「職業選択の自由」に反するか?突如浮上した都市部の出店規制
同会見で最も強いトーンで非難されたのが、改定案に突如盛り込まれた「都市部の新規開局抑制」策である。これは、東京23区や政令指定都市などにおいて、令和8年6月以降に既存薬局から一定距離内で新規開局する場合、調剤基本料を大幅に減点する実質的な出店規制である。
JACDSの横山英昭副会長(コスモス薬品社長)は、この規制が過去の最高裁判決(昭和50年)で違憲とされた距離制限と実質的に同一であり、日本国憲法第22条1項の「職業選択の自由」に反すると指摘した。
さらに、施行日を境に同じ業務内容でも報酬額が変わる点は、日本国憲法第14条の「法の下の平等」に反するとも主張している。
関口周吉副会長(龍生堂本店社長)も、この立地依存減算について「機能に対する評価ではなく、立地に対する評価であることがおかしい」と本質的な矛盾を指摘し、「われわれとしては、機能による評価を求める」と主張した。
行政側(厚労省)は「出店自体を禁止しているわけではなく、点数の減算に過ぎないため違法ではない」との立場をとっているとされるが、JACDS側は「事実上の開局規制であり、患者の選択肢や利便性を奪うものだ」と反発している。
塚本厚志会長(マツキヨココカラ&カンパニー副社長)は、即時の法的措置(訴訟)については「白黒はっきりさせる段階ではない」「法律論争でお互いに対立するということではない」と直ちに行うことは否定し、過激な対立構造として報じられることを牽制しつつも、「憲法違反に匹敵するような規制で甚だ遺憾であるというのが協会の統一見解」と強い懸念を示した。
また、「調剤報酬という公定価格制度の下で、(中略)多様性があるものを画一的なことで縛らないでほしい」と訴えた。今後の対応については、関口副会長が「中医協委員などとも連携しながら厚労省との実質的な協議の場を求めていく」方針を示した。
「規模」ではなく「機能」による評価を
ドラッグストア(DgS)業界にとって積年の課題である「企業規模」による不公平な評価についても、強い不満が示された。
JACDSは、加盟企業に多い「調剤基本料3-ハ」について、面分業促進の観点から点数が引き上げられた点(物件費高騰対応を含め合計2点)は評価しつつも、企業規模を理由とした「調剤基本料3」の区分全体としては「処方箋受付回数月40万回超」などの要件が維持され、実質的に温存されたと指摘した。
関口副会長をはじめとする調剤報酬委員会は、「本来、調剤報酬は個々の薬局の機能に基づき評価されるべき」とし、「グループ化による経営の効率化は、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)や在宅医療への投資を可能とする重要な企業努力であるにもかかわらず、現行制度はこれを阻害しているとしか言えません」と苦言を呈した。
さらに関口副会長は、「これまで努力を重ねて薬局機能の拡大を図ってきた薬局が、改定後に大幅な減算となる可能性が出てまいります。十分な機能を発揮していない薬局のほうが、収益面ではプラスとなるような改定となっています」と現状の制度設計の矛盾を指摘した。
塚本会長も、単に集中率を下げることだけを目的とするのではなく、「チェーンDgSとしては、そのようなトータルヘルスケアを実現できるような拠点づくりをさらに進めていきたい」と述べ、一般名処方への転換など、薬剤師がより関与を深めるための環境整備の重要性を訴えた。
緊急アンケートが示す現場への深刻なダメージ
会見当日に公表された、加盟企業対象の緊急アンケート(回答企業34社、対象7,702店舗分でカバー率70%超)の速報値からは、厳しい経営環境が浮き彫りになった。
◆同一建物や敷地内をすべてまとめてカウントする「処方箋集中率の計算方法変更」により、65%弱の企業が「収益が悪化する」と回答した。
◆後発医薬品関連の要件が新設の「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へ移行した影響で、約90%の企業が「算定金額が減少する」と回答した。
◆「服薬管理指導料」への統合・再編により、かかりつけ薬剤師などの新たな人的要件を満たすことが「厳しくなった」とする企業が約6割に上った。
◆都市部への出店規制による今後の新規出店への影響について、「変わらない」が約50%、「出店が減少する(少し減少する、を含む)」が50%弱となった。また、同減算に対して約50%の企業が反対と回答した。
◆新たに導入される調剤室の広さなどの面積規制については、約75%の企業が「影響がない」、25%が「要件を満たすのが難しくなる」と回答した。
連座制の導入見送りや賃上げ等のプラス面も。今後は「運用面」での要望へ
一方で、同改定には評価できるプラス要素もある。JACDSは、敷地内薬局が1つでも存在する場合にグループ薬局全体の調剤基本料を引き下げる「連座制」の導入が見送られたことについては評価している。
また、物価高騰・賃金上昇に対応する「物価対応料」や「ベースアップ評価料」の新設、在宅医療の推進に向けた評価拡充についても一定の評価を示した。
塚本会長は、新設される「物価対応料」と「ベースアップ評価料」について「われわれ法人、組織、企業にとっては、ITやデータの利活用の基盤づくりに対する投資や、エッセンシャルワーカーを『アドバンスド・エッセンシャルワーカー』とするための人材育成投資、(中略)ベースアップの原資に資することから、とても有意義な改定であった」と前向きに評価した。
調剤報酬委員会の秋山洋一委員(ウエルシア薬局調剤運営本部調剤企画部長)は、チェーン薬局においては本部人員を含めた一体的な運営体制の下で各薬局の機能が維持されている実態を指摘し、運営を支える本部に勤務する対象職員(40歳未満の勤務薬剤師および事務職員など)も算定対象に含めるよう求めた。
JACDSは今後、改定施行後の具体的な「運用」に関する要望書を国へ提出する方針だ。関口副会長や調剤報酬委員会は、運用面での要望として、改定が施行される6月時点で既に契約や着工済みの案件に関する「恒久的な適用除外」、あるいは少なくとも「令和10年度改定までの十分な経過措置期間」を設けるといった対応が必要であるとし、現場の混乱を避けるための措置を国へ強く求めていく考えを示した。
さらに「当協会を含む関係団体を排除することなく、十分かつ実質的な協議の場を直ちに設けること」を求めている。
横山副会長の「医療費を削減していかないと国民皆保険が守れない。下がるのであれば、皆一律に下げてほしい。それが正しい姿ではないか。孔子の『貧しきを憂えず、等しからざるを憂う』という言葉があるように、一部の人が既得権益を得て、一部の人が苦しい思いをするような不公平なことがあってはならない」という言葉に表れているように、薬局の「機能」を適正に評価する透明性の高い制度設計に向けた、国との実質的な協議の行方が注目される。





