MFCとはマイクロ・フルフィルメント・センター(Micro-Fulfilment Center)の略語である。ネットスーパーなど、店舗から商品を出荷する業務が増えたことで、普及が進み、注目が集まっている物流システムだ。
「フルフィルメント・センター」とは、ECや通信販売において、商品の受注から決済、梱包発送という一連のプロセスを行なう施設である。EC事業ではたくさんのアイテムの在庫を抱え、その発送・梱包に膨大な労力を必要とする。在庫管理もかなり煩雑となる。
それを代行するのが「フルフィルメント・サービス」であり、フルフィルメントサービスを行うのが「フルフィルメント・センター」だ。有名なのは、Amazonがその出品者に対して提供する、在庫保管から発送までを代行するフルフィルメントサービスだろう。
店舗に併設される物流倉庫
今回紹介する「MFC」は小型のフルフィルメント・センターである。一般的な物流倉庫は都市部から離れた郊外に設置されることが多いが、MFCは食品スーパーなどの店舗内または敷地内に併設される。
米国では今後ますます増えるであろうオンライン注文とスピード配送に対応するために、店舗へのMFC導入の動きが加速している。
ピッキングを自動化
MFCが登場するまでは、ネットスーパーでは、お客から注文が入ると、従業員が店舗内を歩き回り、顧客のオーダーに合わせて商品を一つ一つピッキングするのが一般的だった。しかし店舗の配置は通常の買物に最適化されているため、ピッキングの効率は悪く、間違いも起こりやすい。
MFCは店舗の一角に小さな商品在庫と出荷の機能を備えた場所を構築する。自動化が進んだソリューションでは、ロボットが、専用コンテナに格納された商品をピッキングするというものもある。人間が商品をピッキングするより、はるかに効率的だと言えるだろう。
MFCとCFCの違い
MFCに対抗するのが、CFCである。CFCとはセントライズド・フルフィルメント・センター(Centralized Fulfilment Center)の略だ。MFCが各店舗に設置されていて、付近の住民の注文に対応するのに対し、CFCは大型の倉庫で広域の住民からの大量の注文をさばく。
MFCとCFCは、どちらも物流倉庫であるが、異なる点がいくつかある。
規模と工期が異なる
まず全く異なるのは倉庫の規模である。MFCはスーパーなどの店舗に併設されるため、広くても数百坪レベルであることが多い。一方のCFCは狭くても8,000坪レベルだ。
当然、工事に着手してから完成するまでの工期にも違いがある。MFCは設置まで数ヶ月あれば完了するのに対して、CFCは着工から2~3年は必要だ。工事に掛かる費用についても、大きな差があることは想像に難くないだろう。
設置場所が異なる
MFCとCFCでは、設置場所にも違いがある。
CFCは大規模な施設なので、都市部への設置が難しい。CFCの多くは郊外に設置されるため、都市部へのスピード配送ができないという弱点がある。
一方のMFCはスーパーなどの店舗内に併設されるので、都市部への設置が可能だ。CFCの弱点であるスピード配送が可能となることもあり、注目されている。
MFCとダークストアの違い
MFCと同様に注目されているのが、ダークストアだ。
ダークストアとは、顧客を入れずにオンライン注文にだけ特化したリアル店舗のことである。MFCとダークストアの違いを確認していこう。
MFCは初期投資が少なく設置できる
MFCとダークストアは共に、オンライン注文に対応するシステムだ。商品をピッキングし、顧客へ配送するか、顧客が直接受け取りにくるという点は共通している。
リアル店舗で運営するダークストアと比較すると、店舗内に後からでも設置できるMFCは、初期投資が低く設置可能という点がメリットだと言えるだろう。
MFCを導入した具体例
MFCを導入すれば、オンライン注文にかかる人的工数を画期的に削減することが可能だ。実際に従来の通常店舗とMFCを導入している店舗で、商品ピッキングにかかる時間がどうなったかを検討してみよう。
MFCが導入されていない店舗では、オンライン注文を受けたスタッフが店舗内にある在庫をピッキングしている。店舗には似たような商品も多いため、誤ってピッキングしないように細心の注意を払っての対応が必須だ。10品目ピックアップするのに、10分以上の時間を要することもあるだろう。
自動化されたMFCを導入した店舗では、ロボットが自動的に専用コンテナから商品をピックアップする。専用コンテナと商品が紐づいているため、誤ってピッキングすることは極めて少ない。梱包を担当するスタッフが最終確認するため、ダブルチェック機能も働くのが特徴だ。10品目をわずか1分程度でピッキングできるようになった。
このようにMFCを導入することで、オンライン注文に対応する能力が劇的に向上する。食料品はより新鮮な状態で、顧客に商品提供することが可能となるだろう。
海外・日本のMFC事例
海外の食品スーパーなどでは一部MFCを導入する企業が増えてきている。アメリカの大手流通業ウォルマート、アルバートソンズ、アホールドなどはMFCの実験を行っているという。一方アメリカ最大級のスーパーマーケットチェーン「クローガー」は、CFCの導入を進めている。
日本でMFCを導入した具体例といえば、三重県鈴鹿市に本社を置く食品スーパーマーケット(SM)スーパーサンシのネットスーパーがあげられる。
同社はネットスーパーからの受注を、バックヤードに設置された「宅配デポ」でピッキングして対応する。この方法で、年商50億円のうち、10億円の売上を稼ぐ。
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なお、日本ではイオンがイギリスのスーパーマーケットチェーンオカドと提携して、千葉市誉田にCFCを建設中だ。次世代型ネットスーパーを2023年開業に向け準備している。(出典:イオンプレスリリース)
まとめ|MFCは国内で普及する可能性がある
米国で広がりを見せているMFCは、近い将来国内でも普及する可能性がある。新型コロナウイルス感染症の影響は、今後も続くと考えられ、食料品などを扱う小売業もオンライン化が進むのは間違いない。
MFCが普及すると、スマホで注文した商品が、1時間後には自宅に届くということが当たり前になるかもしれない。MFCが小売業における物流革命の主役となる可能性は大いにあるだろう。