BtoB営業、肝となるのは「逆算思考」!?

ミヨシ石鹸がSalesforce導入で目指す新しい営業像とは?

2019年5月16日、WeWorkなんばにて「WeWork×Salesforceで持たない経営を志向するミヨシ石鹸のリアルボイスと共に」と題したイベントが開催された。新しい時代のBtoB営業のありかたについて、セールスフォース・ドットコムの敏腕営業マンとミヨシ石鹸の営業部長が取組を発表。WeWorkの洗練されながらもアットホームな雰囲気のなかで語られた本イベントの概要をレポートする。

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国内CRMツールのリーディングカンパニー、トップ営業の仕事術

本イベントでは、まず、株式会社セールスフォース・ドットコム 関西支社 第7営業部部長の西澤宗さんが「セールスフォース・ドットコム敏腕営業が語る、成果に結びつく営業のコツ」と題して、同社の営業手法について語った。

西澤さんは、2017年にセールスフォース・ドットコムへフィールドセールス(営業)として入社。最短・最年少で部長へ就任し、現在は関西支社においてフィールドセールスのマネージャとして多くのお客への提案活動に取り組んでいる。

Salesforceはクラウド上で提供されているCRM(カスタマーリレーションマネジメント、顧客関係管理)ツールだ。単なるCRMではなく、中心に顧客のデータベースを置きながら、営業支援、カスタマーサービス効率化、マーケティング効率化などさまざまなソリューションを提供しているというのが特徴だ。

多くの中小企業は、顧客管理、マーケティングのためのメール配信、顧客管理、ユーザーサポートなど、業務ごとに異なるシステムを使っているため、経営の見える化が進まず、生産性が下がっているという課題を抱えている。しかし、Salesforceを活用すれば、一元的に顧客情報を管理し、業務を効率化することができるのだという。

逆算思考で月何案件対応するかを設定する

そのセールスフォース・ドットコムでトップ営業マンとして活躍する西澤さんは営業の際に「プランニング」「マインド」を意識しているという。

まずプランニングでは、目標を掲げ、どうそれを達成するかの計画をたてることが重要です。中でも重要なのは『逆算思考』。目の前の案件をとにかくこなすのではなく、目標の数字から逆算して、どう達成するかを考えています」(西澤さん)

西澤さんの方法論はこうだ。営業案件は、「新規」と「既存」の2つに分かれるので、まず新規と既存の受注金額の目標を設定。さらに「新規」と「既存」の受注金額の平均から、では何件の商談をクローズ(=受注)すればよいのかを算出する。そしてその受注数を獲得するためは、どれだけの商談を行えばいいのかを確定する。この数字を月次でレビューし、年間計画を立てる。計画通りにいかないときには、プランを立て直し、その月に何件案件をつくるかを目標にすることで「確実に勝てる戦い」をする。

「既存と新規、受注金額の大小、どちらにも依存せず、確率論で勝てる戦い方をするべきです」(西澤さん)

次に、お客様と接するときにどう考えるか「マインド」についても西澤さんは言及。「勝てない商談」を見極め、リソースをかけるべきところに集中するのが重要であるという。

ではいったいリソースをかけるべきところとそうでないところをどう優先順位づけるべきなのか?西澤さんは「提案価値」と「推進力」で判断することを薦める。

自分の提案がお客にとって価値があるのかどうかを「提案価値」と呼ぶ。企業経営において重要なのは、いかにして継続的に利益を上げ続けるかだが、これは「売上を上げる」「コストを下げる」「原価を下げる」ことに因数分解することができる。たとえば日報をシステムに登録して営業活動を管理することをお客に提案したとき、それが最終的に「売上」「コスト」「原価」のどこにつながるのか。そこの部分まで提案するのだ。

そして担当者に推進力があるかどうかを見極めたうえで商談に臨む。BtoB営業は、推進力のあるキーマンに接触しなければ受注にはつながりにくい。ここが担保できない場合、商談としての優先順位を引き下げると西澤さんは言う。経営目線で我々の提案にどのようなインパクトがあるのかを訴求することで、最終的には担当者の株をあげるような提案を心がけているという。

このほか、西澤さんはセールスフォース・ドットコムにおける敏腕営業を生み出すための組織体制や仕組みなどについても紹介。いかにして「売れる営業」を組織的に作り上げるかについて紹介をした。

情報共有の推進は「データを持たせない」こと

次に登壇したのは、ミヨシ石鹸取締役営業本部長の中野浩之さん。同社のSalesforce活用について紹介した。

ミヨシ石鹸は2018年年末に大阪営業所をWeWorkなんば内に移転。そのタイミングで営業車も廃止し、「持たない経営」を志向している。

「訪問する営業から来訪していただける営業に変わるため、営業車を廃止して公共交通やカーシェアリングを使うことにしました。持たないということは、気軽に新しいことに取り組めるという意味でもあります」(中野さん)

ミヨシ石鹸は、それまで情報共有に関していくつかの課題を抱えていた。一つは、東京と大阪に営業所が分かれていることにも起因して、情報共有ができていないという点だ。さらにエクセルで情報管理をしていたこともあり、顧客管理や営業案件管理も十分にできていなかった。そして社内に散らばるさまざまなデータを統合して分析・活用することも課題だった。

そこで中野さんが考えたのが「個々人のコンピュータ上にデータを持たせない」ことだ。データの管理はSalesforceに一元化。売上の推移を日次で確認できるのはもちろんのこと、営業日報や、コールセンターに届くお客様の声もSalesforceにインプットすることで、ベストプラクティスや課題を全社で共有することができるようになったのである。

AI「Salesforce Einstein」で製造ラインの効率アップ目指す

「これまでは営業の状況は担当営業しか把握していませんでした。ですが、Salesforce使って情報共有をしたことで、誰がどんな商談をして何が決まったのかを関係者が知ることができるようになりました。営業自体のレベルも上がったと感じています」(中野さん)

カスタマイズも簡単で、項目ごとの集計もできる。ミヨシ石鹸では、営業の業務内容を「商談」「内勤」「打ち合わせ」「店頭フォロー」などいくつかの種類に分類。それぞれにどれだけ時間を割いているかを数値化し、会社全体でどのようにリソースを割いているのかなどを分析しようとしている。将来的にはダッシュボードに掲載して、利用者全員が見られるようにしたいと中野さんは語る。

現在ミヨシ石鹸は、株式会社コアコンセプト・テクノロジーと共同で営業の状況などから生産計画を自動で作成するシステムを開発中だ。商談レポート、在庫データ、配荷店舗数、前年実績、直近の出荷実績などをセールスフォース・ドットコムが提供する人工知能エンジンである「Salesforce Einstein」(アインシュタイン)に入力し、より効率のよい製造計画を策定しようとしているのだ。

中小のメーカーはほとんど人が情報を整理し予測を立て製造ラインを動かしているのが現状。それをAIを活用することで、きちんと根拠のある判断ができるようにしたい」(中野さん)

システム導入で肝心なのは「あきらめないこと」

パネルディスカッションでは、司会をつとめたセールスフォース・ドットコム スタートアップ戦略部 広域ビジネス戦略部の福本加央里さんが登壇者たちに質問を投げかけた。

まず、Salesforce導入時に難しいと感じた点については、中野さんが「とにかくはじめは言葉がわからなくて苦労しました。時間はかかりましたがやっていくうちに少しずつ理解できました。あきらめないことが大事」と回答。

「持たない経営」やそれにともなうSalesforce活用で不便を感じたことは無いかと?いう質問に対しては、ミヨシ石鹸の営業担当者が、「個人的にはそんなに不便とは感じていません。情報の入力に関しても、スタート時には入力が大変と感じたが、今はスマートフォンからの入力ができるようになるなど、現場の要望に応じて改善をしてくれているので楽になった」と答えた。

Salesforce活用の今後について聞かれると、最終的にはCRMを目指していると中野さん。

社内にある様々な情報を、まずはSalesforceで整理し、Salesforce Einsteinにインプットする事でどのような結果が得られるのかを試してみたい。その時に一番大切になるのは『目的変数』です。何を最大化すべきか、何を最小化すべきかという軸を私たち自身が持たないと、いくら優れたAIで分析をしても意味が無い結果になってしまいます。最終的にはCRMを実現していきたいです。」(中野さん)

懇親会では登壇者と参加者がビールを片手に意見を交換し、盛況のうちにイベントは幕を閉じた。