ドコモとサイバーの合弁でPrism Partner設立
dポイントの会員基盤を使ったデジタル販促サービスを開始した「Prism Partner(プリズムパートナー)」(棚澤康之・社長)は2022年6月30日、NTTドコモとサイバーエージェントとのジョイントベンチャーとして設立された。
ドコモが持つ約9,500万人の会員データと、サイバーエージェントのデジタル広告のノウハウという2つのアセット(資産)を活用した新しい広告商品を開発・提供することを目的としてつくられた会社である。
今年の3月から「Prism Partner DSP」という名称の広告配信システムの運用を開始している。デジタル販促とデジタル広告が主要なサービス。デジタル販促に関しては、dポイントの会員基盤の顧客データを活用し、オンラインとオフラインを横断して実施できるデジタル販促サービスを提供する。
たとえば、あるシャンプーを購入したら、dポイントでポイントバックするといったデジタル販促に取り組む(図表1)。
約9,500万人の会員数と圧倒的なdポイント利用率
デジタル販促キャンペーンで重要なことの第1は、ポイントインセンティブの恩恵を受けられる会員数が多いことである。dポイントの会員データは、現在は約9,500万人の会員数に達している(図表2)。楽天ポイント、LINEポイントに匹敵する国内最大級のポイント経済圏である。
dポイントの会員データは、ドコモの回線を利用したユーザーの契約情報、dメニューの閲覧履歴、ドコモユーザーの位置情報、WiFiの接触情報、アンケートデータ、アプリの利用ログ、dポイントの利用履歴、d払いの決済データなどを保有している(図表2)。
デジタル販促キャンペーンで重要なことの第2は、「配信メディア」の種類の多さである。フェイスブック、インスタグラムなどの一般的なSNSだけでなく、dポイント、d払いの固定客がいるオウンドメディアに配信するので、不特定多数の通常のキャンペーンよりも投資対効果が高いことが特徴である。
単発のキャンペーンから継続型のキャンペーンへ
dポイントの会員データを活用したデジタル販促の最大の特徴は、キャンペーンに参加しそうな顧客のターゲティングができることである。
「dポイント販促は、不特定多数にばらまく販促ではなくて、キャンペーンに参加しやすい顧客ターゲットを絞ることができます。ターゲティングができるキャンペーンの配信システムは他にないので、より効率的なデジタル販促が実現できると思います」(Prism Partner棚澤康之・社長)。
Prism Partnerは、膨大なdポイントの会員データを活用して、広告を使った認知から、実際の購買、さらにはリピート、ファン化するCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)までの一気通貫のマーケティングを行うことができる。
また、ほとんどのポイントバック販促は「1回完結」であるが、顧客データ(キャンペーン参加者データ)が蓄積されることもdポイント販促の大きな特徴である。蓄積型で何回もキャンペーンを実施すると購買データが蓄積される。そのデータを利活用できるので、デジタル販促投資の効率化が実現できる。
たとえば、キャンペーン終了後に、キャンペーンに参加した顧客にリピートを促す施策が打てる。また、キャンペーンに参加していない潜在顧客に対してアプローチできる。さらに、ID-POSと連携している一部の小売業とは、キャンペーン参加者以外のデータも分析できるので、新規に近いユーザーに対してアプローチができる。
いずれにしても無駄打ちが少なくて、より効果的な1to1マーケティングが実現できる。蓄積されるデータは、キャンペーンへの参加実績、決済データ、さらには位置データを活用した顧客の行動データも蓄積できる。蓄積された購買データを活用したマーケティングへの利活用は、他のポイントバックキャンペーンにはない大きな特徴である。
「メーカーさんにとってのメリットは4つです。第1は、ポイントのインセンティブの経済圏の規模が大きいことです。第2は、小売店でのポイントの利用率の高さです。第3は、配信メディアの種類の多さです。dポイントは、この3点に関して非常に優れていると思います」(Prism Partner 高倉 将平・営業部長)。
第4は「効率化」である。デジタル販促の打ちっぱなしではなくて、本来のデジタル広告のようにPDCAサイクルを短期間で回して運用できることが重要であると高倉氏は強調する。
キャンペーン単位で検証するのではなくて、リアルタイム、デイリー、ウイークリー単位で実績を見ながら効果を見て、配信広告のクリエイティブ(配信内容)を差し替えるなど、キャンペーン(CP)の投資対効果を最大限に高めるように運用できる(図表3)。
また、キャンペーン終了後の継続的なCRM施策によって、顧客の固定客化と新規客の開拓を進められることは、単発のポイントバックキャンペーンとの大きな違いである。データを蓄積し、CRM施策を継続することができるわけだ。
さらに、dポイント販促の効果を最大化するためには、小売業のIDPOSデータとドコモのデータを常時接続し、dポイントのさまざまなデータと小売業のID-POSを連動させることが重要である。ドコモのデータとID-POSを連携させると、今回のキャンペーンによって今まで自店を利用したことがなかった新規客を何人獲得できたかどうかがわかる。これは、小売業にとっては大きなメリットになると思う。
また、メーカーにとっても、今まで自社ブランドを購入していなかった「新規客を取りたい」「離反している人に試してもらいたい」というブランドマーケティングに運用できることも、単発のキャンペーンとの大きな違いである。
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お問い合わせメールアドレス:contact@prismpartner.co.jp
〈取材協力〉