カインズ つくば店 ~ホームセンターに学ぶ商品の見せ方、伝え方~

29都道府県下に259店舗を展開するホームセンターチェーン、カインズが、2025年4月23日にカインズ つくば店をオープンした。ベルクが運営するモールへの出店となった最新店舗で、商品と売場づくりの工夫を学ぶ。(月刊マーチャンダイジング2025年7月号より転載)

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ベルクが運営するモールへの出店

カインズ つくば店

今回カインズ つくば店が出店したのは、食品スーパーのベルクがディベロッパーを務める「フォルテつくば」。2022年10月に閉店した「LALAガーデンつくば」の跡地だ。敷地面積約5万7,000㎡、駐車台数680台分のベルクを核店舗としたショッピングモールである。テナントは、ドラッグストアのクリエイト SD、セリア、ファッションプラザパシオス(しまむらグループ)など。

カインズ つくば店の内部にも、ベビー・子供衣料品の西松屋やシュープラザ、JINSなどがテナントとして入居しており、買い回りの利便性を感じさせるモールに仕上がっている。

カインズ つくば店売場レイアウト

カインズは、そのモールの一番奥に、売場面積約3,150坪、1層で出店。商圏人口はつくば市の26万人と設定している。エリアの特徴としては教育関連機関が多く、子育て支援が手厚い地域ということもあり、子育てファミリー層が多い。また一戸建ても多いため、ペットやガーデン、リフォームのニーズも高い。

同店舗のレイアウトは基本的な配置と比較すると、テナントが入っている分だけ少し圧縮されている。主通路沿いにペット、家具、リフォーム、建築資材、自転車など、目的買いのカテゴリーが並び、マグネットの効果を狙う。

ゴンドラにはライフスタイル関連、具体的には日用雑貨や医薬品、家事関連アイテムなどが配置されている。

商品を体験できる売場づくり

実際に商品を試せる売場づくりを行っている。枕売場では、「首・肩が気になる」「丸洗いできる」「やわらかいまくら」「かためなまくら」「おてごろまくら」というように分類。向かいにベッドが配置されており、横たわって使ってみることができる
メーカーコラボ。店頭のシーズン商品のプロモ売場では、シンカトリと、PBの殺虫剤を併売

プレゼンテーションの特徴としては、商品を体験できる売場づくりを掲げ、お客が実際にアイテムを試用できるコーナーを複数設けている。アイテムの大きさや使い心地を実物で確認できるのは、実店舗ならではの価値だ。

専売品の大容量アイテムが得意。2.9ヵ月分や3.1ヵ月分と期間で訴求。お客にとっては買物の頻度やゴミを減らせるというメリットがある

また、リフォームコーナーでも、実際にリフォームをした後の生活を感じさせるような売場づくりを目指している。

同店が注力しているのは入り口そばに展開している自転車売場だ。若年層が多く自転車ユーザーが多い地域のため、たくさんの種類・台数を多く自転車を取り揃える。本体だけでなく、関連商品や、修理サービスなども手厚くラインナップした。

ペット用品売場では、帝人フロンティアとアース製薬が共同開発した不快な虫から身を守る素材、スコーロンでつくったウエアを販売。カインズのオリジナル商品

ペット用品売場では犬種や体格などに合わせた、たくさんの種類豊富なアイテムを展開。プライベートブランド(PB)のペットおやつでは「無添加」「乳酸菌入り」など、健康志向の高付加価値商品を豊富に展開する。

ペット用品コーナーのPOP。犬のオーラルケアについて、ステップアップをどう進めるかを解説。カインズの店頭と親和性が高いシンプルなデザインにまとまっている
ハピウェルピューレは、カインズで人気の愛犬用おやつ。低カロリー・低脂質、さらに無添加、乳酸菌入りなど高付加価値なアイテムも。バリエーションも豊富

店内にはペットと一緒に買物ができるペット専用カートも配置されており、取材中はそのカートの利用者の多さが目についた。

夏場は冷蔵庫のドアポケットに麦茶などが入りきらないという悩みに対応した、 ポケット、棚、どちらでも収納できるコンパクト冷水筒。かゆいところに手が届く
吊るしても立たせても干せるシューズハンガー。干すスペースを選ばないため、いろいろなところに移動しながら靴を干すのに便利。雑貨類は商品名で機能を説明していて、商品名が長いものが多い。その分、いろいろな説明が不要となり、店頭の販促物の文字数が少なくシンプルに見える
スパッと切れるラップケース。パッケージの口を閉じるだけで非常に簡単に切ることができる。冷蔵庫に磁石でくっつくので収納場所にも困らない。店頭では、実際にラップを切ってみる体験ができる。テレビやSNSで見たあのアイテムを実際に触ることができる

エンドにはおすすめ商品、広告の品を大きく配置し、通路の奥まで入らなくてもどこに何があるかがわかりやすい売場づくりを意識している。

ガーデンコーナーではとくに初心者が失敗しにくいよう商品や販促物でフォローする。写真はナスについて解説するPOP。どの時期に植え付け、収穫をすべきか、接ぎ木野菜苗の特徴など、シンプルなイラストでわかりやすく解説している

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家庭菜園や屋内のガーデニングの人気が高まりつつある園芸コーナーでは、園芸に対する入り口を広げるために、初心者に向けた失敗しにくい苗や肥料、栄養剤などを厚く展開。

また店内のグリーンコーナーには、「カフェブリッコ」も併設。種類豊富、手軽な価格で楽しめるマフィン(税別130円〜)が人気で、グリーンがある暮らしを体感してもらえるスペースといえる。これも実店舗ならではの「体験」できるコーナーといえよう。

店頭の様々なところに配置されているサイネージ。自社商品の動画が中心で、他社のサイネージに比べると、自然に売場に溶け込んでいる印象

デジタルの取組みとしてはサービスカウンター横にピックアップロッカーを設置。ネットやアプリから注文した商品をこのロッカーで受け取ることができる。コロナ禍で非接触を志向するお客に支持されて、利用率が伸びた。

ネットで購入した商品を受 け 取ることが できるピックアップロッカー。広い店舗で買い回る必要がなく、ショートタイムショッピングを志向するお客に向けて提供している

現在は、広い売場でアイテムを探すのが大変というお客などに利用されることが多いという。

またカインズアプリや、ポケットレジについても店内の至る所で告知をしていた。

店内には大型サイネージも設置され、自社PB商品の紹介動画が中心で流れている。メーカーのPOPなどが棚にあまり添付されていないことからも、同社が売場づくりでトーン&マナーを重視していることがよくわかる。よくよく見ると、メーカーがつくっていると推測されるPOPも、カインズ風のフォントや写真を使った、トーンを抑えたものが多い。

伝えるべきことを厳選すれば、より伝わりやすくなるということが、カインズの売場から学べる。

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[DATA]

店舗名 カインズ つくば店
所在地 茨城県つくば市小野崎278-1
売場面積 約3,150坪
営業時間 9:00~20:00
従業員数 134人
(正社員11名、専任社員5人、パート社員24人、アルバイト94人)
オープン日 2025年4月23日