売場レイアウトの工夫で精肉の強さを打ち出すロピア

第1回 特別編ロピア、カワチ、トライアル、クリエイトSD…ストコンの穴場「千葉ニュータウン」を歩く

東京から電車で約1時間の千葉ニュータウン。国道沿いに大規模商業施設が林立していて、まるでアメリカ郊外の流通激戦区のようだ。なかでも北総線の千葉ニュータウン中央駅と印西牧の原駅の間は、イオン、カインズ、ジョイフル本田、コストコ、ヤオコー、マツモトキヨシ、ロピア、クリエイトエス・ディー、カワチ薬品、トライアル……などなど、あらゆる業態の大型チェーンストアがしのぎを削っている。(月刊マーチャンダイジング2018年11月号より転載)

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本誌は、なかでも一時テナントの撤退が続き「シャッター通りショッピングセンター(SC)」ともいわれたSC「ビッグホップガーデンモール印西」に注目した。テナントが続々離脱し、閑散としていた時期もあった同SCだが、2018年春にロピアの誘致に成功。その後クリエイト エス・ディ―、セリアと強力なテナントミックスを構築し、勢いを盛り返してきている。そこで、ロピアと周辺企業の店舗概要を紹介しながら、この地区の小売業の特徴を分析し、ロピアの強さの秘訣を分析する。また、ハンドソープカテゴリーの商品構成グラフの作成を通じ、カテゴリーの強さの比較方法についても学ぶ。

ロピア印西BIGHOP店

シャッター通りのSCを復活させた精肉特化型スーパー「ロピア」の求心力

PART1では千葉ニュータウン地区にある5店舗をピックアップして見どころを紹介する。注目は食品スーパーマーケット(SM)のロピアだ。1971年に神奈川県藤沢市精肉店からスタートした同社は、途中SMに業態転換し、精肉を中心とした強力なディスカウント戦略で急成長している。ロピア印西BIGHOPの店舗分析から同社の魅力に迫ってみよう。

精肉店からスタートし1都3県で出店を加速

神奈川県を地場とする食品スーパー(SM)のロピアが全国的に知られるきっかけとなったのは、2013年11月。千葉県船橋市の巨大ショッピングセンター「ららぽーとTOKYOBAY」の西館リニューアルに合わせ、核店舗として入店したことだった。

イオン最大の旗艦店舗である「イオンモール幕張新都心」への対抗策として、デベロッパーの三井不動産から誘致されたロピアは、高品質な精肉を圧倒的なボリュームと値段で提供し、オープン当初から大盛況。精肉以外の生鮮品や加工食品の中にも激安商品は多く、価格・品質の両面で満足度の高いSMとして、主婦層を中心に口コミで話題となり、その認知度は急速に広まった。

ロピアはもともと、精肉店を出自とする企業である。1971年、神奈川県藤沢市で肉の宝屋として創業した同社は、1970年代後半より精肉店をチェーン展開。1990年代後半からスーパーマーケット業態にも進出し、神奈川県から東京都、埼玉県、千葉県へと店舗を拡大していった。

現在、ロピアでは「ユータカラヤ」業態5店舗、「ロピア」業態37店舗を展開。そのうち出店を加速している千葉県内には、ららぽーとTOKYO-BAY店、美浜ニューポート店、ゆめまち習志野モール店、柏コジマ店、アクロスプラザ流山店、印西BIGHOP店の6店舗を構えている。

「ロピア印西B I G H O P 店」は、2018年4月にオープンしたばかりの新店である。同店が入店する「ビッグホップガーデンモール印西」(以下、ビッグホップ)は北総鉄道・印西牧の原駅から徒歩すぐの位置にあるショッピングセンター(SC)だ。

衣料品店をはじめ靴専門店、インテリア雑貨店、大型書店、スポーツ用品店などが入店。パソコン教室や学習塾、印西市市役所の出張所もあり、コミュニティセンターとしても機能する。同SCのランドマークである観覧車をはじめ、子供向けの遊具も揃っており、フードコートなどもあることから、子供連れの来店客が中心のSCとなっている。

ビッグホップがある北総鉄道および国道464号線沿いの印西・千葉ニュータウン地区は、ホームセンターの「ジョイフル本田千葉ニュータウン店」「カインズ千葉ニュータウン店」をはじめ、SCでは「ドン・キホーテ」が入店する「イオンモール千葉ニュータウン」や「ヤオコー」を核店舗とする「牧の原モア」、ディスカウント業態の「スーパーセンタートライアル 千葉ニュータウン店」、そのほか「コストコホールセール千葉ニュータウン店」など大型商業施設がひしめいており、周辺住民は車での買物に慣れている。

2007年にオープンしたビッグホップは開業当初、年間売上目標240億円、年間来場者目標600万人を見込んでいたが、翌年に開発・運営企業が経営破綻。たび重なる運営会社の変更に加えて、周辺地域の競合激化から客足が伸びず、地場の食品スーパーも数年前に撤退し、テナントの空きが目立っていた。

2018年春、SC内バリューモール地区の大規模リニューアルにより、「ロピア印西BIGHOP店」が新たな核店舗としてオープン。同店の両隣はドラッグストアのクリエイト・エス・ディーとコーヒー・輸入食材のカルディ、向かいには100円ショップのセリアと、集客力の高い店舗で構成されており、同SCの再活性化に懸ける意気込みが伝わってくる。

この読みは大当たりし、ロピアのオープン以降、まばらだったモールにはお客が戻り、休日には大型駐車場が混み合うまでに回復。新たなテナントも入り始め、平日の日中でもロピアやセリアのショッパーを持った子供連れの若い母親世代のお客を多く見掛けるようになった。

強みの肉類を前面に出した活気のある売場づくり

ロピアは精肉店出身ということもあって、その売場づくりは独特だ。店舗によってレイアウトは異なるが、「ロピア印西BIGHOP店」での生鮮売場は、食品スーパーのセオリーである〈青果~鮮魚~精肉〉の順ではなく、〈精肉~鮮魚~青果〉という、肉製品の魅力を最大限に打ち出した配置となっている。

主通路をたどっていくと、青果売場に続く店内最奥部は総菜コーナーとなっており、ロースカツや焼き豚、キャベツメンチカツといった肉総菜を中心に、弁当類やピザ、中華総菜などを売り込む。主通路内の要所には島陳列による特売品コーナーを設け、チラシ掲載商品やその日のおすすめを大量陳列する。

精肉をはじめとした生鮮売場のすぐ裏が酒売場になっている点もロピアの特徴だろう。とくに肉料理に合う値ごろ感のある赤ワインが主通路側に配置され、定番のビール類やRTD(レディ・トゥ・ドリンク/缶チューハイなど)はレジ側に配置されている。

また、加工食品売場の上部には汽車を走らせ、市場のような勢いのある筆文字風の天つりPOPや、チョークアート風イラストによる商品アイコンが、にぎわいのある楽しい買物空間を演出している。

「ロピア印西BIGHOP店」の周辺には、徒歩圏内に同じ食品スーパー業態の「ヤオコー牧の原モア店」や「カスミフードスクエア西の原店」、メガ・ドラッグストアの「カワチ薬品牧の原店」があり、車を走らせれば大型の商業施設がいくつもあることから競合も激しい。なかでもジョイフル本田内にある、ロピアと同じ精肉特化型スーパー「ジャパンミート生鮮館」と、アメリカ産牛肉を中心とした大容量パックが売りの「コストコ」は、「ロピア印西BIGHOP店」にとってベンチマークすべき店舗だ。

「ロピア印西BIGHOP店」の精肉売場では、上記2社との差別化を図るため、みなもと牛をはじめとした国産牛肉の品揃えに力を入れている。週末には5等級和牛のすき焼き用、焼き肉用盛り合わせをはじめ、ランプやイチボといった希少部位を詰め合わせたステーキの盛り合わせ、ローストビーフ用の塊肉、最上級のシャトーブリアンなどを手ごろな価格で提供。

また平台には国産豚やイベリコ豚、国産ハーブ鶏もも肉などのメガ盛りパックが価格訴求品として展開され、食べ盛りの子供がいるファミリー客に人気だ。自社製ウインナーや自社製薫煙ベーコンといったプライベートブランド(PB)もあり、休日には試食販売も積極的に行っている。

「ロピア印西BIGHOP店」は、もうひとつの集客の要として、直営のステーキ専門店「THE BIFTEKI」を運営している。注文は食券制で、メニューは「ビフテキスモール( SSIZE、約200g)」500円、「ビフテキミドル(M SIZE、約400g)」1,000円、「ザ・ビフテキ(BIG SIZE、約600g)」1,500円、「国産牛ステーキ(約300g)」1,980円のほか、サイドディッシュとしてライス、カレー、焼き野菜、サラダがある。ステーキは軽く火を通しスライスされた状態で提供され、ペレット(焼き石)で好みの焼き加減に調整できる。立食のカウンター席のほか、奥の休憩スペースでも食事ができ、ステーキ用のソースやドレッシング類も用意されている。

「THE BIFTEKI」は平日・休日問わず混雑していて、肉の焼けるいい香りがそのままスーパー部門の集客にもつながっており、いままでにない販売手法は一見の価値があるといえるだろう。

[店舗概要]

店舗所在地 千葉県印西市原1-2 BIG HOPガーデンモール印西1階
開店日 2018年4月
営業時間 10:00~20:00(THE BIFTEKIは11:00~14:30、16:30~19:00)

ジョイフル本田 千葉ニュータウン店

日用品の大容量サイズを豊富に品揃え

北総鉄道・印西牧の原駅から6.5㎞の位置にあるホームセンター「ジョイフル本田」の超大型店舗。通常のホームセンター業態のほか、プロユースの資材館、ガーデンセンター、生体販売やトリミングルーム、動物病院機能も持つペットワールドなどの別棟を構えている。

また、精肉の品揃えに定評のある「ジャパンミート生鮮館」をはじめ、シネコンの「USシネマ」、カジュアル衣料の「ユニクロ」や「ココス」「魚べい」といった飲食店もエリア内に出店。圧倒的な規模感と品揃えで、直線距離で約3.5㎞の競合である「カインズ千葉ニュータウン店」との差別化を図っている。

同店の最大の特徴はトイレットペーパーの18ロール入りをはじめ、ティッシュペーパー5個パック×3のセット商品や洗剤の大容量パックなど日用雑貨品の大容量サイズの豊富な品揃えにある。とくにP&G社の品揃えに強く、「アリエール3Dジェルボール」「レノア」などがメインエントランス正面にタワー状に積まれ、存在感を放っている。

また洗剤やシャンプーの定番売場では、専用棚にテスターが置かれており、好みの香りを確認できるようになっている。

ハンドソープの品揃えは51SKUで、こちらも洗剤類やシャンプー同様、大容量品が多い。ホームセンター内にはドラッグストアコーナーもあるが、必要最低限の品揃えにとどめている。

[店舗概要]

店舗所在地 千葉県印西市牧の原2-1
開店日 2002年12月
営業時間 9:00~19:30(※資材館のみ 7:00から営業)
駐車場 3,290台

スーパーセンタートライアル 千葉ニュータウン店

絞り込んだ品揃えで低価格訴求

北総鉄道・千葉ニュータウン中央駅から0.5kmの位置にあるディスカウントストア「トライアル」の24時間営業店舗。元家電量販店の居抜き出店らしく、1階をすべて駐車場に、2階を売場に充てている。

線路を挟んで向かい側にはSCの「イオンモール千葉ニュータウン」があり、同SC内にはディスカウントストア業態である「ドン・キホーテ千葉ニュータウン店」が入店。また、低価格帯の食品に強い「ベイシア千葉ニュータウン店」が直線距離で約1.5㎞、「ロピア印西BIGHOP店」までは約6.0㎞、ジョイフル本田内の「ジャパンミート生鮮館」が約4.5m、「コストコホールセール千葉ニュータウン店」が約2.4㎞と、食品分野での競合は激しい。

フロアは食品売場と日用雑貨売場に大きく分かれる。食品、日用雑貨品ともに低価格を実現しているが、食品売場の定番棚と日用雑貨売場の定番棚が平行に並んでいないため、棚の高さも相まって全体の見通しはよくない。

ハンドソープの品揃えは28SKUと絞り込んだ。「キレイキレイ」と「ビオレ」の2大ブランドとともに、安価なローカルブランドの薬用ハンドソープの詰め替え用を、中通路側エンドでもフェースを取って展開している。日用雑貨品売場の最奥部にドラッグストアコーナーが併設されているが、こちらは24時間営業ではなく9時から20時までの営業となっている。

[店舗概要]

店舗所在地 千葉県印西市武西学園台1-1358-1
開店日 2007年12月
営業時間 24時間(※サービスカウンター 9:00~22:00、カー用品・家電9:00~22:00、 ドラッグストア 9:00~20:00)

クリエイトエス・ディー BIGHOPガーデンモール印西店

若年層ターゲットにビューティ強化

北総鉄道・印西牧の原駅から徒歩1分の位置にある巨大ショッピングセンター「ビッグホップガーデンモール印西」のバリューモール地区1階にある小型店舗。同SCの新たな核店舗となった「ロピア印西BIGHOP店」のオープンと同時期に入った新店であり、SCの再活性化に一役買っている。

線路を挟んで向かい側のショッピングセンター・モア内に「マツモトキヨシ 牧の原モア店」、道路を挟んだ向かい側には「カワチ薬品 牧の原店」があるが、競合として意識している様子は見られない。

また「ビッグホップガーデンモール印西」内には医薬品や日用品を扱う店舗がないため、ロピアや100円ショップのセリアなどに来たお客が、気軽に立ち寄れるコンパクトな店づくりとなっている。

クリエイトエス・ディーの大型店では医薬品や日用品のほか、食品や酒類でも幅広い品揃えが見られるが、隣接店舗が食品スーパーということもあり、一部健康食品などを除き食品はほとんど扱っていない。

同SCのメインターゲットである若年層や子供連れの母親世代を意識し、シャンプーなどのヘアケアやプチプラコスメといったビューティを強化している。ハンドソープの品揃えは42SKU。「キレイキレイ」「ビオレ」「ミューズ」のほか、500mℓクラウディア・ジャンセン「薬用ハンドソープ」を価格訴求品として展開する。

[店舗概要]

店舗所在地 千葉県印西市原1-2 BIG HOPガーデンモール印西1階
開店日 2018年4月
営業時間 10:00~20:00

カワチ薬品 牧の原店

安さと豊富な品揃えで集客 調剤も併設

北総鉄道・印西牧の原駅から約1.0㎞の位置にあるメガ・ドラッグストア「カワチ薬品」の大型路面店舗。同じロードサイドにはカジュアル衣料の「ファッション市場サンキ 千葉ニュータウン店」、スポーツ用品の「スポーツデポ千葉ニュータウン店」の大型店舗が並び、線路を挟んだ対向の「ジョイフル本田」とは別の存在感を放っている。

同じドラッグストア業態では線路を挟んで向かい側のショッピングセンター・モア内に「マツモトキヨシ 牧の原モア店」があるが、カワチ薬品は大型店舗ということもあり、それほど影響を受けていない。しかし「ビッグホップガーデンモール印西」内に、今年4月オープンした食品スーパー「ロピア印西BIGHOP店」は、食品のEDLP(エブリデーロープライス)を重視する同店に大きな影響を及ぼしているようだ。

とはいえ、本業であるドラッグストアの機能として同店は調剤薬局を併設しており、固定客もついている。医薬品や日用品の品揃えは新たな競合である「クリエイトエス・ディー BIGHOPガーデンモール印西店」よりも豊富で、食品や菓子類、飲料など幅広い品揃えを持つから、安さに加えて買物を一ヵ所で済ませたい客層にとっては使い勝手がよい店といえるだろう。

ハンドソープの品揃えは、82SKUと4店の中ではもっとも豊富。ハンドソープコーナーの脇にウイルス対策として「クレベリン」「手ピカジェル」なども展開している。

[店舗概要]

店舗所在地 千葉県印西市西の原1-1-1
開店日 2004年4月
営業時間 9:00~20:00