これまでの高齢者医療では、急性期(たとえば脳梗塞発症時)を終え、慢性期(たとえば後遺症が残った状態)に入っても十分なケアをする場がないので、病院を生活の場として1年や2年など長期入院するケースが多かった。
病院は治療を目的につくられた施設で、生活に必要な環境は整っていないので、高齢者のQOL(生活の質)が著しく下がり、なおかつ社会保障コストもかさばるというデメリットが生じる。
今後は、病院では治療を行い、その後の療養が必要な人には、介護施設もしくは自宅など生活環境が整った場で療養してもらう。そして、看取りまで行う。このような体制を支えるためには、日常生活は家族や介護職が世話をして、医療が必要な場合には医師、看護師、薬剤師がチームを組んで医療サービスを提供することが必要となる。
また、健康な高齢者に対しては、なるべく病気にかからない「予防」に努めてもらう。日頃の生活圏である地域を舞台とした、主に高齢者の医療、介護、生活支援、健康維持体制が、「地域包括ケアシステム」の骨子である。このシステムを構成する基本要素は
(1)医療
(2)介護
(3)住まい
(4)介護予防
(5)生活支援
の5つとなる。