商品の売価を決定すること。
プライシングともいう。
仕入原価に利益を積み上げて決定するのではなくて、あくまでもその商品の「値ごろ」をベースに決定することが重要である。「値付け」は商人にとって、もっとも重要な技術のひとつである。
「一括値付け」はその点で望ましくない。一括値付けの場合、単純に原価に、一定のマージンを載せるため、売価の種類が増えてしまい、選びづらくなるからである。「この商品をいくらの売価に値付けするか」を決定するプライシングは商売の原点であり、商人としてもっとも感度を磨かなければならない技術でもある。
それなのに、多くの小売企業の値付けは根拠が不明瞭であり、適正売価を科学的に検証していない。適当な価格の付けっぱなしである。
プライシングの見直しのポイントは、以下の3点である。
第1は、「この商品はいくらの売価で値付けすることがもっとも経済的か?」という適正売価を、店頭実験によるPDCAを繰り返すことで、一品一品、常に見直し続けることである。とくに「価格の爆発点」(もっとも販売数量が跳ね上がる売価)を発見し、無駄な値下げをなくすことは、非常に重要な粗利対策である。
下の図表は、ある食品の価格弾力性を店頭で調査した結果である。
売価338円のときの仕入原価253円が、売価を下げても変わらないと仮定すると、売価を298円に下げて粗利益率が15%になっても、販売数量が240個に跳ね上がったため、1万800円の粗利高を稼ぐことができた。ところが、売価を268円に下げると、おもったほど販売数量は増えず、粗利率の低下を吸収できず、粗利高は3,975円にとどまった。
この結果からわかることは、経済合理性のもっとも高い価格の爆発点は298円であり、268円の値付けは無駄な値下げである。この「無駄な値下げ」による粗利の損失は非常に多い。一品一品見直すべきである。