それぞれ異なる「マグネット」の役割を再確認しよう

「ゾーニング」「マグネット」は店内回遊設計の肝

本稿では、店舗を表現する言葉の一つ「ゾーニング」と「マグネット」について解説します。お客様に店内を自然に回遊してもらい、楽しく、かつスピーディーな買物をしていただくためには、ゾーニングとマグネットの設計が重要になります。よく耳にする「ゾーニング」と「マグネット」という言葉の意味をおさらいしましょう。

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ゾーニングの鉄則は「主力部門を壁面に配置」

買上点数を上げるためには、主力部門を壁面に配置することが原則だ。

主力部門とは、買上率の高い部門のことである。お客の多くが購入する主力部門を外側に配置することで、売場の奥の立ち寄り率が向上し、売場全体の回遊性も向上させることができる。

とくに、ドラッグストアやスーパーマーケットのように、部門を横断してさまざまな商品を買い回りする「ハウスキーピングニーズ」に対応する業態は、買上率の高い主力部門を外側に配置することで買回率が向上し、買上点数を高められる。

それぞれ異なる「マグネット」の役割

刺激によってお客を引き寄せる売場のことをマグネットという。磁石売場ともいう。

マグネットには「第1〜第4マグネット」売場があり、それぞれのマグネットは役割が異なる。

マグネット売場を計画的に配置することで、お客の歩行動線を長くし、買上点数を増やす役割を果たす。

第1マグネット

主通路沿いの売場のことを指す。

主通路とはお客の70%以上が自然に歩く通路のことである。そのため第1マグネットには、

①買上率の高い商品
②客層を限定しない商品
③購買頻度の高い商品
④気軽に買える価格帯の商品
⑤商品選択に時間のかからない商品

などを配置するのが原則だ。

逆に、お客の一部にしか関係のない商品(たとえば生理用品や介護用品など)、品選びに時間がかかる商品(化粧品など)は、適さないことになる。商品選択に時間がかかる商品を主通路沿いに配置すると、お客が滞留して移動の妨げになるからだ。

第2マグネット

通路の突き当たりの売場を第2マグネットという。通路の突き当たりは、なかなかお客が足を運んでくれない場所なので、そこまでおもわず行きたくなるような刺激をつくることが大切だ。

価格の安さ、色の鮮やかさ、季節感の訴求などが第2マグネットのキーワードである。図表10のAの場所がもっとも重要な第2マグネットになる。

遠くからでもよくわかるPOPを付けたり、同一品目の大量陳列などで固まりとして大きく見せたりすることで、実際の距離よりも近く感じさせることがポイントになる。

第3マグネット

エンドや平台のプロモーショナル売場が第3マグネット売場である(図表11)。売場に変化や楽しさを演出する一等地の役割を果たす。同じ売価であっても、エンドに陳列すると2〜3倍も販売数量が増える。年間で催事を計画的に実施していく必要がある。

配置すべき商品の条件は以下である。

①13週以内に売り切る商品
②品目数を絞る(最大5品目程度)
③安さ、季節、話題性などの刺激を組み合わせる
④お客をはっとさせて立ち止まらせる

第4マグネット

第3マグネットの刺激でエンドに立ち止まったお客を、ゴンドラ間通路の中に誘導するのが第4マグネットの刺激である。

定番売場に単品量販の棚を意図的につくったり(変化陳列)、主通路からよく見える大きさのスポッター(突き出しPOP)などの刺激が効果的だ。

ここで重要になるのが、ゴンドラ間の適正な通路幅の確保である。店の規模や業態によっても異なるが、幅90cmのゴンドラを20本連結した場合であれば、最低でも1.5〜2mの通路幅が必要になる。

たとえば1m20cmに通路幅を狭めた途端、お客の進入率は低下するだろう。人間は狭いところには入りたがらないものだからだ。

通路幅が狭いと、通路への進入率が下がるだけではなく、ゴールデンゾーン(棚のなかで、お客の目につきやすく手に取りやすい場所)も狭くなる。