市場動向:制汗剤とスキンケアが男性用化粧品市場を牽引
男性の身だしなみといえば、シェービングや整髪程度だったが、自分の容姿について、周囲からの目を気にする男性が増えている。
30〜40代男性にきいたアンケート調査によると(図表1)「顔や体について気になる部分」では「体臭・口臭」が最も高く、続いて「顔の肌質(テカリ、ベタツキ、肌荒れなど)」、「体型・スタイル」となっており、頭髪やひげ以上に、ニオイや肌質を意識していることがわかる。
男性用化粧品市場の2016 年〜2018年の3年間の平均成長率を見ると、市場全体では1.5%のマイナスとなった。これは「育毛・トニック」「スタイリング」「シェーブ(ひげ)」といった従来から続く代表的なカテゴリーがダウントレンドであることが大きく影響している。一方、「制汗剤」や「スキンケア」といった男性用化粧品の中でも比較的新しいカテゴリーについては伸長している(図表2)。
なかでもエチケットとして定着してきた汗や体臭を抑える「男性用制汗剤」市場の伸長は目覚ましく、直近3年間のカテゴリーの年平均成長率は5.0%となっている。またスキンケアの市場も成長していて、同じく3年間の年間成長率は4.3%。図表3の男性用スキンケア使用率を見ると2017年までは32.0%だったが、2019年は36.5%まで急上昇している。
サブカテ分析 (1)ニオイケア:汗以外のニオイに対処するニーズが増加
最近はニオイに関する意識が高まり、自身の体臭に対して気をつかう男性が増えている。図表4のようにワキに加えて、首筋、胸元、耳の後ろといった部位のニオイも気になり、エチケットとして制汗剤・デオドラントを手に取る男性は多い。また加齢臭やストレス臭といった、汗とは違うニオイのケアに対する意識も高まっている。
制汗剤にはスプレータイプやシートタイプ、ロールオン、直塗りなど様々な剤型があるが、男性にはしっかりと塗り込むことができるロールオンタイプや、広範囲に対して手軽にケアできるスプレータイプが人気だ。だが、制汗剤はワキの汗やニオイに対する訴求が中心であり、ワキ以外もニオイが気になってケアしたいのに、現実にはできていないという男性も多い。実際にワキ用のロールオンタイプを、胸元や首元などワキ以外の部位に塗っているというユーザーも2割以上いるようだ(図表5)。
サブカテ分析 (2)スキンケア:「手間いらず」のオールインワンが人気
フェイス周りのスキンケアには洗顔料やローション、乳液、クリームなどがあるが、特に伸びているのがオールインワンタイプの商品だ。スキンケアは「洗顔」、「化粧水などでうるおいを補給する」、「乳液やクリームでうるおいを保つ」の3ステップが一般的。しかし、洗顔後の化粧水やクリームによる保湿といった文化のない男性にとって、これらの商品をすべてそろえ、ケアする作業はハードルが高い。そういった意味でも化粧水と保湿クリームが一体化したオールインワンタイプは、できるだけ手間をかけたくない、店頭で商品選びに迷いたくないという男性のニーズに合致したアイテムとなっている。
資生堂のメンズブランド「uno」では、2016年秋に発売したオールインワンジェル「クリームパーフェクション」、肌あれ・ニキビ予防もできる「UV パーフェクションジェル」が好調に推移。また2019年秋に発表された「バイタルクリームパーフェクション」は、加齢に伴う肌の変化を感じ始めた男性のためのエイジングケアとして、30〜40代のビジネスマン世代に刺さっている。
肌のテカリ・カサつきに加え、シミや肌あれ、乾燥による小じわなど、顔周りのスキンケアについては男性も女性と同じような悩みを持っている。洗顔後にひと手間を加えるだけで、肌を整え健やかに保つことができる顔周りのスキンケア用品は、シェービングや洗顔の後の新常識として、今後も拡大していくことが予想される。
以下に、スキンケアの基礎知識をまとめた。ぜひ売場作り・接客の参考にしてほしい。
サブカテ分析(3)メンズメイク:BB クリームで肌ツヤをプラス
スキンケアからさらに一歩進み、日本でも注目が集まっているのが男性用のメイクアイテムだ。
日本で男性向けメイク市場のエポックメイキングとなったのが、2019年3月発売のBBクリーム「unoフェイスカラークリエイター」。日本の男性にも「商談やデート前など重要な場面では、きれいな肌でいたい」、「肌荒れやシミなどを速攻で隠したい」といったニーズが以前からあったものの、「メイクしていることがバレると恥ずかしい」「女性用のファンデーションを使うのには抵抗がある」といった声があった。
資生堂ではこのような男性の悩みに応え、クマやひげの青み、肌の赤味など、男性の肌悩み( 図表6)をカバーしつつ、塗布後に色が変化し自然な仕上がりとなるBBクリームを開発。同品はチャネルを絞った限定発売からスタートしたが、発売4ヵ月間の出荷実績が計画比の3倍と好調だったことから9月より全国発売に踏み切った。
化粧水や乳液といった基礎化粧品の場合、毎日のケアによって肌悩みを解決するため効果を実感するまで時間がかかる。しかし、BBクリームの場合、気になっていた部分をその場ですぐに隠してくれることから、若年層だけでなく30〜40代のビジネスマンにも支持され( 図表7)、同品は2019年の注目商品として様々な媒体で大きく取り上げられた。
さらに、資生堂では既存のナチュラルタイプではカバーしきれなかった、ニキビ跡や毛穴もカバーできる凹凸補正効果を加えた新商品「フェイスカラークリエイター(カバー)」を2020年3月に発売。ラインナップを拡充することで肌ツヤの良さで第一印象をよく見せたいという男性たちのニーズに応えていく。
眉の形を整えるアイブロウも登場
メンズメイクとしてもうひとつ注目したいのが眉のケアだ。顔のパーツの中でも眉の存在は大きく、メンズメイクの中でもアイブロウへの注目度が増している。
今後大きく成長する可能性を秘めたメンズメイクに対し、資生堂では新商品「uno バランスクリエイター」を投入する。カラーはどんな眉色にも馴染むナチュラルブラックを採用。楕円形を斜めにカットした芯は細い線も太い線も描きやすく、毛の流れを整え自然にぼかせるブラシも付いている。
これらのメイクアップ商品を手に取る男性は、総じてスキンケアにも力を入れており、スキンケアとメイクの両カテゴリーを訴求することで、バスケット単価アップにもつなげていけるだろう。
男性用化粧品売場の作り方
スキンケアからメイクへとステップアップ
汗や体臭をケアするための制汗剤・デオドラントに始まり、肌質をよくするためのスキンケア、顔周りの悩みを速攻でカバーするメイクといったように、男性のエチケット及びビューティーケアは徐々にステップアップしている。
男性用化粧品のマーケットがここまで広がった背景には、ブランドのコンセプトや販売チャネルも大きく影響している。男性用化粧品は百貨店などで取り扱うハイブランドでも展開されているが、スキンケアやメイクに初めて挑戦する男性にとってはハードルが高い。しかし身近なドラッグストアで扱う値ごろ感のあるマスブランド商品であれば、目に触れる機会も多く、「試しに使ってみよう」
という意識が働き、トライアルの促進につながったと考えられる。
現在、ドラッグストアの顧客の8割が女性といわれている。今後、少子高齢化が進み人口が減少していく中、女性の化粧品使用率を爆発的に上げることは難しい。しかし、男性化粧品は使用率が低く伸びしろがあることから、今後も拡大していくことが推測される。特にスキンケアやメイクについては、20〜30代の若い世代を取り込むチャンスのある商材であり、将来的にはカテゴリーの育成と安定した客数の確保にもつながるだろう。
男性若年層の顧客を創造
男性用化粧品は若年層や男性客といった顧客創造につながる非常に有望なカテゴリーだ。スキンケアやメイク、エチケッ次世代男性用化粧品売場の主役はエチケットとスキンケアトなど、今が旬のアイテムの取り扱い数を増やすことは、男性客の来店促進と客単価アップにつながるのではないだろうか。
3〜4月は新生活に向けて身だしなみを整えたいというニーズがあり、ドラッグストアでも男性の来店客数がぐっと増える。そこで制汗剤・デオドラントをフックに、スキンケアやメイクをエンドでトータル提案することにより気付きを与え、トライアルを促進していくといいだろう。
<取材協力>
資生堂ジャパン(株)ライフスタイルブランド事業本部
メンズ・ヘア・ボディマーケティング部 uno グループ
津倉 徳真氏
資生堂ジャパン(株)ライフスタイルブランド事業本部
ブランド事業推進部流通企画グループ
伊藤 邦浩氏
(提供:エフティ資生堂)