中間流通業は「日本型カテゴリーマネジメント」を推進すべき【前編】

日本の小売業が直取より卸売業を活用すべき理由

小売業の大規模化と寡占化は進行しており、ドラッグストア(DgS)も例外ではない。2018年度の決算では上位5企業が売上高5,000億円を超えており、2019年度の通期予想で7,000億円を超える売上高を見込んでいる企業もある。これに加えて、ECの台頭、科学技術の発達、趣味嗜好の多様化、人口減少など消費や流通を取り巻く環境は激変の中にある。こうした時代、日本の中間流通業はどこに進路を取ればよいか、日用雑貨・トイレタリーの分野に関して、歴史を振り返りつつ未来戦略を提言する。(ニュー・フォーマット研究所 副社長 村瀬 一弘/月刊マーチャンダイジング2019年5月号より転載)

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価格決定力の推移で見る流通業の歴史と勢力図

私の前職はある外資系消費財メーカーの営業担当で、入社した1980年ころには日用雑貨・トイレタリー用品の卸(中間流通企業)は三次卸の存在も含めると、それだけで2,000社ほどあったとおもう。現在は恐らく200社あまりになっているのではないか。まず、こうした中間流通業界の変動を振り返るとともに、本稿で述べる中間流通業、卸売業というのは、DgSの主力部門のひとつである日用雑貨・トイレタリー用品を扱っている企業に限定していることをお断りしておきたい。

図表1は流通市場における「価格決定力」の動向の変化を示している。価格決定力とは、メーカーの立場からは、時間をかけて開発・製造した製品がどれだけの利益をもたらすかを決定するものであり、卸、小売からすれば同業他社に優位に立ちどれだけのお客を集め、利益を残せるかという生命線で、サプライチェーン(製造から消費者に商品が届くまでの取引経路)に関わるすべての事業者の成否を分ける重要な要素となる。これを巡る勢力争いが流通の歴史と考えることもできる。

[図表1]価格決定力の動向の移り変わり(NFI作成)

戦後、モノの少ない時代は国内製造業の生産力もまだ弱く、限られた商品をいかに消費者まで分配するかが流通のカギであり、そのカギを握るのは卸売業であった。

1960年代、高度成長期に入ると日本の製造業も生産力を付け、メーカーの力が大きくなってくる。化粧品や大衆薬(OTC)メーカーは小売業を系列化して自社の影響力を強めていた。日用雑貨・トイレタリー用品メーカーは、自社製品の販売権を与えた「代理店」と呼ばれる卸を各都道府県に置いて価格決定に関しても強い影響力を持っていた。

小売業に割引販売を許さない「再販制度」や卸・小売の利益も見込んで、あらかじめメーカーが販売価格を決める「建値制」と呼ばれる商習慣も一般的であった。

卸や小売の自由な活動を極端に制限するような再販制度は、公正取引委員会の指示で是正されていくが、それでもメーカー優位の時代はしばらく続く。しかし、1990年代に入り、化粧品の再販制度が廃止されるなど、価格決定権は次第に小売業へと移っていく。この背景には規模を拡大した小売業が全国に多店舗展開(チェーン展開)し、一企業で大量の仕入れを行う力、いわゆるバイイングパワーを付けたことがある。

小売業が広域展開し大規模化すると同時に、各地域に高速道路網が整備され、都道府県を越えて広域にモノを運ぶ物流が可能になる。それ以前は、各都道府県に1店、もしくは数店あるメーカーからの指定を受けた「一次卸」と呼ばれる卸売会社が商品を仕入れ、そこからさらに二次卸、三次卸といった下流の卸に商品が供給され、地域内の店舗にモノが行き渡る流通経路が一般的だった。つまり、都道府県単位で一次卸を頂点に、ピラミッド形をした多数の卸が、メーカーから供給された商品を小売業へと配荷して利益を分け合っていたのである。

ところが、小売業の広域多店舗展開と高速道路網の整備で、こうしたやり方は著しく効率が悪くなる。山で越えられなかった県境を高速道路でやすやすと越えられるなら、積載力のある大型トラックで広域にモノを運んだ方が効率がよいのである。

また、大企業化した小売業と対等に商談し、提案していくためにも中間流通業は規模を拡大して、情報収集力や資本を蓄える必要性に迫られた。こうして、地方の中小卸の合併が相次ぎ、中間流通企業は社数を減らしながら規模を拡大させていくことになる。

さらに2000年代に入ると、ブランドの数や有力な小売業の店舗数が増え、消費者は商品や店を選ぶ時代に入る。さらに、生産性向上に伴い商品が過剰に供給され始め、価格決定力は消費者、小売業とサプライチェーンの下流に移っていく。この流れはいまも続いている。

市場への影響力を強めるため直接取引を目指す

価格決定力がメーカー優位であった1960年代、花王(当時花王石鹸)は市場への影響力を強めるために、いい換えれば価格決定力の優位性を保つために、自社製品専門の卸売会社(販社)をつくる。卸を使わずに中間流通機能を自社で持つ、いわゆる「直接取引(直取)」の本格的な開始である。これに刺激を受けたライオン(当時ライオン石鹸)も販社こそつくらなかったが、自社製品を主力で扱う卸売業を増やし、中間流通において系列網を強化(サブシステム化)していく。

花王はいまに至るも直接取引を継続しているが、これを試みて成功しなかったメーカーも私が知る限りでも数社ある。

私は前職で営業の責任者をしていたとき、リージョン(アジア地域)責任者の意向により、「直取をしたいのでコストと必要な従業員数を算定せよ」というミッションを受けたことがある。そのとき一定期間をかけ調査した結果、数百億円の投資と数百人規模の人員が必要なことがわかった。これを責任者にリポートしたところ、結局直取は断念せざるを得なくなった。

直取には優れたところがあるので、これを否定するものではないが、私の考えではメーカーは、日本の卸売業の優れた機能を大いに活用すべきだ。バラからケースまでのきめ細かな配送、安定した代金回収、店頭のメンテナンスなど、日本の卸売業はメーカーを支援する機能を総合的に持っており、これは日本特有のビジネスモデルである。

私が前職の外資系メーカーで台湾の営業責任者をしていたとき、円換算で年商200億円程度でほぼ直取だった。当時、売上の入金遅れや金額違いをチェックするために専任で3人ほどのスタッフを貼り付けていた。それほど、頻繁に入金日や金額の間違いは起こり、確実な代金回収には手間暇がかかるのだ。一例だが、日本の卸売業はこうした手間暇のかかる業務を着実に実行している。

日本と欧米では商習慣が大きく異なる

欧米には日本的な卸売業はなく、ウォルマートなど大手小売業は自社の物流センターで在庫管理をしてメーカーから直接商品を受け取り、各店に配送する物流機能を自社で持っている。自社物流に加えて、商品回転の速いものはメーカーから店舗へ直送させるなど、商品回転率や定番商品、シーズン商品などによって直接取引、自社のセンター経由など物流方法を使い分けている。

また、欧米には卸の機能を個別に持ったアウトソーシング企業が存在し、小売業がそれらを利用することが多い。たとえば、日本の卸が行っている情報収集やマーチャンダイジングなどはマーケティングエージェンシーが代行することが多い。

こうした機能の違いに加え、日本と欧米の流通事情の決定的な違いは、メーカー、ブランドの数である。欧米ではメーカー、ブランドの数が日本と比べると極端に少なく、商品管理がしやすいので比較的容易に直接取引できる。ところが、日本の場合ひとつのカテゴリーに多数のメーカー、ブランドがひしめいており、小売からすれば、一メーカーごとに直接取引していては効率が悪い。

また、日本は春と秋に棚替えされるのが一般的だが、欧米ではメーカー、ブランドの数が日本ほど多くのないので、決まったタイミングではなく新商品が発売されたタイミングで随時棚替えが行われる。

多ブランド並立でリニューアル品の多い日本のカテゴリー状況で、欧米のような頻繁な棚変えは難しいだろう。しかし、春の棚変え後1、2ヵ月で販売データをチェックして売れない商品は入れ替える。秋も同様にチェックして、修正する。死に筋商品が次の棚変えまで売場を占拠するのは非効率なので、戦略的な重要カテゴリーでは、卸売業と協働して、こうした修正・チェックを含め年4回程棚変えをしてもよいのではないか。

このように日米の商習慣は大きく異なるので、必ずしも直取が最善策ではない。日本の場合、卸売業をサプライチェーンの中に取り込んだ方が売上の最大化につながる。

図表2では卸売業の機能とメーカー、小売業が期待する機能をそれぞれ書き出してある。ロジスティクス(物流)は当然のこと、マーチャンダイジング、情報提供、商材調達といった機能は、特集記事のトップインタビューの中で、各トップが詳細に語っている。

[図表2]中間流通業の機能

アルフレッサ ヘルスケアではトータル・ヘルスケア・マーチャンダイジング・ホールセラーというスローガンを標榜して「専売商品」と呼ばれるカウンセリングで販売する高粗利商品を開発・販売している。販管費増加で縮小傾向にある営業利益を伸ばすには格好の商材である。

パルタックは先進的なデジタル技術を物流センター(RDC)に採用することで生産性を上げ商品の安定供給に努めている。さらに、AIを取り入れた無人レジの実験に着手するなど、デジタル技術で小売業の省人化や生産性アップまでをサポートする態勢を整えている。

あらたでは、購買履歴の調査や販促計画の立案・実行などをグループ企業と一緒に進め、物流以外の機能強化を進めている。メーカーとの共同販促を単なる販促で終わらせることなく、結果検証、次の施策への反映などデータ分析に基づき小売業へ提案をしている。

小売業は卸の持つこうした現状をいま一度認識して最大限に活用した方がよい。卸の進化した機能をチェックすれば、自分たちが十分認識していなかった新しく優れた機能を発見するはずである。

後編へ続く