ウエルシアとスギ薬局で販売へ

日機装が空気清浄機「Aeropure」の販路にドラッグストアを選んだ理由

日機装株式会社は、2021年6月10日、同社が開発した深紫外線LEDを使った循環型空間除菌消臭装置「Aeropure(エアロピュア)」を、ウエルシア薬局株式会社、株式会社スギ薬局のドラッグストアの店舗で販売すると発表した。(ライター:森山和道)

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「Aeropure」は取り込んだ空気に対し深紫外線LEDを照射、除菌・ウイルス不活化を行ったあとに排出する仕組みをとった循環型空間除菌消臭装置。悪臭の原因物質やアレル物質を分解することもできる。

実店舗での販売は今回が初めて。従来は通常の家電ではないという価値訴求をしていたことと、生産能力面から出荷数に制限があったため、店頭販売をしていなかった。だが感染対策ニーズが高まるなか、多くの顧客から「実物を見たい」という声があがり、ドラッグストアであればシナジー効果が強いのではないかという判断で実店舗販売に至ったという。なお、今回販売を行う機種はAeropure series S 「AN-JS1」で、希望小売価格は7万円代。

「Aeropure」の実店舗での販売は初めて

ウエルシア薬局では関東近県の10店舗で6月8日から取り扱いを開始する。スギ薬局では東名阪を中心に10店舗での取り扱いを近日中にスタートする予定。設置店舗は順次拡大を予定する。店舗で受注し、後日引き渡す。年間販売目標台数は25万台程度。

取り扱い店舗一覧

深紫外線LEDを活用した循環型空間除菌消臭装置「Aeropure」

日機装 代表取締役社長 甲斐敏彦氏

日機装は石油ガス業界向け大型特殊ポンプを扱うインダストリアル事業、炭素繊維強化プラスチックによる航空宇宙事業、国内でシェア5割を超える血液透析装置を扱うメディカル事業の3つを展開する会社。血液透析装置では日本でのパイオニアとして開発に取り組んできており、海外向け販売も行っている。

日機装 代表取締役社長 甲斐敏彦氏は、2020年1月から販売している空間除菌消臭装置「Aeropure(エアロピュア)」について、新型コロナウイルス以前から、医療機関のニーズに応えて深紫外線LEDの除菌技術を活用した院内感染対策として開発していた製品だと紹介。「結果として感染予防対策が当たり前の社会に変化したことを実感している」と語った。

UV-Cを活用した空間除菌消臭装置「Aeropure」。2020年1月発売

日機装は青色LEDに必要な高品質結晶創製技術の発明で2014年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学 天野浩教授(当時は名城大学)と、2006年から深紫外線LEDの実用化を目指して共同研究を行い、2015年に世界で初めて量産化に成功した。その後、「SumiRay(スミレイ)」のブランドで深紫外線LEDを使った水浄化装置、空間除菌消臭装置の開発を進めている。「深紫外線LEDの量産にはコストがかかり、まだ安く大量にできる状態にはなっていないが今年は安定供給が可能になった」という。

深紫外線LEDは天野教授と共同開発

紫外線は可視光よりも波長が短い100~400nmの光。波長が長いほうからUV-A、UV-B、UV-Cと分類されている。なかでも深紫外線(UV-C)は100nm~280nm波長帯域の紫外線で、エネルギーが高い。そのエネルギーを使ったDNA損傷による除菌・ウイルス不活化は以前から行われている。

日機装の深紫外線LEDは新型コロナウイルスに対しても宮崎大学との共同研究で不活化試験を実施しており、感染価が30秒照射で99.9%、1秒照射でも87.4%減少するという結果がイギリスの科学誌「Emerging Microbes & Infections」に掲載されている。変異株についても1秒で90%以上、5秒では99%以上、ウイルスを不活化でき感染価が減少するという結果が得られているという。

新型コロナウイルスに対しても不活化効果の有効性が確認されている

天野教授との共同研究は難航し、最初に光ったときには歓声が上がったという。2015年の量産化成功以来、耐久時間を向上させ、世界最高水準の性能を追求するための取り組みを続けた。「Aeropure」は2020年1月に販売したが、6万台弱を販売。だがこの量産レベルでは継続的な感染対策が必要になった今後の需要増に耐えられないため、年間25万台を製造できる体制を構築し、増産に踏みきった。

「Aeropure」シリーズ。2021年は年間25万台の販売を目指す

エビデンスに基づいた循環型除菌装置

日機装 取締役執行役員 医療部門長 メディカル事業本部長 木下良彦氏

日機装 取締役執行役員 医療部門長 メディカル事業本部長の木下良彦氏は、日機装の透析医療装置のほか、そのノウハウを活用したヘルスケア分野の除菌装置類を紹介。同社は特に未病・予防領域に力点を置いている。

日機装のメディカル・ヘルスケア分野での取り組み

紫外線を使った除菌には薬剤耐性菌にも効果がある点が利点だ。だが生体には有害で、特に累積すると害が大きい。木下氏は「取り扱うには紫外線の制御技術が必要であり、良い面と悪い面がある」と強調。「紫外線は高い効果を発揮する反面、健康被害の原因となる危険な光でもある」と語った。日機装は安全な使い方で確実な効果を出すことにこだわり、データに基づくエビデンスを示すことを重視していると述べ、宮崎大学との共同研究による検証結果などを紹介した。

紫外線は取り扱いに注意する必要がある

木下氏は、空間除菌装置とされる商品のなかには除菌効果が明確ではなく健康への影響が懸念されるものがあることや、深紫外線についても情報が混乱している面があると述べ、同社ではデータに基づく効果と「SumiRay(スミレイ)」ブランドをより認知させていきたいと考えていると強調。

深紫外線LEDについても従来は価格も高く出力を上げにくい欠点があったが、日機装では深紫外線の適切な使い方を探り、最初は水の除菌から始めた。水は一定容積のなかに蓄積し、満遍なく深紫外線を照射することができるためだ。中流量のものは食品工場などで、小流量のものは風呂釜などで使われているという。

そして、水の除菌の次に着目したのが空気の除菌だった。空間に直接照射することは安全面を考えてもできないし、光源からの距離が離れると反比例して効果が薄れてしまう。また影になる部分には効果が全くない。そこで2019年に光触媒フィルターと出会い、装置本体に空気を吸い込み、そのフィルターで菌やウイルスを補足し、そこに深紫外線を照射する。こうすることで安全を担保しながら除菌することができる。こうして開発されたのが「Aeropure(エアロピュア)」で、いま多くの場所で使われるようになったという。医療機関からも高い信頼を得ており、3月末現在で8500以上の医療関連施設に導入されているという。これは生産台数のおよそ半分くらいにあたる。

世界的に除菌ニーズの高まりから深紫外線の効果は知られるようになり、多くの機器が出回るようになった。だが木下氏は危険性もあることを再び強調した。消毒液や酸化性物質などを空間に噴霧するタイプについても「空気を直接除菌しようとする製品はどう考えても効果がない。一般的にはある程度の除菌成分を出さないと効果がないが、高濃度のものを空間に出し続けると人体へのリスクも高い。感染対策として推奨される換気も行うと効果は限定的になる」と語った。

空間除菌をうたう製品のなかには効果が疑問なものも

また一定波長の紫外線を放射するタイプのなかには人体に害がなくて有効だと言われているものもあるが、本当に人体に影響がないかについては累積を見る必要があるので将来の研究結果を待ちたいと述べた。そして「日機装の除菌装置は空気を吸い込み、遮蔽された装置内部でウイルスを補足して光を当てる。正しく使い方を間違えなければ効果がある。裏付けデータをお届けしながら製品をお届けすることが当社のこだわり」と強調した。

日機装では取り込んだ空気に対して遮蔽空間で紫外線照射する方式を採用

同社では今後、深紫外線LED技術を中心に、科学的な根拠に基づいた衛生環境・感染対策基準を作り、単なる感染対策技術だけではなく、より広い感染対策ソリューションを展開していく予定。日本への販売拡大のほか、海外展開も視野に入れており、中国では6月に、北米・欧州では10月発売予定となっている。「Aeropure」は循環型なので空調施設とも相性がよく、協業も進めており、除菌技術のスタンダードを狙っていく。戸建や自動車内などでの活用も視野に入れており、順次製品をラインナップしていく。木下氏は「社会インフラの様々なところにAeropureを導入し、感染対策をプロデュースしていきたい」と語った。

深紫外線LEDをベースにした感染対策製品を幅広く展開予定

地域の健康ハブステーションとしてのドラッグストアとのシナジー効果を狙う

日機装ヘルスケア事業推進部 部長 中摩貴浩氏

さらに日機装ヘルスケア事業推進部 部長の中摩貴浩氏が協業戦略と開発製品ラインナップを紹介した。日機装では三菱地所ホームと提携しており、Aeropureの技術を搭載したダクト組込型の空気清浄機製品を4月から販売しており、すでに予定販売数量を上回る受注が来ているという。このほか、多くの協業先と提携している。公共交通機関でもWILLERと協業。高速バスに搭載されている。詳細は6月末に発表される。

ドラッグストアでの販売に至った理由については、「ドラッグストアは地域の健康ハブステーションという役割を持っている。またエビデンスを重視した販売ができる点も合致すると考えた。医療現場に近い社会機能を持っていることも、ドラッグストアでの販売を選んだ理由だ」と中摩氏は語った。

地域の健康ハブステーションとしてのドラッグストアの役割を重視

今後、日機装ではニューノーマルを支えるための技術として、「SumiRay」を活用した紙表面除菌装置、公共交通機関や映画館向けにシートで除菌を行うエアバリアシート、学校、ビジネスビルなどを対象にした床面除菌自走ロボットなどを開発中だという。いずれも年内にはリリースされる。

開発中の床面除菌ロボット