楽しく、感動を目指し突出した人気を誇る
TBSラジオの番組内企画「スーパー総選挙」で2019年、オーケー、ライフ、ヤオコーに次いで第4位に入ったのが今回紹介する株式会社ロピア(高木勇輔社長)である。上位3社のオーケー(123店/2020年3月末)、ライフ(275店/2020年4月末)、ヤオコー(178店/2020年3月末)が100店以上の店舗網を有するのに対し、ロピアの店舗数は56店舗(2020年12月)と半分以下。この店舗数で上位に匹敵するポイントを稼ぐのだから、その人気の高さは突出している(ちなみに得票は3位・ヤオコーが658票に対し、ロピアは591票と拮抗)。
ロピアの創業は1971年、精肉専門店「肉の宝屋」として神奈川県で誕生した。その後、1996年には社名を「ユータカラヤ」に変更し、その後「新鮮大売ユータカラヤ」を出店、さらに新業態の「ロピア」を開店し、2011年には社名を「ロピア」に再変更している。2012年には大型SC、ららぽーとTOKYO-BAY(千葉県船橋市)にテナント出店し大成功、ここから快進撃が始まる。
店舗網は神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県の関東と、2020年9月から出店開始し現地で大反響を起こした大阪府、兵庫県の3店舗を加え、2020年12月現在で56店舗で、年商は1,595億円(2020年2月期)である。
ロピアの企業名、店舗名は「ロープライスのユートピア」の略。「食生活♥♥(ラブラブ)ロピア」をモットーに、「ユートピア=楽しく感動していつも行きたいところ」を目指すとしている(同社HPより)。
ではその「楽しく感動」は、どのような背景で生まれているのか。ストコンで探ってみよう。
部位のバラエティとボリューム 「2つの驚き」の牛肉が強み
今回視察したのは、西武池袋線の小手指(こてさし)駅から約1km離れた島忠・ホームズ所沢店にテナント出店した店舗である。小手指駅前にはセブン&アイ系のSM、ヨークフーズと西友の大型店があり、競争状況は厳しいエリアだ。
2016年に開店したホームズ所沢店は2019年10月に売場を約2倍に拡大してリニューアルオープン、商業施設の面積は4,242坪だ。この間、島忠へのテナント出店が相次いでいるロピアは、駅から少し離れた国道沿いのこの商業施設への集客力の中核を担っている。
ロピアの人気の秘密は、精肉専門店出身ということからの「肉の強み」にほかならない。売場は野菜・果物、鮮魚、精肉と続き、肉売場は奥の壁面沿いにスペースを確保されている。食品中心のSMで、肉は大変重要な商材である。たとえば、総務省の家計調査の消費支出(全国・2人以上世帯)で見ると、この重要さがよくわかる(図表1)。
生鮮食品の中で1ヵ月の購買頻度(100世帯当り)がもっとも多いのが生鮮野菜の3,839回(1世帯当り38.3回とほぼ毎日)。これは野菜が肉料理、魚料理いずれにも使用される「共通食材」である点から当然だ。次に高いのが生鮮肉で、生鮮肉は購入頻度が月間1,232回で、うち豚肉586回、鶏肉347回、加えて加工肉(ハム・ソーセージ)の459回と肉関連では高い。生鮮魚介(生の丸魚、切り身、貝類)は月の購入が717回で、生鮮肉+加工肉の半分以下の購買頻度でしかない。
金額でいうと生鮮肉は生鮮魚介の約2倍の6,447円で、加工肉を加えると8,000円近い。とくに牛肉は月190回(1世帯当り2回以下)でしかないのに、支出金額は1,771円と額が大きく、「ごちそう」であることがわかる。
このように食品SMにおいて野菜と肉が購買頻度、購入金額のいずれにおいても重要なのである(ちなみにDgSで扱う石けん類・化粧品などボディ関連が3.7回・4,010円、ラップ、柔軟剤など家事用消耗品が8.0回・1,953円となっている)。
とくにロピアの精肉売場の人気の理由は「牛肉の強み」にある。
ロピアは店ごとの品揃えや売価は、それぞれの店の各部門の責任者であるチーフが決める。たとえば所沢店の場合、平日は交雑(こうざつ)種(乳用牛であるホルスタイン種の雌牛と黒毛和牛の雄牛を掛け合わせた比較的安価な国産牛)と輸入牛を中心に販売している。
交雑種は「みなもと牛」という4等級(肉質は上から2番目のランク)を扱うが、精肉専門店出身ということで丸ごと一頭買いで仕入れ、自社加工ができ多彩な部位と、低価格が両立できている(通常のSMは「パーツ」という精肉メーカーが部位ごとに加工しパックして、納品する形態が多いため、人気部位を自由に買うことは容易でない)。焼き肉などでおいしい希少部位の「みすじ」なども100g500円前後で販売している(調査は2020年12月初旬)。
輸入牛はアメリカ産のアンガス種の熟成肉を販売。たとえば「アンガス牛・牛肩ロースステーキ肉」は100g189円と「豚肉以下」価格。大きさは25cm超で厚さは1.5cm程度。1枚361gで682円(税抜き)なので食べ盛りの子供は大喜びだ。ロピアの牛肉は自社加工なので、焼き肉店ぐらいでしか食べられないような珍しい部位も選べるし、値ごろ価格で提供できる。輸入牛なども100g単価が安いので思い切って厚く、大きくカットして販売できる。
購買頻度は低いが、金額は高くなる「ごちそう」の牛肉を、部位のバラエティと、見た目のボリュームの「2つの驚き」で販売する、これがロピアの牛肉の強みだ。2020年12月8日〜14日のチラシでも生鮮のトップは牛肉。週半ばの火曜日の98円、水曜日の198円から、週末の398円、498円へと部位をランクアップさせてごちそう感を醸成、土日は低価格の牛肉も交えて、こだわりと安さの両面作戦を採用する。
「大容量」「バンドル販売」で安さと驚きのイメージを訴求する売場
ロピアは青果、鮮魚、精肉、総菜などの店舗の各部門を事業部という形態で分離、独立させている。既述したが仕入れ、品揃え、売価も各店・各部門のチーフが決定し、各店舗の各部門が独立した運営を行っている。
各部門には個人商店のように屋号が付けられており、たとえば「肉のロピア」「八百物屋 あづま」「日本橋魚萬」「Meat Deli 肉の十八番」などの看板が店内に掲げられている。
ロピアの売り方の特徴は、同一商品を2個、3個とまとめて売るバンドル販売(束売り)である。自社製造の加工肉に関してもバンドルを多用しており…。