検証「医薬品販売制度の見直し」とは

「情報通信技術の進歩、OTC医薬品の活用などセルフケア・セルフメディケーションの推進、新型コロナウイルス感染症の影響によるオンラインでの社会活動の増加など、一般国民における医薬品を巡る状況は大きく変化している。一方で、一般用医薬品の濫用等、安全性確保に関する課題も生じてきている。現状をまとめた。(文責/編集部)(月刊マーチャンダイジング2024年12月号より転載)

  • Facebook
  • Twitter
  • Line
  • Hatena

「情報通信技術の進歩、OTC医薬品の活用などセルフケア・セルフメディケーションの推進、新型コロナウイルス感染症の影響によるオンラインでの社会活動の増加など、一般国民における医薬品を巡る状況は大きく変化している。一方で、一般用医薬品の濫用等、安全性確保に関する課題も生じてきている。

こうした中、医薬品のリスクを踏まえ、医薬品の安全かつ適正な使用を確保するとともに、国民の医薬品へのアクセスを向上させる観点から、医薬品販売制度についての必要な見直し等に関する検討を行う」(第2回医薬品販売制度に関する検討会参考資料より引用)。

上記のような理由により厚生労働省は2023年2月から「医薬品の販売制度に関する検討会(検討会)」を開始、同年12月までに11回の会議を経て、2024年1月にとりまとめを発表した(解説1参照)。このとりまとめを大臣の諮問機関で審議した後、2025年以降、薬機法改正を目指すことになっている。

解説① 「医薬品の販売制度に関する検討会のとりまとめ」概要

5つの柱があり、公表された文書には「『安全性が確保され実効性が高く、分かりやすい制度への見直し』、『医薬品のアクセス向上等のためのデジタル技術の活用』を基本的な考え方としている」と書かれている。

①処方せん医薬品以外の医療用医薬品の販売

リスクの低い医療用医薬品は「やむを得ない場合」は薬局で販売する。「やむを得ない場合」を明確化し、薬局での販売は最小限度の数量とする等、要件を設ける。

②濫用等のおそれのある医薬品の販売

●原則として小容量1個の販売とし、20歳未満の者に対しては複数個・大容量の製品は販売しない。

●販売時の購入者の状況確認・情報提供を義務とする。原則として、購入者の状況の確認及び情報提供の方法は対面又はオンラインとする。

●20歳未満の者による購入や、複数・大容量製品の購入等の必要な場合は、氏名・年齢等を確認・記録し、記録を参照した上で販売する。

③要指導薬の販売

●薬剤師の判断に基づき、オンライン服薬指導により必要な情報提供等を行った上で、販売することを可能とする(ただし、医薬品の特性に応じ、例外的に対面での対応を求めることも可能とする)。

●医薬品の特性に応じ、必要な場合に一般用医薬品に移行しないことを可能とする。

④一般用医薬品の販売区分及び販売方法

●販売区分について、「薬剤師のみが販売できる一般用医薬品」と「薬剤師又は登録販売者が販売できる一般用医薬品」へと見直す。

●人体に対する作用が緩和なものは、医薬部外品への移行を検討する。

●専門家(薬剤師・登録販売者)の関与のあり方に加え、情報提供については関与の際に必要に応じて実施することを明確化する。

⑤デジタル技術を活用した医薬品販売業のあり方

●有資格者が常駐しない店舗において、当該店舗に紐付いた薬局等(管理店舗)の有資格者が、デジタル技術を活用して遠隔管理や販売対応を行うことにより、一定の要件の下、医薬品の受渡しを可能とする新たな業態を設ける。

解説② 濫用等のおそれのある医薬品販売の見直しに課題

前項の解説1は、概ね厚生労働省が発表した「とりまとめ」の要約である。ここでは、さらに課題や現状について説明を加える。

①に関しては、一部処方せん薬を処方せんなしで販売するという規制緩和だが、詳細は未決定。

③もこれまで禁じられていた要指導薬のEC販売を一部製品に関して認めようとするもの。しかし、どの製品がECで購入できるのか等、詳細は未定。

④は現状のリスク別の医薬品の区分を販売可能な資格者別(薬剤師、登録販売者)に区分し直そうというもの。とりまとめの文書では、現状、第2類医薬品、第3類医薬品はどちらもインターネット販売が可能、説明義務に関して第2類は努力義務、第3類は情報提供に関する規定がない。従って、利用者は第2類と第3類の区分の意義を実感しにくい。また、覆面調査などから、第2類、第3類は資格者ではなく、一般従事者が販売している事例が見られるとしている。

こうした現状の改善のために医薬品の区分を「薬剤師が販売する」「登録販売者が販売する」の2種に分け、作用の緩和なものは資格者の関与が不要な医薬部外品に移行させるという案を示している。情報提供の義務も明確化する。

⑤は、薬剤師、登録販売者が駐在する「管理店舗」があれば、近隣の「受渡店舗」では資格者不在でも医薬品を受け渡すことができるという内容。受渡時の説明は必要に応じてオンラインで行うものとしている。こちらも、管理店舗1店舗あたり、何店舗の受渡店舗が設置できるかなど、詳細は未定。仮に管理店舗1店舗で100店舗や200店舗といった多数の受渡店舗が認められるなら、ドラッグストア(DgS)の資格者配置の負荷も軽減するが、コンビニが医薬品販売に関して、大きな競合になるだろう。

今回、DgS側が主に問題としているのは、②の濫用等のおそれのある医薬品の販売に関する改正案である。購入者の手に届かない場所に陳列する、購入者の個人情報を記録しそれを保管すること(台帳化)が求められており、これが法制化されれば、お客は商品(実物)を手に取って見ることができず、店頭での商品選び、購入が著しく不便になる。

また、個人情報の記録と保管は店側の負担を大きくして作業効率を大きく落とす可能性もある。