DIY文化を広げるための“オンライン拠点”

カインズは、「DIY」がもっと生活の一部として根付くよう、「DIYer100万人プロジェクト」を2019年11月から掲げている。そこでは「暮らしをちょっと良くすること」をすべてDIYと捉え、料理やガーデニング、キャンプや梅酒づくりまで含めて幅広く“DIY”と定義。「DIYに挑戦する人=DIYer」として、彼らを増やすことが大きな目標だ。
DIYerとカインズの接点は従来、店頭ワークショップ(WS)やイベントなどオフラインが中心だった。さらにオンラインを活用してお客同士のつながりや情報共有を深めたい─こうした思いから2021年にスタートしたのが「CAINZ DIY Square」である。
単なる「カインズファンの集まり」ではなく、「DIYが好きな人が集う場」というコンセプトを掲げるのが特徴だ。
同コミュニティは2021年7月にまず10人のコアメンバーのみを招待し、3ヵ月ほどクローズドで運営をはじめた。その間にオンライン座談会や試験的な企画を重ね、投稿の盛り上げ方や管理体制のノウハウを蓄積。
その後、9〜10月にかけて店頭WSでの声掛けや会員向けキャンペーンを少しずつ実施し、同年11月に公式リリースという形でオープン。「DIYer100万人プロジェクト」をオンラインで加速するための“拠点”として、本格稼働を始めたのである。
リリース当初は数百人規模だったが、その後キャンペーンや店舗誘導、アプリ配信などを通じて徐々に会員数が増え、2025年2月現在は約4万5,000人に到達した。
オンラインの承認欲求を満たす
「DIYと聞くと木工や本格的な日曜大工をイメージしがちですが、当コミュニティではくらしを楽しむためのあらゆる工夫や手づくりをDIYとして捉えています。したがって料理や園芸、手芸など投稿ジャンルは実に多彩です」と澁谷氏は語る。

ユーザーの男女比はおよそ半々。実店舗のWSは女性が多いが、オンラインでは男性ユーザーの熱量も高いという。
その背景について、澁谷氏は「DIY好きなユーザーの声を聞くと、家族から『またつくってるの?』とあきれられてしまうことも少なくないそう。ところがコミュニティに投稿すれば、同好の士から称賛や質問をたくさんもらえる。そこが継続の大きなモチベーションになっているようだ」と説明する。
オンライン上でやりとりしていたユーザー同士が、実店舗のWSやイベントを通じてさらに深くつながるケースもあるという。
コミュニティのユーザーが、WS参加時に名前のバッジをコミュニティネームで書いたところ、「もしかしてあの〇〇さんですか?」と意気投合。終わったあと店舗併設のカフェ「CAFE BRICCO」でお茶をし、それが縁となって「カインズ遠征」を企画して複数店舗を巡る“DIYツアー”を楽しむ…といった行動も生まれているという。
「オンラインだけの関係だと不安に思うかもしれませんが、店舗を介すことで安心感があり、実際に会ってみようと積極的になられているようです」と澁谷氏は語る。
投稿への“いいね!”で心理的安全性を高める
コミュニティの盛り上がりには、立ち上げ当初の地道な運営が大きく貢献している。