回答者の92%がZoomを使用と回答

オンライン商談、91.8%が今後も続くと回答

コロナ禍が小売業にもたらした変化のうち大きなものがコミュニケーションのオンライン化だ。さまざまなコミュニケーションがZoomなどのテレビ会議ツールを通じて実施されることが急激に一般化した。この傾向はこのまま継続するのか。本誌はWEBメディア「MD NEXT」を通じ2020年7月7日から7月12日に、読者を対象としてオンライン商談に関する緊急アンケートを実施。85件の回答を得た。本稿では月刊マーチャンダイジングの記事を一部抜粋し、現状を紹介する。(月刊マーチャンダイジング2020年9月号より転載)

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メーカー勤務者の96.7%がオンライン商談体験

今回の調査の回答件数は85件。業種による内訳は小売業17名、メーカー61名、卸売業7名。

Q2は緊急事態宣言が出された4月7日から解除された5月25日を含む「2020年2月から5月のオンライン商談の状況」について質問したもの。小売業の64.7%、卸売業は42.9%、メーカーに至っては96.7%がオンライン商談を行ったと回答があった。

Q3は、この期間中、体感値でどれぐらいの取引先とオンライン商談をしたかという質問だが、全体で見ると8割と回答したのが14人。5割と回答したのが11人、6人は10割、つまりほぼすべての商談がオンラインになったと回答している。

Q3の回答を業種ごとにグラフ化したものを見てみると、小売業は8割と回答した人が3人、1割と回答した人が4人、0割の人が6人と「大半の商談をオンライン化した」「補助的にオンライン化した」「ほとんど使っていない」という回答が分散している状況。

緊急事態宣言解除後にオンライン商談ゼロの回答も

このような状況を通じて、緊急事態宣言解除後の2020年6月にはどのような状況かというのを全業種の人に尋ねたのがQ4だ。0割の20人、5割の19人が突出しているが、その他の回答は分散していて、全体的な傾向はつかみにくい。

緊急事態宣言期間中は、感染拡大予防の観点や、自社従業員の感染リスク削減のため、外部の取引先企業との対面による面談を禁止する企業がメーカー、小売ともに多数見られた。緊急事態宣言解除後である本記事執筆中の2020年7月時点でも、商談はすべてオンラインで実施しているという企業も見受けられる。一方で対面の商談を実施している企業もそれなりの数はあるということであろう。

人気のツールは圧倒的にZoom 。次いでTeams、Meet

Q5はオンライン商談で使ったことがあるツールについて、複数回答可で集計したもの。圧倒的にZoomの利用率が高い。また、MicrosoftTeamsや、Skype、Google Meetがそれに続く。なお、アンケートの回答項目にはWhereby、ベルフェイス、V-CUBEミーティングなどもあったが、こちらには回答がなかった。

メリットの圧倒的1位は移動時間の削減

Q6、Q7はオンライン商談のメリット、デメリットについての印象を、小売業とメーカーの回答からまとめたもの。

メリットの1位は、小売業もメーカーも突出して「移動時間の削減」を挙げる。とくにメーカーのセールスパーソンにとって、最大のアイドルタイムとなるのが取引先への移動時間をカットできるとあって

また、メーカー、小売業双方が、メリットの2位、3位として挙げている「商談時間の削減」「商談の目的が明確になる」というのはそれぞれリンクしているとおもわれ、「商談の目的が明確になったから、商談時間が削減できた」「雑談が減って、重要なテーマについてのみやりとりしたことで結果商談時間が短くなった」と推測できる。

「ごあいさつに立ち寄る」など、ちょっとしたフェース・トゥ・フェースのやりとりができなくなったことは、営業担当者によっては無駄な時間のカットになり得るし、ちょっとしたコミュニケーションが取りにくい歯がゆさを感じる人も多そうだ。

Q7のオンライン商談のデメリットとしては、小売業、メーカーともに1位「コミュニケーションの質が落ちる」、2位「提案・推奨しにくい」、3位「取引先によって使うツールが違う」の順。その他のデメリットとして「表情が読みにくく、デリケートな質問ができない」「反応が読みづらい」という、対面ならではでわかる「雰囲気」がわからないという回答が主にメーカーの方から寄せられている。

また、同じくメーカーの方から「製品の現物を触っていただくこと、売場展開を見ていただくこと、香りの確認などができない」と、オンライン商談の本質的な欠点を指摘する声もあった。

また、「複数人で話をしていると、発言のタイミングがつかめない」(小売業)、「一方的に話してしまいがち」(メーカー)など、やりとりがオフラインと違うことに対する戸惑いもあることがわかった。「パッションが伝わりにくい」(メーカー)という声も。オンラインになるとどうしても「味気ない情報のやりとり」になってしまいがちだが、それをどう克服するかという悩みが生じているようだ。

91.8%が今後もオンライン商談は続くと回答

Q8では、今後のオンライン商談に関する見通しを聞いてみた。実に回答者91.8%の人がなんらかの形でオンライン商談は続くだろうとしている。興味深いのは、「オンライン商談はなくなり、コロナ禍以前の状況に戻る」と回答した人がメーカーに11.5%いたのに対し、小売業では0%だったということだ。

「便利だが提案するのには難がある」「小売業は商談のオンライン化を受け入れないに違いない」と考えるメーカーに対し、「これは便利だ!」と前のめりにオンライン商談を導入していこうとする小売業の意向が、本調査によって浮き彫りになる結果となった。