調剤受付のコーナーから展示を開始
MG-DX社の提供する「薬急便(やっきゅうびん)」は、調剤受付からオンライン服薬指導まで、オンライン調剤に必要な機能をすべて兼ね備えたサービス。現在、クオール薬局、サンドラッグ、サツドラ薬局など全国の薬局で採用されている。
今回の出展は、薬急便を使って調剤の受付を済ませた後、待ち時間を使って物販スペースで買物することを想定してブースを構成。
薬急便のサービスで最近とくに好評なのが「薬急便モバイルオーダー」である。これはファストフードチェーンやコーヒーチェーンで導入されているモバイルオーダーの仕組みと同様で、利用者は処方せん画像を希望する薬局に送信して受取時間を予約する。薬の準備ができるとスマホに通知が届く。会計もあらかじめクレジットカードを登録していればオンラインで決済。薬局では処方せんと引き換えに薬を受け取り、服薬指導を受ける。
処方せん画像の送信の他、従来のように店頭受付も可能。その場合、処方せんと引き換えに薬剤師が受付票を患者に渡す。そこに印刷されたQRコードを患者が読み取れば、スマホ上で呼び出し(待ち)状況の確認や、お薬の準備完了通知を受け取ることができる。
また、最大の特徴は、オンライン受付と店頭受付を統合管理できることだ。調剤スペースのデジタルサイネージで全ての待ち状況を可視化し、さらに販促動画や広告を組み合わせて流すことで、「待ち時間にお買物」という行動も促進できる。反対に物販エリアにも調剤の待ち状況を流すことで、調剤の利用促進にも繋がる。
こうした一連の仕組みで、待ち時間が読めずにイライラして満足度が低下する問題を解消。さらに待ち時間を買物時間にするといった習慣の定着によるドラッグストア全体の売上アップも狙える。調剤と物販融合のひとつの手段である。
店舗でオンライン服薬指導 患者は時間節約、薬局は効率改善
薬急便は、8月28日に新サービス「遠隔接客AIアシスタント」をリリースしたばかり。ドラッグストアショーにて、本サービスのデモンストレーションを先行公開した。
「遠隔接客AIアシスタント」は無人受付と遠隔接客を組み合わせたサービスで、店舗(薬局)で処方せん受付を行った患者のうちオンラインによる服薬指導を希望する人に対応する仕組み。待ち時間の間に先に服薬指導を受けることも可能で患者側は時間の節約につながる。
薬局側は、比較的すいている他店舗の薬剤師が遠隔で服薬指導だけを行うことができるので、混雑店舗の作業効率改善に貢献。企業全体としては、薬剤師の業務負荷の平準化、コスト改善を図ることが可能となるほか、将来的には、調剤非併設店などにも設置することで処方せん応需スポットの拡大にも繋がる。人手不足が常態化しているDgSチェーンにとっては朗報である。
ドラッグストアショーでは、遠隔接客AIアシスタントを体験できるよう、各種機器を展示、サイバーエージェントのスタッフが体験希望者に対して丁寧な説明を行っていた(写真2〜6)。
調剤と物販の融合は、単に調剤体験、買物体験を変えるだけでなく、調剤データと物販データの融合による効果も視野に入れている。これが実現すれば、調剤併設DgSで、物販は利用しているが、調剤は利用していないユーザーが明らかになり、こうした層に、調剤薬局の利用を促進することもできる。
さらに、優良顧客である調剤利用者をターゲットに物販への送客も可能、調剤未利用者の掘り起こしと合わせ、企業の収益性を大きく変える可能性を持っている。サイバーエージェントでは、こうしたデータ面での調剤と物販の融合も事業領域としており、DgSの支援を進める構えだ。
「遠隔接客AIアシスタント」の利用プロセス
自己推薦ロボットとデジタルサイネージ
物販スペースで展示されたのは、棚の前に立ち止まるとセンサーが感知して商品が踊り出す「自己推薦ロボット」と3面連結の迫力あるデジタルサイネージ。
自己推薦ロボットは第三者的にロボットが話すのではなく、商品自らが話すコミュニケーションスタイルで消費者の関心を集める。活用に前向きな小売企業も多いという。現状は、実証実験を行っている段階で、限定された店舗で試験的な導入となっている。
お客の動きを感知して自らが動くことで、立ち止まり率が2倍以上にアップ(大型雑貨店での事例)、商品によっては6倍以上の販売増加率を達成している(図表1)。新たな販促プロモーションの可能性が証明されている。
また、別途AIカメラを設置して自己推薦ロボットが設置された棚の動画を撮ることで、立ち寄り率、手に取った人の割合などを計測可能。それらをメーカーにフィードバックすることで、製販協働で販促効果を上げられる。
サイバーエージェントが開発した店舗サイネージ配信システム「ミライネージ」は単に動画を流すだけでなく、効果検証して改善する「運用」と一体的にサービスを提供している。売上状況を日次で把握して、配信効果の高い店舗への配信を増やすなど状況に応じて最適な施策を、早いところで週次で立案、実施している。
また、同社では広告クリエイティブ制作の専任部隊も構えており、こちらも売上状況に応じて短時間でクリエイティブを差し替えることが可能。こうしたサイネージ広告を調剤、物販両スペースで連動させることで、より高い売上効果が期待できる。
最後に8月末にリリースした新たな広告配信サービスも資料で紹介されていた。これは、ポイントやクーポンをフックに消費者行動を促すサービスで、小売企業の自社アプリで特定の広告を閲覧した人にポイントを付与。
ユーザーはそのポイントで当該小売店に限り買物をすることができるという仕組み。これにより小売アプリのアクティブユーザーは増え、リテールメディアとしての広告収入も安定化、物販収益の向上も見込める。メーカーからしても、ポイント付与のメリットを武器に確実な広告閲覧を促せるため、認知や購買効果に期待ができる。すでに一部DgSアプリへの導入が決まっているとのことだ。
調剤事業の強化を成長ドライバーとするDgSは多い。それだけで終わるのではなく、調剤強化を物販強化にも繋げることで、成長スピードはさらに早まるだろう。その意味で今回のサイバーエージェントの提案は示唆に富んでいた。