「バックヤードの販促物が以前より整然と管理されている」

アース製薬も活用!「ラウンダー業務効率化、売場精度も向上」する販促物の共同配送とは?

月刊マーチャンダイジング9月号では、メーカー販促物の共同配送がもたらす成果を小売業の経営層へのインタビューで紹介した。今回は販促物を制作、活用する立場から、アース製薬で販促物の配送、管理を担当する大田貴也氏に効果や今後の期待について話を聞いた。(月刊マーチャンダイジング2023年11月号より転載)

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バックヤードの販促物が以前より整然と管理されている

アース製薬では虫ケア(殺虫剤)や入浴剤など季節性の高い商材を多く扱っていることもあり、シーズン内で需要を確実に取っていくためにも販促物は重要な役割を果たす。

「季節品は売場で目立たせることが非常に重要です。販促物を駆使してつくったプロモーション売場が売上に大きな影響を与えることは数値的にも実証されています。また、当社では棚替えを行わず通年で虫ケア売場を維持しようという提案をしています。この場合も定番売場などをシーズンやテーマに合わせて効果的に演出するために販促物は重要な役割を果たします。あるいは、今後重要になる高付加価値・高単価商品は、その価格に見合った世界観が必要です。これも販促物の力を借りて演出する必要があります」(営業本部 アカウント営業部 課長 大田貴也氏)

大田氏の発言にあるように、同社は販促物を重要な戦力と位置づけており、それだけに販促物が効率的に配送され、設置率を上げることは業績にも影響を及ぼすことになる。

ドラッグストア(DgS)6,000店舗(2023年8月時点)への販促物の共同配送システムを利用してまず効果を感じているのは、ラウンダー業務が効率化されたことだ。

同社では店舗を巡回し販促物を設置したり、店長、店舗スタッフとコミュニケーションして営業活動をサポートする専門部署に自社採用した従業員(ラウンダー)が在籍している。

「MICさんの共同配送システムを利用して感じたのは、バックヤードの販促物が以前より整理されて保管されるようになったことです。販促物を送ったときには店舗を訪問して設置状況を確認したり、自分で設置することもあります。店舗のバックヤードも拝見しますが、以前より明らかにメーカー販促物がすっきりと管理されています。これまで、ラウンダーから設置する販促物がないという電話を頻繁に受けていましたが、共同配送導入後はその連絡も目に見えて減りました」(大田氏)

MICの調査によれば、メーカー直送では店舗に1ヵ月80~100個の段ボールが個別に届き、それらがその都度バックヤードに保管されるため、販促物が埋没し設置されないという状況があった。共同配送システムにより販促物を「まとめる」ことで、管理が容易になり設置率は企業により異なるが平均で20~30%上がっている(MIC調査)。

また、アース製薬では複数の販促物の部材(バラ)を企画ごとに一梱包化する作業にラウンダーを充てることがあったが、MICの共同配送システムの導入で、この作業が基本なくなった。これによりラウンダーは店舗訪問に専念できるようになり、業務が効率化され、それが売場づくりの精度向上、販促効果のアップにもつながっている。

「バラ配送」の手間とコストを解消。設置率の向上に貢献

販促物の中にはトップボードや販売スタンドといった比較的大型のものから、香り見本や吊り下げ陳列用のフックなど細かい部材のものまである。

「共同配送を利用して良かったことのひとつが、細かい販促物を直送する手間がなくなったことです。いくら小さくても配送コストはかかるし時間もかかります。モノが小さければそれだけバックヤードで埋もれて発見されない可能性も高くなります。MICさんのセンターで細かい販促物までひとつのビニール袋に企画ごとにまとめて梱包して頂くのは非常によいサービスだと思います」(大田氏)

大田氏の語るように、MICの販促物専用物流センター「はちフィル」では、メーカーからバルク(バラ)で納品された販促物を企画ごとにまとめて一包化している。

MICの販促物専用の物流センター「ハチフィル」では、写真のようにバラ納品された販促物を各店舗ごとにひとつの梱包にまとめて配送する

一方、販促物をメーカーが店舗へ直送する場合、必要な店舗、不要な店舗を選別せずに一律送ることが小売側からの不満のひとつだった。共同配送システムでは、店舗ごとに「バイヤー承認」という形で、一定程度、販促や販売計画に基づいた販促物の配送を行っているが、それでもバイヤーが全店の状況を把握している訳ではないので、完全に店舗状況に応じた配送が実現している訳ではない。

例えば、サイドネット用の販促物をサイドネットのない店舗に送ってしまうというミスマッチはまだ存在しており、こうしたミスマッチが解消されれば、販促物の設置率、販促効果は大きく改善されるだろう。販促物が設置されない理由のひとつは、設置する売場やスペースがないことだ。

MICの河合克也社長は、該当するカテゴリーの売場が棚何本あり、エンドがいくつあり、プロモーションスペースの規模がどれくらいかといった店舗状況を「見える化」し販促の精度を上げていくことを、今後やりたいことの上位に挙げ、DgSとの協働でこれに着手しようとしている。

「店舗の見える化」推進に大きな期待

チェーンストア経営の基本は標準化であり、様々な条件を揃える(標準化する)ことで、コストを下げ値頃感のある売価を実現させる、同時に生産性を上げて利益を最大化することがチェーンストアの軸となる理論である。

しかし、売場の標準化に関して言えば、取得する土地や居抜き物件の形状、面積により売場や棚割が異なり、標準化を実現させているDgS企業は極めて少ない。

また、敢えて標準化にとらわれず、バラエティに富んだ都市型店舗を主力に収益性を高めるという考えの企業もある。全体の効率や顧客満足を考えれば、あるべき姿は売場にいくつかのバリエーションはあるにせよ、数種のパターンで均一化させ、売場づくりや作業を標準化することだ。また、数百を超える売場、棚割パターンがある場合でも、「見える化」を進め本部がそれを把握して統合的に管理する必要がある。

「商談で企画が決まったら、売場があることを前提に商品や販促物を配送しますが、まれにそれがないこともまだあります。売場のあるなし、商談で決まった展開が可能かどうか店舗ごとに売場状況を把握できていれば、システム的にもムダがありませんし、販促物の効果も高くなると思います」(大田氏)

販促の効果向上のカギを握る店舗の見える化は当然メーカーの仕事の範疇ではないし、店頭サポートを得意とする大手卸と言えども、全店・全アイテムで取り引きがある訳ではないので不可能だ。一義的には小売側が自社で推進すべきだが、それが進まない現状を考えれば、MICのようなデジタル、リアル両方に強みを持つアウトソーサーと協働して進めることが現実的な解決策だろう。

[図表1]MICの考える売場の見える化戦略

MICが現在DgSと協働で進めようとしている「店舗の見える化」戦略は、全店の基本的な売場レイアウト、棚割パターンを共有し、棚替えや改装情報をタイムリーに収集してそれを基本情報に反映し売場状況をリアルタイムに近い状態で把握・管理することだ(図表1)。

将来的にはAIカメラや移動型のロボットを組み合わせるなどして、店舗を見える化していくというDX戦略もあるだろう。MICの現場力と技術力、そしてこの事業に対する意欲的な姿勢には期待が高まる。

また、アース製薬ではSDGsにも積極的に取り組んでおり、販促物の再利用、使い捨てではなく複数回使える器具の開発などを進めている。このような施策を進める上でも物資の回収や小売業への啓発活動にMICが大きな役割を果たしてくれるものと期待している。


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