サツドラを発端に開店時のマスク・消毒薬販売を終了するドラッグストア
マスクを求めて、連日開店時に店頭に並ぶお客様の対応に忙殺されていた店舗で働く皆さん。過剰な在庫に関する問い合わせは、ドラッグストアで働く方を精神的に追い詰めていました。
早朝から並んでいる人しか購入できない不公平さや、早朝に店頭に並ぶことでさらなる感染拡大を引き起こすのではないかという懸念も指摘されていました。
しかし、ここにきてDgS各社が開店時のマスク・消毒液販売をやめるという告知を行ってきています。
きっかけになったのはサツドラHDさんの公式アカウントが4月7日にtwitterに投稿した以下の内容です。
ご理解・ご協力いただき感謝いたします。
多くのお客さまのお役に立てるよう、今後も商品供給に努めてまいります。 pic.twitter.com/w4o1RvhbgH— サツドラ(公式) (@satsu_dora) April 7, 2020
このツイートに寄せられたコメントを見ると、多くのお客様が賛同していることが見受けられます。この方針転換は多くのメディアにも取り上げられました。
これに追随するかのように、4月10日からスギ薬局が、4月13日からはツルハドラッグが、公式アカウントや公式WEBで開店時のマスク販売などを実施せず、不定期に陳列する旨を告知しました。
マスクの安定供給が出来ず誠に申し訳ございません。
一部店舗で先行実施を行っておりましたが、本日より随時ツルハドラッグ(※福岡県除く)各店にて開店時マスク販売をせず不定期に店舗内に陳列を行わせていただきます。
多くのお客様にご購入いただくためですのでご理解下さいますようお願いいたします pic.twitter.com/OKb4XOTjin— ツルハドラッグ公式 (@tsuruhaofficial) April 13, 2020
ツルハドラッグのSNS公式アカウントは、これまで販促中心の内容をツイートしていましたが、本来の目的である企業の情報発信のツールとしての活用に成功したといえます。
また、顧客満足も重要ですが、このような局面では店頭で働いている従業員をいかに守るかを、企業としては考えていくべきです。今回のマスク販売方法の変更は、チェーン本部の従業員に対する前向きなメッセージにもなっています。
Youtubeに挑戦する企業、コンサルも登場
対面でのセミナーや記者会見などによる情報発信が難しい今、小売業界でもさまざまな方法でダイレクトに情報を発信しようとする動きがみられるようになりました。
サツドラHDでは社長の富山浩樹さんが、Youtubeでマスクの状況や今後の対応についての情報発信を行っています。
チェーンストア向け経営指導を行う、日本リテイリングセンターでも、Youtubeで情報発信をスタートしました。
国外の状況をまとめ、国内のチェーンストアに対し営業対策を具申しています。
ウエルシアでは、新型コロナウイルスによる電話受信についての対応を、自社ウェイブサイトから発信しています。
決算説明会をオンライン配信で行う企業も増えています。「対面」が奨励されない昨今、情報発信の在り方はこれを機に大きく変わりそうです。
従業員をどう守る?感染者が出たらどうするか?
店舗内でのお客様へのソーシャルディスタンス確保のお願いだけでなく、レジに透明なカバーをつけて、従業員の感染を防ごうとする店舗が多く出てきています。
感染者が発見された場合、他の従業員を自宅待機にするのかどうか、応援体制をどのようにするのかなど、企業としての対応方針策定が非常に重要な局面になってきました。保育園の登園自粛により、仕事を休まざるを得ない従業員も増えています。
ドラッグストアでは、従業員の感染なども散見されるようになりつつあります。ウエルシア常盤平店では4月13日に従業員の感染を発表。店舗を消毒した上で営業を再開するとしています。
今ドラッグストアは幸運にも営業を続けることができていますが、これも従業員の方あってのものです。感染の不安と戦いながら店頭で働いてくれている従業員の方に特別報奨金を出す企業も登場することでしょう。
チェーンストアは今後どうなる?
しばらく続くと思われるこの「緊急事態」。生活必需品に対するニーズは引き続きあるものの、ドラッグストアも今後は大きく運営体制の展開を図られると思われます。
一点目として、EDLPへの転換が本格的に進むだろうという点です。ポイント還元セールやチラシ商品、期間限定特価での販売などの集客は当面難しくなり、またその必要もなくなります。とにかく安定して低価格で商品を供給することが、ドラッグストアに求められる機能になります。
二点目として、店づくりが大きく変わり、メーカーの淘汰が進むだろうという点です。狭い床面積の店舗に商品と人を詰め込み効率を追求するという日本の店舗の在り方が、これを機に代わるかもしれません。ソーシャルディスタンスを保つためには、ある程度余裕を持った通路幅が必要になります。そのため、店舗で取り扱うアイテム数が減少し、メーカー淘汰が進むきかけになると思われます。すでにお客様のマインドは、生活必需品について、自分好みのブランドではなく、必要なものであればどんなブランドのものでも購入するという方向に切り替わっています。
三点目として、店舗で働く人の地位が社会的にも向上していくだろうという点です。今回の未曽有の事態において、毎日の生活を支える小売業の重要性を痛感したお客様は少なくありません。店舗で働く人がいるからこそ、生活が回っているということに気づかれたお客様は多くいらっしゃいます。
四点目として、さらなるIT活用と仕組み化、自動化が進むという点です。店舗で働く人の地位が向上する一方で、人力に頼った店舗運営は、感染者が見つかることで、突如中断される危険性をはらんでいるということを皆痛感することになりました。なるべく機械やコンピュータに置き換え、人間がかかわる部分は最小限にとどめようという考えが進むでしょう。スマートフォンでの事前注文による店舗受け取り、ネット通販、キャッシュレス化…嫌でもチェーンストアは新しい売り方に挑戦せざるを得ない状況に追い込まれたといえます。
まさに世界中が100年に1度の大転換点を迎えることになった2020年。小売業も大きくその姿を変えることになることは間違いありません。
MD NEXTを運営するニューフォーマット研究所では、2020年5月13日に新型コロナ対策に関するウェビナーを実施する予定です。詳細は決定次第MD NEXTにてご案内します。新着情報を入手したい方は、以下からLINE公式アカウントにご登録いただくか、facebook、twitterなどのフォローをお願いいたします。