ドラッグストア食品強化時代 定刻100%補充が、顧客満足と従業員満足を上げる

商品補充は店舗運営の起点になる重要な作業である。しかし、最近のドラッグストア(DgS)は食品の扱いが増えたこともあり、開店しても品出しが終わらず、通路には段ボールや折りコンが放置されているケースが目に付く。開店後、品出し未完了の時間が続けば続くほどにチャンスロスは大きくなり、顧客満足も下がる。こうした問題の改善を図るのがエイジスマーチャンダイジングサービスの「集中補充サービス」である。(月刊マーチャンダイジング2023年2月号より転載)

顧客満足を低下させる「午前の売場問題」

2021年のDgSの数は2万1,725店舗(日本チェーンドラッグストア協会調べ)。日本の人口をこの店舗数で割ると単純人口約5,800人に1店舗DgSがあることになり、商圏は狭く(商圏人口は少なく)、競争は激しくなっている。

小商圏で客数確保のためには来店頻度を上げる必要があり、DgS、とくに郊外立地店は食品強化をせざるを得ない状況だ。青果、精肉の品揃えをする店も一般的になっている。このような傾向は、図表1に示したDgSの食品売上高構成比にも表れている。

[図表1]2022年度DgSの食品売上構成比上位7企業

食品の品揃えが充実するのに伴い変化しているのは、午前中の客数の増加だ。パン、カップ麺、弁当などの昼食商材や牛乳、卵、納豆などDgSが意識的に安値で販売する「集客商品」を目的購入するために午前中来店するお客は増えている。

一方で、食品の扱い量を増やすことで、品出し・補充の負荷が増大、「店舗全体の補充作業が午後までかかる」、「長時間、通路に段ボールや折りコンが放置され、買物、買い回りがスムーズにできない」、「前出し作業が追いつかず、売場の豊富感が損なわれる」などの問題が発生している。多くのDgSで食品強化により重要になっている「午前の売場」に大きな問題が生じているのだ。

▲折りコンや段ボールが通路に放置され、買物しにくい状況は、多くのDgSの午前の売場に見られ、大きなチャンスロスを起こしている

こうした「午前の売場問題」は顧客満足に負の影響を与え、客離れの原因につながる。本誌が行った顧客満足度調査(2022年12月号)によれば、顧客満足に大きな影響を与えるトップ5の要素として、一ヵ所ですべての買物を済ませる「ワンストップショッピング」(1位)と「短時間ショッピング」(4位)が挙がっており、「午前の売場問題」はこのいずれの要素をも阻害する要因になり、顧客満足の低下に通じる。

さらに、品出し作業の終わりが見えない。品出し作業中にレジ応援に呼ばれる、顧客対応もこなさなければいけないなど、「午前の売場問題」は従業員満足を下げ、離職や店長就任忌避といった問題にまで発展するケースが実際に起こっている。こちらも深刻な課題だ。

品出し・補充作業はマルチタスクからシングルタスクへ

顧客満足、従業員満足双方を妨げる「午前の売場問題」改善のため、エイジスマーチャンダイジングサービスでは品出し・補充を請け負う「集中補充サービス」を提供している。

[図表2]品出し・補充をマルチタスク化することの課題

同社では、必ず発生し店舗作業の中では大きな人時を要する品出し・補充作業を、他の作業と同時並行的に行う「マルチタスク」として自社従業員に割り当てることが問題の原因につながると分析。これを通常業務から切り出し、専任スタッフが計画的、効率的に担当する単一作業=「シングルタスク」化したほうが、顧客満足、従業員満足を上げられるとして「集中補充サービス」を開発、ブラッシュアップしている。

以下キーワードごとに、「集中補充サービス」の具体的な内容を見てみよう。

品出し・補充コスト最適化

小売業が自社従業員を品出し・補充に割り当てる場合、当日入荷量と最適な人時をマッチングさせることは難しい。店舗レベルの作業割当には限界があり、「だいたいの」入荷量と「だいたいの」人時を合わせシフトを組むが、その結果品出し・補充が午前で終わらない。あるいは、予定よりも早く終わって人時が余るということが頻繁に起こる。

エイジスマーチャンダイジングサービスでは、納品スケジュール、過去の納品実績データを小売業と共有し、日次で確度の高い納品量、作業量を推定。これを基に自社の過去データなどと照合し的確な人時を割り出し、派遣する人数、作業時間を決める。コストを最適化し、人件費のムダ、設定した人時で作業が終わらないといった問題を解消する。

[図表3]品出し・補充作業の変動費化

定刻100%補充

集中補充サービスでは、「あらかじめ取決めた定刻内に補充を完遂すること」を完全作業と定義付け、これを着実に達成する。

業務にあたっては、まず、小売業の担当者と打合せ、納品スケジュール、物量、入荷時の分類などのデータを共有する。これに基づき必要人時を決定。300坪のDgSなら3人程度が担当。物量や開店時間に応じて午前5〜7時から作業開始、人時を調整する。食品を含む受託した部門、カテゴリーのすべての品出しを取決めた定刻までに完了させる。万一時間までに終わらないときは、時間延長、応援部隊の派遣などによって最速でカバーし作業完了させる。

BIツールによる作業管理

エイジスマーチャンダイジングサービスでは「作業管理BIツール」という作業管理システムを使って集中補充作業をリアルタイムで管理している。

▲「作業管理BIツール」の店舗別、日別詳細の画面。売上、利益も共有し、集中補充作業との関連を探ったり、生産性の検証などを行い、業務改善に生かし、小売業の売上改善を支援する。

各現場で責任者がiPadを持ち、スタッフの到着、作業の開始、終了時間などをこれに打ち込む。万一店舗に納品がない、天候などの影響で納品が遅れているなどのイレギュラーな事案があればこれもiPad上で報告、報告を受けた同社の管理センターの担当者が適宜対応を取り現場に指示する。

基本、早朝補充では小売の従業員は立ち会わないので、こうしたサポートシステムにより現場をリアルタイムで管理、サポートしている。さらに、作業時間、イレギュラー発生、その他のリポートがシステム上に記録されるので、エイジスマーチャンダイジングサービスと小売業の担当者が定期的に振り返ることで、早朝補充の課題や改善材料を発見する機会にもなる。

集中補充導入店は年間2,362万円売上増

[図表4]集中補充の人時売上高、人時生産性への効果

図表4は集中補充の導入成果である。郊外型を主力とするDgSチェーンで1年間集中補充サービスを導入にした結果、同一チェーンの未導入店舗20店舗と比較すると、人時売上高で900円、人時生産性で320円の差が付き、1店舗あたりの年間の売上高で見ると約2,362万円、粗利益高にして約840万円、導入店の方が高かった(図表5)。

[図表5]集中補充の売上・利益インパクト

※図表4、5ともに集中補充サービスを実際に導入したDgSチェーンの1年間のデータ

これは、開店時(定刻内)に補充が完了し全商品が買えるというお客にとっては「当たり前の態勢」が売上に与えるインパクトの大きさを物語っている。同時に、補充作業を外注することで自社従業員はレジや接客といった本来業務にあたることが可能になり、商品の回転がよくなることも示している。

裏を返せば、開店しても棚前に作業中の補充スタッフがいたり、段ボールや折りコンが放置されることで、「売場が物理的にブロックされ商品を買えない」。従業員が補充作業に取られ、「レジ待ち時間が長引く」、「接客が不十分になる」といったことで、売上にして1店舗当たり年間2,362万円ものチャンスロスが起こっているとも言える。

開店前に品出し・補充を完了し、売場の埋蔵金を発掘する。これを店舗レベルのオペレーションで達成することは難しい。人員の確保、納品回数の改善、補充しやすい単位に分類された納品など、本部が仕組みをつくらなければ、現場は品出し・補充に苦労しながら、他の業務もこなさければならないという苦境に立たされる。エイジスマーチャンダイジングサービスの「集中補充サービス」は、仕組みづくりの有力な選択肢のひとつになる。

集中補充に関するお問い合わせ

エイジスマーチャンダイジングサービス 営業本部
0120-982-449(9:00〜17:30)

コロナ禍で成長した米国小売業はデジタル投資で「買物体験」を変えた

月刊マーチャンダイジング note版では、コロナ禍で大きな変貌を遂げたアメリカ小売・流通業のポイントを整理しました。近い将来、日本でも起こる変化としてご購読ください!(企画・執筆/エレガント・ソサエティ 若林哲史)(月刊マーチャンダイジング2023年1月号より転載)

「月刊MD note版」では「アメリカ流通業レポート 2022」を特集!DXによってコロナ禍で躍進した有力チェーンストアの戦略を分析します。
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低価格志向が顕著に

2022年は、2年以上にわたり人々の生活を大きく変えたコロナ・パンデミックの終焉の始まりとなる明るい年と期待されたが、2月24日にはロシアによるウクライナ侵略戦争が始まり、4月以降はインフレが急速に悪化した。

2022年3月には消費者物価指数が+8%、6月には+9%を超えてピークと思われたが、9月に入っても+8.2%と高止まりしている。

特に食費の支出額は全体で+11.2%、外食を除くと+13%の上昇となり生活を圧迫している。失業率は9月で3.5%と低く、所得も伸びているが、物価上昇率がそれを上回っており、世帯収入が低い人達の大きな負担となっている。

インフレがさらに悪化した3月頃からは、世帯間の所得の差による違いが表れ始めた。生活必需品の価格上昇は特に所得の低い世帯への影響が大きくなった。NBより割安なPBや代替品の購入、購入の先送り、買物頻度を減らすなどの行動が見られるようになった。

家電、家具、家庭雑貨などのカテゴリーの需要は冷え込んでおり、「ベッド・バス&ビヨンド」などのように、事業継続が危ぶまれる企業も出始めている。

店頭ピックアップが急伸

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一方、パンデミックにより、EC・オンラインによる買物は、通常の買物の選択肢のひとつとして定着した。そんな中、多くの大手小売業はリアル店舗とECを融合させ顧客に切れ目のないサービスを提供するオムニチャネル化のためのテクノロジーや、商品の受け渡し方法の多様化のための設備投資を積極的に行っている。

一方、EC市場の半分近くのシェアを持つアマゾンは、リアル店舗の展開を拡大している。2022年には、コンビニエンス・ストアの「アマゾン・ゴー」、グローサリー・ストアの「アマゾン・フレッシュ」、アパレルの「アマゾン・スタイル」、傘下の「ホールフーズ・マーケット」の店舗網を拡張し、9月末までに600店を超えるリアル店舗を展開している。

コロナ禍でオンライン注文→店舗ピックアップ、もしくは即日配達のニーズが急増した

これは、リアル小売業の店頭ピックアップ・サービスの成長に対抗する戦略だとみられる。オンラインで店舗と同じ価格で購入し、配達を待たずに店頭でピックアップできる便利さが消費者に受けている。

エコシステムの構築

パンデミックを機に、顧客がいつでもどこでも、どの様な方法でも欲しいものを購入でき、オンラインとオフラインを融合させることで、これまで以上に満足度の高い顧客体験を届けるオムニチャネル機能を備えた小売業が成長している。

またECにより収集/集積した消費行動の情報をベースに、顧客が求める金融、ヘルスケアなど様々なサービスを提供する小売業が増えている。

小売業を中心とした協業、分業および連携によるエコ・システム※の構築が進んでいる。アマゾンがプライム会員を中心に構築したエコ・システムを後追いで小売各社が模倣しているわけだ。

スマホをユーザー・インターフェース(顧客との接点)とする小売業アプリの活用も増えている。アプリは商品の検索、注文、返品そしてユーザーによる商品レビューから、小売業とのコミュニケーションなど幅広く利用されている。

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EC売上高が成長

2020年3月頃から感染者が増えはじめ食品小売業界とEC業界を除いて、小売の売上が急速に落ち込んだ。一方、スーパーマーケット、ディスカウント・ストア、ドラッグ・ストアやホームセンターなど生活必需品を販売する小売業は、コロナ特需で大きく売上を伸ばした。

他にも配達業、清掃業、ドライブ・イン式の映画館、酒販店、グルメ食品のケータリング、ゲーム専門店、フィットネス器具の販売業、造園業、家屋の修理を行う業者、子供の家庭教師、中古車販売、セラピストや家具店などもパンデミックの恩恵を受けた。

最も成長したのはEC業界で、デジタル・コマース360によると、2020年EC市場は前年比44%も成長し、小売市場の21.3%を占めた。

2020年後半になると状況は少しずつ落ち着き、コロナ過の新たな生活環境に対応したライフ・スタイルが定着し始めた。レストランのテイクアウトと宅配、小売店ではオンラインで注文した商品を駐車場でピックアップするカーブサイド・ピックアップの利用者が増え、多くの小売業が電子コマースで顧客が求める機能を拡充した。

また、チェーン展開する小売業が一部の店舗を小規模の「フルフィルメント・センター」(出荷のための梱包を行う物流倉庫)として活用するところも増えた。

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サービス消費が増えた

2021年に入るとショッピング・モールが再開されてアパレル店などの需要が復活、5月には小売売上が前年比で53.7%も増加、その後も2桁代の伸びが続いた。食品小売業界では買い溜めが多かった前年に比べて売上は減少したが、住宅市場が好調に推移したことにより大型家電や家具の需要が急増した。

消費者の購買傾向は住宅関連商品、フィットネス器具、キッチン用品からアパレル関連に移行、カジュアルウェアに加えて、事務所勤務に戻り始めた人達によって、スーツなどのフォーマル・ウェアの需要が伸びた。

また、健康美容のカテゴリーでは、在宅勤務ではあまり必要なかった化粧品を中心に需要が回復した。学校への登校も再開されたため、2021年の新学期用の学習用品や衣料品のバック・ツー・スクール・セールも好調に推移した。

2022年に入ってからも前年に始まった「リベンジ消費」が続き衰えていない。しかし消費は前年の商品消費からサービス消費へと移行、旅行や外食への需要が急増する一方で、家具、家庭雑貨、家電、スポーツ用品は低迷した。

デジタル投資が加速した

コロナ禍で成長した小売業は、積極的なデジタルやデータ投資、EC企業の買収やテクノロジーに必要な人材投資を積極的に行っていることが共通した特徴である。

ウォルマートはパンデミック前の2016年にEC企業の「ジェット・コム」を33億ドルで買収した。創業者のマーク・ローリーは、その後ウォルマートのテクノロジー部門を率いてオムニチャネル企業としての土台をつくることに大きく貢献した。

その後もヘイニードル、シューバイ、ムースジャー、モッドクローズ、ボノボス、インドのフリップカート、スレッドアップなど20社近くのIT企業を買収している。それらの企業の多くはその後譲渡されているが、ウォルマートのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に大きく貢献したことは疑いようのない事実だ。

利用客の間で人気の高いグローサリー・ピックアップや「ウォルマート+」のサブスクリプション(定額)・モデルも、これらのEC企業買収の成果と言える。

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フルフィルメント・センターに投資

上記に加えてウォルマートは人材投資を増やし、大学の奨学金制度や社内トレーニングを強化、消費者の行動変化に俊敏に対応できる組織を構築している。

ターゲットは、オンラインで購入した商品を配送する「シップト」を2017年末に買収し、コロナ過でEC売上を大きく伸ばした。利用客の所得水準が相対的に高いターゲットは、食品をはじめ生活必需品の幅広い品揃えでワン・ストップ・ショッピングができる店として、既存の顧客よりもさらに所得の高い富裕層の新規顧客を獲得した。過去2年間に売上を30%以上伸ばし、今年に入ってからも客単価や客数を伸ばしている。

オンラインで注文した商品をその日のうちに店頭や駐車場でピックアップできるサービスや、シップトによる即日配達は利用者の間で利便性の高いサービスとして高い評価を得ている。

大手スーパーマーケットのクローガーは、パートナーシップを活用した戦略により業績を伸ばした。2018年には、イギリスのオンライン・スーパー「オカド」と提携し、全米でオカドのロボットを駆使したフルフィルメント・センターの建設を行っている。

これまでに11ヵ所が稼働しており、店舗を展開していない地域でも、フルフィルメント能力を活かしたオンライン注文・グローサリーの配達サービスを提供している。

これから成長する企業は、「エコ・システム※」と、顧客満足のための「プラットフォーム」を確立した企業である。

この2つを実現するためには、自社の顧客が誰であるかを正確に見極め、彼らの財布のシェアだけでなくて、生活のシェア獲得を目指すことが必要になる。

つまり顧客満足は、これまでのように商品やサービスの提供だけでなく、顧客が健康で幸せに暮らせるように、製品やサービスを総合的に連携させることが重要になる。

※エコ・システム ビジネスにおいては、企業間でパートナーシップを結び、それぞれの企業が持つ技術や知識などの強みを生かし、共存共栄を図る仕組みのこと。

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実証試験を終え、次々に実用化される無人店舗

無人店舗は目覚ましい勢いで進化を続けている。今回は、サイバーエージェントグループ、株式会社CA無人店舗取締役平川義修氏が、2022年春、夏に視察した海外の無人店舗のうちのいくつかをベンダー(開発業者)ごとに紹介、合わせて日本での導入のポイントなどを考える。(取材協力:サイバーエージェント)(月刊マーチャンダイジング2023年1月号より転載)

商圏設定、品揃え、データ活用など戦略に合わせベンダー選択&協働

Amazonが無人店舗「Amazon Go」をアメリカワシントン州シアトルに出店したのは2018年1月。Amazon登録者が専用アプリを立ち上げるとQRコードが表示され、それを入り口でスキャンして入店、もしくはクレジットカードを差し込んで入店(買物客の特定)。店内で買物客が棚から商品を取ると天井に設置されたAIカメラと棚の重量センサーがそれを捕捉して商品と購入者を特定。指定のゲートから店を出ると数分後に電子レシートがスマホに送られてくるというのがその仕組みである。

このシステムはレジ精算なく、ただ店を出るだけという意味で、Just Walk Out(JWO)と名付けられ、現在Amazonは自社店舗だけでなく、JWOの外販も行っている。

1号店は20坪ほどの売場に約1,500SKUが在庫されたコンビニタイプの店舗だったが、改良を続け600坪の同社傘下の自然派食品スーパー、ホールフーズでもこのシステムを採用している。

JWOが起点になり、世界各地のスタートアップ企業が無人店舗のシステム開発に取り組み、現在では「スタジアムの売店に適したシステム」、「店内行動の分析に特化したシステム」など、各社目的や利用機会を考えた特徴あるシステム開発へとフェーズは進んでいる。今後日本の小売業は得意分野に応じてベンダーを選び、自社の成長戦略と一体的に無人店舗システムを採り入れていくことになるだろう。

ポイントは無人店舗とは、単に人のいない店舗を意味するのではなく、レジなしにすることで、快適な短時間買物体験で固定客を増やす、さらには、不要になったレジ従業員を他の業務にあてる、カメラやセンサーで店内データを取って固定客育成や販促、店舗運営改善に活用するなど、技術を自社の成長戦略の有力手段として位置づけることにある。目的や予算に応じて複数のベンダーと組むことも一般的になっているのでその視点も重要だ。

以下、平川氏が視察した無人店舗のシステムと、どのような戦略に活用できるかを合わせて紹介する。

JWO採用 600坪食品スーパー

[写真1]JWOで運営する600坪のホールフーズ(ワシントンDC)

ワシントンDCにあるJWO採用のホールフーズは600坪の売場面積に約5,000台のAIカメラを設置してレジなし店舗を実現(写真1)。

セミセルフレジ併用だが、レジはパーティションの後ろにありJWOが推奨されている格好。

アマゾンはホールフーズの他にも自社が運営する食品スーパーアマゾンフレッシュを40店舗以上出店しており、店舗では精算機能のあるカートでレジなし買物が可能。オンライン注文にも対応し複数店舗でJWOを導入している。

レジなしのスムーズな買物体験で固定客を増やす。加えて、レジ人時をECの出荷要員に振り分け、リアル+ECで商圏(アマゾン経済圏)拡大を図っている。無人店舗と成長戦略が一体化している好事例である。

ACCEL ROBOTICS社 Valet Market

集合住宅内出店、エリアに配送拠点 都市計画と一体化も見込む

視察したのはサンディエゴ市中心部から3〜4kmの都市部立地のマンション内に出店するアクセルロボティクス社が運営するバレットマーケットという店舗。売場面積は20坪程度で、食品や日用品、医薬品など生活に必要なものは一通り揃っており、店舗内在庫は、住民の買い足しや買い忘れなどのニーズに対応している。マンション外からの入店、住民以外の買物も可能。

[写真2]バレットマーケット店内(サンディエゴ都市部)
[写真3]生鮮食品など生活必需品を品揃え

ゲートからQRコードで入店し、レジなしでアプリ精算。マンション住人であればアプリで注文することで部屋まで配達してもらえる。2〜3km離れた場所に店舗兼配送拠点になるダークストアがあり、無人店舗に在庫のない商品や品切れの商品はその店までスタッフが取りに行くことで品揃えを拡張。こういった配送作業や補充などのために、従業員が3人常駐している。マンション住人と顔なじみになるため安心して部屋までの配達を頼める。

[写真4]マンション住人向け配達サービスの告知

利用者(アプリ会員)が何をいつ、どれくらい購入したかのデータを活用することで、個人のニーズにあったムダのない精度の高い品揃えが可能になる。このマンションは700世帯、1,100人が居住しており、この商圏人数(1,000~1,500人)で十分成り立つビジネスモデルを確立している。それだけ、頻度高く住民に利用されていることになる。

アクセルロボティクス社は元々ロボット開発の会社で、将来的には、マンションやオフィスといった特定コミュニティ内の店舗とダークストア間の配送を自動運転でつなぐスマートシティ構想もある。

[図表1]アクセルロボティクス社バレットマーケットのビジネスモデル

データ活用で個人のニーズを把握し品揃えに反映、無人店舗で在庫できないものはダークストアを使って住居まで配達、こうしたone to one対応の強化でコミュニティ内の買物シェアを最大化しようとする戦略は興味深い。都市部だけでなく、郊外を商圏とする日本の小売業、ドラッグストア(DgS)にも応用できる(図表2、3参照)。

[図表2]日本の都市部立地のDgSへの応用例
[図表3]日本の郊外立地DgSへの応用例

《適した戦略》

  • 店内データ分析強化
  • サテライト店舗出店

AVA retail社

既存の監視カメラにAIカメラを追加 レジなし精算から店内分析まで可能

アバリテール社は2014年創業とスタートアップ企業としては老舗の部類に入り技術も蓄積されている。同社は「実現可能なコスト」にこだわり、既存の監視カメラに新規のカメラを追加することで、レジなし精算ができる。

天井の高さにもよるが、200坪程度の売場でも80台のカメラで対応可能。これを坪当たりのカメラ台数で計算すると0.4台となり、先に紹介したワシントンDCのJWO型ホールフーズ(8.3台)の20分の1だ。

低コストだが映像分析の技術は高い。お客の鼻の向きを分析することで売場に設置された複数のデジタルサイネージのうち何を見ているかが分かる。さらに基本的な表情を読み取ることで商品への好感度も推測可能。

また、同社の強みはカメラ、センサー、アプリなどを駆使して様々な顧客行動を分析し、それを店舗改善に生かすところにある。分析するデータとしては、「任意の時点での店内客数」「直帰(買わずに退店)率」「顧客がよく通る動線」「顧客ごと商品ごとの滞留時間」「顧客をもっとも長く滞留させた商品、同もっとも短い商品」「顧客ヒートマップ」「商品ヒートマップ」などがあり、これらの数値を組み合わせ約80種類のデータをダッシュボードで見られるシステムを開発している(写真5)。

[写真5]店内行動分析の結果をダッシュボードでチェックできる

POSだけではわからないデータを分析することで売場レイアウト、棚割、ポテンシャルのある商品の陳列位置などの改善ができる。こうした分析を少ないカメラ台数、比較的低予算でできるところが大きな強みとなっている。初期導入コストを抑えたい小売業に適したシステムである。

[図表4]アバリテール社システム導入イメージ

《適した戦略》

  • 店内データ分析強化
  • 低コストで早期導入・差別化

STANDARD AI社 CIRCLE K

既存店に低コストで導入可能 従業員の動き、店の仕組みを変える

視察したのは、スタンダードエイアイ社の自動チェックアウトシステムを導入した、アメリカアリゾナ州フェニックスで営業するコンビニ、サークルK。

この店舗の大きな特徴は入店ゲートがないこと。店内を回遊して任意のタイミングでQRコードやアプリ入りのスマホをリーダーにかざしてチェックイン、買物が終わって店を出ると電子レシートが届く。ゲートがあることで入店しづらくなる心理的障害を解消している。ゲートがない分万引きリスクも高まるが、チェックインなしで商品をピックアップして退店した場合には従業員にアラートが出る。

[写真6]店舗のオペレーション・指示出しを自動化。従業員向けのスマホアプリに指示を飛ばし、誰が実施したかなどを管理可能

また、複数の高精度AIカメラが人物だけでなく商品も個別に識別することで、売り切れや棚の乱れを認知、店舗従業員にアラートが出る。それに対応すると評価ポイントがつくというゲーム感覚で売場を常に良好な状態に保つ作業管理システムも兼ね備えている。

既存店にこのシステムを導入する場合、AIカメラを設置するだけで、棚の入れ替えやレイアウト変更の必要がないので低コストで済むのも大きな特徴。

《適した戦略》

  • 低コストで早期導入・差別化

AiFi社 ALDI

カメラのみ設置でレジなし精算 高齢の買物客がスムーズに利用

[写真7]天井のカメラのみで商品、購入者特定

アイファイ社は2016年アメリカカリフォルニア州で創業。カメラ設置だけ、棚の重量センサーなどなしで商品を特定、アプリ利用でレジなし精算ができる。そのため導入コストを低く抑えられる。アメリカ、イギリス、スペイン、中国など世界各地の小売にシステムを提供している。

視察したのはイギリスグリニッジ郊外で営業する食品スーパー、アルディ。中心部から離れた郊外立地の200坪程度の店舗。高齢者のお客が多かったが問題なくスムーズに買物。高齢社会の日本でも十分一般化できることを伺わせている。生鮮品揃え300坪程度の一般的な郊外型DgSにも適用できると思われる。

《適した戦略》

  • 低コストで早期導入・差別化

ZIPPIN社 スタジアム売店

ハーフタイム、通勤時など 混雑する特定時間に対応

[写真8]ニューヨークNBAのスタジアム内にある自動精算の売店

ジッピン社開発のシステムはスタジアム、駅、空港など特定の時間帯に買物客が集中するという店舗に特化。比較的小型店でレジ待ち時間をなくすことも強みとしている。

これまでに50店舗を出店、1平方フィートあたりの売上を10%〜50%向上させ、お客のレジ待ち時間を延べ14万時間節約したと発表している。2022年には200店舗に導入拡大。

《適した戦略》

  • 来店客集中時のチャンスロス解消

オンライン接客による、新規サービス定着促進、接客販売強化

省力化&接客強化/①お困り事対応

●サイバーエージェント社が提供するサービス例
接客のデジタル化:チャットボット、アバター接客など

サイバーエージェント社が提供するサービス例

セルフレジ、スマートカート(カート設置の機器で商品スキャンしレジなし会計)など新規サービスを開発し導入しても使い方がわからないため中々定着しないというケースが多々見られる。無人店舗導入時にも起こり得ることだ。当初は人を付けて説明していても長期間それを続けるのはコスト的にも難しい。

こうした事態への対応として、サイバーエージェントではオンライン接客のソリューションを用意している。サイネージ提供に加え、沖縄に1,000人規模の自社コールセンターがあり、これに対応。新規サービスの説明の他、ビューティケア、ヘルスケアのカウンセリングにも活用できる。

【無人店舗・オンライン接客に関するお問い合わせ】 ca_mujin@cyberagent.co.jp 050-5212-7036

 

〈取材協力〉

株式会社CA 無人店舗 取締役
平川 義修氏

脱コロナ禍で見えてきたコンビニ業態の新たな3つの稼ぎ方

コンビニチェーン本部、および加盟店は売上・利益ともに回復基調にある。コロナ禍に関しては2022年3月21日にまん延防止等重点措置が終了、同年7月、8月には第7波が到来、過去最大の感染者数を記録するものの行動制限の要請はなく、人の移動で売上が伸びるコンビニ業態にとって、望ましい環境が各社の業績を後押しした。ここでは脱コロナ禍で見えてきた新たな稼ぎ方を主にセブン−イレブンに見ていく。
(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年3月号より転載)

店舗数前期比はセブンは増加 ファミマとローソンは減少に

既存店の売上高前年比を第3四半期累計(2022年3~11月)で見ていくと、セブン−イレブン・ジャパン(以下、セブン−イレブン)103.4%、ファミリーマート104.3%、ローソン102.9%と前年クリア、その内訳でも大手3チェーンは客数、客単価ともに前年をクリアしている。

コロナ禍の初期は大きく減少した客数に対して、まとめ買い需要を喚起して客単価を向上、売上高を維持するかしないかの瀬戸際の攻防であったが、今期は客数の改善を図っている。

既存店売上高前年比は、フランチャイズビジネスにとって、加盟店はもとより、チェーン本部が最も気にする数字であるが、ここを伸長させないと、ドミナントの拡大に赤信号が灯る。既存店が落ち込んでいては、周囲に店数を増やすどころではなくなっていく。

第3四半期末の国内店舗数を見ていくと、セブン−イレブンが21,342店舗(前年比142店の増加)なのに対して、ファミリーマートが16,544店舗(前年比46店の減少)、ローソンが14,628店舗(前年比69店の減少)となった。

ファミリーマート、ローソンともに、既存店の売上と利益の増加を、新店開発に優先して取り組んでいることが分かる。本来であれば、新店開発と既存店の活性化は車の両輪であり、同時に進めていく必要があるが、この3年におよぶコロナ禍が、そのバランスを狂わせたといってよい。

名店監修と大掛かりなフェアで米飯弁当は800円超えに突入

セブン−イレブンは、コロナ禍において、小商圏化が加速し、個店ごとにお客ニーズの違いが顕在化していると認識、そのため、お客に対して、わざわざ自店に来店してもらう目的来店性を高める政策を取ってきた。セブン−イレブンが把握するデータにおいても、1人のお客が利用するセブン−イレブンの店舗数が少なくなり、同じ店舗に来店する傾向が強いことが判明している。

単純に考えれば、例えば自宅とオフィスと取引先の何社かを行きつ戻りつしていたオフィスワーカーの出社日数が週5から週3に減って、取引先との商談の半分がオンラインに切り替われば、コンビニへ行く「機会」は自然と減少していくであろう。

そこで、セブン−イレブンは、たまたま立ち寄ってもらうのではなく、目的来店性を高め、店舗を活性化させ、来店頻度を向上させようと考えた。

その施策の1つ目が「高付加価値商品の品揃え拡充」、2つ目が「取り扱いアイテム数増加を図る売場レイアウトの変更」、三つ目が「イベント感を出す販売促進」である。これらを融合させた取り組みを継続的して実施してきたという。

一つ目の高付加価値商品とは、プライベートブランド(PB)のセブンプレミアムの中でも「金」の付く商品を指す。金のビーフシチュー(496円/税込み、以下同)、北海道産小麦の金の生食パン4枚入(375円)、金のマルゲリータ1枚入(537円)など多岐の品種にわたる。

この高付加価値商品を含むセブンプレミアムのリニューアルを推進している。2021年度にアイテム数を絞り込み、2022年度は約1,200アイテムのリニューアルを進めて、11月末時点で933のアイテムで実施している。

セブン−イレブンは2022年1月から毎月、大掛かりなフェアを実施。旅行やイベント参加を控える利用者に2022年度のメインテーマである「ワクワク感」を訴求している(画像はセブン-イレブン公式Twitterより)

この高付加価値商品に加わった、もう一つのテーマが2022年1月から毎月実施している各種フェアである。毎回の企画に応じて高付加価値商品を投入、商品開発と販促を連動させた取り組みを推進している。例えば、2023年1月15日より実施した北海道フェア「北海道グルメ旅」では、「Suage監修チキンと野菜のスープカレー」(810円)といった既存の商品と比較して、差別化を試みながら、強気の価格を打ち出している。

セブン−イレブンの北海道フェアで投入した「Suage監修チキンと野菜のスープカレー」810円と「いそのかづお監修札幌ブラック醤油ラーメン」594円。強気の価格設定でコンビニ弁当の底上げを図る

米飯弁当については500円以下がコンビニの常識的な価格といわれてきた。それが近年では600円を超える商品が出始めている。単なる新商品として800円超えは難易度が高いが、スープカレーのように、名店監修と北海道フェアによる高付加価値により訴求している。

コンビニ店舗の販管費が上昇、アルバイト従業員の時給を上げていかないと、この先、コロナ禍以前のような人手不足に陥ることは目に見えている。高付加価値、高粗利に徐々にシフトしていく方向性であろう。

こうした高付加価値商品の品揃え拡充の成果は表れており、「粗利率については、原材料価格が高騰する環境下、デイリーメーカー様と協力し、フェアで提供する商品開発や、セブンプレミアムの訴求強化など、価値と価格のバランスをとった商品をご提供することにより、3Qは+0.3%と大きく伸長することが出来ました」(セブン&アイ・ホールディングス2023年2月期決算説明会より)と説明している。

2つ目の店舗活性化策は「アイテム数増加を図るレイアウトの変更」。商圏が狭くなっているのだから、1人のお客のニーズに幅広く対応する必要がある。常温商品を対象に(特殊店舗を除き)約90アイテムを拡充している。

3つ目が「イベント感を出す販売促進」。前述したフェアの連続開催である。9月は「関西グルメ巡り」、10月は「秋の味覚だより」、11月は「熱狂!麺フェス」、12月は「洋風グルメフェア」「年末弁当フェア」を実施した。来期(2023年度)はメインのフェアに加えて、地域ごとの特色を活かした「ご当地フェア」のような販促策で地域活性化を図っていく。

セブン−イレブンはフェアによる販促活動には従来は消極的であった。企画モノよりも一品一品の商品の磨き込み、それを知ってもらうために、例えば、おにぎり100円セールなどを実施してきた。しかし、広く、薄く、セールで値引きして粗利を削るのではなく、会員獲得と販促効果の高いアプリ会員に向けたセールを推進している。

その一方で、店頭販促やメディアを動員した大掛かりな連続フェアを実施して、来店動機を高めて、さらに高付加価値商品に手を伸ばしてもらい、客単価の底上げを同時に取り組んでいく。

他にも、セブン−イレブンの成長戦略の目玉になる「7NOW」も計画通りに進めている。これはデリバリ―のマーケットに対応する取り組みで、スマートフォンで注文された商品を最短30分で指定の場所に届けるサービスである。

2022年11月末までに1,401店舗で展開、12月末には2,000店舗を超えて、期末(2月末)には5000店舗に拡大させる計画である。店舗オペレーションの改善と配送ネットワークの整備を進めながら、2024年度には予定通り、全国展開する意向である。

ローソンは「Uber Eats」によるOTC医薬品を86店舗で配達

ファミリーマートは、本誌連載で紹介した「人型AIアシスタントによる店長業務サポートの導入」や、無人決済システム導入店の関西初出店などによる省人化と省力化、店舗運営力向上により、加盟店利益向上を図っていく。他にも、精算カウンターの上部に取り付けるデジタルサイネージは、2023年度中に設置店舗を1万店へ拡大する方針を示している。

ローソンは、店内調理サービス「まちかど厨房」の導入店舗を11月末までに8,970店舗に拡大。5月からはローソン店舗への「無印良品」の本格導入を開始した。店内調理サービスは、唐揚げなどのカウンターフーズを除いて、セブン−イレブンもファミリーマートも実施していない。

ローソンは店内調理機能の導入に大きく舵を切り、上位2チェーンと差別化を試みる

ローソンは大手3チェーンの中で、明らかに違う道へ進んだといってよい。店内で調理すれば加盟店の「人時数」は増える。売上や粗利の改善がそれを上回ればよいわけで、きめ細かな店内オペレーションが一層求められることになる。

また、ローソンは「Uber Eats(ウーバーイーツ)」を含む4社のフードデリバリーサービスの導入を11月末までに45都道府県3,556店舗に拡大した。

セブン−イレブンが時間を掛けて自前でシステムを構築する一方、ローソンは外部のサービスを活用することで早期の全国展開を(2県を除き)実現している。

「Uber Eats」では、OTC医薬品の取り扱いを16都道府県の86店舗で実施、早くから医薬品の販売に意欲的であったローソンにとって、こうした新サービスの導入が奏功する結果となった。大手3チェーンは、こうした新たな「稼ぎ方」を推進している。

店長の性格を把握した人型AIアシスタントが発注業務などコンビニ店舗運営をサポート

前号ではCGアバターを接客に活用するローソンの事例を紹介した。ローソン専属のスタッフが、店舗に設置されたモニター画面から、オンライン上で来店客に話し掛けるシステムで、その際、スタッフは自身の顔と声を、設定されたキャラクターに変換して対応する。この人型のCGはスタッフを介するが、今度は人を必要としない人型のAIがファミリーマート(ファミマ)に登場した。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年2月号より転載)

過去のデータ分析と予測から機会ロスと廃棄ロスを防ぐ

ファミマは店長業務をサポートする「人型AIアシスタント」を導入、2023年3月に1,000店舗、同年度末までに5,000店舗へ導入すると発表した。このキャラクターは、女性がレイチェル、男性がアキラと名付けられ、個店ごとの運営状況に合わせた、最適なデータを提供していく。それにより、店舗の省力化と店舗運営力の向上につなげていくとしている。なぜ今、人型AIアシスタント(以下、レイチェル)なのか。

「市場の急激な変化にともない、お客様ニーズの多様化を痛感、経営環境に大きな影響を与えている。とくに、ここ数年来の人手不足。こうした変化に対応して、店舗運営をますます効率化していくことがチェーンの課題と認識している」(ファミリーマート執行役員 店舗業務企画本部長 中村弘之氏)

そうした課題の一部をデジタルで解決できないものか、ファミマは親会社の伊藤忠商事からクーガー社を紹介してもらい、3社で取り組んできた。レイチェルは、クーガー社の持つ音声認識技術、ゲームAI技術、データを処理する検索技術などを搭載、店長の特性や性格などに合わせたコミュニケーションを可能としている。

店長や発注業務を担当するスタッフは、専用のタブレットを持ち、レイチェルと対話を試みる。例えば次のようなやり取りをする。

レイチェル「お疲れさまです、いつもありがとうございます、前日のデータを確認しますか」
店長「はい」
レイチェル「前日のデータを表示します、店舗全体の前年比が100%を超えました。この調子でいきましょう」

売上を大きく左右するデイリー商品に関しては……

店長「パスタの品揃えを見せて」
レイチェル「はい、品揃え確認グラフを表示します、この画面では、今週の品揃え状況が確認できます。グラフをご覧ください。紫がこのお店の平均の販売数で、黄色が廃棄数です。続いて緑は、立地の似た店舗の平均販売数を、このお店の日商に合わせて計算した基準値です。熟練のスーパーバイザー(SV)さんが考案したグラフです。安心して使ってください」

店長はレイチェルとコミュニケーションを図りながら発注数などを決めていく(発注端末は別に用意している)

レイチェルは、このような詳細なデータを、グラフを用いて分かりやすく表示する。そのデータを読み込みつつ、売場の店長、あるいはスタッフは発注数をレイチェルと一緒に調整する。

発注の際に注意すべき二つの点、すなわち機会ロスと廃棄ロスが起こらないようにレイチェルが発注ポイントへの注意を促す。こうした双方向のコミュニケーションにより、店長は、店舗運営の円滑化を図っていく。

競争意欲や学習意欲など店長の志向に合わせて提案

レイチェルのコミュニケーション能力の特徴は、一つ目に前述のような「双方向のコミュニケーション」の実現にある。毎日大量のデータを分析、確認をすることのみならず、販促計画を読み込みながら、個店に応じたアドバイスができる。

「先週のおむすびの前年販売費が150%と好調でしたね」と個店の傾向値、あるいは売れ筋の販売状況から「スパムおむすびが好調」といった細部にわたって情報提供できる。

二つ目に業務のリマインドを可能としている。レイチェルが店長に対して能動的な問い掛けができる。例えば、キャンペーンの開始時に「販促物は取り付けていますか」と語り掛けてくれる。店長は「あっ?忘れていた、すぐやるよ」といった気づきを得られる。

三つ目にレイチェルは、相手に合わせたコミュニケーションを取ることを可能としている。例えば競争意欲の強い店長に対しては、自店の立ち位置が分かる情報を提供する。重点商品に関して、地域内の自店の販売順位を、あえて提供することで、やる気(負けん気)に火をつける。

また、学習意欲の強い店長には、新しい知識につながる情報を提供する。「サンドイッチの詳細データの新着がありますよ」とレイチェルが問い掛けるなどして、データの頻度を高めていくことを可能としている。

あるいは承認欲求の強い店長には、ねぎらいの言葉を述べる。「いつも使っていただいて、ありがとうございます。これからも頑張っていきましょう」といった具合に、相手に合わせて、表現の仕方や提供する情報を変えていくようにしている。

こうした店長の性格や姿勢をつかむために、事前に会話形式のアンケートを実施した。その仮説をもとに、最初はレイチェル側でコミュニケーションを店長に合わせていき、それが適切であるかどうか見極めていく。レイチェルが新商品の説明をしたときに、反応があるかどうか、反応が薄ければ、学習意欲の比較的弱い店長として修正をかけていく。

「ひと口に店長といっても個性も姿勢も人それぞれ。経験も習熟度も異なる。店舗にはあまたの情報やデータはあるが、日々の業務が忙しく、活用せずに埋没することもある。その状態を解消するために、レイチェルが相手に合わせて、いつでも欲しい情報を、欲しいタイミングで提供することができる。これにより店長の業務をしっかりとアシスタントしていく」(中村氏)

レイチェルの導入により、店舗を指導する立場のSVの仕事は、どのように変わるのであろうか。まず、SVの一部業務の代替が可能になる。担当店舗全店に共通することは、定型化しながらレイチェルが代替、一方でSVは個店に寄り添った売場の経営指導に注力する。

中村氏は次のような効果を期待する。

「個店に指導するにあたり、SVに資料を作成する時間を、けっこう長く取らせてしまっていたと感じる。そこで、資料のデータをレイチェルがカバーできれば、SVの業務を削減できるし、先にレイチェルが店長とコミュニケーションしておけば、その後のSVが売場をどう変えていくか、より高い水準で話もできる、その意味では、2割から3割の業務を削減できると想定している」

単にSVの業務を肩代わりするだけでなく、それにより浮いた時間を、より高度な指導に充当できる。

​​AIと人間が、どう仕事を分担し生産性の向上を図るのか?

実際に人型AIアシスタント・レイチェルの開発に携わったクーガー社の代表取締役CEOの石井敦氏は、その特徴を開発の視点から次のように説明する。

もう“一人”のアシスタントのアキラ。AIは自ら学習して内容を深めていくことが可能。SVの仕事は、より高度にしていく必要がある

一つ目が「アクセスの双方向性」。既存のコンピュータは、ユーザー主体で情報を取りに行く必要がある。一方でレイチェルは問い掛けや提案を行い、これにより店長にリマインドや気付きを提供でき、自然に双方向コミュニケーションを生み出すことができる。

二つ目が「行動促進力」。文字、画像に加えて、音声、表情、動き、距離感を織り交ぜて伝達する。

「まさに人間と同じように五感に訴え掛けていく。それにより、情報の重要度や水準、緩急が伝わる。学校の先生に言われたポイントとか、友だちが近づいて話した内容は非常に印象に残ったという経験は誰でもあると思う。その結果、影響力が高まり行動促進につなげられる」(石井氏)

三つ目が「個別支援能力」。店長の習熟度であったり、志向性であったりをレイチェルが理解、その店長それぞれに合わせて個別支援をしていく。前述のように、レイチェルは店長の意欲や欲求に合わせてコミュニケーションを図ることを可能としている。

コツコツと積み上げる仕事に力を発揮する店長には、これまで続けてきたこと、積み上げたことを、レイチェルがよく理解し、上手に問い掛けてサポートしていく。

ファミマは2年前からレイチェル活用の実証実験に取り組んできた。業務の漏れをなくすことで、当該カテゴリーの2%から5%の売上増に寄与したという。当面は店舗の利益に大きく影響する、米飯やサンドイッチ、調理麺、総菜、キャンペーンの展開をテーマに店長を支援していく。

AIと人間が、どう仕事を分担して生産性の向上を図るのか、コンビニのオペレーション改革が本格化していく。

ファミリーマート執行役員 店舗業務企画本部長 中村 弘之氏
クーガー代表取締役CEO 石井 敦氏

「営業改装」で閉店売上ロスなく店舗年齢を若返り化

「営業改装」とはエイジスマーチャンダイジングサービスがそのノウハウを確立させた、店舗を閉店することなく営業しながらの全面改装のことである。ドラッグストア(DgS)に関していえば、出店攻勢により店舗数を増やす企業が増える中、既存店改装の重要性はますます高まっている。これを支える同社の事業をリポートする。(月刊マーチャンダイジング2022年12月号より転載)

新規出店と店舗改装はDgSの成長戦略の両輪

[図表1]DgS出店・退店状況(2022年期末店舗数順)

図表1は上場DgSの店舗数、出退店状況である。4桁チェーンが6社、非上場の富士薬品グループ(店舗数1,372)を加えるとDgSには4桁(1,000店舗以上)チェーンが7社存在する。出店数も多く5社が100店以上出店、3社が純増で100店舗を超えている。DgSが出店をベースに成長してきたことは間違いない。

一方でこれだけの新規出店で店数が増えれば、顧客ニーズや買物行動の変化に合わせて改装すべき旧店も相当数存在することになり、店舗改装は新規出店と同じくらい重要な成長戦略となる。

改装には、カテゴリーや部門のみを改装する部分改装と店舗全体を改装する全面改装がある。ツルハホールディングス(HD)は改装には積極的で店舗年齢(一度全面改装すると店舗年齢はゼロ歳になる)に基準を設け、これを維持することを重視している。決算資料によれば2022年5月期は既存店改装を241店舗で行っている(部分、全面の種別表記はなし)。ウエルシアHDは2022年2月期の全面改装が88店舗、クスリのアオキHDは2022年5月期、前期の総店舗数728店舗の約16%に当たる120店舗を出店、大手DgSの中ではトップクラスの出店ペースである。2023年5月期の出店は90店舗とペースを抑制し、200店舗の改装を計画している。うち約半数は本拠地である北陸3県の店舗を対象としており、出店時期が早く、加齢の進んだ店舗を本格的にテコ入れする構えである。

こうした数値からは、積極的に出店を行い成長している企業は店舗年齢に一定の基準を設け、改装も計画的に行い店舗年齢の若年維持を進めていることが分かる。また、こうした出店と改装を繰り返してきたからこそ、大手に成長したともいえる。

店舗数が増えるほどに、既存店の活性化と成長は企業の命運を握ることになり、ライフスタイルの変化が大きく、小商圏内での競争が激しい現在は特にその必要性は高い。既存店活性化の柱となる手段が店舗改装である。

店数を増やさず、デジタルと改装で成長を続けるウォルマート

[図表2]ウォルマートの米国内設備投資額の推移

図表2はウォルマートの米国内設備投資額の推移である。「Eコマース・サプライチェーン・テクノロジー」に最も多く投資しているが、「既存店改装」にも全投資額の3割程度を充てている(直近32億7,800万ドル、130円換算で約4,260億円)。新店への投資は1%台で、店舗数を増やすことが同社の成長戦略ではないことを示している。

年次報告書によると、ウォルマートの米国内の店舗数は①スーパーセンター(SuC)、②ディスカウントストア(DS)、③サムズクラブ(コストコのような会員制業態)、④NSCなどの小型業態4つの合計で、2022年1月期は前期とまったく同じ5,342店舗である。前期よりSuCを3店舗、サムズクラブを1店舗増やして、DSを4店舗減らすという小幅な内訳変更はあるものの店舗数は変わっていない。一方で、米国内事業の売上高は2022年1月期が3,932億4,700万ドル(1ドル130円換算で51兆1,122億円)で前期比6.3%増となっている。同社は出店で商圏を広げることで売上拡大するのではなく、デジタルと改装に集中的に投資して既存店、既存商圏を深掘りしていくことで売上を伸ばす段階に入っている。

長期的に見れば、人口減少問題や出店飽和などで日本の小売業もいずれその段階に入ると思われ、いまのうちからデジタルと改装のノウハウ構築に向け投資すべきである。

閉店して作業する全面改装には大きなロスが生じている

エイジスマーチャンダイジングサービスは小売業の売場づくり、改装などを支援するリテールサポート企業だが同社の業務の中で、最近注目されているのが店舗を閉めることなく、営業を続けながらの改装=「営業改装」である。

「弊社は10年以上前から、『営業改装』を提案しています。DgSは最近食品売場の拡張という部分改装のニーズが高く、その機会に他の売場も見直して店舗全体を改装するというパターンが増えています。これまで小売業の改装はメーカー、ベンダーの応援を仰ぎつつ自社スタッフと協働で店を閉め、大量の人時をかけ短期間で行うパターンが主流でした。しかし、最近、コンプライアンス問題や人員確保が難しくなっていること。店舗を閉めることで生まれる売上ロスを防ぐために、弊社の『営業改装』のニーズは高まっていると思います」(エイジスマーチャンダイジングサービス株式会社 代表取締役社長 仁田 善郎氏)

[図表3]「従来型改装」の問題点

仁田氏の発言にあるように、小売業は新店開店や既存店改装の際、取引先と自社スタッフで延べ数百人規模の混成チームをつくり、2〜3日という短期集中で作業を終わらせるパターンが多かった。そして、今もこの従来型手法は残っており、いくつかの問題をはらんでいる(図表3)。

まず、コンプライアンス問題である。大規模な取引先従業員の動員が独占禁止法で禁じられている「優先的地位の濫用」に違反するという指摘は度々なされ、これを改善するために小売業側は「応援手当」の支払いなどで対応してきた。たが、その額が適正なのかどうかなど依然グレーな部分は残る。

次に改装ノウハウ、技術などの差から生じる完全作業問題である。リテールサポートの専門企業は、工期日程、作業計画に関する「全体設計力」が洗練されている。また、商品、ゴンドラを移動させる運搬ツールであるマテハンや仮設販売用の什器など実作業を通じて開発・改良された「高機能ツール」を持っている。さらに、安全確保などの「現場管理力」、そして、経験豊富なスタッフで構成された「チーム力」など、改装作業の実務能力はもちろん、改装に関する周辺業務の処理能力は高く、完全作業の実行を基本としている。

▲チームを組んで作業割当に基づき効率よく作業

自前で改装するとこうしたノウハウ、技術に差が出るのに加え「妥協」が生まれ、完全作業のレベルが落ちやすい。小さな「まあ、いいか」はチェーン全体の大きな損失につながり、さらに完全作業が行われなければ、正確な効果検証ができないという二次問題も生じる。

そして、もっとも問題なのは、改装で店舗を閉めることで発生する機会損失(売上ロス)である。例えば、坪当たり売上高が150万円で300坪の店舗なら年商4億5,000万円、日販は約120万円、改装のために3日間閉店すれば360万円の売上ロスとなり、年間100店舗改装するなら企業全体で3億6,000万円が失われることになる。

[図表4]営業改装実施店舗の売上推移❶(DgS)改装期間 2週間の場合
[図表5]営業改装実施店舗の売上推移❷(DgS)改装期間 1週間の場合

図表4、5はエイジスマーチャンダイジングサービスが実際に「営業改装」を手掛けたDgSの売上推移である。縦軸は改装前2週間の平均売上を100とした場合の売上の変化、横軸が期間となる。赤い線で囲まれた部分が改装期間で、図表4は改装工期2週間の場合、図表5は同1週間の場合でそれぞれ複数店舗で見ている。改装前後にセールを行っているので、山と谷ができているが、注目すべきは改装期間中でも売上は80〜85%以上を維持している点である。

同社の分析によれば、300坪のDgSの場合、2週間(実質作業日数10日間)の営業改装なら売上の約95%を維持、1週間(同5日)なら約85%が維持できる。2週間の営業改装による1日の売上ロスを5%とすると、日販120万円の例を当てはめれば、120万円×10日×0.05=60万円、100店舗改装で6,000万円のロスとなり、3日間完全閉店の改装で生じる3億6,000万円と比較すると、営業改装には3億円のインパクトがある。これを改装の原資と考えれば、その他従来型改装で生まれる弊害も考え合わせても、極めて合理的な投資ではないだろうか。

小売業は、改装計画とそれに必要な投資基準を持つべきだろう。

売上ロス対策と完全作業を目的に計画的、効率的に全面改装

それでは、エイジスマーチャンダイジングサービスによる営業改装は実際にどのような工程や手法によって行われのるかを見てみよう。

[図表6]営業改装のプロセス

図表6は営業改装に関するプロセス図である。まず、小売企業の担当部署、大手企業なら開店改装部とエイジスマーチャンダイジングサービスが密に連携するパートナーシップを構築する。計画的に頻度高く改装している小売企業の中には、同社のスタッフが常駐して協働態勢をとっている企業もある。

小売企業は工事の施工業者、什器業者などを手配、もっとも人時を要して改装の完成度を左右する商品の撤去と陳列が、エイジスマーチャンダイジングサービスの担当となる。

[図表7]マスタースケジュール例
[図表8]ステップ・バイ・ステップ例
[図表9]デイ・バイ・デイ例
[図表10]作業割当表例

営業改装に当たっては、まず「マスタースケジュール」を作成(図表7)、ここには自社の作業計画だけでなく、作業前の工事の施工業者との調整なども含まれる。次に「ステップ・バイ・ステップ」(図表8)というゾーン単位の週次計画を立て、さらに「デイ・バイ・デイ」(図表9)というゴンドラ単位の日次計画に落とし込む。作業は1〜2名のチームで担当、カテゴリーによって標準人時が決まっており、これをもとにチームごとに日々の作業割当表(図表10)を作成する。

営業改装で肝となるのは、短期間に多くの売場を閉めて集中作業するのではなく、適正な期間を決め少しずつ改装作業すること。先述の通り300坪のDgSなら2週間を掛けて改装すれば売上は95%程度維持できる。図表4、5で営業改装実施店舗の売上推移を見ているが、同等の売場規模なら1週間よりも2週間を掛けた方が閉店による売上ロスは少ないのがわかる。2,000坪クラスのホームセンター(HC)なら約6週間の営業改装で90%程度の売上が維持できる。

▲[写真1]改装中カテゴリーから売れ筋商品を選んで陳列する「ローランド什器」(自社開発)

さらに、同社の営業改装では、作業する売場を完全閉鎖するのではなく、Aランクなどの売れ筋商品は移動式の仮設什器「ローランド什器」(自社開発)に陳列して販売する(写真1)。これも売上ロス対策に貢献している。

ローランド什器以外にも営業改装で使用するツール類を写真2〜4で紹介している。

売上をなるべく落とさないこと、完全作業が実行されることを目的として、エイジスマーチャンダイジングサービスでは、図表6〜10で示したような細かな計画を立て進捗管理を行い、作業には各種専用ツールを駆使している。

▲[写真2]店舗の棚割データを登録すれば、JANコードをスキャンするだけでその商品をどこに陳列するばよいかが分かる「陳列用端末」
▲[写真3]どんな什器にも適用できるゴンドラ移動用の装置「ゴンドラスケーター」(自社開発)
▲[写真4]棚から商品を効率よく撤去する「バンカー台車」(自社開発)
▲[写真5]解体されたゴンドラの棚板や支柱などを入れて移動する「長尺パーツ用台車」(自社開発)

既存店の変化対応には宝の山が埋まっている

「日本では春と秋の棚替えや期末の一斉棚卸しのように短期集中型の売場作業が多いと思います。このやり方にはいい面もあるのですが、メーカー、小売本部側の都合という側面もあり、お客様や現場スタッフにとって必ずしも好都合なことだけではありません。改装にも同じことが言え従来の短期集中作業には課題が多くあるように思います。私たちが提案している『営業改装』は従来型の課題をクリアして、なおかつ今でも現場の声を生かして進化を続けています。

お客様の志向は目まぐるしく変わりますし、競合環境も変わります。既存店の売場はお客様や商圏の変化に対応することで、売上が上がる宝の山です。それを発掘するための手法が『営業改装』ですので、ぜひこれをご活用頂きたいです」(仁田氏)。

新規出店の勢いが止まらないDgSだが、これまでの歴史を見ても出店投資の償却が終わり利益の出ている古い店舗の改装を怠った企業はどこかで停滞を経験している。チェーンストアにとって、新規出店の原資は既存店の成長であり、この成長が止まれば、既存店の不調→新店投資の原資不足→出店鈍化→企業全体の成長鈍化(マイナス成長)→既存店活性化の原資不足→既存店の不調という負のスパイラルに陥いる。こうした事態にならないためにも、また新規出店と既存店改装を両輪に成長を続けるためにも、効率的な全面改装は重要である。

    • <エイジスマーチャンダイジングサービス>

    • 本社 千葉市花見川区幕張町3-7727-1
    • 代表 代表取締役社長 仁田善郎
    • 問い合わせ 043-213-2006

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〈取材協力〉

エイジスマーチャンダイジングサービス
代表取締役社長
仁田 善郎氏

CGアバターが接客、カウンター人員ゼロ。コンビニ業態の継続性を図る「グリーンローソン」

ローソンは2022年11月28日(月)に、CGアバターやDX活用による人件費の抑制、また食品ロス削減、プラスチック削減などの環境負荷軽減、さらに「ゴーストレストラン」設置による売上の上積みを目的とした、「グリーンローソン」を東京都豊島区にオープンにした。「20を超えるサステナブルな施策を集約した」(ローソン広報)という実験店舗の全貌を紹介したい。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年1月号より転載)

グリーンローソンを実験場に既存店に新規取り組みを導入

本誌2022年11月号でローソンが進める「アバター接客」を紹介した。店舗とは別の場所にいる従業員が、お客とオンライン上で接客する取り組みで、従業員はカメラに向かって、身振りを交えて話をするが、姿形はCGアニメ、声も自分とは異なる設定で、お客の「お困り事」を解決したり、新商品の販促を試みたりする。

これはCGアバターと呼ばれる技術で、例えば高齢の男性が、セルフレジの使い方を案内する際、若い女性のCGアバターに設定もできる。目的は従業員の年齢や性別を隠すことではない。各種の実験から「実在の人物」よりも「CGアバター」の方が、話しかけやすいという効果があり、お客が受け入れやすいメリットがあるからだ。

コスト的には、1人のCGアバターが、数店舗を掛け持ちできるで、人件費の抑制になり、極端な例を挙げれば、時差の異なる海外の従業員が接客をすれば、昼の業務で対応しつつ、一方の店舗へは深夜のサービスも可能にできる。

さまざまな可能性を持つCGアバターだが、ローソンは、そうした最新デジタル技術を含めた、「未来に向けたサステナブルな店舗」を、東京・大塚に開設した。実験的な面が強く、現状は多店舗化を計画していないが、ここをラボラトリー(実験場)に見立てて、お客の支持のある取り組みについては、既存店への導入を図っていく。

商圏が狭小化して競争が厳しくなった。コンビニ既存店の客数が伸び悩む中、新たな集客の武器を持つ必要がある。加えて、上昇を続ける人件費の抑制は喫緊の課題である。それらの解決に向けた実験場といえる。

「いらっしゃいませ、ようこそ」アバターがフレンドリーに挨拶

ウエルカムアバターが、入り口でお客を出迎える

アバターの活用に関しては、24時間最適なサービスを提供しつつ、店舗従業員の人時抑制にもつなげられる。社会的な意義としては、さまざまな制約にとらわれず、就業機会の拡大がある。

就業場所への時間や距離、条件としての年齢、介護や育児で外出しづらい、あるいは身体的なハンディキャップがあるなどの障害や制約を回避して、「誰もがいきいきと働くことができる“全員参加型社会”の実現を目指す」(ローソン社長 竹増 貞治氏)としている。

グリーンローソンではCGアバターの画面を4カ所に設置している。1つ目は「セルフレジサポートアバター」で、操作の仕方に迷うお客に説明をする。タッチパネルの画像は、設置したカメラによりアバターも共有できるので、次はどこをタッチして精算を進めていくのか、音声で案内できる。

たばこ、アルコール類は、運転免許証を指定の機器に置いてもらい、アバターが年齢確認して販売する。店舗は無人ではないので、何かトラブルがあれば店舗に常駐する販売員が対応に当たる。

グリーンローソンが画期的なのは、3台のレジを全て無人化したこと。基本的な操作説明をアバターが担当して、レジのセルフ化を促している。一般的にコンビニのレジ業務は、店舗従業員の3割~4割の人時数を必要としている。

近年のセルフレジ化により、この比率は下降傾向にあるが、グリーンローソンでは、必要なときのみアバターが対応するため、レジ業務の人時数の大幅な削減を可能としている。

2つ目は「ウエルカムアバター」の店舗「外側」。「いらっしゃいませ、ようこそ」といったフレンドリーな挨拶をする。3つ目は同じく「ウエルカムアバター」の店舗「内側」。グリーンローソンのコンセプトや具体的な取り組み、販促を実施する。4つ目は「商品お薦めアバター」。オープン時はチルドデザートの什器の上で、“イチ推し商品”の紹介などを実施していた。

ローソンはホームページ上などで、本年9月にアバターを公募、現在、主婦をしている人、ローソン経験者・VTuber・身体的な理由から接客業を諦めていた人など、10代~60代の幅広い年齢層から約400人の応募があり、グリーンローソンでは約30人をアバターオペレーターとして採用している。

30人は、いわばアバター第1期生として、これから拡大させていくアバター接客要員として活動の場を広げていく。アバター従業員には、当初は東京と大阪のローソンが用意した就業場所で、(深夜を除く)一定時間に交代で勤務し、その後は在宅勤務も可能にしていく。

ローソンは、グリーンローソン導入後の検証を実施した後、2023年度中に東京と大阪のローソンの計10店舗に拡大、2025年度には、約1,000人のアバターを育成して全国のローソン店舗で展開していく。遠隔による深夜防犯、専門家へのオンライン相談、地方特産品の遠隔販売など新たな取り組みも検討していく。

クオールと組んで処方せん薬受け取りロッカー設置

グリーンローソンでは、フードロス削減に向けた大胆な取り組みも実施している。“冷凍”と“オーダーを受けてから作る店内調理”とで米飯弁当の廃棄ゼロを目指している。通常のローソン店舗で販売している「チルド米飯弁当」や「常温米飯弁当」は品揃えせず、ここで新たに発売する冷凍弁当7品と、店内厨房でつくる弁当のみを販売する。米飯弁当の廃棄ゼロを目標にしていく。

ガラスの奥は店内厨房、その横にモバイルオーダーを促す動画を流している

店内で調理する「まちかど厨房」(ローソン約8,000店舗に設置済み)の一部メニューについては、オーダーを受けてからつくる「できたてモバイルオーダー」を導入。このモバイルオーダーについては、通常ローソン店舗で販売していない“ゴーストレストラン”の専門店メニューも用意している。

これはスンドゥブとチョイ飯セット(税込999円)といった、専門性が強く、単価も高い商品が対象で、デリバリーにも対応している。厨房では店内がピークとなるランチタイムの前に集中して店内で販売する商品を製造する。一方のゴーストレストランのオーダーは、ランチ時間帯になるため、厨房の作業時間が異なり、生産性も向上が図られるという。

前述のアバターを活用したセルフレジや、モバイルオーダーなど新しいシステムを導入すると、どうしても慣れ親しんだ従来の接客環境を好むお客の離反を招くリスクもある。従業員の姿が見えない店舗は寒々しく感じるお客も多いだろう。

そこでローソンは、会計はセルフレジをメインとしつつも、店舗従業員については、買物に迷ったお客のサポートや、気持ちよく買物できる売場づくりを優先していく。セルフレジの利用方法については、アバター接客だけでなく、店舗従業員がサポートしていく。レジの近くにはローソンでは初めてとなるサービスカウンターを設置、収納代行やチケット購入など、セルフレジで精算できないサービスに対応していく。

EC商品やレンタル商品、処方せん薬をセルフで受け取れるボックスを店内に設置、来店の機会を増やしている

この店舗が初めてではないが、お客自身のスマホで商品バーコードを読み取り決済する「ローソンスマホレジ」、EC商品やレンタル商品の発送と返却、返品サービスがセルフでできる「スマリ」や「はこぽす」の設置、処方せん医薬品を調剤薬局の営業時間外に受け取れるロッカーも設置している(運営はクオールホールディングス)。ローソンが近年に手掛けた新たな取り組みも、ここに集結させた感がある。

お客がロボットの前に立ったり、商品を手に取ったりしたときに、ロボットは「とってもおいしいよ」などとコメントを発する

グリーンローソンの半ば「挑戦」は、既存店への導入に時間を要する試みもある。しかし同時に、コンビニ業態にとって、手を打つべき課題も山積しており、その一つ一つの突破を目指したグリーンローソンの取り組みと出店の意義は大きいといえる。

[店舗概要]

店舗名 グリーンローソン(ローソン北大塚一丁目店)
所在地 東京都豊島区北大塚1-13-4
オープン日 2022年11月28日(月)13時 ※リニューアルオープン
売場面積 214㎡(約65坪)
営業時間 24時間
主な取り扱い商品 冷凍弁当、おにぎり、調理パン、ベーカリー、デザート、ファストフーズ、まちかど厨房、飲料、酒類、日用品など約4200種類(11/28現在)

完全復活に向かうコンビニ大手3チェーン。変わるニーズに、売場、商品、販促で対応

コンビニ3チェーンが上期(第2四半期)実績を発表、既存店の売上、客数、客単価ともに、おおむね回復の傾向を示した(記事内図表1)。特にセブン−イレブン(ジャパン)は、既存店の売上がコロナ禍前の19年度と比較しても1.1%(客数▲11.0%、客単価13.5%)上回る結果となった。大手3チェーンの上半期の取り組みと下半期の施策をお伝えしたい。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2022年12月号より転載)

イトーヨーカ堂との連携を強化、食卓ニーズをさらに深めるセブン

[図表1]2022年度上期(3月~8月)既存店前年比

上期期間中(3月~8月)に関しては、まん延防止等重点措置が3月21日に終了、その後、夏にかけて感染者が急増するも、重篤化のリスクが少ないと判断した若い世代の動きが活発化、政府や自治体の行動制限緩和も影響して、「人の出」は2019年の水準に戻りつつあった。

そうした外的要因が既存店に好影響を与えたが、コンビニ各社も人の動きを上手に活かして、集客を試みている。本連載で繰り返し指摘したが、コンビニ業態の売上の多くが「人の移動」により成立する。A地点からB地点に向かう最中、もしくは外出先であるC地点で立ち寄ってもらう。ただし、コンビニ各社は、「人の出」を待つだけでなく、品揃えの変更や積極的な仕掛けにより、利用動機を強くさせてきた。

セブン−イレブンは、主力のPB「セブンプレミアム」を、2007年の発売以降はカテゴリーとアイテムを拡充してきたが、今年度はアイテム数を絞り込んだ上で、今年に入り順次リニューアルを実施した。その結果、セブンプレミアムの主菜分類売上前年比は、8月に前年をクリアし、粗利率もプラス0.4%改善した。

近年はイトーヨーカ堂との連携も重視している。創業当時(1974年)のセブン−イレブンは、イトーヨーカ堂とは一線を画し、人材を求めなかったことで知られている。新しい業態に、スーパーマーケットの過去の成功体験を必要とせず、むしろ足を引っ張ると考えていたからだ。鈴木敏文氏は外部からの人材を登用して、セブン−イレブンの発展を牽引した。

現在のグループトップ(セブン&アイ・ホールディングス社長)を務める井阪隆一氏は、そうした流れを修正して、グループの強みを活かす形で食品強化に乗り出した。

イトーヨーカ堂の商品とサービス、販売促進、店舗オペレーション、物流・調達の面で連携を強化するSIP(SEJ・IY・Partnership)を発足、今後は両社の持続的成長に向けて取り組みを進めていくとしている。

その理由は、コンビニは「即食ニーズ」に対応して「コンビニ向け商品」を品揃えしてきた。もちろん、今後も継続強化の方針だが、それだけでは環境の変化に対応できないと考えた。即食ニーズだけではなく「食卓ニーズ」、コンビニ向け商品だけではなく、「スーパーマーケット向け商品」も、コンビニに求められていく(図表2)。高齢化により人々の活動範囲が狭まり、近隣の1ヵ所で買物を済ます「ワンストップショッピング」も後押ししている。

[図表2]セブン−イレブンのフードコンテンツ強化の方向

そうした変化を、前述したPBのセブンプレミアムが対応し、イトーヨーカ堂のノウハウが活かされていく。コロナ禍により、人々の意識や行動が大きく変化したマーケットに対して、フードコンテンツを今後どのようにしていくのか。井阪氏は第2四半期の決算会見で次のように語っている。

「従来は即食性が高いおにぎり、お弁当などの商品を目的として使われてきたコンビニでしたが、少子高齢化や働く女性の増加、世帯数の減少、単身世帯の増加などの社会構造変化により、2009年になって、近くて便利をコンセプトにした、食卓で召し上がっていただける商品の開発と品揃えを強化してきました。その中で、冷凍食品やパウチ総菜など、さまざまな商品が生まれました。

その結果、そのような商品群の売上構成比は当初は1日当たり5%だったものが、現在は10%を超えるまで拡大しています。直近2年では、さらにお客様ニーズの多様化が進み、コンビニで生鮮食品や家庭用品の品揃えが求められます。このような家庭での利用頻度が高い食品を成長させたのが、(PBの)セブンプレミアムだと認識しています」

新ブランド「ファミマル」打ち出すファミマ。セブンとの競争意識を前面に

ファミリーマートは昨年10月にブランド統一したPB「ファミマル」が好調に推移した。下期(10月4日)には全国紙に「ありがとう。最高のお客さまと、最高のライバルに。」と題して、2021年11月から本年8月まで既存店前年比の数字が「最強のライバル」に勝ち続けることができたと広告では綴っている。

既存店前年比は自社内の比較なので“勝ち続ける”といった表現が適切かどうかは議論の余地があるが、セブン−イレブンとおいしさを競うという意味であれば、一般消費者に向けて、コンビニの努力が伝わり、業界全体のプラスのイメージになるだろう。

本年2月には旧ブランド(「お母さん食堂」など)から全ての商品がファミマルへの切り替えが終了した。PBの日商前年比において、毎月(10ヵ月)連続で100%超えを記録した。

またファミリーマートとしても既存店日商売上前年比でも、同期間において10ヵ月連続100%超えを記録。ファミリーマートでは、これが既存店前年比の牽引にも貢献していると見て、前述の新聞広告に至っている。

ファミマルの好調要因として、ファミリーマート商品本部商品業務部ファミマルブランドマネージャーの柘植幹子氏は次のように語る。

「(それ以前は)商品のおいしさが十分に伝わりきれていませんでした。特に中食分野の、おむすび、お弁当が打ち出しによって好調に推移しています。ファミマルブランドを販売して一番強く感じたのは、商品の良さを伝える重要性。パッケージを変えて、商品の良さを伝える際に、訴求ポイントのどこにあるのかを明確にしてきました」

コンビニのPBは品質、価格ともに切磋琢磨、商品カテゴリーや売場レイアウトも大胆に変更しながら、アフターコロナも売上の拡大を図っていく。

ローソンは「できたて」で勝負。店内厨房1万店設置へ

ローソンは、本年6月からキャンペーン「ハッピー・ローソン・プロジェクト(ハピろー!)」を打っている。「ハピろー!」をキャッチフレーズに、(松山ケンイチをローソン店長に据えた)テレビCMなど、あらゆるメディアを駆使してキャンペーンを打った。その効果もあってか、客単価は横ばいながらも客数は大きく増やしている。

ローソン「まちかど厨房」の商品。店内調理は差別化の武器にはなるが、オペレーションが計画性を持って実施されないと人件費のムダが生じてしまう。その点は慎重に導入を進めている

店舗改装の積極的な実施も売上に寄与した。上期1,240店舗を改装し、コロナ禍以降の改装は合計5,500店舗を達成。「からあげクン」をはじめとするファストフードをお客に自由に取ってもらうセルフサービス什器を導入、また冷凍食品の拡充にともなう冷凍ケースの設置を進めてきた。

ローソンが、セブン−イレブンやファミリーマートと決定的な差別化と位置付ける店内調理機能「まちかど厨房」の導入店舗は、上期に9,000店舗を超えて、残り5,000店舗になった。この5,000店舗については、ハード的にどうしても導入できない店舗もある。その場合は、隣の店舗から「横持ち」するなどの方式を採用して拡大を図っている。店舗で作ったできたての弁当や総菜を、しっかりと訴求していく。そうした商品があることを、お客に伝えるキャンペーンも実施していく。

「(大手)コンビニの中ではローソンだけが外食品質に対抗し得るハードを持ち合わせています。ここは、お客様にそのおいしさと利便性をアピールしながら、垣根のなくなった競争の中で、ローソンの地位をしっかりと築いていきます」(ローソン社長 竹増貞信氏 上期決算会見にて)

ローソンが2020年度から導入を始めた「無印良品」も本格的な強化方針を打ち出している。竹増氏は次のような疑問を呈している。

「ローソンの社員の中で自社のおにぎりを食べた経験のない人はいないと思います。ところが、靴下はどうでしょうか。自ら進んでローソンの靴下をはきたい、ローソンの歯ブラシで歯を磨きたい、ローソンの化粧品を使いたい、といった積極的な理由に変えていきたい。無印良品をローソンでなければ購入できないPBに落とし込んでいきます」

わざわざローソンを目指して買物に来てもらえる商品カテゴリーを目指していくとしている。

調剤DX成功の秘訣は「LINE調剤ミニアプリ」活用にあり

調剤DXを推進する企業が増えているが、調剤アプリが使われていないことが最大の経営課題である。調剤アプリの利用率を高めて来局回数を増やし、調剤のロイヤルカスタマーを育成するための具体策を提言する。(取材協力:サイバーエージェント)(月刊マーチャンダイジング2022年12月号より転載)

調剤アプリの大半は実際には使われていない

調剤DXの大きな課題は、さまざまな調剤薬局やドラッグストア(DgS)が「お薬手帳アプリ」や「調剤の配送アプリ」を導入しているが、ほとんど使われていないことである。

たとえば、全国展開している医療機関向けのオンライン診療、オンライン服薬指導のアプリがあるが、コロナ禍の発熱外来の利用を除くと、通常の医療で使っているユーザーは全国で5,000人程度であり、ほとんど使われていないのが実態である。

DgSでも「お薬手帳アプリ」の全店導入を進めている企業もあるが、ほとんど使われておらず、その効果もよくわからない。調剤DXは、どのデジタルツールを導入するかを決めることよりも、実際に使ってもらう運用のノウハウを構築することの方が重要である。

また、DgSにおける調剤事業は、「わが企業、わが店が調剤をやっている」ということを地域住民に認知させることがもっとも優先順位が高い。業界にいると、DgSが面分業で処方せんを受け付けていることは誰でも知っていると思いがちである。

しかし、実際には、地域住民の多くは、病院前の門前薬局で処方せんを出さなければならないと思っている。

業界関係者であれば、ウエルシアが調剤事業を展開していることは常識であるが、実際にはウエルシアで調剤をやっていることを知らない地域住民は多い。

今年の前半にウエルシアがコロナの抗原検査を実施したところ、「おたくの店は調剤も出しているんだ」と初めて気づいた地域の患者が多かったという。ウエルシアの抗原検査の最大の効果は、「調剤の新規客」が大きく増えたことだという(本誌・2022年6月号のウエルシアの記事より引用)。

[写真1]DgSの店舗サイネージで調剤の受付番号を表示すると、調剤の認知率が高まり、調剤の新規客が増える(参考写真。本文とは関係ありません)

また、調剤の受付番号をDgSの店内サイネージで表示している事例が増えているが(写真1参照)、このサイネージの最大の目的も「わが店で調剤を受け取れますよ」ということを認知させることである。

つまり調剤DXのテーマは、(1)アプリを使ってもらうことと、(2)調剤サービスの認知率を高めることの2点である。

自社アプリよりもLINEの顧客接点が多い

[図表1]アプリよりもLINE利用者のほうが、「使われやすい」

図表1は、自社の「お薬手帳アプリ」と「LINE」の処方せん獲得枚数の比較である。この企業は、自社の「お薬手帳アプリ」を導入していたが、お薬手帳アプリ経由の処方せん獲得枚数が、図表1のように非常に低いままだった。つまり、アプリがほとんど使われていなかったわけである。

お薬手帳や調剤の配送のアプリがあるので「ダウンロードしてください」と告知しても誰も使わない。いろいろなアプリが多すぎることが課題である。

そこで、LINE公式アカウントの中に「調剤機能(薬急便)」を導入したところ、新たにアプリをダウンロードする手間が省けて、デジタル顧客接点が大きく増えた結果、LINE経由の処方せん獲得枚数が大きく増えた。

LINEを調剤のデジタル顧客接点の入口にした方が、図表1のように処方せん獲得枚数が何十倍も多いことが実証されている。

図表1の事例とは異なるが、LINE公式アカウント内に調剤機能(薬急便)を導入している画面を紹介する(図表2)。

[図表2]サツドラのLINE公式アカウントへの導入事例

図表2の一番左側は、サツドラのLINE公式アカウントのトップ画面である。画面の下のスペースに調剤機能(薬急便)のバナーが固定して掲載されている。

LINE公式アカウントを開いた顧客の多くが目に触れるように設計されている。こういう設計のことをリッチメニュー(LINEのトーク画面に固定で表示されているメニュー機能)というそうだ。

LINEに友達登録すれば、調剤機能(薬急便)を簡単に利用できる。調剤機能のリッチメニューをトップ画面に固定することで、「お薬手帳アプリ」をいちいち開く必要がないので使いやすい。

また、アプリトップ画面のリッチメニューに調剤機能を固定化することで、初めて調剤をやっていることに気付く顧客も多い。

トップ画面の下のバナーをクリックすると、図表2の中央の薬急便の登録画面に移行し、登録が完了すると、右の店舗選択のページに移行する。その後、処方せんをLINEのカメラ機能で撮影して、選択店舗に送信すると、調剤の完了時間が返信される。また、薬急便は「調剤の即日配送」の機能を強化している。

LINEユーザーは来局回数と応需病院数が多い

[図表3]LINEユーザーと非LINEユーザーでの利用傾向の違い

図表3は、「LINEユーザー」と「非LINEユーザー」の調剤薬局の利用傾向を比較したものである。2022年4月から9月までの半年間の調査であるが、図表3の右側のLINEユーザーは、非LINEユーザーよりも来局回数が多いことがわかる。半年間で2回以上来局した患者が1.5倍も多い。また、半年間で3回、4回と来局した患者が、非LINEユーザーと比較して極めて多いこともわかる。

DgSの調剤事業は、「1年間で再来局を1回増やせれば勝ち」といわれている。全世代平均の来局回数が年4回なので、それが1回増えて5回になると、処方せん枚数が20%も増えたことと同じである。来局頻度の低い調剤薬局では、来局回数が1回増えることのインパクトは大きい。

DgSの決算を見ると、調剤売上は伸びているが、新規出店で伸びているだけで、既存店の調剤売上は減少している事例もあり、既存の調剤薬局のテコ入れは重要な経営課題である。LINEを調剤のデジタル顧客接点の入口にすれば、調剤薬局への来局回数を確実に増やしてくれるので、既存店の活性化策としても有効である。

もうひとつは、LINEユーザーは応需元の医療機関の数が多いことである。2ヵ所以上の医療機関から応需する割合は、非LINEユーザーと比べて約3.5倍も多い。LINEを使うことでDgSの調剤薬局の利用体験が便利になるので、従来は病院前の調剤薬局に散らばっていた処方せんをDgSに集約した結果、応需元の医療機関が増えて行くわけである。

つまり、LINEを調剤の顧客接点にすると、(1)来局回数が大きく増えて、(2)医療機関の数も大きく増える。

デジタル顧客接点をなるべく広く取る

[図表4]すべての顧客接点からデジタル接点(LINEなど)につなげる

図表4は、調剤の顧客接点を整理したものである。一番上の「対面での処方せんを受け取り」に来局した患者さんに対しては、LINEのお友達登録を勧めることがもっとも重要な顧客接点である。「LINEに登録すると、フォローアップのメッセージがあなたに届くので、会員になると便利ですよ」と説明する。帰宅後もちゃんと面倒見てくれるなら、調剤窓口を集約化しよう、という流れをつくることが重要。

薬を受け取った後に「体調いかがですか?」というフォローアップをプッシュ通知すると、サイバーエージェントの仕組みだと、回答率が6割くらいある。従来の調剤薬局は、そんなフォローアップはなかったので、「良い薬局だ」とロイヤリティが高まる傾向が強いという。

図表4の「来店時に店舗サイネージを視聴している調剤の未利用客」に対しては、視聴率の高い入口のサイネージで「調剤をやっている」ことを繰り返し主張することが重要。現在、店舗サイネージに商品広告を掲載するDgSが増えているが、単価の高い調剤利用客を増やすことに店舗サイネージを活用した方が、投資対効果は高いと思う。

「DgSには来店するが調剤薬局を利用していない人」に対しては、図表2のように、公式アプリやLINE公式アカウントで調剤サービスの便利性をアピールすることが重要である。

図表4の真ん中の緑色のゾーンは、Google検索のような一般的なブラウザから調剤サービスに入ってくる新規客との顧客接点である。専用アプリがほとんど使われていないので、顧客接点はなるべく多くあった方がいい。ブラウザ検索→オンライン服薬指導のバナー(図表4のイラスト)という動線も重要である。ブラウザ検索で来局する患者は、まったくの新規客である。

図表4の一番下の青色のゾーンは、「コロナ・インフルエンザの検査キット販売」「お薬配送サービスの告知」から調剤サービスに入ってくる顧客接点である。この入口も新規客である。

「調剤やっています」と告知してもあまり反応しない調剤の未利用者も、「検査キットあります」「お薬を配送します」というと反応して、調剤の新規客になるケースが多い。

とくに、コロナの第7波以降では「お薬の即日配送」がキラーコンテンツになっている。調剤のデジタル接点強化として、調剤の配送は非常に重要である。

また、インフルエンザも、患者が自分で検査キットを買って、オンライン診療で確定診断して、調剤薬局で薬をもらうという流れを、国が推し進めることが決定している。医療がパンクしないためにも、オンライン服薬指導で調剤の配送までやるという流れは加速すると思う。

お薬の配送は、地域で料金が異なるので限定的な店舗しかできない問題点があるが、サイバーエージェントの仕組みだと、管理画面を提供して配送業者の比較ができるので、その地域で早くて安い業者を選ぶことができる。

 

〈取材協力〉

株式会社MG-DX
代表取締役社長
堂前 紀郎氏
サイバーエージェント
DX本部 統括
藤田 和司氏

2023年の経営課題は「狭小商圏時代対応」。客数・売上対策の打ち手10

リアル小売業の商圏は、小さく狭くなっています。この原稿では、2023年年始の提言として、限られた商圏人口の中で、売上と客数を増やすための10の対策を整理します。大商圏時代のMDとは大きく異なることがわかると思います。(月刊マーチャンダイジング 主幹 日野眞克)

「月刊MD note版」では毎月「日野眞克の視点」を連載。ドラッグストア経営における経営のヒントを教示します。是非ご購読ください!
>>「 月刊MD note版」
https://note.com/mdnext/m/m2dfeab8b6f27

広域集客よりも来店頻度を増やす

リアル小売業が狭小商圏化している理由は2つあります。ひとつは、オーバーストアです。日本の人口をドラッグストアの総店舗数で割り算すると、ドラッグストア1店当たりの商圏人口は7,000人を切っており、狭小商圏化が加速しています。

もうひとつの理由は、ECでの買物の普及です。自宅から出て店に到着するまでに、車であれ徒歩であれ30分以上かかる買物は、ECの買物の方が便利です。特に日用品やビールなどの必需品の買物は、「近くて便利」な店でなければECに奪われて、どんどん狭小商圏化していきます。

リアル店舗の狭小商圏化が進む中で、客数と売上を増やすための10の対策を図表1に整理しました。第1は、広域商圏から集客するのではなくて、限られた商圏に住む固定客の「来店頻度」を増やすことです。広域商圏時代は、来店1回当たりの買物金額を増やすことが重視されましたが、狭小商圏時代は「年間買物金額」という考え方が重要です。たとえば、1回の買物で1品しか買わなくても、365日毎日来店してくれる顧客は、重要なロイヤルカスタマーだからです。

来店頻度を増やすためには、新しい品群や品種を増やす「ラインロビング」に取り組むことが基本対策です。ラインロビングによって「買物目的」が増えれば、必然的に来店頻度は増えます。ドラッグストアが「青果」や「精肉」をラインロビングすることを邪道だと揶揄する人もいますが、PI値(買上率)の高い青果・精肉をラインロビングすることは、狭小商圏で客数を増やすための基本対策なのです。

アソートメントで新定番を創造する

また、新しい市場やカテゴリーをつくることで需要創造することも重要です。

写真1は、さまざま売場に分散していた商品を、「糖質コントロール」という生活テーマで再編集した売場です。分散していた時には見逃されていた商品も、生活テーマでまとめることで気づきが生まれて、商品によっては3倍も販売数量が伸びたそうです。生活テーマで商品を再編集する「アソートメント」は、さまざまな商品を取り扱う小売業と卸売業だけが消費者のために提供できる代表的な技術です。アソートメントによる「需要創造」は、狭小商圏時代にはとても重要になると思います。

[写真1]糖質コントロール(左)とフェムテック(右)の新定番づくり。

「月刊MD note版」では毎月「日野眞克の視点」を連載。ドラッグストア経営における経営のヒントを教示します。是非ご購読ください!
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客層を広げることが狭小商圏では重要

狭小商圏で客数を増やすためのもうひとつの基本対策は、「客層を広げる」ことです。

最初は「性別を広げる」ことが重要です。同一商圏の男女の人口比が5対5と仮定すると、その店舗で少ない性別を増やすことが客層を広げることです。ドラッグストアであれば、女性客の比率が圧倒的に高いので、男性客を増やすことが最重点の客数対策になります。男性の固定客率の高い「酒類」を強化し、一人暮らしの男性のための「簡便食品」を品揃えすることも、客層を広げることにつながります。一方、男性客の多いコンビニは、女性客を増やすことが重点対策になります。

第2は「年齢層」を広げることです。非食品の中てPI値(買上率)の高い「オーラルケア」は、老若男女を問わず購入するので年齢層が広く、しかも消耗品なので頻繁に来店してくれます。オーラルケアは、狭小商圏で客数を増やすための戦略カテゴリーといっていいでしょう。

第3は、「価格帯の幅」を広げることです。従来のチェーンストア理論では、「商品構成グラフの左寄せ」という言葉があるように、なるべく価格帯は狭くて、左側の低価格帯に商品を絞ることが重要と言われてきました。しかし、狭小商圏時代に商品構成の左寄せをやりすぎると、狭小商圏に住む客を限定することになります。特定の住居エリアにさまざまな所得層の人が住む日本では、ある程度の価格帯の幅が必要です。とくに、「中・高価格帯の売れ筋を育成する」ことは、狭小商圏時代のMDでは重要だと思います。

最後は「季節を広げる」ことです。最近は、代表的な季節品である入浴剤、殺虫剤、日焼け止めなどの販売期間が延びており、「年間定番化」している季節品も増えています。季節を広げることも、狭小商圏時代のMDには不可欠の戦略になります。

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