広域で見ると潤沢な商圏人口
店舗のある千葉県船橋市の人口は約63万人、南は習志野市(人口は約17万人)、東は八千代市(同20万人)、北は鎌ケ谷市(同11万人)と接しており、動線などを配慮して、どこまでを商圏と捉えるかだが、広域で20万〜30万人は想定できる潤沢な商圏人口を持つ。周囲には各種業態取り混ぜてチェーン企業の店舗が多い(図表1)。
一方で、店舗周辺は自衛隊の駐屯地と多数の工場があり住宅が少ないことから、日用品や食品など生活必需品の購入者が住む商圏、いわゆる一次商圏の人口は少ない。
「一次商圏の人口が少ないのですが、食品スーパー(SM)が多数あることから、生活必需品を主力とする業態が成り立っていることがわかります。当店も食品、消耗品で一次商圏を取り切って、18時以降、車でご来店のお客さまニーズを取るという商圏の考え方で店を構えています」(New MEGAドン・キホーテ東日本営業本部第2支社支社長佐々木雅法氏)
こうした立地条件から、消耗品、食品をベースに、広域商圏を対象にしたドン・キホーテが得意とする非食品をいかに販売するかが実績を挙げるカギになる。
収益性の高い非食品は日々の買物の中で記憶に残す
船橋習志野店はスポーツ用品店を居抜きで改装してオープン、建物の構造上生鮮食品を扱うバックヤードのスペースがなく、あえて生鮮のための投資をせず、食品部門は主食も賄える日配、冷凍から、調味料、菓子などの加工食品、酒などで構成している。
食品と並んで集客の柱である消耗品は、パーソナルケア(ヘアケア、ボディケアなど)、ホームケア(衣料用、住居用、台所用など)を中心に低価格で販売。
ドン・キホーテは自社のフォーマットを図表2のように分類しており、船橋習志野店が属するNew MEGAドン・キホーテは生鮮食品を抑え衣料を強化していることが特色だ。
同店では衣料品の中でもとくにスポーツ衣料に重点を置き、通常の店舗よりはビジネス、カジュアル衣料を抑えめに品揃えしている。個店の商圏事情に合わせ細かに品揃え、売場レイアウトをカスタマイズできることも同社の強みである。
スポーツ関連商品以外にも、化粧品、インテリア、家電などで、同社が信条とする「ワクワク・ドキドキ」を感じられる商品が充実。人口潤沢な広域商圏からの集客を見据えた店づくりをしている。
「入り口を入って時計回りに進んで、非食品の売場を見ていただき、最後の方に消耗品、食品があるという売場レイアウトにしています。非食品は今日買っていただかなくてもよい、何回も来ていただき、あそこにあの商品があったと記憶に残してもらえればいいのです」
食品、消耗品で集客し、何回も来店するなかで、ドンキお得意の「面白商品」「お買い得商品」(非食品)をお客の記憶に残し、最終的には購買につなげる。こうした意図が明確になった売場レイアウトである。
与えられた権限をいかに活用するかが重要
取材に対応していただいた佐々木氏はドン・キホーテに新卒採用で入社、勤続23年のベテランである。同社内でいかに小売業従事者としての腕を磨いてきたかを聞いた。
「当社は実力主義、成果主義の側面が大きいです。会社が社員に権限を委譲するので与えられた権限をどう活用するかはいつも考えなくてはいけません。
売場も担当するし、商品の仕入れも担当します。多くの仕事を経験し、いかに自分の与えられた権限をさらに、部下に渡し、みんなが自分の裁量を生かして、うまく店を回すか、それを考えて仕事をしてきました。
一番人数が多く店を支えてくれるのはメイトさん(アルバイト従業員)です。経験を積めばメイトさんにも権限を渡して仕入れから売場づくりまで担当してもらいます。彼女たち、彼らがいかに楽しんで仕事をし、地域の情報を持ってきてくれるか、そこが重要だとおもいます」
いくつもの強みのある同社だが、大原孝治社長は「企業価値は社員の知恵の総量」だと語っており、働く者個々人の知恵を上げる仕組みこそ、最大の強みではないか。