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雇用形態や就業形態にかかわらず見直し進む給与体系
Q8:「同一労働同一賃金(不合理な待遇禁止)」に関して取り組んでいる(取り組み予定の)施策は次のうちどれですか?
■パートタイマーに関する施策
■パートタイマー以外の非正規社員(派遣社員を除く)に関する施策
■正社員に関する施策
正社員の給与体系、人事評価制度の見直し進む
「同一労働同一賃金」対応については、大企業への適用が来年に迫っているとあって、パートタイマーや契約社員(有期雇用労働者)への「手当」「賞与」支給や給与体系の見直しにすでに取り組んでいる企業が目立った。とくにフルタイムの契約社員は、職務内容や責任に応じた待遇になっているかどうかは改めて注意したい。
そして、パートタイマーや契約社員だけでなく正社員の人事・評価制度や給与体系の見直しを取り組み中・取り組み予定とした企業も多かった。
雇用形態や就業形態にかかわらず、自社で働く従業員に対し、どのような人事評価を実施し、給与へどのように反映すべきかを、いま、まさに見直そうとしている企業の状況がうかがえる。
以下に、フリーコメントの一部を紹介する。
「総論」賛成だが実行に不安という葛藤
全体を振り返ると、「働き方改革の方向性(総論)は賛成だが、実際の各対応においては、現場の不安や不満を感じている」企業が多いという印象だった。フリーコメントの量の多さからも、制度を推進する立場である人事担当者の葛藤のようなものが感じられた。
こうした葛藤は、組織として何も変化をしようとしない(結果「業務量」は変わらない)にもかかわらず、個々人の「頑張り」によって、残業削減を実現しようとしている企業であればあるほど大きくなるだろう。なぜなら、人事部では、従業員のための「働き方改革」にしたいというおもいがありつつも、結果的に、企業のための「法令違反回避策」として、現場に負担を強いることになってしまっているからである。
働き方改革の先を見据える企業も
働き方改革は、「長時間労働は美徳である」「職務内容や仕事の価値にかかわらず、雇用形態によって給与額が大幅に違うのは当然である」といった、これまで日本人が当たり前としてきた「価値観」自体を覆すものでもある。それに対する現場の戸惑いは大きいだろう。
しかし、アンケートの具体的な声の中には、そうした「価値観」の転換に向き合いながら、法対応のその先の理念を実行しようとする意気込みを感じられるものもあった。
たとえば、「残業なし、規定の休みはしっかり取れることは当たり前として、働いている8時間の内容をどれだけ充実させられるか。一人ひとりがやりがいを持って、生き生きと働ける状態をつくりだす改革が望まれる」といったものである。他社の具体的な取り組み状況はもちろん、こうした声もぜひ、参考にしていただきたい。
調査概要
- 調査時期/2019年6月
- 調査方法/無記名式書面アンケート
- 有効回答数/設問によって異なる(各図表に明記)
※グラフ表記については、小数点以下四捨五入のため、100%にならない場合もある。回答者属性
- 協力社数/25社ドラッグストア22社、食品スーパー1社、総合スーパー1社、ホームセンター1社
- 対象者/人事もしくは労務部門の責任者、総務、店舗運営部門などに所属する担当者(各社1名が回答)