素材を踏み込んで伝えることがメーカーの「誠意」
「無添加 白いせっけん」は、精製度の高い食品用天然油脂を使用し、本釜焚で製造している同社こだわりの主力商品だ。その人気商品を今回リニューアルした背景には2点あると、ミヨシ石鹸取締役営業本部長の中野浩之さんは言う。
1つが「全成分表示」だ。
「これまでは薬事法に従い、パッケージに記載する原材料について『せっけん素地と水』という表示をしていました。それを今回のリニューアルから脂肪酸レベルまで分解して表示することにしたのです」(中野さん)
新商品のパッケージには「牛脂脂肪酸Na、パーム核脂肪酸Na、水、グリセリン、塩化Na」と記載されている。これはPCPC(The Personal Care Products Council)の定めたINCI(国際的表示名称)に準ずる形式だ。
「食品業界を中心に、本当の無添加とは何か?ということが議論になっています。無添加という言葉には、いまのところ規制がない状態です。メーカーが名乗ろうと思えば『香料無添加』『防腐剤無添加』のようにいくらでも名乗ることができます。弊社はそうではなくて、本当の無添加とは何かということを提示しようとしています。これまでは水とせっけん素地からできているとお伝えしていたものを、さらに踏み込んでお客様にお伝えすることが我々の誠意ではないかと考えました」(中野さん)
ミヨシ石鹸は、この「白いせっけん」を皮切りに、ビューティーケアの商品を全成分表示に切り替える予定だという。
脱酸素フィルム採用でさらに環境にやさしく、新鮮に
今回のリニューアルのもう一つの理由が「パッケージの変更」である。
石鹸は空気に触れると変色することがあり、同社の既存商品は個包装のひとつひとつに脱酸素剤を封入していた。しかしこれは最終的にはゴミになってしまう。
「パッケージを開けるときまでつくりたてが続く、というコンセプトでこれまで脱酸素剤を封入していました。しかし、これも小さなことですが、ゴミとして処理しなければならないため、今回三菱化学さんと共同で脱酸素フィルムを開発しました。個包装に脱酸素剤を練りこみ、それ自体が脱酸素剤の代わりとなります。一般には食品・菓子に利用されているもので、日用品では弊社製品以外採用の予定はないそうです」(中野さん)
フィルムへの印刷も環境に配慮したバイオマスインキを採用している。少し灰色がかった個包装は、あえてフィルムの素材の色をそのままにしたもの。このフィルムは酸化すると変色するが、もし変色したのであれば、それはきちんとフィルムが酸素を吸っている証拠と言える。
全体のパッケージもリニューアルを行った。通常3個入りの石鹸は、石鹸を平たく並べるため、寝かせた状態でしか店頭に陳列できない。今回はそれをサンドイッチのように3つ積み重ねた形状にした。
「きちんとお客様の方を向いた商品にしたいと考え、この形を選びました。実はこのパッケージの上部を止めるのは手作業でかなりのコストがかかるのですが、すべてにおいて人にやさしく、環境にやさしくするためにはどのようにすればいいのかを考えながら商品を設計しています」(中野さん)
もちろん製品の品質自体もパワーアップしている。原料の一つである牛脂成分のグレードを上げ、硬化牛脂にしたことで、これまでより泡もちよく、とけ崩れしにくくなった。
「使っているうちに乾燥してひび割れしてしまう石鹸は少なくありませんが、この白いせっけんは、最後までしっかりと使い切ることができます。継続して使っていただいているお客様には、使い心地の改善点を、はじめての方には、あらためて固形せっけんのよさを感じてもらえるはずです」(同社広報 櫻井利枝さん)
いたるところにこだわりが詰め込まれた「ミヨシの白いせっけん」。本当の意味での「無添加」とは何かを問いかけてくる商品だ。