戦略レポート「良品計画」の敏感肌スキンケア

無印良品を運営する株式会社良品計画は国内683店舗、海外では20ヵ国以上に729店舗を展開するグローバル企業である。業績も好調で2025年8月期の売上高は7,846億円、前期比18.6%増、営業利益高は738億円、同17.1%増。営業利益率は9.4%と高い水準にある。理念重視で独自路線を快走する同社だが、その好調要因のひとつがヘルス&ビューティ部門、とりわけスキンケアカテゴリーである。今回はその中の敏感肌シリーズに焦点をあて取材した。(月刊マーチャンダイジング2025年12月号より抜粋)

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無印良品はブランドではなく理念を実現させる手段

無印良品は1980年、株式会社西友のプライベートブランド(PB)として誕生。1989年に株式会社良品計画が設立され、以降同社により運営されている。誕生当初から今日までノーブランドであることを主張している。無印良品とは、商品全体が掲げるコンセプトを実現させるための手段であり、すべての商品が同じ世界観で統一されていることを重視する。

掲げるコンセプト、世界観は何度かの変遷を経ているが、2021年9月からは「第二創業期」と捉え「感じ良い暮らしと社会」の実現を掲げる。こうした事業モデルを実現させるため、企画から製造、小売までを一貫して自社で行うSPA業態をとる。

[図表1]良品計画の財務ハイライト
同社の2025年8月期の決算は、営業収益(売上相当)7,846億円、営業総利益(粗利益高相当)4,029億円、営業利益738億円、営業利益率は9.4%と高収益の財務体質となっている(図表1)。

成長性も高く、営業収益は2021年8月期と2025年8月期の5年間の比較で172.9%、同様に営業利益は254.6%、売上、利益とも大きく成長しており、特に営業利益の成長性は際だっている。2028年には営業収益1兆円、営業利益1,000億円を目指す。営業収益は10%の成長が続けばこの数字は達成できる。ちなみに、2025年8月期の営業収益は、前期比で18.6%成長、2028年の目標達成の実現性は高い。

[図表2]ヘルス&ビューティ部門の国内売上推移

とりわけ、今回フォーカスしたヘルス&ビューティ部門(スキンケアが主力)の構成比は直近で国内売上の22%(2023年8月期比で5ポイント増)である約1,034億円を占め、同社の重点カテゴリーに位置づけられる。

同社はグローバル展開しており、直近の営業収益の59.9%にあたる4,701億円が国内収益、40.1%の3,144億円が中国を中心とする海外収益となる。2025年8月期の海外売上の成長率は前期比で115.3%と2桁成長している。店舗数は最新の期末で国内683店舗、海外729店舗を展開している。

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無印良品の基本姿勢を商品化した敏感肌用シリーズ

(左から)敏感肌用化粧水 高保湿 300mL 本体税込990円(しっとり、さっぱり各300nL 本体税込790円)/敏感肌用乳液 高保湿 300mL 本体税込990円(しっとり、さっぱり各300mL 本体税込790円)/敏感肌用クリーム 税込1,590円/敏感肌用オールインワンジェル 税込1,490円

好調を続ける無印良品の中でも、さらに、急成長を遂げているスキンケア商品の敏感肌用シリーズは2023年に大規模にリニューアルして、天然由来成分※100%に切り替えた。
※天然成分を化学的に反応させた成分を含む

これまでの無添加成分に加え防腐剤である「フェノキシエタノール」も無添加とした。防腐剤を配合せずに長期保存を可能にするには処方設計に工夫が必要となり、難易度は高い。

さらに、化粧水では基剤となる水にもこだわった。飲み水としても使われる天然水を使用、涙と同じpHの弱アルカリ性で肌にすっとなじむ。商品の特徴に関して、生活雑貨部H&B(ケア)担当カテゴリーマネージャーの中野倫弥(なかの ともみ)氏は次のように語る。

「当社が考える敏感肌用シリーズは、敏感肌の人はもちろん、そうでない方も含め全ての方に使って頂きたい商品です。無印良品のスキンケアの最も基本的な定番として生まれました。皆様が毎日使えるように、使いやすいシンプルな処方にして、価格も使い続けやすい価格にこだわっています。ラインナップはクレンジング、洗顔から化粧水、乳液、クリーム、オールインワンジェル。他のシリーズと違い、お好きな使用感を選べるように、化粧水、乳液はさっぱり、しっとり、高保湿の3タイプを用意しています。大人はもちろん子供まですべての方にお使い頂きたい商品です」

敏感肌用シリーズは男性の使用者も多く、中野氏によれば、リニューアル後特にその数は増えている印象があるとのことだ。また、無印良品のブランド観について中野氏は次のように語る。

「あくまでノーブランドという立ち位置を重視しています。無印良品の考えの基につくっている商品群です。市場は参考のために見ていますが、いわゆるブランドマーケティングを重視しているわけではありません。無印良品の一カテゴリーであることが一番重要だと思っているので、暮らしになじむことが大切です。化粧品だけの機能を追い求めているのではなく、生活全体を重視しています。そこが一番の特徴ではないでしょうか」

冒頭述べたように「感じ良い暮らしと社会」が無印良品の目指す世界であり、これを実現させるために商品を分類し、開発の価値観や基準を全社で統一している。商品開発にあたっては、「その商品は無印良品に本当に必要か」が最終的には問われ、開発会議では担当部署と幹部社員、他部署が熱心に協議することになるという。

つまり、「感じ良い暮らしと社会」の定義や価値観を社内で揃え、そこへ向かって全商品を開発していく。その結果、品質は向上し世界観も統一される。無印良品は単品やカテゴリーの訴求に加え、ライフスタイル提案を商品全体を通じて行っており、それが多くの生活者に受け入れられている。こうした理念を基準にしたブレない事業が、好調の根底にある。

無印良品の部門別の分類は、①衣服・雑貨(レディース、メンズ、子供、服飾雑貨)、②生活雑貨(コスメ・ケア用品、文房具、ハウスウェア、家具・収納・家電、その他)、③食品の3部門に分かれており、売上構成比は①36.4%、②46.9%、③13.3%となっている(2025年8月期)。

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ボディケアも全面リニューアル 固形石けん、ハンドソープが新登場

(左から)敏感肌用ボディソープ液体タイプ 400mL 税込590円/敏感肌用ボディソープ泡タイプ400mL 税込590円/敏感肌用ハンドソープ泡タイプ 250mL 税込490円/敏感肌用ボディミルク400mL 税込990円/敏感肌用固形石けん 全身用 80g 税込190円

2025年9月10日、無印良品はボディケアシリーズ7種を全面リニューアル。固形石けんとハンドソープを新たにラインナップに加えた。

ボディケア用の特徴は以下の3つ。①天然由来成分100%使用(天然成分を化学的に反応させた成分を含む)、②低刺激へのこだわり。毎日肌に使うものなので、すべての商品でアレルギーテスト、スティンギングテスト(ヒリヒリ、ピリピリなどの刺激、かゆみはないかなどの確認)を実施(すべての人にアレルギーや皮膚刺激が起きないわけではない)。③子供から大人まで使える仕様。

年齢、性別に関わらず広く使える。価格もすべて1,000円以下に抑えた。

「商品は生活者の暮らしにこれまで以上に寄り添う考え方で、既存品を全て見直しリニューアルしました。品質は上げましたが価格は企業努力で抑えた価格にしています」(生活雑貨部H&B担当郭琪/かく ・き氏)

担当の郭氏が語るように、スキンケア同様、ボディケアも無印良品の考えをより強く実現するために改善された。

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店舗とECを一体的に運営 店舗の裁量を重視する個店主義

無印良品のスキンケア、メイクカテゴリーでは、お客の問い合わせ、相談に対応し、より広く愛用してもらうために、2024年8月から「H&B(ヘルス&ビューティ)アドバイザー制度」を立ち上げた。専用の研修制度を設け試験に合格すると社内の認定資格者となる。

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