた。接客する人が持っている商品を自分も見たいときがある。家に帰って坂根さんの笑顔を思い出し、また会いたいと思わせる接客だった」
高度な知識に基づく接客 食事、栄養と関連づけた接客

受賞者たちの印象に残ったポイントを挙げておこう。
ウエルシア薬局の中川氏は、終始腰の低い低姿勢な態度で、相手の安心感を引き出し、基本確認項目も羅列するのではなく、話の流れに織り込んで絶妙なタイミングで必要な確認を行っていた。また、夏の疲れのテーマでは、即効性と長期視点で体質を変えていく商品のどちらがいいかという選択肢を出し、双方の商品を提案していた。
杏林堂薬局の渥美氏は、接客する前に「お薬がたくさんあって迷いますよね」という一言を挟むことで、相談相手がリラックスできるような工夫があった。基本項目の確認では、状況によって飲めない薬があるので、確認していると説明、こちらも信頼関係づくりに寄与する工夫である。お腹の調子が悪いという相談には、エアコンの設定温度を1度上げるだけでも体調管理に役立つという生活アドバイスをしていた。傾聴力、共感力もあり、全体に時間経過とともに相談相手との信頼関係をつくっていくような接客だった。
ツルハドラッグの畠山氏は、お腹の調子が悪いという相手に対して、吐き気、発熱はないかを確認。これは近年増えている過敏性腸症候群の疑いを確認するような接客で専門性を感じさせた。疲れのテーマでも疲れには主に「肉体疲労」、「内臓疲労」、「精神疲労」、「脳疲労」の4つがあるという知識を披露し、説得力が増していた。推奨商品も整腸剤と漢方薬を合わせて使う提案があり組み立てが緻密。全体的に高い専門性を感じさせた。
レデイ薬局の藤永氏は、他の参加者よりも相談相手との距離を半分近く短く詰めた位置取りをしており、親身になって相談するという気持ちが現れている感があった。コンテストのための行動ではなく、通常の接客がそのまま出たのだと思う。相手と目線を合わせて相づちを打ったり、「いつでも藤永にご相談ください」という言葉には、お客を思う強い共感力を感じさせた。
また、声に抑揚があり、話を聞くときには声のトーンが抑えられ(小声になる)、症状に合った薬を選ぶので「大丈夫です」という言葉では声に大きく張りを出すなど、引き込まれるような接客態度を見せた。接客の最後に右手を大きく上げて「いってらっしゃい」と元気よく送り出す姿もオリジナリティを感じさせた。
その他、イオンリテールからの参加者2人は、いずれもレシピを用意しており、食事からの健康改善、「医食同源」という同社の方針を体現していた。
同社から参加して昨年大賞を受賞した佐藤宏美氏は、健康を考えたレシピを作成する任務を担っており、そのレシピがカウンセリング用のタブレットに収納され、紙のレシピとともに接客で活用されている。今回の最終審査でも各自紙のレシピを持ち込んでの接客となった。コンテストが企業の接客を変えている事例である。
今回大賞受賞の坂根氏も管理栄養士で2年連続で管理栄養士の資格を持つ登録販売者が大賞受賞となっており、食と健康を絡めた接客が今後大きなトレンドになることを伺わせている。
《取材協力》




AI無人受付と有人遠隔接客を融合する、サイバーエージェントのリモート接客
サイバーエージェントの連結子会社であるMG-DXでは、薬局業務、医療のデジタルシフトを支援している。同社の提供する「遠隔接客AIアシスタント」は同社とサイバーエージェント内の人工知能の研究開発組織「AI Lab」が共同開発したサービス。今後の調剤事業にゲームチェンジを引き起こす可能性を秘めている。(月刊マーチャンダイジング2025年1月号より転載)
AIによる受付の自動化とリモート服薬指導を実現
「遠隔接客AIアシスタント」は、大まかに2つのサービスに分かれる。1つは「AI無人受付サービス」。映像や音声を高精度で認識できるAI搭載の受付ロボット「Sota」が調剤薬局の受付に訪れた患者の姿を認知して、自動かつ自律的に受け付け業務を開始。音声でマイナ保険証の確認、処方せんの事前送信、ジェネリック医薬品の希望、お薬手帳の有無などを確認、受付業務を進めていく。
途中、患者から「ジェネリック医薬品とは何か?」といった質問があっても、事前に学習させた範囲内でAIが自律的に回答してくれる。患者が困っていたり、人との会話を希望する場合には、遠隔でつないで担当スタッフが対応することも可能。オプションとしてSotaの代わりにCGアバターを使うこともできる。ここまでが「AI無人受付」のサービスである(写真1、2、動画1参照)


2つ目は「遠隔服薬指導サービス」。受付業務の最後にSotaから、服薬指導を店内のオンラインスペースで行うか、対面で行うかの確認があり、オンラインを選択すると受付に設置された発券機からバーコード付きの受付票を発券。それをオンライン服薬指導のスペースにある受付機にかざすと、モニターに担当の薬剤師が現れ、遠隔で服薬指導をする。ここまでが「遠隔服薬指導サービス」である(写真3、4、動画2参照)


薬剤の受け取りは受付時に受付店舗(薬局)、ロッカー、配送などの手段が選べる。
2つのサービスはそれぞれ個別の料金となっており、セット利用、単体利用いずれも可能。要望に合わせてカスタマイズにも応じている。
MG-DXでは「遠隔接客AIアシスタント」を2024年8月にリリース、8月開催のJAPANドラッグストアショーや10月開催のCEATEC2024に出展したこともあり、取材時、多くの問い合わせや導入検討の話を受けて商談の最中とのことだ。各案件や要望に応じたサービスのカスタマイズ提案にも多忙を極めている。
「コスト削減」とオンラインによる「固定客化への布石」が2大ニーズ
「遠隔接客AIアシスタント」は受付業務をAIエージェントにより自動化することで、人件費の削減を図ることができる。また、遠隔服薬指導は、薬局業務の忙しさを平準化する効果がある。
調剤事業に注力する大手DgSは、調剤併設店舗をなるべく増やして面分業による調剤市場のシェア拡大を図っており、こうした出店戦略は立地により繁忙店とそうではない店の格差を生み出す一つの要因にもなっている。
遠隔接客AIアシスタントで、比較的手の空きやすい店舗に勤務する一人の薬剤師が複数の店舗の服薬指導を行うことで、繁忙店、閑散店の格差から生じる薬剤師の偏在問題を解消、薬剤師の仕事量の平準化を実現させる。
さらに、遠隔服薬指導システムを利用することで、患者が希望すれば、特定の疾患に詳しい薬剤師が服薬指導や健康相談に応じることも可能にし、調剤薬局の専門性向上にも貢献できる。
「遠隔接客AIアシスタントに関するお問い合わせや引き合いなどがこれまで経験したことのないくらい大きくて、時代の変化にしっかりとした役割を果たせそうだと実感しています。ニーズは大きく2つあると思っています。

1つがコスト削減です。診療報酬の改定や人件費の高騰で調剤事業の収益は厳しい状況にあります。大手のDgSも調剤併設薬局を多数出店している関係で、非繁忙店で能力を十分に発揮しきれていない薬剤師もいます。このサービスは遠隔服薬指導という選択肢を追加することで、非繁忙店の薬剤師に遠隔地から患者対応をサポートできる環境をつくることができ、既存の薬剤師間で仕事量を最適化することで、明確にコスト削減につながります。
もう1つは、将来的にオンライン調剤で患者を囲い込むための布石としての利用です。今後、電子処方せんの導入率は上がり、自分のスマホでオンライン診療、オンライン服薬指導を受けて薬剤を受け取るという流れが普及するでしょう。一度オンラインで服薬指導を受けると継続率は8割を超える程、格段に高くなることが実証されています。

現在、遠隔接客AIアシスタントのプロトタイプ(基本型)では、AIで受付をして、その後店舗内の専用スペースでオンライン服薬指導を受ける流れになっていますが、オンラインで患者を固定客化したい、DgS、調剤専業チェーンには、弊社のサービスで遠隔服薬指導を体験してもらうことにより、自分のスマホを使ったオンライン服薬指導へとスムーズに誘導して、固定客化したいという狙いがあります。そのための導入です。
患者に対して、今回は店舗でオンライン服薬指導をして頂いて、慣れてきたらスマホでやってみてくださいといった主旨が込められています。
このように、遠隔接客AIアシスタントの導入にあたっては、コスト削減とオンラインによる囲い込みへの打ち手。守りと攻めの両方があり、ニーズのバランスが取れていると感じています。現在ご用意しているものを店頭に置くのは当たり前で、もっとこういうことができないかという要望が多く、それらに応じて仕組みを作り変えているところです」(MG-DX代表取締役社長 堂前紀郎氏)
AI×遠隔対応事務で約30%のコスト削減
遠隔接客AIアシスタントを使ったコスト削減のイメージは次のようになる。現在、企業ごとに最大成果の出る店舗、立地を選定中の段階だが、MG-DX社ではコスト削減のモデルケースとして、対象とする店舗を1ヵ月の処方せん応需枚数が1,000枚〜1,500枚、常時勤務する薬剤師2人、事務スタッフ1人の中型店舗を想定。AIエージェントにより受付業務の7割程度を自動化、複雑な状況や質問に対しては、本部もしくは基幹店に配置したスタッフ1名が遠隔で対応する。
AIエージェントとのハイブリッド対応により、選定した中型店3店舗程度の対応を遠隔地から1名で行うことが可能となり、受付業務をリモート化(無人受付化)する。この体制により、事務スタッフの人件費が約30%程度カットできることが見込まれている。企業や店舗によって最適な利用パターンは今後練られていくことになる。

現在、調剤薬局で顧客(患者)満足度を下げる一番の要因は、待ち時間が長いことで、これが離反の一番大きな理由に挙げられる。
また、受付が混んで薬剤師が受け付けや問い合わせ対応に回ることで調剤業務に集中できないといったケースもあり、体制の整備が調剤薬局の効率化(収益最適化)、顧客満足度向上双方にとっての最大の課題になっている。これを遠隔接客AIアシスタントで解消していく。
AI活用で高齢者との相性が懸念されるが、高齢者のAIロボットSotaに対する評価は意外に高く、「かわいい」「けなげに働く」といった声が多い。また、子供がAIロボットを気に入って前を離れないといった現象も見られる。Sotaの存在が高齢者や親子連れの利用促進にも貢献する可能性がある。AIロボットによる受付にユーザーが慣れることで、受付の無人化が一気に進む可能性もある。さらに、遠隔接客AIアシスタントは調剤薬局の働き方改革にもつながる。
「調剤薬局は、女性が多く働いており、産休、育休から復帰したママ薬剤師の働く場を広げる効果があります。オンライン服薬指導に対応するセンターをつくることで、そうした人材をこれまで通り、あるいはこれまで以上に活かせると思います。自宅からオンラインで服薬指導することも可能ですし、そういった働く環境がつくれます」(MG-DX遠隔接客事業部 事業部長三澤佳祐氏)
将来的には非調剤薬局併設店でも調剤事業が可能に
遠隔接客AIアシスタントは当面、調剤薬局、調剤薬局併設のDgSに設置され、受付の無人化、服薬指導のオンライン化を進めていく。その一方で、将来的には、調剤薬局を併設していないDgSの店頭での処方せん受付、オンライン服薬指導、薬剤受取も視野に入っている。
構想としては、受付に鍵付きの処方せん投入箱があり、読み取り後の処方せん、もしくは事前送信した処方せんをその中に入れ、後で回収する(処方せん現物がなければ調剤を受けられない)。その後オンラインで服薬指導を行い、薬剤は指定の時間に再度受付に立ち寄りピックアップするか、専用ロッカーで受け取る、もしくは宅配してもらう。
MG-DX社によれば、こうしたサービスは法的には現在でも問題ないが、設備やプロセスでクリアすべきことはいくつかあるとのことで、直ちに導入できるサービスではない。
将来、条件がクリアされ、このサービスが実現すれば、調剤薬局を併設しなくても調剤事業の拡大が可能になり、面分業を大きく広げて調剤市場のシェア拡大を狙うことができる。あるいは、現在リアルの調剤薬局が少ないDgS企業でも、オンライン服薬指導を行う薬剤師が待機するコールセンターのような設備があれば、これまでよりも格段に低い投資により、調剤事業を拡大することも可能だ。
アメリカの大手調剤薬局チェーン、ウォルグリーンでは、調剤薬局にリアルな一次医療(プライマリケア)のクリニックを併設して、そこから処方せんを発行して隣接の薬局で受けるというモデルを構築して事業を進めていたが、オンライン診療、オンライン調剤の普及により、こうしたモデルが不採算化。
2024年度の決算が大規模な営業損失に陥り、クリニックの閉鎖、薬局そのものの閉鎖に追い込まれている。同社は今後3年で薬局全店の15%程度にあたる1,200店の薬局を閉鎖すると発表している。
今後日本でもオンライン診療、オンライン調剤が普及すれば、リアルな施設とそれに見合った数の人材に投資するよりも、DXへの投資で大幅に効率のよいリターンを得られる時代が来るだろう。
遠隔接客AIアシスタントは拡張性のあるサービス
遠隔接客AIアシスタントでは、非調剤薬局併設店を調剤事業のタッチポイント化する構想に加え、さらなる展望がある。街中でのヘルスケアスポットの開業である。カウンター付きの数坪のスペース、例えば、PCR検査場程のスペースに、AI無人受付とオンライン服薬指導ができる機器を設置、買物などで繁華街に出たついでに、○○ドラッグのヘルスケアスポットに立ち寄り、処方せん受付から服薬指導までを無人、オンラインで行い、薬剤は買物帰りに同じ場所でピックアップする、あるいは宅配してもらう。
さらに、オンライン診療も同じ場所で行えば、生活習慣病などの慢性病や軽微な疾患の診療と調剤を街中の一角で、気軽に一気通貫に受けることが可能になる。
堂前氏は遠隔接客AIアシスタントにより、DgS、調剤専業チェーンの事業サポートをするのはステップ1で、ステップ2は介護施設への導入、ステップ3は個人宅への導入だと語る。
「遠隔接客AIアシスタントを施設や個人宅に導入する際は、DgSがコストを受け持つことを提案したいと考えています。服薬指導や健康相談をリモートで行うコールセンターのような設備を整えた上で、施設に導入すれば、症状によっては、在宅医療・調剤をリモートで行うことで、処方せんをDgSで受けることができます。ドクターとの連携もスムーズになるでしょう。リモートによるお買物のサポートもできますし、介護保険を適用しながら生活をサポートする業務も可能です。
また、今後高齢化が進むので、見守りができたり、双方向で会話できる遠隔接客サービスを独居の高齢者宅に設置することは重要になると思います。現在、セキュリティ会社や宅配企業がこのような事業を行っていますが、富裕層向けの高級モデルか、低額でシンプルなものかどちらかです。その中間的なところに機能を充実させ参入すれば大きなニーズを開拓できるでしょう。
遠隔接客AIアシスタントは、施設入居者や独居高齢者の健康、生活ニーズを大きく囲い込める可能性を持っています。機器の設置など初期費用だけで数十万円が掛かるので、ここを自治体の補助金なども活用してなるべくローコストにします。市場は確かにあるので、ビジネスモデルを構築していくのがわれわれの立ち位置だと考えています」(堂前氏)
堂前氏の計画と予想によれば、遠隔接客AIアシスタントにDgSが本格投資するのは2026年から2027年にかけて、それと並行して2026年には電子処方せんの普及が進みオンライン診療も身近になりビジネスとしては大きな山を迎えると予想している。施設への導入は2027年からさらに4〜5年後、個人宅へ入り始めるのはそこからさらに45年を要するとのことだ。
AIによる自律的な対応と遠隔接客の組み合わせは、健康、生活のニーズを幅広く取り込み、質を担保しながら、事業を効率よく拡大する大きな可能性を秘めている。
《取材協力》

代表取締役社長
堂前 紀郎氏

遠隔接客事業部 事業部長
三澤 佳祐氏
保護中: 2024年11月20日 セミナー資料配布ページ
NFI定例セミナー「2025年の重点経営課題」(2025/1/22 13:00~16:10)開催ご案内(リアル・リモート)
今回のテーマは、「2025年の重点経営課題」です。オムニチャネル、狭小商圏時代が加速し、リアル店舗の経営戦略が大きく変わろうとしています。とくに人手不足、人件費の上昇によって、「人の生産性向上」は、待ったなしの経営課題です。ウォルグリーン型の「調剤併設型ドラッグストア」が米国でなぜ衰退しているのか?それは日本の未来なのか?についても現地情勢分析をもとに解説します。また、最近取材したドラッグストア+αの最新標準店の業態戦略、売場づくりについて写真を中心に、売り方、レイアウトの変化を解説します。
2025年1月定例セミナーは、「リアル」と「リモート」の併用セミナーとします。
今回のテーマは、「2025年の重点経営課題」です。オムニチャネル、狭小商圏時代が加速し、リアル店舗の経営戦略が大きく変わろうとしています。
とくに人手不足、人件費の上昇によって、「人の生産性向上」は、待ったなしの経営課題です。
また、新業態開発、PB開発による「差別化戦略」も重点課題です。
さらに、日本のドラッグストアがお手本にしてきた米国の「ウォルグリーン」が大量閉店を実行し、経営危機に陥っています。
ウォルグリーン型の「調剤併設型ドラッグストア」が米国でなぜ衰退しているのか?それは日本の未来なのか?についても現地情勢分析をもとに解説します。
最近取材したドラッグストア+αの最新標準店の業態戦略、売場づくりについて写真を中心に、売り方、レイアウトの変化を解説します。
※座席数が限られているため、リアルでの参加の方は先着順とさせて頂きます。
開催概要
・開催日:2025年1月22日(水) 13:00~16:10(会場受付開始:12:30)
※昼食は各自お済ませの上ご来場下さい。
※セミナー開催中の途中入場はお断りします。
※リモートでの途中退席は申込責任者に報告します。
・会場:エッサム神田ホール1号館6階(601)(※案内図をご参照ください)
・実施方法:リアルとZOOMによるリモートセミナー
(ZOOMセミナーアクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2025年月1月10日(金)
スケジュール
[13時~14時45分頃]
NFI代表取締役 日野 眞克
2025年に取り組む経営テーマ
2025年の経営課題はこれだ!
(1)人の生産性向上と、完全作業の仕組みづくり
(2)2025年に取り組むべき10の経営課題
(3)ドラッグストアのお手本「ウォルグリーン」没落の理由。日本の未来か!? 他
[14時55分頃~16時10分頃]
月刊MD 編集部
狭小商圏、地域密着、DX化に対応する
ドラッグ+αの最新標準店の傾向
(1)大手ドラッグストアの最新標準店研究
(2)顧客の支持を得ている新業態研究(ダイソー、韓国コスメなど) 他
※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。
会場案内図
会場詳細
〒101-0045
東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2
エッサム神田ホール1号館6階(601)
URL:https://www.essam.co.jp/hall/access/#access_1
【アクセス】
●JRでお越しの方
神田駅東口より徒歩1分
●東京メトロ銀座線でお越しの方
神田駅3番出口より徒歩0分
注意事項
①会場へお越しの方は開催会場をご確認の上、お間違えの無いようご注意ください。
②アーカイブ動画の配信はいたしません。当日参加でのみセミナーのご受講が可能です。
(配信の不備等によりご視聴頂けなかった場合には、後日動画のご案内をいたします。)
③リモートの場合はZOOMウェビナー形式で行います。1月17日(金)までに、お申込書に記載された受講者のメールアドレス宛に受講用URLを記載したメールを送付いたします。
お申込みフォーム
・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。
本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。
NFI定例セミナー「オムニチャネル、狭小商圏時代の顧客満足最大化のセオリー研究」(2024/11/20 13:00~16:10)開催ご案内(リアル・リモート)
今回のテーマは、オムニチャネル、狭小商圏時代の「顧客満足最大化のセオリー研究」です。毎年、月刊MDで実施している「顧客満足度調査」(500店以上の店舗を調査)の調査結果に基づいて、これからのリアル小売業の顧客満足最大化のためのセオリーを解説します。また、アプリを買物の入口とするオムニチャネル化も急速に進行しています。アプリの使用体験調査によるアプリの顧客満足度向上のセオリー、サイネージなどのリテールメディアの満足度も解説します。
2024年11月定例セミナーは、「リアル」と「リモート」の併用セミナーとします。
今回のテーマは、オムニチャネル、狭小商圏時代の「顧客満足最大化のセオリー研究」です。毎年、月刊MDで実施している「顧客満足度調査」(500店以上の店舗を調査)の調査結果に基づいて、これからのリアル小売業の顧客満足最大化のためのセオリーを解説します。
また、アプリを買物の入口とするオムニチャネル化も急速に進行しています。アプリの使用体験調査によるアプリの顧客満足度向上のセオリー、サイネージなどのリテールメディアの満足度も解説します。
最近は、薬剤師、登録販売者と並ぶ重要な資格者である「管理栄養士」の活用と戦力化を進めているドラッグストアが増えています。ドラッグストアの管理栄養士の店長に取材した事例をもとに、管理栄養士の戦力化を提言します。
※座席数が限られているため、リアルでの参加の方は先着順とさせて頂きます。
開催概要
・開催日:2024年11月20日(水) 13:00~16:10(会場受付開始:12:30)
※昼食は各自お済ませの上ご来場下さい。
※セミナー開催中の途中入場はお断りします。
※リモートでの途中退席は申込責任者に報告します。
・会場:エッサム神田ホール1号館6階(601)(※案内図をご参照ください)
・実施方法:リアルとZOOMによるリモートセミナー
(ZOOMセミナーアクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2024年月11月11日(月)
スケジュール
[13時~14時45分頃]
NFI代表取締役 日野 眞克
オムニチャネル、狭小商圏時代の
顧客満足最大化のセオリー研究
(1)2024年顧客満足度調査の詳細分析
(2)顧客満足向上の優先順位の変化
(3)オムニチャネル、アプリの顧客満足度調査 他
[14時55分頃~16時10分頃]
月刊MD 編集長 野間口 司郎
狭小商圏の地域密着、固定客増のキーマン
管理栄養士の戦力化事例研究
(1)管理栄養士店長の役割と職務
(2)管理栄養士店長の強みと接客スキル
(3)管理栄養士が大活躍できる職場づくり 他
※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。
会場案内図
会場詳細
〒101-0045
東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2
エッサム神田ホール1号館6階(601)
URL:https://www.essam.co.jp/hall/access/#access_1
【アクセス】
●JRでお越しの方
神田駅東口より徒歩1分
●東京メトロ銀座線でお越しの方
神田駅3番出口より徒歩0分
注意事項
①会場へお越しの方は開催会場をご確認の上、お間違えの無いようご注意ください。
②アーカイブ動画の配信はいたしません。当日参加でのみセミナーのご受講が可能です。
(配信の不備等によりご視聴頂けなかった場合には、後日動画のご案内をいたします。)
③リモートの場合はZOOMウェビナー形式で行います。11月15日(金)までに、お申込書に記載された受講者のメールアドレス宛に受講用URLを記載したメールを送付いたします。
お申込みフォーム
・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。
本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。
クスリのアオキHD 2024年5月期決算発表レポ「フード&ドラッグへの転換は完了間近。M&Aで新規エリアに進出へ」
月刊MD2024年10月号は恒例「ドラッグストア白書」特集。本稿では2024年7月10日に開催されたクスリのアオキHDの2024年5月期決算発表会のレポートをお届けする。月刊MD本誌では本内容をよりタイパ良く読めるレポートを掲載している。(談・文責/編集部)
EDLPの継続で既存店は好調に推移
取締役・八幡 亮一氏:はじめに私から前期の決算の概要と今期の業績予想・計画についてお話をさせていただきます。
まずは出退店の実績です。ドラッグ店舗の出店は45店舗です。M&Aによる取得10店舗、これはよどばしの店舗と四国、愛媛のママイ9店舗です。調剤の開局はすべてドラッグ併設で70薬局、調剤併設率は63.5%になり、前期末より4.8%上昇しております。退店はドラッグ店舗5店舗で、当期末時点の店舗数は953店舗になっております。
こちらは既存店売上高の月次推移です。通期前提109.6%に対して実績は109.8%となり、0.2ポイント上回りました。生鮮導入の改装を進めており、このフード&ドラッグに対するお客様の支持やEDLP施策によって、既存店売上は大きく伸びています。
既存店の客数・客単価の月次推移です。既存店客数の前期比は107.6%でした。既存店客単価の前期比は102.0%で、両方とも前期を上回っています。特に生鮮導入の改装もあり、既存店の客数は毎月ご覧のとおり安定して高く伸びておりますので、しっかり集客はできていると認識しております。
売上高が大幅に伸長。粗利ミックスで粗利率は低下
7月4日に発表させていただきました決算の連結の損益計算書になります。こちらの数字は決算短信に開示している数字ですが、2020年1月に発行した有償ストックオプションの費用、株式報酬費用と呼んでおりますが、その計上が当期は68億円あります。これは当期特有の一過性の費用ですので、営業力の実態や全体比を適切に理解していただくために、株式報酬費用を除く数値で説明したほうがよいと思いますので、次のスライドで株式報酬費用を除く数値を提示し、この数字をもって説明をさせていただきます。
まず売上高、前期比115.3%と顕著な伸びを出すことができております。売上総利益率は食品の売上が好調ということで、粗利ミックスの影響がありまして、前期比で1ポイント低下して27.0%でした。
販管費率は前期から大きく改善して、前期から2.8ポイント低下して21.2%になりました。営業利益は前期比165.9%、金額では253億7,900万円でした。営業利益率も前期より大きく改善し、前期から1.8ポイント上昇して5.8%という結果になりました。経常利益も前期比140.7%で269億1,100万円でした。当期純利益は前期比155.1%で、191億1,700万円でした。ご覧のとおり、フード&ドラッグの利便性が顧客に支持され、営業面では大変好調な成績を収めることができています。
新規エリアの売上構成比は50%を超える
こちらの方はエリア別の売上の実績です。前期から北信越以外の、当社でいう新規エリア4エリアの売上構成比が50%を超えてきており、当期は前期より1.6ポイント上昇して54.4%になりました。全エリアを通じて売上は好調です。既存エリアであります北信越では、2,000億円近くというところまできております。関東も1,000億円を超えてきまして、新規エリアの中で比較的後から進出しました東北や関西についても300億円を超えてきています。
こちらが商品部門別の売上の実績です。生鮮強化によるフードの伸び率が高く、売上構成比も前期から3.6ポイント上昇して48.4%になりました。EDLP施策や風邪・インフルエンザの流行による風邪薬の好調、人流回復に伴う化粧品販売の回復などが見られております。
販管費は4費目すべてで低下
こちらは販管費の実績です。こちらの数字は株式報酬費用を人件費の中に68億円を含んでおりまして、先程と同様に株式報酬費用を除いた数字で説明したほうが実態を示していると思いますので、こちらの株式報酬費用を除くスライドで説明いたします。販管費全体としては21.2%ということで、前期から低下しております。
人件費率は9.0%で、前期から0.8ポイント低下しております。売上好調のなか、EDLPによるローコストオペレーションなどの人時生産性の向上ができたと考えております。修正計画に対しても改善しており、この成果は想定以上の効果が出たと考えております。その他経費につきましては電気代が含まれていますが、抑制できていると考えているので、4費目すべて売上比が前期より低下しております。コントロールできるところは人件費等コントロールしながら、売上好調の好影響を受けて、販管費としては低下できているということです。
フリーキャッシュフローはプラス
次に連結貸借対照表です。こちらは店舗数の増加があり、棚卸資産や有形固定資産、買掛金の増加が進んでおります。純資産につきましては前期末より188億円と大きく増加して見えますが、利益剰余金の増加に加えまして有償ストックオプションの影響がありまして、純資産の中の一つである新株予約権という項目で株式費用と同額の68億円を計上して、これが増加するという影響もあります。純資産率は前期末35.9%から38.7%で、2.8ポイント上昇・改善していることになります。
次がキャッシュフロー計算書です。ここについては少し詳しく説明していきます。営業活動におけるキャッシュフローはご覧のとおり、前期と比較して43か44くらいマイナスになっています。利益が増加したり、減価償却やのれんの償却、株式報酬費用や減損といったものを計上する前の利益では、前期から83億円増加していて、利益改善はしっかり進んでおります。
一方でこの影響につきましては、回転差資金、運転資金がプラスになるのですが、こちらが前期より41億円減少しています。
この回転差資金の減少は、曜日の巡り合わせが影響しています。前期末、2023年の5月20日が土曜日で、5日払いの支払いが当期にズレた影響があります。この影響額は30億円ほどありこれを補正しますと、前期の営業活動によるキャッシュフローは252億円、当期は298億円になり、この比較でいいますと46億円増加しておりますので、キャッシュフロー、稼ぐ力が弱くなっているわけではございません。
投資活動におけるキャッシュフローは211億円の支出で、前期より支出が11億円減少しています。財務活動におけるキャッシュフローは収入で3億4,400万円で、新規借入の実行額が前期より60億円減少しておりますので、この影響が大きく、財務活動によるキャッシュフローとしましては前期から72億円減少しています。フリーキャッシュフローは58億円のプラスになっており、現金及び現金同等物の期末残高は490億円程度となっています。
弊社が2006年の末期に上場してから、積極投資ということで投資を先行してきましたので、フリーキャッシュフローはマイナスになることがありました。2006年5月から2024年5月期まで19年でフリーキャッシュフローは年あたり5億円強くらいマイナスになっている状況でした。足元の2期間、前期の2023年5月期と当期の2024年5月期の期間のフリーキャッシュフローを合算しますと、2期間の合算で147億円プラスになっておりますので、若干投資を抑えていた部分もあったと思いますが、当社としては財務体制の改善ができる基盤ができたり、投資余力が増えていると思っておりますので、今後ステークホルダーの皆さんの意見を聞きながら、また次の中計に向かってどういう方式でやるかということが協議されるような、前向きな土台が整ったと考えております。
出店予定は70店舗。M&AでSM店舗を取得
次は今期の業績予想を説明いたします。出退店の計画ですが、ドラッグ店舗の通期の出店計画は70店舗です。M&AによるSM店舗の取得計画が8店舗あり、これは先日発表した木村屋とムーミーのものでございます。退店を13店舗計画しておりますので期末店舗数は1,018店舗の予定です。
設備投資計画のほうは新規出店数を増加したり、引き続き太陽光発電にも投資をしますので、投資総額としては290億円で、前期比128.2%となっております。
こちらが先日発表しました今期の通期の業績予想です。今期も上期に株式報酬費用を3億9,200万円計上しますので、前期ほど大きな影響はございませんが、この影響を除いて説明させていただきます。株式報酬費用が前期68億1,000万円、今期3億9,200万円を除いて、売上高が4,850億円で、前期比111.0%。売上総利益率は26.6%。引き続き食品の売上拡大による粗利ミックスの影響を踏まえまして、前期から0.4ポイントの低下を見込んでおります。
販管費率は21.3%、前期並みでございます。営業利益は255億円で前期比100.5%。経常利益は260億円で前期比96.6%。当期純利益は185億円で前期比96.8%という予想で発表させていただいております。
こちらは通期の業績予想を上・下に分解したもので、こちらは株式報酬費用を除いた金額で見ていただければと考えております。株式報酬費用につきましては前期の数字のなかには上期で60億1,500万円、下期で7億9,400万円、当期は上期で3億9,200万円入っておりますのでそれらを除いた数字です。ご覧のとおり、営業利益を見ますと上期125億円、下期130億円と計画しております。
全エリアで売上前期比増を計画 販管費は前期並み
こちらがエリア別の売上の計画です。ご覧のとおり、前期に続き全エリアで販売好調、前期比増を見込んでおります。北信越以外の新規エリアには今回から四国も入れておりますが、その売上構成比は前期54.4%から今期56.6%と、2.2ポイントの上昇を見込んでおります。
こちらが商品部門別の売上計画です。ご覧のとおり、引き続きフードの売上構成比の上昇を見込んでいます。前期48.4%から当期50.1%ということで、1.7ポイントの上昇を見込んでおります。
販管費の計画ですが、こちらの数字にも株式報酬費用の3億9,200万円が入っておりますので、除いた金額がこちらになります。
まず人件費比率は前期から0.5ポイント上昇し、9.5%という予算設定にしております。9%台ということで、引き続きしっかりとコントロールしていきたいと考えております。それから省エネ什器や太陽光発電の効果による電気使用量の削減効果を見込んでおりますので、その他の経費率は前期から0.3ポイント低下を見込んでおります。
販管費全体の売上比はほぼ前期と同様の21.3%を見込んでいます。私からの説明は以上になります。引き続き社長の青木より、第3次中期経営計画の進捗状況について説明させていただきます。
第三次中期計画は順調に推移。2026年5月期の売上高目標は5,000億円
代表取締役社長・青木宏憲氏:私からは第3次中期経営計画の進捗状況についてお話させていただきます。スタート前には非常に苦しい経営状況でしたが、前期3年目の折り返し地点を迎えまして、8年ぶりに上方修正をすることができ、結果を出すことができました。その進捗状況をご説明いたします。
こちらはビジョン2026ということで、2026年のアオキのありたい姿を描かせていただいております。人口5,000人くらいの町をイメージしていただければと思いますが、アオキが出店し存在することによって便利な暮らしと笑顔につながる、健康を支えるドラッグストアを目指しております。コーポレートメッセージは、「もっと便利に、ずっと笑顔で。」になります。このビジョン2026を実現するための重点施策は具体的にはこちらの3つになります。
1つ目はフード&ドラッグへの転換。生鮮食品を追加し、ポストコロナで重要となったワンストップ性をさらに高めていきます。
2つ目は専門分野である調剤併設率の向上です。11年ぶりに目標数値を50%から70%に引き上げさせていただきました。このフード&ドラッグ、プラス調剤が当社の特徴であり、他社との差別化になります。
最後は出店戦略で、これまでの方針はエリアの拡大、高速出店でしたが、エリアの拡大は当面行わず、営業エリア内での多店舗化を行っております。
ビジョン2026における数値目標です。2026年5月期におきましては、売上高5,000億円を目指しております。中期5ヵ年で2,000億円、毎年400億円ずつの積み上げが必要となりますが、直近2年間におきましては500億円ずつ積み上げることができております。今期の計画におきましても500億円の積み上げということで4,850億円、最終年度で5,000億円の達成ははっきり見えております。
無理をすれば1年前倒しで達成可能かとも考えておりますが、皆さんの方の不安をあおってしまうこともありますので、今回に関しては狙わずに、安定走行で行かせていただければと思っております。
フード&ドラッグ実現に向けた改装は今期完了の見込み
ここからは折り返し地点となる3年目の取り組みと結果、4年目の見通しについてお話させていただきます。1つ目の重点施策であるフード&ドラッグへの転換を行うために、2020年に10年振りのフォーマット刷新を行いました。これまでのフォーマットは2つあり、1つが標準の300坪、もう1つが450坪のコンセです。
300坪は2010年に開発されたフォーマットですが、2010年代の終わりには同質化競争に巻き込まれております。また450坪のコンセは2014年に次世代型フォーマットとして開発いたしましたが、多店舗化できないという課題がございました。そこで2020年代の戦いに備え、他社と差別化できるフォーマットの開発に取り組みまして、新たな標準フォーマットとして400坪の追加を行っています。
400坪はフード&ドラッグを新たなコンセプトとしております。300坪とのMDにおける違いは、100坪増えた分、集客力を高めるための生鮮食品の追加と、食品の充実を謳っております。野菜、肉、冷食に関してはこちらのような品揃えになっており、ドラッグの後でSMに買い回りをしなくても夕食食材をそろえることができ、ワンストップショッピングが可能と考えております。
この新たなフォーマットである400坪でフード&ドラッグにチャレンジしたことにより、300坪と比べて競争力のあるストアコンセプトであることがわかりましたので、2年目から既存店への波及を進めております。具体的にはこれまでのメインフォーマットである300坪の改装を行い、生鮮食品の追加と食品の拡大を図っています。直近2年間で500店舗の改装を実施しており、今期の上期中には小型店50店舗を除きすべてで改装が終了する予定です。
また今期新たに追加となりますが、現在のメインフォーマットである400坪を、今期中に全店改装したいと思っております。こちらの400坪は2020年にプロトタイプを構築し、早くも4年が経過しております。この4年間の中で400坪に適したレイアウトやMD、効率的な運営の完成度が高まってきましたので、これまで出店した400坪との統一を図るために、メンテナンス改装を実施したいと考えております。そういったことで今期の改装数といたしましては、300坪で50店舗、400坪で150店舗、合わせて200店舗の改装をしていきたいと思っております。
生鮮の導入比率が拡大 惣菜は全店で導入へ
このように既存店の改装を推し進め、フード&ドラッグに転換することにより、青果と精肉の導入比率が急拡大しております。新店時より生鮮の標準装備されている450坪のコンセ、そして400坪に加え300坪の改装を合算いたしますと、青果・精肉の導入比率は新中期が始まる前は15%でしたが、前期末におきましては3年間で95%まで高まっております。
今期の新しいトピックスとなりますが、青果と精肉に加え、惣菜の導入も計画しております。こちらのようにコンビニのような品揃えとなっており、こちらは新しい標準型であります400坪の惣菜コーナーですが、このように通常は郊外のドラッグにもない品揃えになっていると思います。こちらの惣菜に関しては、今期1年で全店導入を図っていきたいと思っております。
生鮮を導入しているだけですと当然売り上げは増えますが、店舗の手間も増え、人件費率が余計悪化するのではないかというご心配は当初からいただいておりました。そのため、こちらのようなローコストオペレーションの対策を並行して実施しております。
具体的には、価格販促をEDLPに変更し、定番の売り場の拡大を行っています。EDLPに関しては、お客様がいつでも来店していただけるようになり、生鮮の導入と相まって、客数の増加につながっております。
そして人件費の部分、店舗運営にとっては、EDLPによってチラシ売り場を作る必要がなくなりますし、さらには改装でプロモーション売場を縮小し、定番売場を拡大させています。これによって、既存店売上高が大きく伸びる中においても、賃金の伸びは最小限に抑えられております。結果として、生鮮を導入して売上が伸びても人件費率はこの2年間で1.1ポイント改善しております。
こちらは既存店の売上高の推移となります。4,5年前は北陸に大手ドラッグが続々と進出したことによりまして、既存店前年比は92.2%と100%を大きく割り込み、収益性も一気に悪化し、大変ご心配をおかけいたしました。
しかし新中期に入り、改装による生鮮食品の導入、そして価格販促をEDLPに変更したことにより、こちらのように右肩上がりになっております。初年度は98%、2年目は105%、3年目においては109.8%と、この十年間で最も高い売上となりました。前期の営業利益率におきましても5.8%と、以前の水準を取り戻すことができており、このような競争が激しい状況においても、戦える競争力を取り戻すことができたと考えています。
2つ目の重点施策である、調剤併設率70%に向けた推移になります。生鮮やフードの拡大により集客力は高まりますが、お客様の信頼をつかみ利益に結びつけるうえでは、調剤のさらなる取り組みが重要となります。前期は70の開局を計画し、計画通り70の開局をいたしました。併設率はこの3年目の折り返し地点で63.5%と、60%の大台を超えています。今期も前期同様、70薬局の開局を計画しており、併設率は66.0%まで高まっています。
また調剤売上高としては、前期は107.7%と、伸びが2桁を切っております。こちらに関しては新型コロナの有料検査が調剤の方に当社の場合は入っておりますので、こちらの反動ということで、この有料検査の数値を除けば、他社以上に順調に伸びていると考えております。
併設率70%に高めるうえで最大の課題は新卒の薬剤師採用です。薬剤師の新卒採用に関しては、コロナ発生後、2021年4月においてははじめて100名を超え、その後22年、23年と、140名を超える採用ができております。しかし、前期は109名と失速しております。コロナが収束して薬剤師の取り合いが各分野で発生し、取り負けてしまいました。
また薬剤師だけではなく総合職の採用も苦戦しており、合わせて709名ということで、当初の目標から比べると150名以上のショートとなりました。こちらに関しては、出店が計画よりも少なくなったということで調整できましたが、来年に関しては出店の拡大をより図っていきたいという思いがありまして、薬剤師150名も含め、950名の採用を計画しております。しっかりと未達になることなく、採用していきたいと思っております。
好立地物件の減少に立ち向かうM&A戦略
3つ目の重点施策である出店戦略です。こちらに関しては、採用以上に現在の当社最大の課題だと思っております、立地開発になります。初年度は102店舗と好調なスタートを切ることができましたが、2年目は90店舗、3年目は45店舗と半減しております。
要因としては、この2年間続く建築費の急騰と、好立地物件の減少になります。こちらに関しては、これまで当社の収益性の改善、そして競争力の回復が確認できてきましたので、投資基準を引き下げ、M&Aを活用しながら100店舗という目標を念頭に置きながら行動していきたいと考えております。今期はその途中段階になりますので、70店舗を展開させていただいております。
内訳といたしましては、上期が17店舗、下期が53店舗を計画しており、下期への偏りから、依然厳しい状況に見えますが、M&Aを含め、この立地開発の改善の兆しは見えてきていると考えています。その100店舗に向けた後押しとして、先週の決算発表で地場SMの2企業の子会社を発表させていただいております。
1件目が香川県のムーミーです。半年前に四国初進出となる、愛媛県のママイの子会社化を発表させていただきましたが、ムーミーは四国の第二弾となり、香川県初進出になります。ムーミーの売上高は60億円、店舗数は6店舗ですが、先程の愛媛県のママイと合わせますと、売上高で約150億円、店舗数で20店舗になり、今後の四国開発の大きな土台になってくると思っております。
2件目は千葉県の房総半島のスーパーガッツです。売上高63億円、店舗数は4店舗です。一店舗あたりの売上高が16億円と、これまでの企業に比べますと非常に高い売上高です。この売上を作る力は高いと見ておりますので、関東全体の生鮮ノウハウの向上につながっていくと考えています。
これまでの5年間における地場SMの子会社化の一覧です。合計14社となりました。M&Aの目的は2つあり、1つは各エリアごとの生鮮ノウハウの獲得です。生鮮は大きな武器となりますが、エリアごとにMDを構築する必要がありますので、このように14企業に関しましては、分散する形で実施させていただいております。
2つ目は好立地物件の確保になります。14企業を合わせますと、子会社前のSMの規模といたしましては、売上高は496億円、店舗数は69店舗になります。当社の中期計画が5年間で2,000億円の上積みが必要ということになりますので、2,000億円のうちのほぼ500億円、4分の1が地場SMの、このようなM&Aによる成長ということになります。
前期の出店数と期末の店舗数です。前期は45店舗の出店を行いました。内訳としては、東北で3、関東で10、東海で4、関西エリアで10、そして地元の北信越では18になります。
今期の出店数です。内訳としては、全体で70、東北で6、関東で11、東海で21、関西で6、四国で7、地元の北信越は19です。
前期は出店に関して大幅に減少することが分かっておりましたので、環境問題、そして高騰する電気代の対策として、太陽光パネルへの投資に向けさせていただきました。前期は500店舗の計画に対し、450店舗の設置を行いました。写真のように、屋根の上にパネルを敷き詰める形になっております。今期はさらに250店舗の計画をしています。中期最終年度いたしましては800店舗となり、設置率が70%を超えています。CO2削減量としては、小売業としては3番目にあたることになると思いますが、5万トンを計画させていただいております。
最後に業績概要についてコメントさせていただきます。前期は売上高4,368億円、前期比は115.3%と高い伸びとなりました。115%超えは2年連続になります。特に前期は既存店の前年比が109.8%と、10年ぶりの高い伸びになりました。粗利率に関しては27.0%と、前期より1ポイント悪化しております。生鮮食品や食品の比率が高まったことが要因となります。
一方で販管比率については21.2%と、前期よりも2.8ポイントと大きく改善することができました。こちらに関しましては既存店前年比が109.8%と非常に高く伸びる中におきまして、ローコストオペレーションの取り組み、そして太陽光パネルの設置によりまして、人件費やその他経費の増加が大きく抑えられたことが要因と考えております。
最後に今後の業績予想です。今期に関しましては4,850億円。前期比で111.0%ということで、引き続き2桁の伸びを計画させていただいております。営業利益高としましては255億円、前期比100.0%ということで、本当にわずかですが、増益を計画させていただいております。一方、経常利益と純利益に関しては、前期におきまして補助金収入が12億円ありまして、今期に関してこの補助金収入をゼロで見ておりますので、このような減益の形とさせていただいております。(談・文責:編集部)
サイバーエージェントの提案する「調剤」と「物販」が融合した、これからのドラッグストア
サイバーエージェントでは、創業以来展開しているインターネット広告事業で培ったデジタル分野の専門知識やAI技術の研究開発組織「AILab」の技術を生かして、これまで30社以上の企業のデジタルシフトに貢献しており、近年では小売業界の支援にも注力している。さらに、同社は調剤をはじめ医療領域におけるAI活用、DXを推進するMG-DX社を子会社として保有。今回の出展では同社の総合力を生かしたドラッグストア(DgS)の調剤と物販の効果的な融合を体感できるブースが出展されていた。(月刊マーチャンダイジング2024年10月号より転載)
調剤受付のコーナーから展示を開始
MG-DX社の提供する「薬急便(やっきゅうびん)」は、調剤受付からオンライン服薬指導まで、オンライン調剤に必要な機能をすべて兼ね備えたサービス。現在、クオール薬局、サンドラッグ、サツドラ薬局など全国の薬局で採用されている。
今回の出展は、薬急便を使って調剤の受付を済ませた後、待ち時間を使って物販スペースで買物することを想定してブースを構成。
薬急便のサービスで最近とくに好評なのが「薬急便モバイルオーダー」である。これはファストフードチェーンやコーヒーチェーンで導入されているモバイルオーダーの仕組みと同様で、利用者は処方せん画像を希望する薬局に送信して受取時間を予約する。薬の準備ができるとスマホに通知が届く。会計もあらかじめクレジットカードを登録していればオンラインで決済。薬局では処方せんと引き換えに薬を受け取り、服薬指導を受ける。
処方せん画像の送信の他、従来のように店頭受付も可能。その場合、処方せんと引き換えに薬剤師が受付票を患者に渡す。そこに印刷されたQRコードを患者が読み取れば、スマホ上で呼び出し(待ち)状況の確認や、お薬の準備完了通知を受け取ることができる。
また、最大の特徴は、オンライン受付と店頭受付を統合管理できることだ。調剤スペースのデジタルサイネージで全ての待ち状況を可視化し、さらに販促動画や広告を組み合わせて流すことで、「待ち時間にお買物」という行動も促進できる。反対に物販エリアにも調剤の待ち状況を流すことで、調剤の利用促進にも繋がる。
こうした一連の仕組みで、待ち時間が読めずにイライラして満足度が低下する問題を解消。さらに待ち時間を買物時間にするといった習慣の定着によるドラッグストア全体の売上アップも狙える。調剤と物販融合のひとつの手段である。

店舗でオンライン服薬指導 患者は時間節約、薬局は効率改善
薬急便は、8月28日に新サービス「遠隔接客AIアシスタント」をリリースしたばかり。ドラッグストアショーにて、本サービスのデモンストレーションを先行公開した。

「遠隔接客AIアシスタント」は無人受付と遠隔接客を組み合わせたサービスで、店舗(薬局)で処方せん受付を行った患者のうちオンラインによる服薬指導を希望する人に対応する仕組み。待ち時間の間に先に服薬指導を受けることも可能で患者側は時間の節約につながる。
薬局側は、比較的すいている他店舗の薬剤師が遠隔で服薬指導だけを行うことができるので、混雑店舗の作業効率改善に貢献。企業全体としては、薬剤師の業務負荷の平準化、コスト改善を図ることが可能となるほか、将来的には、調剤非併設店などにも設置することで処方せん応需スポットの拡大にも繋がる。人手不足が常態化しているDgSチェーンにとっては朗報である。
ドラッグストアショーでは、遠隔接客AIアシスタントを体験できるよう、各種機器を展示、サイバーエージェントのスタッフが体験希望者に対して丁寧な説明を行っていた(写真2〜6)。
調剤と物販の融合は、単に調剤体験、買物体験を変えるだけでなく、調剤データと物販データの融合による効果も視野に入れている。これが実現すれば、調剤併設DgSで、物販は利用しているが、調剤は利用していないユーザーが明らかになり、こうした層に、調剤薬局の利用を促進することもできる。
さらに、優良顧客である調剤利用者をターゲットに物販への送客も可能、調剤未利用者の掘り起こしと合わせ、企業の収益性を大きく変える可能性を持っている。サイバーエージェントでは、こうしたデータ面での調剤と物販の融合も事業領域としており、DgSの支援を進める構えだ。
「遠隔接客AIアシスタント」の利用プロセス





自己推薦ロボットとデジタルサイネージ

物販スペースで展示されたのは、棚の前に立ち止まるとセンサーが感知して商品が踊り出す「自己推薦ロボット」と3面連結の迫力あるデジタルサイネージ。

自己推薦ロボットは第三者的にロボットが話すのではなく、商品自らが話すコミュニケーションスタイルで消費者の関心を集める。活用に前向きな小売企業も多いという。現状は、実証実験を行っている段階で、限定された店舗で試験的な導入となっている。

お客の動きを感知して自らが動くことで、立ち止まり率が2倍以上にアップ(大型雑貨店での事例)、商品によっては6倍以上の販売増加率を達成している(図表1)。新たな販促プロモーションの可能性が証明されている。
また、別途AIカメラを設置して自己推薦ロボットが設置された棚の動画を撮ることで、立ち寄り率、手に取った人の割合などを計測可能。それらをメーカーにフィードバックすることで、製販協働で販促効果を上げられる。

サイバーエージェントが開発した店舗サイネージ配信システム「ミライネージ」は単に動画を流すだけでなく、効果検証して改善する「運用」と一体的にサービスを提供している。売上状況を日次で把握して、配信効果の高い店舗への配信を増やすなど状況に応じて最適な施策を、早いところで週次で立案、実施している。

また、同社では広告クリエイティブ制作の専任部隊も構えており、こちらも売上状況に応じて短時間でクリエイティブを差し替えることが可能。こうしたサイネージ広告を調剤、物販両スペースで連動させることで、より高い売上効果が期待できる。
最後に8月末にリリースした新たな広告配信サービスも資料で紹介されていた。これは、ポイントやクーポンをフックに消費者行動を促すサービスで、小売企業の自社アプリで特定の広告を閲覧した人にポイントを付与。
ユーザーはそのポイントで当該小売店に限り買物をすることができるという仕組み。これにより小売アプリのアクティブユーザーは増え、リテールメディアとしての広告収入も安定化、物販収益の向上も見込める。メーカーからしても、ポイント付与のメリットを武器に確実な広告閲覧を促せるため、認知や購買効果に期待ができる。すでに一部DgSアプリへの導入が決まっているとのことだ。
調剤事業の強化を成長ドライバーとするDgSは多い。それだけで終わるのではなく、調剤強化を物販強化にも繋げることで、成長スピードはさらに早まるだろう。その意味で今回のサイバーエージェントの提案は示唆に富んでいた。

















































