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缶チューハイの買われ方

第4回高アルコールの「ストロング系」トライアル増加中!秘密は販促にあり?

さまざまな業態が、取り扱うカテゴリの幅を広げ、お客様を奪い合おうとしています。本連載では、ソフトブレーン・フィールドのマルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ(以下POBデータ)により、それぞれのカテゴリがどの業態でよく売れるのかと、その理由を分析し、次の一手を考えます。今回は、ストロング系やほろよい系などさまざまな商品が登場している「缶チューハイ」をテーマに、独自のデータから消費者の購買行動を分析します。

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ビールの次に買われている缶チューハイ

ビール系飲料の出荷量が13年連続で減っている中、飲みやすく値段が安価な高アルコールの缶チューハイが好調です。今後ますます需要が高まる夏に向けて、今回は缶チューハイについて分析します。

まずは、自主調査でPOB会員3,627名を対象に「缶チューハイについて」アンケートを実施し、「普段お酒を自分で購入して飲む」と回答した男女1,983名に、自分でもっともよく購入するお酒のジャンルについて質問しました。

自分で購入するお酒のジャンルについて、「缶チューハイ」は9.9%(n=395)で「ビール」に次ぐ人気となり、「第三のビール」や「発泡酒」よりも上位となります。

ちなみに「缶チューハイ」を購入する属性は、ボリュームゾーンは男性が30代~40代、女性が20代~30代で、60代の飲用率は低い傾向にあります。また男性よりも女性で多く購入されています。

1/4の人が「8度~9度」のアルコール度数を好む

アルコール度数の高いストロング系缶チューハイが市場を牽引する中、缶チューハイの飲用歴別に缶チューハイの好みの度数を分析しました。

缶チューハイの好みの度数の平均は、「4度~7度」が47.3%でもっとも多く、次に「8度~9度」が25.1%、「1度~3度」が20.3%と続きます。

缶チューハイの飲用歴別での特徴は、飲用歴の浅い「~1年未満」の方では、「8度~9度」が平均よりも11.3ポイント高い36.4%となります。ストロング系缶チューハイの人気を受け、CMや店頭などでも目にする機会が多く飲料歴の試し買い購入が多いことが考えられます。次に「1年以上~3年未満」の方では、「1度~3度」の低アルコール缶チューハイを選ぶ方が平均よりも16.4ポイント高い34.6%となり、「3年~10年以上」の方になると、飲み慣れた「4度~7度」の缶チューハイを選ぶ方が約半数を占めますが、ストロング系チューハイや、低アルコールの缶チューハイも受け入れられています。

好きなフレーバーは2大柑橘が50%を超えて人気

スーパーやコンビニの店頭でも迷ってしまうほど各社から様々なフレーバーの缶チューハイが発売されています。人気のフレーバーについて質問しました。

缶チューハイの好きなフレーバーは、1位が「レモン」で53.2%、2位が「グレープフルーツ」で50.1%となり、定番人気フレーバーが半数以上を占める結果となり、3位~5位までは、「桃」・「ぶどう」・「オレンジ」などのフルーツ系が上位を占めます。

缶チューハイで一番売れているのは「キリン 氷結」

次からは、POB会員の購入レシートから缶チューハイの売れ筋商品を調査します。(調査期間2018年4月~6月)

まず、POB会員の購入レシート枚数からみる「缶チューハイ」の売れ筋全国1位は、「キリン 氷結」が17.0%で、中部・九州/沖縄以外の地域でレシート枚数1位となります。「フルーツの味が際立っていて美味しい(60代女性)」や「氷結はどれを飲んでも美味しいので、他社製品は手に取らない(50代男性)」など、搾った果実の味と香りを大切につくられたおいしさと、多彩なラインナップで支持を集めました。

2位は、「サントリー -196℃ ストロングゼロ」が15.0%で、「アルコールが強めだが、果汁感もあり飲み応えがある(30代男性)」や「食事と一緒でも、単独でも美味しく飲める缶チューハイ(50代男性)」と、アルコール9%の飲みごたえと、果実を丸ごと使った贅沢な味わいでありながら、甘さ控えめで食事と一緒においしく飲めるという声がありました。

3位は、「サントリー ほろよい」が7.6%となり、「アルコール度数も控えめで、軽く楽しく飲むのに丁度いい(40代女性)」、や「かわいいパッケージと甘くて飲みやすい味が揃っているのでリピートしています(40代女性)」アルコール度数3%の飲みやすさと、かわいいパッケージが女性の支持を集めました。

ブランドスイッチ促す「贅沢絞り」、販促効果高い「ザ ストロング」

次に、2018年春に発売された“果実系”「アサヒ贅沢搾り」と“ストロング系”「キリン ザ ストロング」についてPOB会員のレシートデータから新商品の効果検証をします。

まずは、購入理由から分析します。それぞれの購入理由から購入者の特長を分析すると、『アサヒ 贅沢搾り』は、普段から果実系の缶チューハイを好むユーザーにも贅沢な果汁感は高評価であり、果実系缶チューハイの他ブランドからスイッチし購入したというコメントがみられました。

 

「果汁分が多く味が濃厚なため、飲んだ時の満足感が高くリピート購入。(40代男性)」

「キリン『本搾り』シリーズを購入することが多いが、同じ系統の商品で安価だった当該商品を選択して購入。(40代男性)」

「果汁率にこだわって缶チューハイを買っている。お試しで購入(50代女性)」

「果汁が多くて、グレープフルーツというフレーバーが気に入ったから。食事にも合うし、飲みやすい(60代女性)」

 

一方で、「キリン ザ ストロング」は、テレビCMに加えてスーパーやコンビニなど売場で購入を後押ししているのが特徴的であり、40代~50代男性の支持が高いことがわかります。

「買う予定はなかったが、CMで話題になっていた商品のため一度飲んでみたくなり購入(40代男性)」

「キリンのストロングシリーズの新製品が各種陳列されており、目を引いたので試し買いした(40代男性)」

「会社途中のコンビニによりお酒売り場で新製品らしいこの商品が目に入り購入した。炭酸が強くのどごしが良いのが気に入った(40代男性)」

発売時に売れた「贅沢絞り」、じわじわ伸びた「ザ ストロング」

次に、「アサヒ 贅沢搾り」および「キリン ザ ストロング」の発売月前後(2018年3月~6月)で、POB会員 「RTD飲料」アサヒ・キリンの売上シェアの変化についてみます。

まず「アサヒ」の3月~6月までのシェアをみます。3月のレシート枚数シェア45.3%のうち、「贅沢搾り」が16.6%となります。4月、5月は減少傾向で、4月は「28.9%(贅沢搾り12.4%)」、5月は「アサヒ26.9%(贅沢搾り6.8%)」、6月は微増の「30.7%(贅沢搾り4.5%)」となり、「贅沢搾り」は発売月にもっともレシート枚数のシェアを伸ばしました。

次に「キリン」の4月~6月までのシェアをみます。「キリン ザ ストロング」の発売月4月は58.6%のうち、「キリン ザ ストロング」が12.5%となります。「贅沢搾り」とは違い、発売月以降、徐々にレシート枚数を増やし、5月は「73.1%(キリン ザ ストロング13.7%)」、6月は「69.3%(13.6%)」となり発売月のシェアを下回ることなく、推移していることがわかります。要因としては、5/14に「発売から1か月で165万ケースを突破」したという販売好調のリリースと共に、CMでも目にする機会が増え、5/20週になると「LINEのキャンペーンで当選したので引き換えてみようかなと思って購入した。普段あまり買わないので良い機会だと思った。(20代女性)」や、「ローソンのお試し引き換え商品で見かけて、購入したことがない商品だったので、試し買い。(30代女性)」など、LINEやローソンのクーポンがきっかけでトライアル購入に繋がりました。

夏に向けたトライアル継続獲得がシェア向上に

アサヒは「贅沢搾り」発売の3月に新商品投入によるレシート枚数シェアを一時的に伸ばしましたが、4月以降はRTD飲料内でシェアを奪い合う状況となり、結果的にはアサヒ全体のシェアを伸ばすことには苦戦しているようです。一方でキリンは「キリン ザ ストロング」発売の4月に新商品投入によるレシート枚数シェアは、アサヒ「贅沢搾り」ほどの大幅な伸びをみせることはありませんでしたが、結果的には、3月は54.7%であったシェアが、発売3か月経過した6月は69.3%であり、「キリン ザ ストロング」のようにドライ系(高アルコール缶チューハイ)は新規ユーザーの獲得に成功し、キリン全体のシェアを押し上げています。

 

まとめ

  • アルコール度数の高いストロング系缶チューハイが市場を拡大させており、缶チューハイの新規消費者にも評価されている
  • 「アサヒ 贅沢搾り」は新商品投入時シェアを伸ばした。その後「キリン ザ ストロング」が継続的な販促によってシェアを伸ばした

 

POBデータとは

「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ」データベース。

全国の消費者から実際に購入/利用したレシートを収集し、ブランドカテゴリや利用サービス、実際の飲食店利用者ごとのレシート(利用証明として)を通して集計したマルチプルリテール購買データのデータベース。消費財カテゴリ68種類 約6,000ブランド、飲食利用カテゴリ10種類約200チェーン(2018年1月現在)。

「セゾンポイントモール」会員と、「Ponta Web」会員、当社登録会員「キャスト」で構成された約20万人のネットワーク。マーケティング戦略に不可欠なデータを、“より精度を高く”を企業・メーカーに提供します。

著者プロフィール

石井麻美
石井麻美

mitoriz(旧ソフトブレーン・フィールド)所属。広告代理店の企画営業や、制作会社でのメディアプロデューサーなど10年以上インターネットメディアに関する職に従事。2017年にソフトブレーン・フィールド株式会社に入社。入社後は経営企画部に所属し、POB会員メディアの企画運営および、POBデータを利用した調査リリース、および業界紙への記事執筆を行う。