日々の意識づけこそが災害対策のカギになる

いかに店を開け地域のニーズに応えるか~北海道胆振東部地震を乗り越えたツルハ【後編】~

2018年9月6日に起きた、北海道胆振東部地震を乗り越えたツルハの状況のレポート後編。相当な混乱下にあったにもかかわらず、早期に通常営業に戻ったツルハ。東日本大震災という未曽有の危機での経験が生きていたという。(月刊マーチャンダイジング2018年12月号より転載)

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CASE2 札幌市豊平区・白石区エリアの対応

営業可能な店舗に優先順位を付け エリア全体の最適を考える

札幌市豊平区、白石区にある10店舗を担当するSV佐藤正也氏も地震発生時は自宅で就寝中だった。9月6日はツルハグループの全国のSVたちが拠点に集合してテレビ会議を行う日にあたっており、佐藤氏は10店舗の営業続行と会議への参加、両方を考える必要があった。そのため、軽々に店を回ることは得策ではないと考え、しばらくは自宅待機の態勢を取った。近隣のSVとグループLINEを組んでおり、SV間の連絡や情報共有は密に行っていた。店長たちからはそれぞれが店に向かうという連絡を受け、店舗に着いたら店の状況を写真で送るように指示を出した。

地震発生から1時間ほどたったころ、上司から当日のSV会議はキャンセル、店舗のサポートへ注力するようにという連絡を受けた。

佐藤氏は続々と届く被害状況の写真を見ながら、被害の規模、店長の店舗運営能力などを考慮して、早期復旧ができそうな店を担当10店舗の中から3、4店舗ピックアップ、まずはそれらの店舗の復旧と当日営業へ集中する方針を立てた。

午前4時15分ころ、優先順位の一番目に挙げた白石区にある菊水元町店に到着。店長とアルバイト数人が既に店に着いており、片付けを始めていた。この店は従業員の奮闘のおかげもあり6時ころには開店のめどがつき、佐藤氏は隣の菊水上町店に移動する。

「菊水上町店の被害が一番大きく、食品、酒の扱いもあったので、酒瓶が割れたりして店内はかなりダメージを受けていました。ここにもパート・アルバイトの方が応援に来て、復旧作業をしてくれました。店長方の日ごろのコミュニケーションや地域のお客さまへのおもいを伝えていたたまものだとおもいますが、どの店舗でも早朝、なおかつ自宅も被害があったにもかかわらず、従業員の方が大勢開店のために、店に来てくれました。なかにはお子さんを連れて店に来てくれた女性もいて、そこは本当に感謝しかありません」

菊水上町店も集まった従業員の働きにより、午前8時には営業することができた。佐藤氏が担当する10店舗のうち、1店舗だけはテナント出店しているオーナーの許可が下りず営業できなかったが、残りの9店舗はすべて当日営業をすることができた。

非常時には精算にも使えるハンディターミナル「POT」
什器の底部に付ける免震装備 揺れに応じて床をスライドすることで転倒を防止する。今回の地震でもこの装備のある棚は転倒しなかった

日々の意識づけこそが災害対策のカギになる

停電で信号機も消えており、交通に支障が出ることが予想されたため、佐藤氏は、その日担当エリアの一部地域にとどまり、そこで連絡を受け指示を出すという態勢を取った。上司からは細かく現状の共有や指示が出ており、それを必要に応じて店舗に伝え、店舗からの質問や相談に応じるというのが、開店後の主な作業になった。

停電に関して、翌日7日午前に10店舗中大半の店は復旧したが、白石区は復旧が遅れ、すべての店で復旧したのは、地震発生から2日目の8日(土)の朝だった。そこからは、佐藤氏は短縮営業から通常営業に戻るためのシフト態勢がもっとも大きな関心事となる。

「店を復旧させるために、店長や店長代行をはじめ、ムリして長時間の勤務を続ける従業員もいました。そうした者は早めに休みを取ったり勤務時間を短くしたりして、通常の営業時間に戻ったときにムリなく店を回せるように各店に指示をしました」

パート・アルバイト従業員から役員まで総出で復旧作業が行われた

相当な混乱下にあったにもかかわらず、早期に通常営業に戻ると予想して準備した根拠は何かを聞いた。

「東日本大震災のとき、私は札幌市にある店舗で店長をしていました。そのとき東北の店が大変な状況にもかかわらず店を開け、地域のお客さまのために頑張ったということは聞いていました。ですから、今度は自分たちの番だとおもい、そのための準備をしました。こうした考えに店長や従業員たちがだれ一人後ろ向きなことをいわず、前向きに仕事をしてくれたことは、本当にありがたいことだとおもっています」

ここでも、先の震災時の経験という「財産」が生かされている。東日本大震災という未曽有の災害を経験したツルハだからこそこれだけの素早い対応ができたともいえる。

それでは、東海地方や四国中国地方などで、東日本大震災に匹敵するような大地震が相当に高い確率で起こるといわれている状況にいかに対応すべきか。

そのひとつのヒントは、POTの毎日の作業や安否確認システムの訓練にあるだろう。こうした日々の作業や定期的な訓練を通じて、災害はいつか起こるということを従業員に「刷り込み」、その対応を自律的に考えてもらう、こうした態勢を取ることが、災害への対策、早期の営業開始で地域の生活を支えることにつながる。

〈 取材協力 〉

ツルハ北海道第一店舗運営部
スーパーバイザー 登録販売者
佐藤 正也氏
ツルハドラッグ千歳高台店
店長
保木 政人氏