簡便調味料棚分析に見る各社「売場編集力」

チェーンストア北本エリアの乱!?コスモス、ベルク、アオキ、ウエルシア

2020年10月、コスモス薬品が埼玉県初出店を果たした北本市はドラッグストア(DgS)、食品スーパー(SM)が密集するエリアだ。この地区でDgSや食品SM各社は食品をどのように販売しているのか。調査で解き明かす。(月刊マーチャンダイジング2021年4月号より抜粋)

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半径2km圏内にチェーンストアが密集

埼玉県中東部に位置する北本市。人口約6万6,000人で、中山道の宿場、鴻巣宿があった歴史ある土地柄である。北本市を南東から北西に貫く県道164号線は旧中山道として知られており、この旧中山道沿いに昨年10月出店したのが月刊マーチャンダイジングの別記事でリポートしたディスカウントドラッグコスモス北本本宿店である。(ご購入はこちらから

そしてそのコスモスを中心とする半径2km圏内に、ドラッグセイムス、クスリのアオキ、ウエルシア薬局、スギドラッグ、食品SMはベルク、とりせん、ヤオコー、いなげや、ホームセンターのカインズ…と無数のチェーンストアがひしめいているのである(図表1)。本稿では、チェーンストアにおける食品取扱いの状況を研究するため、コスモスドラッグ 北本本宿店、ならびに近隣に出店しているベルク北本 二ツ家店、クスリのアオキ 二ツ家店、ウエルシア 北本中丸店の簡便調理の棚の状況を調査。可視化することで各社の食品の売り方について検討する。

共働き世帯増に合わせて求められる時短提案

厚生労働省の調査によれば、1995年を境に共働き世帯と専業主婦世帯数は逆転。2019年には共働き世帯が1,245万世帯に対し、専業主婦世帯は575世帯になった(図表2)。

このことによる最大の変化が、それまで以上に「調理時間を短く済ませることができる材料」が好まれるようになったということだ。昨今はコロナ禍の巣ごもり生活によって調理回数が増え、調理の手間を軽減したいという声も多く聞かれるようになった。

そこで、総菜、カット野菜、冷凍食品などとともに、今後さらなる伸長が期待できるのが、素材と混ぜるだけ、あるいは混ぜて加熱するだけでメニューが完成する「簡便調味料」である。

簡便調味料の元祖といえば、味の素の「クックドゥ」だろう。クックドゥは1978年に本格的な中華料理を家庭で味わえる合わせ調味料として発売が開始され、2012年から「クックドゥきょうの大皿」シリーズとして、和食シリーズも展開。キッコーマンは追って2002年から「うちのごはん」シリーズを上市している。

2019年には後発の江崎グリコが栄養のバランスを考えた付加価値の高い総菜の素「バランス食堂」を発売。新商品も増加傾向でホットなカテゴリーといえる。そこで今回はグロサリーの中でもこの簡便調味料を各社がどのように取り扱っているのか、調査した。

時短料理派にうれしい店内レイアウト

ここからはディスカウントドラッグコスモス北本本宿店の店舗について解説する。同店では、主通路沿いに簡便調味料の棚を3尺5本で展開している(レイアウト図は月刊マーチャンダイジング2021年4月号に掲載)。このような簡便調味料カテゴリーは、これまで内側の定番ゴンドラで展開している企業が多かったが、この店舗では買物をする際には必ず前を通る、非常に目に付きやすい場所へ「大躍進の移動」を果たした。なお、主通路沿いは「第1マグネット売場」と呼ばれ、「買上率の高い商品」「客層を限定しない商品」「購買頻度の高い商品」などを陳列するのが原理原則とされている。

ちなみに、入り口方向から主通路を歩くと「簡便調味料」のあと「パスタ」「カレー」、そして第2マグネット(通路の突き当たり)の「冷凍食品」という流れになっており、ショートタイムクッキングを志向する層にとっては、この通路で買物が済む便利さがある。

棚は向かって左から右へ「中華材料→韓国料理材料→中華簡便調味料→和食簡便調味料(2本)」という順番で並ぶ。

トップシェア商品はあえてゴールデンゾーンから外す

棚2本を取っている和食簡便調味料から見てみよう。まず注目したいのが、認知度の高いキッコーマン「うちのごはん」、味の素の「きょうの大皿」がゴールデンゾーンから外されていて、ゴンドラ下部に陳列されている点だ。

ゴールデンゾーンには、後発である江崎グリコの「バランス食堂」が11SKU、19フェースで陳列されている。バランス食堂は98円と値ごろ感がある価格で低価格の印象を与えるのには最適だ。

また同様に後発で、ブランド認知が低いミツカンの「CUPCOOK」「SOUP食堂」「さっぱり〇〇の素」もゴールデンゾーンに配置。首都圏では認知度が低いイチビキの「献立らくらくシリーズ」はゴンドラ上部で横に大きく面を取って認知度を上げようとしている。正田醤油の「ラクめし」は、生肉などに和えて冷凍ストックをつくるという、これまでにない機能性を持っている商品だが、まだまだ認知度が低い。これもゴールデンゾーンの目立つ場所で販売しており、後発ブランド育成の意図が読み取れる。

中華簡便材料の棚では、シェアナンバーワンのはずの味の素「クックドゥ」のフェース数が3と他社に比べて非常に少ない。

一方で、ブランド認知度の低い「日本食研」の中華簡便材料をゴンドラ下部で12フェースにもわたり展開している。価格も「クックドゥ」より10円安い。こちらも後発ブランドと提携して育成しようという狙いがうかがえよう。

原理原則に忠実にPBを育成する

コスモスのグロサリー売場といえばプライベートブランド(PB)のON365であるが、簡便調味料の棚では麻婆豆腐と回鍋肉、鶏ガラスープの3品を展開。ON365の麻婆豆腐は辛口と甘口の2種類で各128円。トップブランドの丸美屋の麻婆豆腐158円と比較して30円安い。プライスカードの価格表示は、ON365のものだけ赤い文字を使っていて、視認性が高い。

なおON365の麻婆豆腐を製造しているのは永谷園で、同社はこの簡便調理棚においてはほかに、チャーハンの素や麻婆春雨、チャプチェ、ガツンとスタミナ食堂など、飛び飛びではあるがシェアを高めている。麻婆豆腐は他小売業でも永谷園が製造しているPBが多く、自社ブランドの認知を高めるよりも、小売業と提携して各社のPBを製造することで、カテゴリーでのシェアを取りにいく戦略をとっているようだ。

ON365の「国産鶏がらスープ」はトップブランド味の素の商品の右隣りにフェース数を多く、低価格で展開をしている。これは左右の法則というチェーンストアの原理原則を適用した陳列だ。日本人は右利きが多いため、同じ棚に隣同士に並んでいる商品では、右側にある方が手に取りやすいため有利だ。

この法則を利用して、ショッパーが視認しやすいトップブランド商品の右隣に、これから育成するブランドもしくはPBを配置する。ブランド育成をする際にはよく使われる法則である。このことからも同社が原理原則に非常に忠実に売場づくりをしていることがよくわかる。

また簡便調味料と中華調味料が一緒に売られていたり、あまりほかでは見ない韓国料理の素材を多めに取り揃えているのも興味深い。

プライスカードに付いたキャッチコピーの秀逸さ

コスモスの簡便調味料の売場で際立っていたのが、プライスカードのほとんどに、キャッチコピーがついているという点だ。「〇分でできる」「フライパンだけでできる」「冷凍肉と組み合わせる」「キャベツと〇〇でできる」など。時間や素材、道具について、ポイントを簡潔な文章でまとめており、商品のメリットがわかりやすい。

続きは月刊マーチャンダイジング 2021年4月号でご覧ください。
(コスモス、ベルク、アオキ、ウエルシアのストコンレポートが掲載されています)